白面inオーバーロード   作:史上最弱の弟子

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最終話 心折

 通信魔法を使用する。声だけでなく、互いの顔も見えるように設定して、白面(くずは)とアインズは和平会談を開始した。

 

「どうやら応じてくれたようだな」

 

「ああ、改めて名乗ろう。アインズ・ウール・ゴウンだ」

 

 虚勢も込めて、いつも通りに支配者の仮面をかぶるアインズ。そんな彼を白面(くずは)は嘲笑った。

 

「くくっ、見栄をはる必要は無いぞ。我はプレイヤーの中身がただの一般人であることを知っている」

 

「……分かった。それで、和平会談とはどういった手順で進めるんだ?」

 

 少し迷った後、ばれているなら無理に取り繕っても意味は無いと、少し硬い態度ではあるが素を出すアインズ。話の進め方についても、問いかける。

 

「一般人であれば外交など、慣れていないのも当然であろうな。だが案ずることは無い。此度の和平会談は、我の提案をお前が飲むか飲まぬかの二つに一つ。何も難しいことは無い」

 

 難しいことは無いという白面(くずは)の言葉を聞いて、安心するどころか息をのむアインズ。学はなくとも社会人経験はある彼には、その言葉の裏が理解出来たからだ。

 

「交渉の余地は一切無いってことか」

 

「砂粒程度の要求であれば、聞いてやるかもしれんがな。それでは先ず、我の要求を告げる。先の戦いでこちらが奪った物を含め、全てのワールドアイテム、ああ、玉座のみは取り外せぬだろうから残してやろう。偽りの王にもその位は必要だろうしな」

 

「ぐっ」

 

 予想の範疇ではあったが、重い要求に歯噛みするアインズ。これを受け入れるか突っぱねるか、事前に検討したが結局、結論は出せていない。

 だが白面(くずは)の要求はまだ終わっていなかった。

 

「加えてギルド武器も引き渡してもらおう。更にユグドラシルから新たな敵が現れた場合には、全面協力を約束してもらう」

 

「なっ!!」

 

 ギルド武器を引き渡すという言葉に、アインズは声をあげる。ギルド武器が破壊されればギルドは崩壊する。それを引き渡せというのは、相手に生殺与奪を握らせるのに等しい。

 つまり白面(くずは)は全面降伏を要求しているのだ。

 

「ふざけるな!!」

 

「まあ待て。奪うだけではなく、こちらからもくれてやるものがある」

 

 アインズは立ち上がって、激昂しかけるが、白面(くずは)がそれを制止する。

 それで何とかおさまり、椅子に座り直した。それを見て、会談が再開される。

 

「まずはNPCは、石化を解いた上で全て返還してやろう。ワールドアイテムそのものといえるあの人形は別だがな」

 

 ルベドは核にワールドアイテムであるカロリックストーンが使われている。相性的にも一番厄介な彼女は返せないと釘を刺す。

 

「そしてこちらが本命よ。おまえの心からの願いを叶えてやろう」

 

「俺の望み? お前にそれが何か分かるっていうのか!?」

 

「大切な相手との再会。そのようなところではないか?」

 

 分かる訳が無いと怒気を込めた言葉に対し、正解を返されて、絶句するアインズ。

 そんな彼を白面(くずは)は嗤った。

 

「何故、分かったか不思議か? 簡単なことよ。 我は人の心が読める。 断片的ではあるがな」

 

 最初に遭遇した時、白面(くずは)はアインズから強い孤独と願いの感情を感じ取っていた。願いはその種類によって、陰にも陽にも分類される感情であるが、アインズのそれは過去への妄執ともいえるものであったため、陰の感情として白面(くずは)は読み取っていた。

 そして彼女は経験上、この二つの組み合わせの感情を抱いている人間は大概、耐え難い離別をし、再会を望んでいることを知っていたのである。

 

「この世界に来たことで離れ離れになった、あるいはその前に死に別れた恋人か家族、あるいは友。それらと再会したいというのがお前の願いであろう?」

 

