『天空の明星』   作:みなつき

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『第三話』

 神山高校の文化祭。

 その後夜祭はライブによって賑わいを見せていた。

 素人のカラオケレベルのものから、軽音楽部の凝った演奏などレベルは様々である。

 参加する生徒のレベルに関しては精査せず、一芸披露できるなら十分という緩さだ。

 技術を競うような催しではなく、ただ文化祭の終わりに一花咲かせられれば十分というもの。

 そんな盛り上がりを見せているライブ会場と呼ぶべき場所から少し離れた仮設テントで文化祭の実行委員長である男子生徒は一息ついていた。

 色々慌ただしくあった文化祭であったがなんやかんやで終わりを迎えられる。

 その安堵感で胸がいっぱいで、ライブは遠巻きに賑わっているのが見れればいいといった風情であった。

 実行委員長に付き添ってこの仮設テントに一緒にいるのは補佐役であった実行委員の女子生徒。

 彼女もライブで賑やかに楽しむといった性質ではないらしく、この仮設テントで大人しくしている方が性に合うのだろう。

 

「あの、実行委員長」

 

 女子生徒が不意に実行委員長に訊ねてきた。

 

「む、何か不備があったか?」

「いえ、そういうわけではなく。少し気になったことが」

「気になったこと?」

 

 実行委員長は首を傾げる。

 不備が無いとなれば気になる事とはなんだろうか。

 

「先ほど男子生徒の頼みを聞き入れていましたよね。あれは何故でしょうか」

 

 先ほどと言うとライブの受付をしていた時の事。

 一人の男子生徒がとある頼み事──というより申し出を実行委員に交渉していた。

 困った様子の実行委員の生徒と件の彼との間に割って入り実行委員長はその申し出を了承した。

 傍から見れば何故、と生真面目なこの女子生徒ならなおさらそう思うだろう。

 

「彼の頼みを聞いた方があとくされが無かったからな……」

 

 その申し出が大した内容ではなかったのもあるが、それ以上にその申し出をした生徒は文化祭の準備期間中『自主的に』実行委員の活動に協力していた。

 そして彼の貢献度は実行委員と遜色が無いものでもあり、そんな相手の申し出を無碍に断るのはあまりよろしくない。

 無茶な要求でもなかったわけで、そうなれば彼の頼みを聞いた方がプラスだった。

 

「『栗空想』だったか……栗空姉弟の弟のほう──そして厄介な人物だと噂に聞いていた通りだな」

 

 そう言って実行委員長は苦笑する。

 無茶な要求では無かったが、おいそれと頷いていたら十分面倒な種になっていた。

 だが、栗空想には『実績』があった。簡単な頼みなら聞いてあげられるほどの。

 その簡単な頼みを通すためにわざわざそこまでの仕込みをしていたのだと考えるとむしろ呆れそうになる。

 同時にそれほどのものであったのだろう、彼のこの後夜祭にかける意気込みというものは。

 それに彼は断言した『必ず盛り上げるものにする』と。

 

「そう言えばもうそろそろか」

 

 間もなく栗空想と彼と一緒に出るバンドの出番であったはず。

 少しくらい近くで見にいってもいいかと、実行委員長はその重い腰を上げた。

 

 

 

─────

 

 

 

「うー、緊張してきたー」

 

 咲希が足をジタバタさせながら緊張を表現している。

 想も戻ってきて、五人で楽器の準備を終わらせてから後は舞台裏で自分たちの順番を待つだけ。

 だが、

 

「こうバッといってシュババってカッコよく終わらせて、よかったーってなりたかったけど結構待つよねー」

「しょうがないでしょ、順番なんだから」

 

 擬音と動きを交えた咲希の言葉に志歩は溜息を吐きながら応じた。

 

「まぁその順番、誰かさんが何かしてたみたいだけど」

 

 志歩はそう言ってから想を軽く睨む。

 しかし、当人である想は素知らぬ顔。

 

