異世界だか異星だかの他に生まれた元地球人の黒いカーテンは頑張る。
野外学習で生態の保護施設にやってきた主人公は四人の地球人を見て変な声を上げた。どうして生まれたままの姿?展示されてますけど?なハートフルストーリー

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幕よ上がるな

リーシャは学校での野外学習で絶滅危惧種の保持を目的とした施設に入り、とある生物を見た時、「ぶへえ!」と口にして吹き出した。

目の前に裸の人間が居たら誰でもそうなる。

訳分からん。混乱の極みに至る。

こうなったのにはシンプルイズ理由がある。

 

それはね、私がただの地球人だったが、現地球人以外の生物になったから。

転生なのか、頭だけ地球人の記憶を持った別の何かなのかはこの際どうでも良い。

そんなバカな、という具合な人間の状態。

四人は見た感じ女の子と青年、大人の男女。

 

なんにも纏ってない生まれたままの姿。

これには絶句し、彼らは三角座りして後ろを向いていた。

飼育員がなんとか振り向かせようとしているが、死んだ目で全く反応をしない。パネルには、この種族が初めて観測された日、乱暴なところがあり襲ってきたという。

服を着ていたのか知らないが、もし服を着ていなかったとしたら暴れる。

しかも、言葉が通じない。

未知で唯一の存在なので、コミニケーションが取れないのだと案内しているお姉さんが言っていた。

 

私の姿も人間とはかけ離れている。

黒い不透明なカーテンのような生命体。

声帯はどこから出ているのか知りませんが?

試しにふれあいはいかが、とならないほど凶暴で、なんとも如何ともしがたい。凶暴かと思えば、何も食べないからと無理矢理摂取させている状態らしい。

餌やり風景がディストピア!

 

頭を抱える間もなく、友人がへー、と隣で興味なさそうにしていた。

友人はモップを擬人化したような、モップを頭につけている異形頭で下半身はウミウシってな感じ。

人が捌けた展示の前で案内係の人に私は彼らを近くで見てみたいと頼んだ。

 

危険なのでやめた方が良いと言われた。どうしてもお願いしたいと五回それを繰り返して、どうにか中へ入れてもらった。

中へ入ると案内人のお姉さんが心配そうにこちらをみていたので笑みを見せる。それを済ませて、ワンクッションある囲いのところから、お久しぶりな年月の日本語を思い出し、こほんと声を出す。

 

「初め、まして」

 

1度目は無反応で虚な目だったものの、4回目にはこちらを見始めた面々。

やがて気づいた人たちはこちらにそろりそろりと近付く。

もしや、もしやと目が若干動く。

 

「あなたが話したの?」

 

「幻聴だ」

 

「私にも聞こえたよママ」

 

「僕も」

 

と聞こえる。

それに応えるように。

 

「理解できます。あなた達も私の言葉が理解できましたか?」

 

言えば今度は、幻聴でないことに確信を得て、囲い越しでしっかり私と目を見て話す。

 

「き、聞こえる!」

 

聞こてくれたようで。

 

「私はこんなナリをしてますが、これは転生した姿で、転生前は地球の人間でした。だから日本語が分かります」

 

何故通じるのかを話すと、四人はきょとんとした。

 

「僕、意味わかる。これ異世界転生もの」

 

「私たちもこんな目に遭ってるんだものそんなこともあるかもしれないわね」

 

取り敢えず納得してもらえた。

 

「凄いわっ」

 

興奮したように真後ろから聞こえて、案内役のお姉さんが後ろに居た。

 

いつのまにか。

 

脚力早い。

 

やはり足に纏わる種族なんだろう。

 

おねえさんの見た目は頭はたんぽぽ、カマキリの手に、足はひらひらのスカート。

 

「通じ合っているように見えるわ」

 

「少し気持ちが分かるみたいで」

 

「なにを言っているのか分かるの?」

 

「分かるかもしれません」

 

「施設長を呼んでくるわ!ここから動かないでっ」

 

「あ、はい」

 

と、おねえさんは一瞬で目の前から消えた。

 

前を向くと困惑の視線。

 

今の会話を全て教えた。

 

おまけとして、お姉さんが四人の健康状態を気にしていたことも話す。

 

見た目は違うが、とても心根の優しき職員であることを伝えておく。

 

「やはり顔色がわからないと」

 

という気持ちの人間達。

 

とりあえず。

 

名前とかどういう状況になっているのかを互いに教え合う。

 

この家族は旅行中に事故に遭って、気づいたら四人とも服を着ておらず地面に寝転がっていて、私みたいな人達が四人を囲み、この施設に連れてきたのだという。

 