「あんたなら、それを叶えられるっていうのか?」

 

 期待と不安と反発心と、それらの感情を込めてアインズは問いかける。それに対し白面(くずは)は直ぐに答えを返さない。

 

「その前に一つ聞きたい。お前は、この世界に来る物の条件が何だか分かっているか?」

 

「こっちの質問に!!」

 

「まあ待て。ものには順序というものがあるぞ。先にこの話をしなくては、我が何を言おうと、お前は信じられないであろう」

 

 苛立ちアインズと、それに対し子供をあやすかのような態度でなだめる白面(くずは)

 その態度にこれ以上、文句を言っても無駄だと察したのか、あるいは子供扱いされたくなかったのかアインズは大人しく答えることを選んだ。

 

「ワールドアイテムと一緒に現れるんじゃないか、そうデミウルゴスたちは考えていた」

 

「ほう、そこまで辿り着いていたのか。やるではないか。そう、プレイヤーはワールドアイテムと共に現れる。正確にはプレイヤーはワールドアイテムのおまけだ。嘗て竜帝と呼ばれる存在が、異世界とワールドアイテムの存在を知り、それを手に入れようと召喚した。その時、周りのものも一緒に引っ張ってきてしまった。それが真相よ」

 

「そんなことが……」

 

 500年の間に集めた情報を伝える白面(くずは)に、感情が追いつかないアインズ。竜帝のせいでこの世界に連れて来られたことに対し、怒ればいいのか、喜べばいいのか、自身の感情に上手く整理がつかない。

 

「ここから先は我の推測だが、奴にとって、いやこの世界の存在にとって、仮想現実等というものは理解の範疇から外れていたのだろう。奴は召喚をしたつもりで、仮想現実を実体化するということを行ってしまった。その結果、桁違いのコストを支払うことになったのだ」

 

「うわっ」

 

 それを聞いて他人事ながら、思わず声を出す。この世界の魔法に詳しくなくとも、ただ引き寄せるだけと、一から産み出すのにとんでもない差があること位は想像がつく。庶民的な感覚で言えば5000円のつもりで買ったら、実際は5000万円だったみたいな話だ。

 

「奴は始原の魔法(ワイルド・マジック)、ああ、始原の魔法(ワイルド・マジック)とは竜達が独占しているこの世界特有の魔法のことだ。その魔法にてこの出来事を引き起こした後に、消息を絶っている。魔法の代償として消滅したか、それに近い事態になったのだろう。そして竜帝と同じ魔法を使えるものはおらず、新たに習得することも不可能となっている」

 

「習得不可能?」

 

 アインズの呟きに頷く白面(くずは)

 

「この世界で五行相克を使用したプレイヤーが居る。これで充分、通じよう?」

 

 五行相克は魔法システムを改変するワールドアイテムだ。これまでの話を踏まえれば何があったかは明らかだし、この世界に位階魔法が普及している理由も分かった。

 同時にある事実に気づき、アインズは、絶望的な声を漏らした。

 

「つまり新たにプレイヤーを呼び寄せることは、出来ないってことか……」

 

「その通りだ。その口ぶりからして、貴様が会いたいのは同じプレイヤーといったところか?」

 

「……ギルドのみんなだ」

 

 隠す気力すらも無く、正直に答える。そんな彼に対し、白面(くずは)は希望を与えた。

 

「だが一つだけ方法がある。竜帝の魔法によって産み出されたためか、ワールドアイテムは始原の魔法(ワイルド・マジック)と同質のものとなっている。つまりワールドアイテムの効果次第では、竜帝がやったことと同じことが出来る」

 

「!!」

 

 その言葉にアインズの目に光が宿る。全ては白面(くずは)の狙い通りに進んでいた。

 

「当然、規模は小さくなるがな。そして必要なワールドアイテムは我の手元だ」

 