「下手にトップバッターやトリやらされるよりいいでしょ」

「それはそうだけど……」

「だけど微妙な順番にしたよね」

 

 不服そうな志歩に対して、一歌は純粋に疑問だった。

 何故その順番に、しかもわざわざ交渉までして。

 

「真ん中よりちょっと後ろくらい……確かに微妙な位置だね」

 

 穂波も一歌の疑問には頷く。

 何せ中頃のピークが過ぎた辺りだ。

 そんなタイミングに好んで登板しようだなんて酔狂と言っていいだろう。

 

「まぁどうしたって目立っちゃうからね。他の人を食わないくらいの位置がちょうどよかったってわけ」

 

 『Leo/need』は他校の──宮女のバンドグループだ。

 基本的に他校の生徒が参加しない後夜祭においてそれは確かに目立つだろう。宮女が女子高なのも拍車をかける。

 

「それにしたってこのタイミング、中弛みした人も多くなる頃合い。想は何か考えているわけ?」

 

 ビシっとした志歩の指摘。

 後夜祭でのライブ、プロがセトリを作ってやるライブと違って素人からアマチュアまでが無秩序にやるライブだ。

 どうしたって中弛みするタイミングが出てくる。

 そして『Leo/need』が出演するのはそんなタイミングだ。

 

「だからこそでしょ。後夜祭のライブ、本来ならうちの学校の生徒以外が出てこないライブで宮女の生徒が演奏していく」

 

 ふっ、と想は笑みを浮かべる。

 

「それだけで上がるものでしょ」

 

 そんな想の仕込んだ作戦を聞いて、

 

「ずる」

「ずるだね、ソウ!」

 

 志歩と咲希がバッサリ切った。

 しかしそんな風に切られて、なお想は笑っている。

 

「ずるでもなんでも最初に上がった熱を維持できるかは別問題」

 

 そう最初のインパクトだけ持って行けても意味がない。その熱を持続できるかどうかはまた別の話。

 

「だけど『Leo/need』ならその熱を更に上げることができる。だからこそこんな風に仕込んだワケ」

 

 そして想は熱を維持するどころか更に上げることができるのだと、断言した。

 そんなことを真っすぐ言われて四人とも少し気恥ずかしくなる。

 『Leo/need』はまだ結成したてのバンドでしかも今回が初のライブになる。

 想にそんな風に言ってもらえるほどの自信はまだ各々にない。

 だけど、

 

「うん、私たちで皆を盛り上げちゃおう!」

 

 最初に咲希が拳を突き上げて同調した。

 

「ま、想がここまでやってダメでしたってのは面白くない。今日まで練習を容赦なくやってきたわけだし」

「ふふ、志歩ちゃんスパルタだったもんね」

「想も志歩も頑張ってくれた。その想い、無駄にはしたくない」

 

 志歩、穂波、一歌も頷く。

 それでこそだ、と想は改めて幼馴染への想いを強くした。

 ここまでやったのは、ここで皆が逃げ出さないと知っていたから。自分の想いに皆が応えてくれると分かっていたから。

 ならば、最後の仕上げをしくじるわけにはいかない。

 とはいえ、後はぶっつけ本番、出たとこ勝負。

 

「『Leo/need』の皆さんそろそろ準備してください」

 

 実行委員の生徒の呼びかけで皆顔を合わせる。

 もうすぐ出番だ。

 

「あ、そうだ! ねえねえみんな、円陣組もーよ!」

「円陣?」

 

 咲希が不意にそんな提案をして、穂波が首を傾げる。

 

「うん! 今からやるぞーって感じで、気合いが入るでしょ?」

「いいんじゃない? 本番前にやってるバンドも多いし」

「おや、志歩が乗り気なのは意外」

 

 珍しく志歩が咲希の意見に賛同して、想は茶化した。

 

「別に、珍しくも無いことだしそれでモチベーション上がるならいいでしょ。それとも想はやらない?」

「やりますよーっと」

「それじゃあ、やってみよっか」

 

