鏡像のキヴォトス   作:K.I.sei

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トリニティ総合学園 1年生 正義実現委員会 槌永ヒヨリ

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「く、暗いですねぇ……怖いですねぇ……

 早く終わらせて、アツコ()()()の淹れた、とびっきり甘い紅茶でも飲みたいですねぇ……」

 

 夜の帳が降りた、トリニティ総合学園の一角。

 子供は、最近少しキツくなってきた正義実現委員会の制服を着込んで、弱音をひたすらに吐きながら歩いていたんだ。

 

 子供がこうして歩いている理由は、ここ最近、不審者の目撃情報が相次いでいて、その対策として正義実現委員会の警備が強化されることになったからなんだけど……

 ……でも、子供は業務にあまり意欲的でないから。今回の件も、『メンドクサイ業務が増えて嫌だなぁ』程度に考えているみたい。

 

 それでも、万が一に備え警備を強化するという上層部の判断は、決して間違ったものではない。子供もそれを頭では理解しているからこそ、業務をサボったりはしていないんだ。

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「こんな夜中に外を出歩く人なんて、いる筈ないじゃないですか~……」

 

 ……だからといって、不満を口から垂れ流すのを止めたりはしないんだけどね。

 

 ただ、子供の言うこともあながち間違いとは言い切れないの。

 トリニティ総合学園は、キヴォトス全体で見ても片手の指に入るくらいには治安が安定している地域で、夜間に外出する生徒の数はとても少ないから。

 

 万が一に備えるのは確かに大切なんだけれど、その備えの大半がなんの成果もなく無駄な徒労に終わることもまた事実ではあるから……

 ……この辺りの考え方のバランスは、難しいところだね。

 

 

 

 だけどまぁ、今回に限ってはそういう難しい問題に頭を悩ませる必要は無いみたいだね?

 現にほら──

 

 

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「…………え、」

 

 

 

 ──こうして、子供の前に()()()が現れたことだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[変質者 ???]

「──」

 

 変質者は、子供の十数メートル先にある横道から現れた。

 子供はそれを視認すると、即座に息を止めて物陰に身を潜めたの。

 夜の闇と子供の暗い服の色も相まって、変質者から子供を視認するのはほぼ不可能に近いだろうね。

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「ま、まさか本当に不審者と出くわしてしまうだなんて……なんだか姉さん達から聞いていた容姿とだいぶ違うような気もしますが。

 ですがまぁ、こんな夜中に()()()()()なんて……どのみち不審者には違いありませんよねぇ……」

 

 厳密に言うと、子供の前にいる変質者は完全な裸ではなく、布面積が限りなく小さい下着を着けた格好なんだけど……

 ……まぁ、ほぼ裸と言って差し支えないかな。

 

 やがて子供は変質者に気取られないよう、そっとトランシーバーを取り出すと、そのまま仲間と連絡を取り始めたんだ。

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「もしもしサオリ姉さん?」

 

[正義実現委員会 委員長 サオリ]

『……ヒヨリか。何か見つけたのか?』

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「えへへ……今、目の前に変質者が居るんですけど……これってもしかすると、偉い人が言ってたやつなんじゃないかって思って。えへへ、まさか本当に居るとは思いませんでした」

 

[正義実現委員会 委員長 サオリ]

『……ッ! ……ヒヨリ、今いる場所は?』

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「えっとですね、少し待ってください……」

 

 そうして子供は暫くの間、義姉である正義実現委員会の委員長と、トランシーバー越しに情報の共有を行ったの。

 

[正義実現委員会 委員長 サオリ]

『──今、増援を向かわせた。ヒヨリは対象に気取られないよう注意しつつ、そのまま位置を捕捉し続けてくれ。

 間違っても一人で対処しようとするんじゃないぞ。相手は()()()()()()()()()()()との話だ』

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「分かりました、監視を続けますね……」

 

 子供はトランシーバーを懐に仕舞うと、そのまま変質者に視線を戻し、その柔肌を遠目からジロジロと見つめ続け……ふと、あることに思い至ったんだ。

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

::( あれ? 手練れの武力集団という割には、銃器の類いを携帯してる様子が見当たりませんね? )

 

 子供は少し頭を捻り……やがてその小さな頭脳から、恐ろしい結論を弾き出したの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

::( まさか……己の身一つで銃を持った人間をバッタバッタと薙ぎ倒せる程に極まった体術と鍛え抜かれた肉体を持っている……ということなんですね!? )

 

 うん、違うね。

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

::( それ程の身体能力を持つ変質者の集団が、陰で徒党を組んでいるだなんて……裸でいるのもきっと、自らの肉体を見せつけるためにあえてそうしているんでしょうね。ティーパーティーの人達が不安に思うのも納得です。いろんな意味で )

 

 絶対に違うね。

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

::( でも、遠目からだと到底鍛えているように見えませんね……華奢で、細身で、凄くエッチですね

 ズームしたらちゃんと筋肉が見えますかね? )

 

 やがて子供は鞄からスマホを取り出すと、カメラのズーム機能を使いながら変質者の艶肌を画面に納めて、そのまま舐めるようにその肢体を観察し始めた。

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

::( あ、裸かと思ってましたけど、一応下着は着けてるんですね。

 ……でもあの格好、裸より凄くないですか? エッチで良いですね

 ……うん、やっぱりそんなに筋肉が付いている様には見えませんね。サオリ姉さん位付いてると思ったのに

 あ、凄いエッチなポーズをとってます! 良いですねッ、良いですよッ! 見えっ、見えッ……ませんよね、はい。ちゃんと履いてますからね。人生、そう上手く行きませんよね……辛いです。 )

 

 そうやって子供は、煩悩にまみれた思考で、画面越しに扇情的な裸体を眺め続けたんだ。

 やがて頭の中がピンク一色に染まってしまった子供。望遠鏡の代わりに手に持っているスマホは、丁度ズーム機能を使うためにカメラが起動している。

 ……こんな状況で、子供が次に取る行動なんて……そんなの一つしかないね。

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

::( 撮って後で見返せるようにしましょうか。えい )

 ピピッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシャ!