 そこで見せたのは、永劫の蛇の指輪(ウロボロス)。ユグドラシルにおいては運営に願い、システムの改変を行えるワールドアイテム。

 そして白面(くずは)にとっては最強の”厄ネタ”だった。例えば体外に放出された負の感情が即座に星に吸収されるように法則が改変されたりすれば、彼女はいずれ力尽きて消滅することになってしまうからだ。また安定した世界の理を後から改変するということは、それ自体が非常に危険で、どこでどんな歪が産まれるかも分からない。プログラムなら、バグが起きても修正すれば良いが、この世界にはそれをやってくれるものは居ないのである。

 そういった理由から、白面(くずは)としては一刻も早く破棄したいが、ワールドアイテムや始原の魔法(ワイルド・マジック)の防御にも使えるため、無駄に消滅させるのも躊躇われると、持て余していた代物だった。

 

「これで一度だけ、異世界から召喚を行えるようにする。後は対価を用意すれば貴様の仲間を呼び寄せることもできよう」

 

 この使い方であれば、世界の理を壊すことは無いと確信する使い方。

 そして将来的にナザリック以上の勢力や、ワールドアイテムに近い性質を持つ存在であるワールドエネミーが現れる可能性を考えると、ゲーム内で何度も戦っているだろうアインズを味方につけて置くメリットはデカい。

 廃棄処分品で手駒に出来るなら悪く無い買い物だと白面(くずは)は考えていた。

 そんな裏の思惑をおくびもださない、彼女の言葉はアインズにとって甘い誘惑で、その効果は絶大だった。

 

「あっ、ああっ」

 

 諦めかけていた自分の願いが叶うものが目の前にあることに、アインズは無意識に指輪に手を伸ばす。当然、鏡ごしではその手は届かないが、その心はほとんど落ちかけていた

 

「これで我の提示する条件は全てだ。この提案を蹴るのならば、我は貴様の居城に侵攻する。無論、侵攻が成功した後で、再度同じ提案をしてやる程に我は寛大では無い。そして万一の可能性だが敗れそうになれば、この指輪は別の使い方をさせてもらおう」

 

 つまりここで全面降伏以外の道を選んで敗れれば、アインズは全てを失う。

 そして奇跡的に勝利をしたとしても、ウロボロスは手に入らないということである。

 そこまで気づいたアインズは自身の猜疑心を消すために、パンドラが送り届けてくれたアイテムを使用した。

 

流れ星の指輪(シューティング・スター)よ。奴の言葉の真贋を俺に教えろ!!」

 

 そして返って来た答えは『嘘は無し』。それでアインズ、いやモモンガの心は折れた。

 両手をついて机に顔を押し付ける。

 

「降伏します。だから仲間に会わせてください」

 

「くくっ、賢い童は嫌いではないぞ」

 

 

 

 

 

 

 暗闇の中、白面の不気味な笑みが浮かぶ。

 そして彼女は”我々”に話しかけてきた。

 

「ここでこの物語は終わりだ。この先はお前達が好きに想像するがいい」

 

 白面はその顔を醜悪に歪ませる。彼女は”我々”を嘲笑っているのだ。

 

「支配者という重圧から解放され、友と再会して幸せになる未来を想像するも良し。せっかく再会出来た友に絶縁を突きつけられ、死んだように生きる未来を想像するも良し」

 

 白面は空を見上げるように、首を傾ける。

 

「我を産み出した陰か、我が憧れた陽か。己の心の内、好きに映すがいい。それがこの物語の結末よ」

 

 そう言い残し、白面は闇の中に消えるのであった

 




これにて完結。この結末だけは最初から決めていましたが、ここまで辿り着けたのは読んでくださった皆様のおかげです。
人によっては中途半端と感じるかも知れませんが、哀れな骸骨をただ叩き潰して終わりにはしたくなかったのでこのような結末にしました。

参考にしたいので、本編完結後に読みたいエピソードが下にあれば、回答お願いします

  • 前日譚:八欲王編
  • 前日譚:十三英雄編
  • IF:ビジネスパートナー編(成立後のみ)
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