Re:ゼロから始める異世界UC   作:リクライ

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長らくお待たせしました!
第三章、開幕です!


第三章 『再来の王都』
第五十一話 始まりは穏やかに 


 

 毎朝毎朝、本当に精が出る。

 しかし、それは毎回の如く付き添っている自分にも言えることだ。

 

「あい、最後に腕を天に伸ばしてぇ? フィニーッシュ! ヴィクトリィー!!」

 

『『ヴィクトリー!!』』「ヴィクトリー!」

 

 両手をあげて締めのセリフを声高々に宣言するスバルに追従して、村の大勢の住民と、それに混じるライトがラジオ体操を終了。歓声が押し寄せる中、ライトは肩を回して熱った体の余韻を噛み締める。

 

 このラジオ体操は使用人の業務にないアーラム村の日課だ。

 今やった体操の名はお馴染みラジオ体操。──ではない。

 ラジオ体操改め、

 

「『らじーおたいそう』、ねぇ。まぁラジオがないからだけど、準備体操でも良かったんじゃ……」

 

「スバル、ライト! 体操終わったー!」「スタンプ! ねースタンプ押して!」「終わったらユニちゃんとかけっこー!」

 

「お前ら朝っぱらから元気だなあ、マジで! 焦んなくてもスタンプは逃げねぇし、ユニコーンは……まぁなんとかなる!」

 

「……はぁ、まぁユニコーンの話はいったん置いておいて……みんな! スタンプ押すよ!」

 

 声をあげて袋を広げると箱が出てくる。スバルの作った生の芋の先端を掘ったスタンプとはまた別に作ったライト特製のの木製スタンプだ。

 食べる芋をスタンプに使うのはどうにも気が引けて、そこで見つけたのは不要となった角材。

 わらわらとスバルとライトの周りに集まる子どもたちは折られた紙これでもかと広げて印をせがむ。

 

「そんな詰め寄んなくても……はい、でーきた! 一週間の始まり。頑張んなきゃって気持ちを込めた『ファイト! ユニコーン』スタンプだよー」

 

「どうだ! はぁ、また一週間が始まるぅ……っていう憂いを秘めた感じをこれでもか! って演出した『月曜日のパック』だ!」

 

 各々の力作をインクをつけた木判と芋判で紙に打ち込む。

 ポンっと、くっきり浮かんだ絵柄に子どもたちの反応はそれぞれだ。

 

「猫ちゃん可愛い!」「猫ちゃん素敵!」「猫ちゃん不憫ー!」

 

「ユニちゃんきれい!」「ユニちゃん生き生き!」「ユニちゃん元気!」

 

 この反応が嬉しくて、毎回毎回新しいハンコを作ってしまうのだ。

 何個目か。確か三十かそれ以上か。とりあえず箱いっぱいに入るくらいは作るつもり。あと五か九個。

 

「よし、押したことだしお店畳んでと。……できた。お待たせ!」

 

「そんな待ってねぇぜライト。しっかしよく作るよなそれ」

 

「スバルもそう思うわよね。最初は巾着に入れてたのに、いつの間にか箱なんてつくちゃって、ほんとびっくり」

 

 村の広場の端、木陰で待ってくれていたスバルとエミリアが駆け寄ったライトの手から下がる日々の積み重ねに目を凝らした。

 

「ちょっと気分が乗っちゃってね?」

 

「てね? じゃねぇわ。すげぇわ。に比べ、こっちはかさばんねぇぜ? 芋なら非常食にもなるし、インクは果物汁。毎回作らないといけないのも大変なんだが……でもそれも楽しいっつうか」

 

「ホントにすごいと思うわ。スバルがつくるパックとライトの作るユニコーン、そっくりだもの。二人とも、絵が上手いのね」

 

「んはぁ」

 

「「──んはぁ?」」

 

「いや、エミリアたんに褒められるとこう……胸が落ち着かないっていうかそれだけで生きていられるっていうか!」

 

「…………?」

 

 首を傾げるエミリアにスバルは「んぇーと……ぐぬぬ」と腕を組んで項垂れる。

 しかしながら、エミリアのような美しい女性に褒められるというのは、それだけで照れてしまうのは思春期の年頃。たとえ思春期が終わっていても目に入れば二度見はしてしまうだろう。

