満月の明かりがひどく輝く夜。
突風が吹き荒れる。
辺りはクレーターだらけ。
後世の人々はこの地に訪れたとき、自分の目を誰もが疑うことになる。
本当に、この地に街があったのか、と。
ボクの眼前。
モンスターが迫る。
刀を上段から振り下ろす。
キィン。
首を狙いすました一撃は、敵の刀に防がれる。
遅れて風がやってきた。
「チッ」
さっきからこれを永遠と繰り返している。
モンスター。それは、この世界において比較的身近にいる存在。低級のスライムから始まり、上級のドラゴンに至るまで、その強さは千差万別である。
彼にとってモンスターとは、例えドラゴンであっても取るに足らない存在であった。
眼前のモンスターと相対するまでは。
ドッ!
「クッ…」
モンスターの蹴りがジャックの鳩尾を襲う。
まずい! やられてしまう!
「シッ!」
ボクはたまらず刀を横に大きく振った。
「クハッ…」
技になっていない振り方だ。
敵は当然のように避けて、ジャックに迫撃する。
「すぅ、はぁ。強い。まさかこれほどまでとは。いや、流石ボクだと言うべきか」
ボクはモンスターを改めて見返す。
金髪に青のメッシュが入った短髪に、10人中10人は振り向く整った顔立ち。
ボロボロの服の下から見える鍛え抜かれた肉体。
まるで鏡を見ていると思わされるような存在。
そのモンスターの名前はミラー・オブ・スピリット。
相対した対象と同じ姿と能力をコピーして変化する。
そんな存在が、世界最強であるボクをコピーしたらどうなるか。
キィン
2つの刀がぶつかり合い、激しく火花を散らした。
どちらも即死級の一撃。
世界屈指の実力者だとしても防御すらでき無いレベルだ。
チンッ。
突然、モンスターが刀を鞘に戻し、腰を低くした。
その構えを見たボクはとっさに防御するしかなかった。
『抜刀”神速”』
モンスターが呟くと姿が消え、次の瞬間にはボクの後ろへと通り過ぎていた。
「なるほど……。使われた側はこんな感じなのか……」
その技はボクにとって奥義とも言えるものだった。
誰にも見せたことの無い技。
だが、そのモンスターはやって見せた。
「あっぱれだ、ボクに変身したモンスター。ここまでの深手は生まれて初めてだ。
ボクはまもなく死ぬだろう。長年の夢であった、互角の戦いをすることが出来てよかった。世界最強の名はお前がーバタンッー」
そうか。
最後まで言う力も無かったのか。
だが、ボクは本当に満足だ。
これで、心置きなく死ね ―ジャック― !?
―ジャック、私を忘れたの?―
突如ボクの脳内に流れた懐かしい声。
まだボクが弱かった頃。
死にかけのボクを助けてくれた。
様々な知識をボクに与えてくれた。
一緒に冒険もした。
そして―――
必然だったのだろう。ボクが彼女に惚れたのは。
だけどボクは知らない。彼女のことを。
この世界に召喚されて、孤独だったボクには。
でも、ありがとう。
何故だか君の声を聞くと死ぬわけにはいかないような気がするんだ。
地面に倒れて一向に動かないボクを見て、消え去ろうとするモンスター。
「よう。何勝手に逃げてんだ?さっき言いかけた言葉がまだ残ってるぜ?」
モンスターは振り向き驚きの表情を見せた。
確かに先程まで死んでいた。
だが、そいつは立って居る。
己の使命を果たさんと。
「お前は確かに強い。ここまで深手を負ったのも初めてだ。
世界最強の名をお前に託そう――そう思ってたんだがな。わりぃ。どうやらまだ”俺”は世界最強でいる必要があるらしい」
俺は刀を鞘に戻す。
腰を低く構える。
さっきのモンスターと同じ構えだ。
深手を負った俺と再生能力でもあったのか、既に傷が癒えた様子のモンスター。
誰が見ても勝敗は決まったと思うだろう。
俺を除いて。
「見せてやる。本物の抜刀というものを」
深い呼吸。
「抜刀”神速”ー轟雷神ー」
特大の光が爆ぜる。
周囲には1つの人影。
「はぁ。はぁ。はぁ」
俺は辺りを索敵する。
どうやら完全に消滅したようだ。
俺-ボクは、遠くからボクを呼ぶ声に安心して意識を手放した。
以上、戦闘描写の練習でしたー!
あれ? なんだか見覚えのある名前が……