蛇王龍 異世界を蹂躙する   作:KKKK

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思い付きで書いたこの話も最終話となります。長々続けるような話でもないしね。


ナザリックって凄いよな、最後までチョコたっぷりなんだもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「強ければ何をしてもかまわない」

 

 

 いつ頃だったか、アインズはそんな言葉を放ったことがある。

 

 それは世界の真理であるし、己への戒めであった。シャルティアが洗脳された時に思ったのだ、自分たちはこの世界で唯一絶対の存在ではないのだと。

 

 だから技術を、経験を、数を、戦略を、成長や進化を求めた、弱ければ何もかもを奪われてしまうのだから。

 

 けれど、今になってアインズは思う、その言葉は本当に覚悟が伴うものだったのかを。

 

 

 理解はしていたつもりだった、納得をしていた筈だった、けれど本当にその言葉の意味や重みを理解して使っていたのかを、今になって考えてしまう。

 

 

 彼の考える強さとは、強者とは、脅威とは、結局は努力すればどうとでもできるレベルの、ゲーム的な強さではなかったのかと。その強さ程度の覚悟でしかなかったのではないかと。

 

 

 ユグドラシルではプレイヤーより強い相手なんて沢山いたのだ。レイドボスにワールドエネミー、公式NPCにイベントエネミー、ありふれた存在だ。

 

 

 もしかしたらアインズが想定する強さや強者や脅威とは、そういう存在だったのかもしれない。そういう存在がいるかもしれないから勢力を大きくしようと考えたのだろうか。

 

 やはりここでもユグドラシルでの価値観や判断があったのだろう。アインズの想定する脅威とはどこまでいってもユグドラシルにいた敵でしかない。

 

 

 もしレイドボスがこの世界にいれば、なるほど少し考えて戦略を構築する必要がある。もしイベントエネミーがいれば、なるほど相性の良い手段や武器を用意しなければならない、もしワールドエネミーがいれば、なるほどもっともっと力を集めて弱点などを調べなければ。

 

 

 ゲーム的な思考、ゲーム的な脅威、ゲーム的な対処方法……アインズの考える脅威とはそういうものであった。

 

 

 けれど、ここまでの脅威が出て来るとは考えてもいなかったと今では思う。

 

 

 だからこそ考える、強ければ何をしても構わないという言葉に、意味と覚悟が伴うものだったのかを。

 

 

 

 

 ナザリックが空を舞う、比喩表現ではなく文字通りの意味で。

 

 

 

 ありえないほどに巨大な激震を感じ取ったかと思えば、次の瞬間には地下墳墓型のダンジョン拠点であるナザリックは外へ押し出されていたのだ。

 

 理由は簡単、星の中心から莫大なエネルギーが迸り、それが地上へ溢れる「ついで」にナザリックも押し上げられたというだけの話である。

 

 

 星の中心、そこにある熱量はナザリック程度など大した障害にならず、精々少し大きな岩程度の感覚で押し流してしまったようだ。

 

 

 大地が隆起する、大陸全てを地震が襲う、それだけのエネルギーを起こしたのは大噴火であった。

 

 莫大な熱量が地下深くで爆発して溢れ出す、ありえないほどの溶岩の噴射となっており、その爆発はナザリックを容易く粉塵や火山灰や溶岩と一緒に空へと吹き飛ばす。

 

 

 その爆発で押し上げられた火山灰は宇宙まで届き、空を覆い尽くして太陽を遮る。そして長い時間を風に乗って移動していき大陸の反対側まで届いて太陽を遮ることになる。

 

 

 まさに大災害、天変地異である。

 

 

 単純なエネルギー量で言えば、この大噴火は超位魔法を数億発分と言った所だろうか。

 

 

 星というこの世界最大の生命体からしてみれば、軽くくしゃみをした程度のエネルギーでしかないが、ナザリックからしてみれば理不尽の化身でしかない。

 

 

 そんな最強最大の星という生命体と接続することができるのが蛇王龍である。数や戦略や駆け引きやアイテムやスキルがどうのこうのという次元ではなく、最初からこの結末は決まり切っていたものでもあるのだろう。