 

 

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「あ。」

 

 瞬くフラッシュ、響くシャッターの音。

 隠れ潜んでいた子供の位置を変質者に教えるには、それで十分だったの。

 

 

[変質者 ???]

「─────ッ!?」

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「あっ、あっ……」

 

 ──相対した二人の間に、奇妙な沈黙が満ちる。

 

 片や、深夜に露出徘徊を行った、公然猥褻物陳列罪の現行犯。

 片や、そんな相手に対し自らの欲に従い盗撮を行った現行犯。

 

 犯罪者二人はそのまま暫くの間、お互いを見つめ合ったんだ。

 

 変質者の服装にさえ眼を瞑れば……もしかするとそれは、達人同士が行う深い手の内の読み合いに見えなくもなかったかな。

 

 

 

 張り積めた空気の中に一迅の風が吹いたその刹那、先に動きを見せたのは──変質者。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[変質者 ???]

「──ッ!? ────!??」

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「ッあ! あぁ~待って! 待ってくださぁい!」

 

 変質者は何かを叫びながらその身を翻すと、そのまま子供に背を向けて脱兎のごとく逃げ始めたんだ。

 

 

 

 

 

[変質者 ???]

「────ッ! ──────ッ!!」

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「え!? な、なんですか!? すいません、風が煩くて聞こえないです! いや、それよりも……

 ……姉さん! サオリ姉さん! 聞こえますか!?」

 

[正義実現委員会 委員長 サオリ]

『……どうしたヒヨリ、何かあったのか?』

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「変質者に気付かれました! 必死に追ってますけど、相手の足が速くて……いえ私が遅いんですかねこれ」

 

[正義実現委員会 委員長 サオリ]

『ッ!! 全速力でそっちに向かう、私が到着するまでどうにか追跡出来るか!?』

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「無理ですぅ! ドンドン離されて、今にも見失っちゃいそうですぅ! ()()()()()()()なんですかねうわぁん! こんなことなら、普段からもっとちゃんと鍛えておけば良かったぁ!」

 

[正義実現委員会 委員長 サオリ]

『クソッ! 折角掴み掛けた尻尾だというのに……逃がすわけには……

 ──待てヒヨリ、服がない分身軽とはどういう事だ。ヒヨリ? ヒヨリ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、子供は奮闘虚しく変質者に逃げられてしまったのだけれど……

 ……だけど後日、正義実現委員会内部で色々と話し合った末、結果的にはあの時の変質者は捕まえられなくて逆に良かったね。という結論に至ることになるんだ。

 

 探していた不審者と変質者が別人だったことや、変質者の活動が確認されたのはこの一件が最初で最後だったことが、この結論に至った理由の一因ではあるけれど。

 

 でもそれは、『失敗しても大丈夫だった理由』であって、『失敗してよかった理由』にはならないよね。

 

 途中で政治的な理由がほんの少しだけ絡んだりはしたけれど、それでもやっぱりこの結論に至った一番大きな理由は……

 

 

 

[正義実現委員会 副委員長 アツコ]

「…………//////

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「どうですか? この写真があれば、指名手配とかもできるんじゃないですか?」

 

[正義実現委員会 委員長 サオリ]

「……ヒヨリ」

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「はい! サオリ姉さん!」

 

[正義実現委員会 委員長 サオリ]

「正座」

 

[正義実現委員会 ヒヨリ]

「…………えぇ!? なんでですかぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 ──変質者の格好が、とってもただただひたすらに目の毒でしかなかったから。

 

 委員会に所属する他の生徒達が、この卑猥な人物を見てしまうような事がなくて良かった……と。

 

 子供の盗撮の成果であるあの肌色面積の多い写真を見せられてしまった義姉達は、ほんのり赤くなった顔で……そう、結論付けることにしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獲得:青輝石×40

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





人格紹介

正義実現委員会 槌永 ヒヨリ

所属校:トリニティ総合学園
学年 :1年生
年齢 :15才
部活 :正義実現委員会

 正義実現委員会に入部した可能性のヒヨリ。
 よく副委員長のアツコに連れられ、甘味巡りをしている。おかげで最近、お腹回りが太くなってきている。

 正義実現委員会の上級生の内の数名を、姉と呼び強く慕っている。アツコ副委員長もその一人。そんな義姉達から甘やかされたためにとても卑しい性格に育ってしまい、彼女たちの頭を悩ませている。

 卑しい。本当に卑しい。トリニティ生とは思えないくらい卑しい。貰えるものは全部貰うし、無料で置いてあるものは良識の範囲をちょっと超えるくらい持っていく。ネットに蔓延る「あなたは18才以上ですか?」には躊躇い無く「はい」と嘘を押し、正義実現委員会の押収品のエロ本をこっそり持ち帰っては寝っ転がって読んでいる。
 マジかよ……コイツ、自分の欲望に正直すぎんだろ。正義とは一体。


 そんなバカアホエッチの三拍子が揃った彼女だが、どうやらあまり人に言いふらしたくない秘密を抱えているらしい……?(最近太ってきたことじゃないよ。なぜなら、彼女は自分が太ってきていることに気づいていないからだよ)
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