初めから裸だったから、着せるというところに行きつかなかったんだな。それは仕方ない。

服を必要としない種族もそこそこ居る。

私も着てない。

既にカーテン擬人化どころか、カーテンそのものの体なのでこれ以上見に纏う意味もないから。

だからといって裸ってわけでもない。

 

そういう事を説明して、実験動物的な扱いではないと伝える。

 

「ご飯があれなのは何故ですか」

 

「あれは栄養フード的なもので、好みが分からない種族は基本あれです」

 

「不味いのに」

 

ついでこの場所についても説明しておく。

 

「この場所は地球でいう博物館と保護施設を合体させたような場所なんです。貴方達は唯一の生物として展示されているわけなんです」

 

「そんなっ」

 

「家には帰れないんですか?」

 

「事故に遭ったと言いましたよね?それは肉体が今もあるとは思えなくて」

 

事故ってここにきたということは、肉体、つまり帰る為の地球がない可能性もある。

別次元のところへ来たとしか思えない。

私の経歴を考えたら何かしらのスピリチュアル的な繋がりがあっても不思議じゃないけど、地球をピンポントで探すのは実質無理。

 

「それに、地球を探して見つかる保証はどこにもありません」「うう!」

 

皆泣き始めた。

その時、館長と書かれた札を吊り下げた優しそうな顔をした男性型が案内役の人と来た。

一旦この場所から離れて彼らに対応する。

家族が泣き止まないと話が進まない。

 

館長は話しているところを見ていたのか興奮した顔で質問責めしてくる。それに答えて、身体を纏うものを求めていることをいの一番に伝えておく。

さらにテンションを上げた相手。

 

私は彼らとある程度コミニュケーションが取れることを知り、ぜひこの種族を飼育するのに手伝って欲しいと頼まれる。

この館長は保護した生物の保護に熱心で、世話ができるのならば頼みたいと誠意を感じ、私も頼もうとしていたので頷く。

それから、この一家〈野々村〉さん達専属になった。

ここからは基本穏やかな日々だ。

服をゲット出来たからね。

 

「ありがとうございます」

 

「貴方がいなかったらどうなっていたか」

 

少なくとも早死にしていたろう。

 

あの状態は心が死に、体にも変調が起こるのは時間の問題だった。

いくらこの世界が医療関係に長けていても心の病気は無理だ。

家族達と話し合い、展示の部屋を広くしてもらい、個室を四つにして日本の家屋に近い室内や室外を5人で少しずつ作っていった。

 

展示もお願いされているので時間とフリータイムにおいてバイトみたいな感じで顔見せお願いしますと頼んでおいた。

屋内は家族の意思によりガラスミラーとなっていて、見れるようになるかも選べるようにスイッチ式オンオフにするのを説得した。

 

笑顔が増えていき、料理もしてもらえるように整えた時、施設に変革が起こる。

食材の味見をたくさんしながら、吟味し試行錯誤した料理を食べ終えたあと、気になったらしい案内人のお姉さんにも差し入れしたところ。

そのうまさに度肝を抜いていた。

私達にとってはいまいちで、まだ研究の余地がある味だったけど。

 

そのうまさにより施設内の館長が味見という食事をしたところ、そのレシピを知りたいと言われて一家の母親が手ずからデモンストレーションしたり、やり方を教える。

 

その知能の高さに、施設内の館長から末端の人員に至るまでどういうことかと、混乱と大発見との騒ぎが起こる。

私たちのような、文明と知能をもつ種族だということを改めて教えると、館長はあの凶暴性はなんだったのか、と首を傾げたので、館長にこことは違う星に知らない間に移動して言葉も通じない、館長の常識も倫理観も通じないので、置き物扱いをされたら館長は耐えられるのかというと、ようやく家族の気持ちを理解するカケラを彼は察した。

 

それでも地球とは倫理観も常識も違うので、分からない部分はあっただろうけど、言葉の通じる扱いを受けないことによるストレスだと知った心優しき施設のトップは人間の作る美味しいものをここだけでは勿体無いと小さなレストランを提案。

 

四人家族に伝えると両親が立候補して、小さなレストランが家族が住む場所の隣にオープン。

言葉がまだ通じないのかと思われるかもしれないが、生まれた種族も周りの種族も声や言葉で内容を理解しているのではなく、テレパシーのようなもので会話しているので、言葉の違いとか、言葉で分析と解析をする概念がない。

 

それにより家族達と私は手で会話するという手法を取る。指の形を作って、それによる意思疎通をするのだ。

パネルを作り、それによる翻訳のものを作った。

レストランもそれで回る。他の従業員も施設内で補う。

 

やがて施設を飛び出して、大きなレストランを併設オープンするのは遠くない未来。

そして、子ども達はというと。

暇だろうからと遊びをいつくか用意して四人で作ったりしたものに目をつけた館長(パート2)がそれも商品化!