 一歌も頷いて、全員の同意を得られたところで咲希は満面の笑顔で手を前に出す。

 

「じゃあみんな、ピースして!」

 

 咲希の作った手の形はピースになっており、他の四人にも急かしていた。

 

「ピース?」

「うんっ! そうすると……」

 

 四人とも不思議そうな顔をしながらピースの手を作って、前に突き出す。

 

「ほら! 星みたいな形になるでしょ? アタシ達っぽくていいかなーって」

 

 五人のピースが合わさることで星の形が作られていた。

 

「ふふっ、咲希ちゃんらしいね」

「えへへ、じゃあソウ! 掛け声よろしく!」

 

 穂波に褒められて照れ笑いした後に咲希は想に号令を促した。

 

「ん、俺がやるの?」

「うん! だって今回はソウが企画したから今日のところはソウがやるものでしょ」

 

 他の場所でまたライブをすることがあるとすればその時の掛け声は想ではないかもしれない。

 だが、神高の後夜祭ライブにおいては想が主導したものだ。

 ならば、掛け声は想がやるのは正しいだろう。

 

「ふむ、じゃあ……」

 

 いざ、ライブ前に何て言うかは想としても一瞬迷う。

 だが、

 

「とりあえず、今回はまず楽しむこと優先で」

 

 みんなの顔を見てしっかりと。

 

「目いっぱい演奏しよう!」

 

 

 

 ステージに出て、まだ初夏にもならない時期なのに熱気を感じた。

 しかし観客としている学生たちの反応はまばら。

 ステージに注目している人もいれば、興味無さそうにスマホを見ている人もいるのがステージの上からでも見て取れる。

 想が予想した通り、この順番なら中弛みが生じているタイミング。

 一瞬感じた熱気も余波みたいなもの。

 だからこそ、

 

「盛り上がってるかー!!」

 

 想は思いっきりマイクに向かって声を張った。

 ステージの外まで響くような大音量。

 観客は一瞬呆気に取られたようにしていたが、想のよく分からないテンションに引っ張られて声を上げた。

 そう、ここはライブステージと言えど学園祭の後夜祭。

 つまりお祭りなのだ。

 お祭り騒ぎではないが、こんなもん騒いだもん勝ち。

 ステージに上った人がテンション高く声かければ、観客もおのずと反応する。

 志歩あたりには呆れられていそうだが、今さら幼馴染たちの反応を気にしてもしょうがない。

 

「今日は『宮女』からゲストがやってきたぞー!!」

 

 テンションを上げ切ったまま想は突っ切る。

 そして先ほどより更に反応が増した。

 『宮女』という単語に引っ張られたのだろう。

 それなりの女子高からゲストがやってきたとなれば、反応も良くなるだろう。主に男子から。

 そして幼馴染たちに制服を着てきてもらったのはこのため。

 一見して宮女の生徒と分かるからだ。

 

「宮女のバンド、『Leo/need』!! あっ、俺にモノ投げるのだけはやめてくださいねー」

 

 実際に物は投げられていないが、冗談半分でちょけてもいく。

 反応は上々。純粋に盛り上がっているもの、冗談を投げかけるもの、笑うもの。

 少なくとも悪い反応はあまり見られない。

 

「まだまだ新しいバンドだけど、この後夜祭のために精一杯演奏してもらいます!」

 

 拍手も混じり始め、場の空気は温まった。

 

「それでは聞いてください!」

 

 

 

『千本桜!!』

 

 

 

 軽快なリズムが『Leo/need』によって演奏され、想は揚々と歌い始める。

 『千本桜』は初音ミクの曲の中でもひときわ有名な曲だ。

 後夜祭ライブの盛り上げのためにはうってつけの曲。

 だが、有名な分リスクはある。

 下手な演奏をすれば逆に盛り下がってしまう。

 だが、『Leo/need』は今回のために必死に練習してきた。

 完璧な演奏とはまだ言えない。

 それでも、盛り上げるには十分な熱量を持った演奏。

 それに応えるように想は声を張る。

 途中クラップを要求しても、観客はそれに応えてくれるほど乗ってくれていた。

 十分な成功と言えるだろう。

 そうして、『Leo/need』は『千本桜』を演奏しきった。

 

