例の如く曲パロです。
瀬田薫が主人公です。
久々の執筆の為、稚拙ではありますが気が向いた時にでも読んでください。
たぶん見苦しいです。

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letter song

10年後の私は、いったいどんなことをしているんだろう。

10年後の私は、幸せになれているだろうか。

どんな人を好きになっているんだろう。

大切な人たちは何をしているんだろう。

金木犀を見る度に、ふと思い出すこと。

幸せで少しほろ苦かった、あの素晴らしく儚い日々を今でも夢に見る。

 

 

 

「そういえば、あの時埋めたタイムカプセルってどうなってるのかしらね」

2人が小学校の頃の思い出話に花を咲かせていた時、ふと白鷺千聖がそう呟いた。

「タイムカプセル……ああ、10歳の時に2分の1成人式で埋めたやつだったかな」

瀬田薫は最初不思議そうな顔をしていたが、すぐに思い出したようだった。

「ええ、それよ。確か11月に掘り起こすって約束になってなかったかしら?」

「それならもう来週くらいじゃないかい?1度当時のクラスメイトのみんなにも確認してみようか」

薫はそういってスマホを取り出した。

「ええ、お願いしてもいい?」

「ああ、もちろんさ」

千聖は有名な女優でもあり、有名なアイドルでもある。

当時から女優として活躍していたものの、今突然連絡をしてしまうとみんな驚くかもしれない。

2人はそれを知っていた。

「おや、もう返信が来たようだ」

「本当?見せてもらってもいいかしら」

薫が千聖の見やすいようにスマホを差し出す。

そこに書かれていたのは、来週の土曜日に掘り起こす予定になっていて、丁度当時のクラスメイトに連絡を取っていたところだったとのことだった。

『学校には許可取れてるよ。14時に校門前集合だけど、時間大丈夫そうかな?』

2人で目を合わせた。

「……ちょっとスケジュールを確認するから、返事は少し待っててくれる?」

「ああ、わかった。」

千聖もスマホを取り出し、予定を確認していた。

「丁度お仕事もレッスンも入ってないみたい。薫、私も行くって言ってもらっていいかしら」

「もちろんだ。ああ、千聖と共にタイムカプセルを掘り起こす……なんて儚いんd……」

「いいから早く返信して?」

薫の言葉を遮り、返事を急かす。

「……よし、返信したよ。それにしても、タイムカプセルに何を入れたか全く覚えていないのだけれど」

「私もあまり覚えてないわね……手紙と何か小物を1つ入れたような気はするけれど、どうだったかしら」

2人はしばらく悩んだが、結局手紙の内容までは思い出せなかった。

日も暮れてきたので、2人は開けた時の楽しみにしようという結論を出し、それぞれ帰路についた。

 

 

 

 

約束の日、少し早い時間に2人は校門の前に来ていた。

既に10人ほど集まっていて、それぞれ近況の報告をし合っていた。

「あれ、もしかして千聖ちゃんと薫ちゃん?」

当時何度か遊んだことのあるクラスメイトが声をかけてきた。

「わぁ、久しぶりだね!薫ちゃんなんかすごくカッコよくなってる!あ、千聖ちゃんこの前のドラマ観たよ!」

「あら、ありがとう」

千聖は嬉しそうに微笑んだ。

「久しぶりに会えて嬉しいよ、子猫ちゃん」

「子猫……ちゃん?」

小学校の頃とは全く違う素振りを見せる薫に、彼女はとても驚き戸惑っていた。

「気にしないで、今の薫はこんな感じなのよ」

わざわざ説明しなくてはならない私の身にもなってくれ、そう千聖は思った。

「あはは、薫ちゃん面白くなったね!今の薫ちゃんもいいね!」

戸惑いながらも彼女はそう言って笑ってくれた。それだけが唯一の救いなのだろうか。

「先生に声かけてきたよー!タイムカプセル掘り起こしに行こー!」

そう遠くで声が聞こえた。

「呼ばれたし行きましょうか」

みんなで学校の門をくぐる。

ふと懐かしい匂いがして横を見ると、金木犀の花が咲いていた。

タイムカプセルを埋めた時もこの匂いがしていたな、そう薫は思って静かに深く息を吸い込んだ。

 