 それぐらいエミリアは可憐で、スバルアイズを通して見るエミリアは絶世の美少女なのだ。

 

「あーつまり、スバルが言いたいのは、エミリアは可愛いってこと」

 

「そう。ズバリそれだ」

 

 困り笑いを浮かべるライトはスバルに助け舟を出船。それに乗り込んだスバルがフィンガースナップし、エミリアを見つめる。

 エミリアはというと、

 

「……二人のおたんこなす」

 

「なしてー!?」「なんでさ」

 

 口を尖らせそっぽを向くエミリアの頬はわずかに赤みを指している。

 人には言うべきことと、たとえ心の中で思っていても言ってわならないことがある。ライトは誉めることは言っていいことだと思っているわけで、そうして跳ね返されると肩を落としてしまった。

 

「それよりも……村の人たち、すっかり元気になったみたい。スバルとライトのおかげね」

 

「大したことしてねぇよ。ちょっとラジオ体操で身体中に健康な血が巡りやすくしただけ。エミリアたんも毎朝毎朝付き合ってもらちゃって悪いけどさ」

 

「いいのよ。スバルもライトも、まだ体調が万全じゃないんだし──」

 

 ──なんか、入りにくいな。

 

 二人の楽しげな会話に挟まるのもなんだか居心地が悪い。ここでスバルとエミリアに割って入るのもなんだかと思うライトは肩身が狭い思いだった。

 それに、二人の進展を見守るのはなんだかこう、面白いのだ。しかしそう言うのは至近距離ではなく陰ながら見守りたいもの。

 故に、

 

「あ」

 

「あ?」

 

「俺そういえば仕事あるんだったー。ユニコーン行くぞー」

 

「そうだったか!? やべ、急がねぇ……」

 

「や! 俺の仕事だから。それじゃあねスバル! エミリア!」

 

「──っ! (バイバーイ)」

 

 言葉と言葉の間には何もない。流れるままに口を走らせたライトはそのまま加速加速。

 呼んで登場したユニコーンと共に煙を巻いてロズワール邸にすっ飛ぶライト。

 スバルとエミリアは取り残されてしまった。

 

「行っちゃった……」

 

「行ったなライトのやつ。なんでんなこと……そうか!」

 

 声を空に届かせるスバルが手のひらを打ち付けると顔を明るくさせる。

 そんな表情から変わり、顔を逸らして「ふっふっふっ」と笑みをこぼすスバルにエミリアが顔を覗き込んだ。

 

「どうしたの、スバ……」

 

「エミリアたん!」

 

「ど、どうしたのスバル? さっきからすごーく変よ? 喜んだり顔くちゃくちゃにしたり」

 

「顔くちゃくちゃはなんかすごい……っていうか俺そんな顔してた!? いやそんなことより」

 

 ライトの心遣いに感謝すればするほどスバルの顔つきはいつもの二割り増しで目つきの凛々しさが増していく。

 咳払いし、アメジストのような瞳に黒い瞳をむき合わせるスバルはそっと一息つく。

 そして、

 

「屋敷の帰り道、──俺とプチデートしないか」

 

 野太い声で、そう言い放った。

 

「でぃと、は前にしたばかりでしょ。ホント、調子いいんだから」

 

「やったぁ!」

 

 

 

 

 すたこらさっさと足を働かせていくばくか。

 アーラム村から屋敷に一本道の道はもう終盤にまで二人をいい感じに置いてきたライトが差し掛かっていたとき。

 

「離れたはいいんだけど……スバルとエミリア、大丈夫かな?」

 

「──! (グッ)」

 

「そうだよね。ユニコーンもスバルとエミリアのことをそう思ってるよね」

 

 小さい親指をこれでもかと立てて突きつけるユニコーンにライトは笑みをこぼす。

 不安も掻き消えれば、このまま円満に進んでほしい思うライト。その目の前にロズワール邸の門扉が見えてきた。

 軽く走っているものの、余裕綽々なライトの瞳には見慣れたロズワール邸の玄関の前に──、

 

「屋敷の、前に車──竜車か。止まってるな。……何かあったのかな」

 

「……? (ワカンナイ)」

 