 

 

「みんなー、聞いてくれてありがとー!」

 

 想は締めとして最後にまた声を張った。

 咲希なんかは大きく手を振ったりしているが、演奏が終わったらすぐ撤収の準備に移る。

 ステージを降りて、楽器なんかを片付けた想たちは演者たちが終わった後にライブが見れるようにしてある脇のちょっとしたスペースで感想を話し合っていた。

 

「よかった! よかったよ、ソウ!!」

 

 そう言って体全体を使って喜びを表現するのが咲希だ。

 

「まぁ、初めてにしては中々悪くなかったんじゃない」

「すっごく緊張したけどなんとかやりきれてよかった……」

 

 まだ余裕がありそうな志歩と緊張が解け切っていない様子の一歌。

 

「ふふ、想くんの歌、思わず聞きほれちゃいそうだったよ」

 

 更にベタ褒めしてくれるのは穂波だ。

 

「流石にそこまでは謙遜させていただく。なんやかんやあって皆の演奏のおかげだし」

「課題点は多いけどね」

 

 これで満足しきらないあたり志歩はストイックだな、と想は苦笑する。

 

「それよりそろそろ次が始まるけど、中々見ものになると思うよ」

「え?」

 

 想の言葉に疑問を浮かべながら咲希がステージの方に目を向けた。

 そのステージに立っていたのは、

 

「お兄ちゃん!?」

 

 天馬咲希の兄である天馬司その人である。

 司の後方には彰人と冬弥も控えているが、どうしても目立つ咲希の兄である司に四人の注目が集まった。

 ステージ上ではミュージカル調に司が歌を歌っている。

 

「まぁこの学校の後夜祭ライブに出ることは不自然じゃないけど……」

「私たちの次のタイミングって」

「想くん?」

 

 志歩、一歌、穂波から順に想は見られて肩を竦める。

 

「やっぱり想くんの仕込みかい?」

 

 そんなタイミングでどこか胡散臭い声がして、想は振り返った。

 

「なんだ、類は出なかったのか」

「僕は演出担当だからね。ほら、見てごらん」

 

 胡散臭い声の持ち主──神代類のその言葉で再びステージに目を向けると、司の両脇で火花が散っている。

 タイミングを合わせて類が起動させたのだろう。

 

「本当はもっと派手にやりたかったんだけどね。さすがの僕でもこのステージでは自重したさ」

「さいで」

 

 十分派手と言える演出からもっと派手にという言葉を聞いて、想も若干呆れる。

 

「あの……」

 

 うかがうように声をかけたのは咲希だ。

 物怖じしない咲希でもこのタイミングで現れて想と親し気に話す類に対しては若干気が引ける様子。

 

「ああ、僕は神代類。司くんと一緒のステージで演出を担当しているものさ」

「あ、お兄ちゃんから少しだけ伺ってます! 私は天馬咲希、お兄ちゃ──天馬司の妹です」

 

 正体が判明して咲希はいつもの調子を取り戻す。

 同じようにして一歌、志歩、穂波も類に挨拶をした。

 

「ふふ、君たちの演奏は楽しませてもらったよ。それと同時に想くんの仕掛けについてもね」

「前座ってことですよね」

 

 類の言葉に反応したのは志歩だ。

 しかしその剣呑さを含んだ視線は想に向けられている。

 

「その通り、と言うには想くんの弁解を聞かないといけないかな」

 

 類はまったく庇う様子を見せずに想に丸投げした。

 

「それで、弁解は?」

「うーん、見方次第?」

「なにそれ」

 

 志歩の険しい口調に対して想はいつもの調子を崩さない。

 