 

 

 

「見つけた!!!」

埋めたと思われる場所付近をあちこち掘り続けて5分ほどで、当時タイムカプセルとして担任が持ってきたクッキーの缶が出てきた。

「意外と綺麗だねー、もっとボロボロになってるかと思ってた」

「ほんとだ、土だらけだけど錆びたりはしてないね」

クラスメイトが次々と缶を覗き込みに行く。

薫と千聖は少し離れたところで見守っていた。

「……見に行かなくていいの?」

「私のものが出てきた時に見に行くさ。千聖こそ、見に行かなくていいのかい?」

千聖は静かに首を振った。

「私も今はいいわ。落ち着いたら行くから」

わぁ、とみんなが一層大きな声を上げた。タイムカプセルを開けたのだろう。

「名前呼ぶから取りに来てー!」

1人ずつ名前を呼び、みんなが埋めたものを渡し出す。

懐かしいー!という声がちらほら聞こえる。

「薫ちゃーん、千聖ちゃーん、取りに来てー」

早くも順番が来たようで、2人で顔を見合わせ、呼ばれたところへ向かった。

 

 

 

 

「そういえばこんな感じの袋に入れていたわね」

少し不格好で汚れている巾着を見て、千聖は呟いた。

家庭科の授業で自分で作った巾着だった。

「懐かしいね、こんな素晴らしいものを作っていたのを、今の今まで忘れていたのが惜しいくらいだ」

「……確かにそうね」

その巾着をまじまじと見ていると、不思議と作った時のことを鮮明に思い出すことができた。

布を選ぶだけでも時間がかかったこと、紐を通す穴が細く紐が通らずに縫い直したこと、ひっくり返した時に端がほつれてしまったこと。

10歳が作ったにしては上出来だが、やはり不恰好であった。

「開けてみましょうか」

「そうだね、開けてみようか」

2人は巾着の口に少し指を入れ、ゆっくりと開けた。

「これって……」

「おや、これは……」

2人は息を飲んだ。

2人の巾着に入っていたのは、小さな小瓶だった。

可愛らしいオレンジのマスキングテープに、『きんもくせい』と少し拙い字で書かれている。

「これ、タイムカプセルに入れたくて作ったポプリよね」

「ああ、この季節の香りを残したくて作ったものだったかな。どうして忘れてしまっていたんだろうか」

タイムカプセルを埋めるという話が上がり、中に入れるものを考えて用意する宿題が出た時に2人は校門の横にある金木犀を見て、この香りを残せたら素敵だね、と楽しく話していた。

そして母親に教えてもらいながら作ったもの。

薫はそっと瓶の蓋を開けて、その香りを吸い込む。

「……あまり匂いは感じられないね」

「あら本当?」

千聖も蓋を開けて香った。

「……本当ね、だいぶ匂いが薄れてしまってるみたい」

薫は瓶に蓋をして、太陽に掲げた。

「だが完全に消えているわけではないね。まだ少し甘い匂いがして、とても儚い」

「あなたが『儚い』って言葉をまともに使ったの、初めてじゃないかしら?」

「おや、私はいつも正しい場面で正しいことを言っているつもりだよ」

「冗談は顔だけにしてくれる?」

2人は顔を見合わせて、笑った。

 

 

 

 

「さて、手紙を読んでみようか」

薫が言い出し、2人は巾着から手紙を出して、開いた。

 

『10年後の私(瀬田薫)へ。

 

10年後の自分に向けてのお手紙、聞きたいことがいっぱいあります。

私は自信がぜんぜんなくて、ひっこみじあんだし、ちーちゃんみたいに強くもない。

私は私のこと、ぜんぜん好きになれない。

聞きたいことひとつめ。自分のこと好きって、むねをはって言えるようになれましたか?