子供達にデモンストレーションも兼ねたCMの出演や、教える講師として仕事を斡旋。

 

リーシャはこの家族の他に犬と猫を見つけて、施設長に掛け合い、家族と暮らさせることを提案。

四人家族も停滞しているからと犬と猫を飼うことをオーケーしてくれ、猫三匹と犬一匹を飼う。

その光景が施設に来る人達を更に惹きつけると、来場者増えた。

今まで保護した生物を同じところに入れる発想がなかったので、世間でもかなり目を引いているみたいだった。

 

ただの家族の暮らしを展示している光景になったところで、青年が暗い顔をしていることに気づいた。

どうしたのかと聞くと、本を読みたいらしい。本か……。

 

声でやり取りするこの世界に本の文化はない。

リーシャも興味がなかったのだが。

本と言われて思いつくのは童話かな。

彼がいうのは単行本とかライトノベルとか、作家が書く難しい方の本だろう。

私は本を書いて、字だけど、と渡したら活字に飢えていた青年はめちゃくちゃ喜んだ。

それに青年は絵も付け足したいと言い出し、私絵心ないんだというと笑って「僕が描くよ」と書いてくれた。

事故になる前は複合サイトに絵をアップしたりしてきたとか。

 

言うだけあって、上手い。

本と絵を組み合わせたものを家族達も手に取り読んだり、読み聞かせたりした。

私だけでは、下の子の言葉が拙くなるかもしれないからと、練習用に読ませるらしい。

それを見た案内人のお姉さんが中身を知りたがるので言葉で聴かせると、お姉さんは暗記したらしく、内容を載せたものを館長や従業員達に見せて回って、活字ブームが沸き起こる。

 

絵も、その分からないけど面白いというところがウケて、動画で取り上げられて青年は漫画を描き、漫画家の肩書きを得た。

 

下の子はこれからだが、猫や犬、またはそれに類似する飼育に熱心なので、周りの従業員からたいそう可愛がられている。

 

分かる。

犬が子猫を甲斐甲斐しくお世話する動画は需要あるから。私も見てた。

人間はいらん、動物だけでいい、という時さえあった。

 

そんな風になっているよ、と3人に報告したらホッとしていた。

3人は、特に両親はやはり寿命の面で将来的に子供を一人にするのを気にしてきたので、施設の中に居場所が出来つつあるのなら、縁を繋いでいて欲しいそうだ。

 

流石に彼らも館内の種族達が自分達を保護動物目線で大切にしてくれているのを感じているから、最初のようにトラブルには一度もなっておらず、優しさも分かるようになってきたと語る。

 

そんな中で殊更可愛がられている我が子の未来をこの施設に委ねられるならば、自分たちもその為に居場所を作っていく努力は最大限したいという。

それを聞いたリーシャは館長にそのことを伝えて、滝のように涙を流す仕草と同じことをする館長を眺めて、家族達と館長の間でちゃんとした契約書が為された。

 

『ありがとう。地球人の人間達。野々村一家。君達がきてくれて私の施設はただの保護と展示だけの建物ではなくなった。従業員達のやる気も昔と変化している』

 

「とのことです」

 

「こちらこそ。助けられたのが貴方とこの場所でよかった」

 

「確かに。こういうの映画だったら悲惨だからね」

 

青年が遠い目で例えを出す。

私も彼らの裸インパクトの出会いを思い出して、遠い目をした。

 

野々村一家の料理レシピ本など、世間でもこの家族はとても有名になっており、家に見立てている施設内もグレードアップ。

いい事づくめ。

 

「でも、一番の功労者と命の恩人はリーシャさんよ」

 

母親が私を褒めてくれる。

 

「とんでもないです。私、猫大好きで、猫好きを増やせただけで生まれてきてよかったです!」

 

それを聞いた館長が驚く声を出す。

 

「ええええ!一番は人間じゃないのぉ!?」

 

インタビューの度に「一番好きな施設内の生物は?」と聞かれて、これを言われ続けることになるのだった。




最後のインタビュー「3度目の人生の幕が上がる時にはマニュアルがあって欲しいと心から願う」

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