「確かに流れを見ると俺は『Leo/need』を前座にした。それは間違ってない」

「うん」

「でも、志歩も知ってるだろ俺が順番を弄ったのはこの後夜祭の直前だってこと」

「あ、そういえば」

 

 黙ってしまった志歩の代わりに声を上げたのは一歌だ。

 

「それって想くんは司さんがこの後夜祭ライブに出るのは今日知ったの?」

「うん。元々『Leo/need』の出番は予定していた通り、その後に司とかの順番を回してもらった」

 

 質問を引き継いだ穂波の言葉に、想は答える。

 

「その結果として『Leo/need』が前座の形になったのは謝るけど、俺にもそれなりに約定があってね」

「約定って?」

「無茶を聞いてもらう以上、『必ず盛り上げる』って言っちゃったからね。そこは守らないと」

「うわー、それは想も大きくでたねぇ」

 

 咲希も思わず苦笑する。

 確かに吐いた言葉は飲み込めないが、随分大きくでたものだと想も自分事ながら思う。

 

「まぁ申し開きはこんなところ。志歩さんとしてはどんな感じでしょうか」

「……想は本気だったんでしょ?」

「もちろん、練習から本番まで全部」

「はぁ……それで自分たちのところの後夜祭盛り上げるためにやったって言われたら文句言いづらい」

 

 頭を押さえて、大きく溜息を吐く志歩。

 

「でも許してないから」

「ふむ、どうすれば許してもらえるでしょうか?」

「……今度ラーメン奢って」

 

 手打ちとしてはそんなところか、と想も納得する。

 結果として騙したようなものだから想としても落としどころは必要だったところ。

 

「あ、しほちゃんだけずるーい!」

「この話、志歩一人のことじゃないよね?」

「そうだね。だから、想くん?」

 

 咲希は元気よく、一歌は少し困ったように笑い、穂波はにこやかに。

 

「あー、はいはい。わかってますよーっと」

「でもアタシはラーメンじゃなくてタピオカミルクティーがいい!」

 

 奢る対象を変えようとする咲希。

 これには想のほうが溜息を吐きたくなる。

 

「全員一人一回、飲食系のみ! 高校生に出せる範囲まで! これでどうでしょうか!」

 

 余計な注文を付けられないように回数と対象を絞って想は宣告する。

 その言葉を聞いて全員異論はなかったようで、思い思いの返事をした。

 

「流石の想くんも幼馴染に対しては形無しというわけかい」

「うるせーです」

 

 類の茶化しを適当な返事で流していると、司のステージは終わりを迎えていた。

 

「あ、俺この後も出番あるからちょっと行ってくる」

 

 パタパタと想はその場を抜け出して、駆けていく。

 ステージを降りてきた司達と入れ違いになりながら。

 

「む、想のやつどうしたのだ?」

「さぁ、何かあるみたいだよ」

 

 司の疑問に類がやれやれと首をすくめる。

 

「出番があるって言ってたけど……」

 

 そう言って咲希がステージの方に目を向けると、そこには、

 

 

 

「みんなー! まだ元気かなー!!」

 

 

 

 栗空廻がマイクを片手にステージに立っていた。

 その後ろに想がギターを携えて控えている。

 

「これはまたずいぶん仕込んできたものだね」

 

 類が面白そうな口調でステージを眺める。

 

「想の姉貴か……そういや無駄に有名だったな」

「ああ、廻さんはかなりの人気者だからな」

 

 司に着いてきていた彰人と冬弥が情報を零し、

 

「なにー! 想のやつ何も言わなかったではないかー!」

 

 大きな声で司が叫んでいた。

 そんな反応を見た『Leo/need』の面子は、

 

「めぐるさんってそんなすごいんだー」

「昔から人を惹きつける人だったけど……」

「これなら奢るもの追加してもいい気がする」

「志歩ちゃん、あまり意地悪しちゃだめだよ」

 

 咲希、一歌、志歩、穂波。

 それぞれ思い思いにステージを、その奥にいる想を見ていた。

 