 飛びながらのユニコーンは口元に手を当てて小首を傾げる。

 屋敷の道の終点。玄関へと登る階段の麓に馬車風の乗り物が寄せられていた。ここであえて『馬車風』と言うのは、客車の前に繋げられた生き物がまるっきり別物で、トカゲ──竜なのだから。

 

「王都だと、結構な竜車が通っていたんだよね」

 

「…………(フムフム)」

 

 速力を緩めて歩みに移すライトの呟きに空中でくるくると腕組みをしながら熟考するユニコーンが頷く。

 思えばまだ見ぬ世界に右も左もわからないときに、危うく轢かれかけたこともあった。

 歩けば当たり前で、竜車との間が縮まるごとに、次第にスケール感に驚嘆の息をこぼす。

 

「でかい……恐竜みたい」

 

「──! (オー)」

 

 ユニコーンと見る小説の中に、地竜というものは度々登場する。目の前で正面を見据える黒い龍こそ『地竜』なのだろう。

 サイズ感にすれば馬牧場で見た馬と同じくらいで、全体的に細身。恐竜で言うならヴェロキラプトルみたいで、馬なんて目じゃないくらい俊敏な印象だ。

 

「これはこれは、上から失礼を」

 

「え」

 

 まじまじと手入れの行き届いた客車と地竜に目を向けていたライトとユニコーンが一緒になって声のかけられた方へ見上げた。

 驚く一人と一匹に竜車の御者台から軽やかに降り立つ人物がいる。

 音もない着地はとても繊細で、一挙手一投足が洗練されていた。それだけで、間違いなく執事の歴としては長いのだと肌で感じ、人知れず肌が粟立つ。

 

「おかえりなさいませ。ただいま、門の前を失礼させていただいております」

 

「……あ、こちらこそどうもご丁寧に。ロズワール邸にご足労かけたこと、誠にありがたく存じます」

 

 そう言って、一礼する老紳士に姿勢を正したライトも丁寧に一礼で返す。

 互いに頭を上げて少しばかり沈黙が間を通り過ぎた。

 目の前の御仁。白く染まった髪を後ろへと丁寧に流し、糊の利いた黒のスーツに袖を通している。顔に刻まれる数々の皺は鍛え上げられた肉体を証明しているように強かで、前に立つだけで背筋がピンと伸びてしまう。

 それに──

 

 ──この人……ただものじゃない。

 

 脳裏に火花が散る感覚。自身の直感がそう告げていた。

 

「そんなに固くならなくてもよろしいですよ」

 

「……ぇ? あぁすみません、少し緊張しました。こういうの、あまり慣れてないので。……えと、そうですね。こういうのは、まず自己紹介からですね」

 

 挨拶は大事。古事記にもそう書かれている。

 ネクタイを引き締め、気を引き締めるライトが袖を正すと踵同士を合わせて、気をつけ。

 瞳をとじ、開口一番噛まないように決意を唾と共に飲み込んだライトが目の前の紳士を見据えた。

 

「初めまして。ロズワール辺境伯の使用人にして新人──タカナシ・ライトと申します。こっちは私の契約精霊のユニコーンです」

 

「…………(よろしくー)」

 

 丁寧にするライトの隣、ふわふわと浮くユニコーンは手を老人に振る。

 

「これはこれはご丁寧に。私はヴィルヘルムと申します。今はカルステン家に仕え、仕事を頂いている身になりますかな」

 

「…………」

 

 互いに挨拶を交わし、少し妙な空気が入り込んでしまう。

 なんだか確かめられているような。ヴィルヘルムと名乗る老人が目を逸らさず、じっと自分を見つめてくる。なにか懐かしむような色さえ感じた。

 

「ヴィルヘルムさん、ですか。ありがとうございます。失礼ながらお伺いしたいのですが……本日はどのようなご用件で、屋敷に足をお運びになられたのですか?」

 

「そのことにつきましては使者がすでに屋敷の中に。今はメイザース辺境伯にお目通ししているかと」

 

 使者と聞くと、この近くで言えばルグニカ王国から派遣された遣いなのだろう。ということは、これは大事な用事。おそらくは王候補のエミリアにあてがわれたものか。

 