だれかを愛する前に、自分のことを大好きにならなきゃダメって、前に聞いたことがあったんだ。

幸せになるために、自分のこと好きになろうねって。

聞きたいことふたつめ。今は幸せですか?

自分のこと好きって言えるようになって、幸せがたくさんありますか?

それとも悲しいことがたくさんあって、泣いちゃったりしてますか?

でもね、私にはちーちゃんがいる。お母さんもいるし、レオンもいる。たくさんの人たちが私のこと守ってくれてる。

聞きたいことみっつめ。その大切な人たちは、今もいっしょにいますか?

私ちーちゃんが大好きなんだ。強くてかっこよくて、私のあこがれ。

大好きなちーちゃんがいてくれたから、今の私がいるんだ。

でも、出会いもあれば別れもあるんだよね。本で読んだんだ。

だからきっといつかはちーちゃんとお別れしなきゃいけないときがくるのかもしれない。

怖いけど、いろんな出会いと別れをいっぱいくりかえして、たくさんのすてきな人と出会って、たくさんのことを知って、いつか今の私よりもすてきな人になれてたらいいな。

 

……10年後の私へ。今がもし幸せだったら、今の私のこと思い出してくれますか?

きっと今の私は弱くて、だめだめかもしれない。

たくさんのつらいことがあって、いっぱい泣いちゃってるかもしれない。

でも、いつかちーちゃんみたいに強くてかっこよくて、すてきな人になりたい。

だから今の私のこと思い出して、前よりすてきになれたよって、教えてください。

 

瀬田薫』

 

拙くて平仮名の多い字で、一生懸命書いたことが伝わる手紙だった。

薫はそっと手紙を閉じて封筒に入れた。

「読み終わったの?」

もう既に読み終わっていたらしく、手紙は巾着に仕舞われていて、手首にぶら下げていた。

「ああ、読み終わったよ。なんとも儚い内容だったね」

「あらそう。良かったわね」

千聖は苦笑いした。

「千聖の手紙にはなんて書いてあったんだい?」

「秘密よ」

「おや、つれないね」

千聖の手紙にはきっと当時の悩みや意気込み等が書かれていたんだろうなと、薫は何となく気が付いていた。

だからこそ深く聞くことはしなかった。

千聖もそれに気付いたのか、彼女も手紙の内容を聞くことはしなかった。

周りのクラスメイトも自分のタイムカプセルを見終わったのか、また雑談に花を咲かせていた。

「これからご飯行くけど一緒に行く人ー!」

クラスメイトの1人がそう言うと、「行くー!」という声が上がった。

「千聖、どうする?」

「……そうね、久しぶりだし行こうかしら」

「なら私も行くとしよう。儚い時間にしようじゃないか」

「はいはい、そうね」

いつもの調子で2人は話しながらみんなの元へと向かった。

 

 

 

 

10年前の私へ。

私は今、自分のことを胸を張って好きだと言えるよ。

そしてとても幸せな日々を過ごしている。

素敵な仲間にも出会えた。大切だと思える人は傍にいて、大切だと思える人も増えた。

10年前の私も、十分素敵な人だった。

だが、今はもっと素敵になれているはずだよ。

つらいこと、難しいこと、苦難にたくさんぶつかるだろう。

立ち止まったり振り返ったり、まだ大人にはほど遠いだろう。

大きな壁が目の前に立ちはだかることも、これから先たくさんある。

でも大丈夫。君は1人じゃない。みんなと乗り越えられる。

背に寄り添った、あの子の夢に振り向ける日が、きっと来る。

たくさん泣いてたくさん悩んだ。その涙は決して無駄にしない。

どんな自分も自分。あの時の弱い私も、全部背負って前に進んでみせるから。

だから、これからの私も見ていてくれ。

瀬田薫という人生の大舞台、もっと彩って魅せるよ。

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