 

 

─────

 

 

 

 後夜祭ライブも終わり、学校から人が捌けていく。

 『Leo/need』も最後にライブで関わった人に挨拶してから学校を後にした。

 

「うーん、たのしかったー!」

 

 そうやって伸びをしながら口にするのは咲希。

 こういう時に真っ先に感想を口にするのが彼女だ。

 

「いやぁ深謀遠慮も程々にしないといけないって学びになった」

 

 廻の出番が終わった後に想は司から大声で詰め寄られ、志歩からは更なる突き上げを食らい、彰人からは呆れの視線をいただいたりした。

 その上で味方がほぼいなかったから想としても大分骨が折れた思い。

 

「自業自得」

「おっしゃるとおりで」

 

 口ではこう言っているものの志歩も別段怒ってはおらず、いつものやり取りの範疇。

 想もある程度は反省はしているものの、自分のやりたいと思ったことをやるだけのことをしたのだ。

 後悔はしていない。

 『Leo/need』を──その輝きを少しでも多くの人に見てもらう。

 その想いに間違いはなかったと確信できた。

 それだけでも色々策謀を巡らせた甲斐はあったもの。

 

「想が色々してたのはビックリしたけど。うん、私もやっぱり楽しかったよ」

 

 だから、ありがとうと一歌が感謝の言葉を口にする。

 改まってそういう言葉を貰うと想としても少し気恥ずかしい。

 

「もうちょっと私たちにも相談してほしいけど、想くんはみんなの事を想って色々したんだよね」

「いやほんと、なんか褒められる方向に持っていかれるとちょっと困る」

 

 穂波の言葉を想は手で制す。

 流石に褒められるとなると気恥ずかしいというより据わりが悪い。

 志歩のような批難も間違っていないのだから。

 

「まぁまぁソウのいろいろについては一旦置いておいて」

 

 真っ先にライブの感想を口にした咲希が想に向かって改まって、

 

「ソウはたのしかったの?」

 

 それが一番大事、と告げた。

 

 

 

「ああ、もちろん。楽しかったよ」

 

 

 

 そうやって返した想の言葉を四人は笑って受け止める。

 

 夜空に一瞬だけ星が瞬いては消えていった。

 その流れ星は、いつか流星群に焦がれて。




これにて幕間『Another Festival!』は終了となります。
まさか投稿まで一年以上かかるとは思っていませんでした……。

若干長い後書きになりますのでいらねぇという人は飛ばしてください。

さて、今回は神高での文化祭の話になりますが元のプロセカのほうでは神高の文化祭に『Leo/need』が関わることはありませんでした。
神高に在籍生徒がいないのもありますが、司と咲希という兄妹がいるのに使われないというのは非常にもったいないと思ったりしました。
進級前と進級後で一回ずつしか文化祭の描写が無いあたり、今後司がいる文化祭に咲希ちゃんが訪れるという非常においしいシチュエーションが消えた…だと…となったりしました。(もしかしたらサザエさん形式でワンチャンあるかもしれませんが)

実際、この話は別にそこら辺とは関係なく作られましたが、『Leo/need』を神高文化祭に行ってみたらという話を考え、最初の文化祭イベントを下地に作られました。

この作品の本編では栗空想の学校での立ち位置もあまり描かれていなかったため、そこも描こうと思ったのもあります。
結果、中々厄介な立ち位置であるということに。
あまり出番がないわりに栗空姉がなんか強キャラ感になってますが、そこら辺は意図的な反面もう少し出番を作るべきだったと反省。

ともかく『Another Festival!』は今回で終了となりますが、前の後書きに書いた通りニーゴ編も予定はしております。
どちらかと言うとほぼ奏編になりますが……。
とはいえ相変わらず完成したら投稿になるので、確実に投稿できるというものではありませんし時間もかかりそうです。
お待ちいただける場合は気長にお待ちください。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
また続きで出会えたら。
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