「王選、ですか。お教えいただき、誠にありがとうございます。エミリア様でしたら、麓の村から私の同期と同行しているので、来るのでしたらもう間も無くかと」

 

「これはまたご丁寧に。そうですか、エミリア様が……」

 

 これ以上はもう話そうとしても話せない。使者や王選のことに関してズケズケと入り込もうとすれば不躾だ。

 何やら関心深いようにする紳士ヴィルヘルムに、ライトは見上げる。

 

「では、私はこれで失礼させていただきます。小話に付き合っていただき、本当にありがとう……ん?」

 

 感謝の言葉を半ばで切ったライトが疑問の声で継ぎ足される。

 黒い地竜を挟んで奥の方。屋敷の門に見知った人影が視界に入り込んだからだ。

 

「噂をすればなんとやら。エミリアが来たみたいです。俺の同期も」

 

「ホントに? からかってない? ちゃんとした場所でふわっとしたお話しして、変な恥なんてかけないのよ? 嘘言ったら、けちょんけちょんなんだからね」

 

「けちょんけちょんってきょうび聞かねぇな……」

 

 スバルとエミリアが竜車に近づくにつれ、いつものような楽しげな話が耳に入ってくる。

 手を上げて怒る仕草をするエミリアに頭を抱えて逃げるスバルのリアクション。そんないつもの悪ふざけ。

 

「お? ライトじゃねぇか。お膳立てあんがとな! にしても……なんか、リアルすぎるでかさだ」

 

「でかいよねぇ。それに綺麗」

 

 こちらに気づいたスバルが手を大ぶりに振って微笑むと、視線が竜車へと移り感嘆。

 ライトにしてもスバルにしても、こうしてまじまじと地竜を眺めることができる機会なんてまたとない。

 好奇の目を手入れのされた格式高い地竜に浴びせるライトとスバル。そんな二人に困り笑いを浮かべるエミリアに、老人が向き直る。

 

「おかえりなさいませ。ただいま、門の前を失礼させていただいております」

 

 と、ライトと会ったとき同様に丁寧な所作でヴィルヘルムが一礼。

 その一言に黒い地竜への興味をかき消されたライトは気を立て直し、肘で惚けるスバルに促した。

 

「すまんすまん気ぃ取られてたわ。んで、この人は? ほらライト、ホウレンソウホウレンソウ」

 

「調子がいいねぇもう。この人は使者を屋敷に送ってくれた人……っていう感じかな?」

 

「なるへそなるへそ使者ねぇ……」

 

 正面の人に対してヒソヒソと情報共有するライトとスバル。側から見れば不自然すぎるし、礼儀がなっていないと言われても仕方がない。

 ライトの口から出た『使者』という単語に隣のエミリアが一歩前に出てヴィルヘルムに向き直る。

 

「使者ってお話しでしたけど……ひょっとして?」

 

「エミリア様のご想像されております通り、王選のことに関してでしょう」

 

 王選。その一言に予想的中と、ゆるりと鼻から吐息するライトと、バッと顔を上げるスバル。

 自然と表情を引き締めるエミリアに、スバルが空気の怪しさに眉を寄せる。

 

「正式には使者からのお話があることと思います。どうぞ、屋敷にお戻りください」

 

「……呼び出し、かしら」

 

「……さぁ?」「俺に聞かれてもなぁ……」

 

 確認するように呟くエミリアに、ライトとスバルは手をひらひらとしてお手上げ。わからないものはわからないのだ。詳しい話は屋敷でエミリアを待つ使者から聞かせてもらえるだろう。

 

「それ以上は、使者の方からお聞きください」

 

 分を弁えるヴィルヘルムの答えに、エミリアが硬い表情で顎を引いた。

 

「──いきましょ」

 

 短く言い切り、スバルたちの方を振り向くことなくエミリアは階段を登る。屋敷の玄関の方へ向かってだ。

 慌てて、スバルは彼女の背中に続いて小走りに駆け出していく。

 

「ありがとうございました」

 

 重ねる感謝をするのはライトだった。言い切り、後ろへと振り向くとはやる気持ちを表すように階段を一段飛ばしで登る。

 

「なんだか、すごそうな人だったね。落ち着いてたし……隙がない感じ」

 

「…………(ウンウン)」

 

 神妙な空気から解き放たれ、ほっと息をするライトにふわりとユニコーンが首を緩やかに縦に振って賛同する。

 階段を上り終え、ライトはふと気になって最後に背後をチラリと振り返った。

 玄関扉が開くのと同時に顔をあげるヴィルヘルムが自分の隣、ユニコーンを見ているような気がするも一礼。手をおおらかに振るユニコーン。

 ──そのまま、ライトを見送るヴィルヘルムは、少年の隣に浮かぶ白い影を目に映していたままだった。

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りましたよっと……あれ? エミリアは?」

 

「あーそれがよぉ……」

 

 玄関ロビーに入ったライトを迎えたのは何やら不服そうに、しかし諦め悪さは二つ眼にたぎらせているスバルだ。

 頭をかきながら唸るスバルだが、名案思いついたらしくすぐさま顔を上げた。

 

「お仕事モードのレムがエミリアたんと一緒に使者んとこ行っちゃったんよ。で、俺も急遽参加してエミリアの背中を守ろうとしたら……」

 

「大事な話で、新人の俺たちは出る幕がない。そういうこと?」

 

「そ。つまり屋敷総出で俺たち蚊帳の外大作戦ってわけ」

 

 それは言い過ぎだと思うが、仕方のない割り当てだ。

 ライトとしても、少しでも大事に関わっていつでも聞けるようにしたいところだが、あいにくとこの世界の歴が少ない。

 ──ライトとスバルが異世界に召喚されてはや一ヶ月。その間山あり谷ありの……とにかく。山あり谷ありあって、立ち塞がる運命を変えた。これは、何も自分のおかげとは言わない。

 

 みんなだ。繋いでくれたみんなのおかげで、親しい関係を築くことができた。

 人には人の、やるべきことがある。それが自分のやりたいと思う気持ちがあるのなら尚更。だから、気にかけはするけれども一方的では鬱陶しくなる。

 しかし、スバルがどう思っているかは、

 

「まぁ、わかるよ? 国の命運を賭けた大事に関わらせてくれないっていうのはさ」

 

「それだよ。俺らってば結構やってきたじゃん? 人々の運命を捻じ曲げ、いい方向へとシフト! そんでもって? エミリアたん始めとしたレムラムベアトリスパックにロズっち。果ては村人との円満な関係を築いた。やってきたんだぜ! っていう自負は、ある」

 

 ある、と語尾を強調するスバルがだんだんと肩を落としてテンションを落ち込ませ始める。

 

「けどさ、けどよ? 物理的にも、精神的にも置いてけぼりにされるってのは違くね? ま、俺らがいったところで、異世界知識しょぼいからなんの役にもたたねぇけどさ」

 

「じゃあ、勉強しよう。文字は読めるけど、書きができないことに最近気づいたから一緒にさ。スバルは途中参加……」

 

「いぃや! 俺は今したい! そうしたい! ってなわけで、ここで諦めるほど問屋は下ろさないナツキ・スバル」

 

 スバルが大人しく勉強するほど素直じゃないのは知ってはいたが、ここまでとは。

 言葉を切り、廊下を走ってガラガラガラガラとスバルが音を立てる場所は厨房。少ない選択肢から賢しくも自分なりのアプローチをするのだろうと、ライトは片眉をあげて待つ。

 すると、

 

「ジャーン!」

 

「……それは?」

 

「それは? って見りゃわかんだろ。さてはライトのお目目って節穴? こりゃバトラー下剋上も待ったなしだな」

 

 調子に乗る気持ちをつま先で床を叩くスバル。そのの両手にはティーセットが揃えられていた。

 

「はっはー──寝言は寝ていって」

 

「目がこわ! まぁ……俺のIQ五十三万がティーンと叩き出したアイデアに震えるといい!」

 

 ガシャンと落ち着きのないスバルに合わせてお盆の上で踊るカップやら茶葉やら。

 悪い笑みを顔に浮かべるスバルに、先行きの不安さにため息をつくライトは両目を手のひらで覆った。

 

 そんなライトに追い打ちをかけるように、スバルを次なる言葉を口にする。

 

「とりま紅茶入れてくんろ」

 

「なんでさ!?」

 

 

 

 

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