 

 

 アインズはこう思う、こんなのにどう勝てばいいんだと。

 

 

 

「ぐ、おが……アル、ベド、無事か、どこにいる?」

 

 

 ナザリックが大噴火と共に宙を舞い、一階層から十階層まで連なる地下ダンジョン型のギルドは雲の高さまで飛び上がったのだが、その段階でようやく重力に引かれて落下していく。

 

 後は大地に落ちて転がるだけだ、まるでボールを蹴り飛ばしたかのような有様であるが、粉々にならなかったのはギルドをワールドアイテムが守ったからだろう。

 

 しかし内部は凄惨な状態であった。それは幼い子供が自分の虫籠を蹴り飛ばして中身を激しく揺さぶったかのようであり、そんなことをすれば当然ながら中にいる虫は大半が致命的なダメージを負うことになってしまう。

 

 

 大地を二度三度と跳ねて転がっていき、最終的にはアゼリシア山脈の傾斜にぶつかった段階でナザリックは停止する。

 

 

 かつてナザリックがあった場所からアゼリシア山脈までかなりの距離があるのだが、それだけの大噴火であったということだ。

 

 ワールドアイテムの守りがあったからこそ原型を留めている、尤もそれは中身まで補償するものではなかったようだが。

 

 ナザリック内部は凄惨の一言だ、崩壊した天井や床、ひび割れた外壁、調度品など全て粉砕されて、無事な場所など一つも存在しない。壁にあるシミや肉片は一般メイドたちだろうか、いや、このカラフルな模様や肉片はナザリックの中にいたあらゆる存在で彩られているに違いない。

 

 第九層の玉座で目覚めたアインズは、ナザリックがアゼリシア山脈に叩きつけられた衝撃で自分が死んでしまったことを自覚した。こうして意識が戻ったのは装備していた蘇生アイテムの効果である。

 

 そんな彼はさっきまで同じ場所にいたアルベド姿を探す、罅割れ崩壊してボロボロになった玉座の間を見渡すのだが、どこにもアルベドの姿はない。

 

 いや、正確にはアルベドはいた。壁のシミになっているのだ。はじけた肉片は彼女だったものだろう。

 

 しかし彼女もまた蘇生アイテムを保有していたので蘇生することになる。壁にぶちまけられたちや肉片が光と共に集まって蘇生させることになった。

 

「よ、良かった、アルベド……本当に良かった」

 

「ア、アインズ様? うッ、あ……一体、何が?」

 

「わからん、だが考えるのは後だ。今は行動しなければならない」

 

 既に勝利がどうのと情報収集がどうのという段階ではないことをアインズは理解していた。やるべきことは土下座をしてでも時間を稼ぎ、少しでも多くのNPCやナザリックの財産を守ることであると。

 

 ギルド武器とワールドアイテムがあれば幾らでも挽回できる――そんな行動を長々と待つほど蛇王龍は満腹ではなかった。

 

 蛇王龍は飢えている、脱皮したばかりなのだから。

 

 アゼリシア山脈に叩きつけられて停止したナザリックの罅割れだらけの外壁を噛み砕いて蛇王龍がギルドへと鼻先を突っ込む。それはアリクイが舌を伸ばして蟻の巣を蹂躙している光景と似ていた。

 

 

 蛇王龍は鼻先をギルドに突っ込ませ、そこから長い舌を伸ばす。複雑で入り組んだ形をしているギルドの中を舐めとるように。

 

 一応の目安として巨大なエネルギー源目掛けて舌を伸ばしており、そのついでにそこそこのエネルギーを舐めとるのだ。ナザリックの住人たちの大半がキリモミ回転しながらアゼリシア山脈に叩きつけられた衝撃で肉片になっていたのだが、その中で蘇生アイテムを持っているNPCなどがその対象である。

 

 シャルティアは蘇生した次の瞬間には舌に引っかかって飲み込まれた、何が起こったかなど最後までわからなかった。

 

 コキュートスも似たようなものである。巨大な舌に張り付けられて吸い込まれるように捕食された。

 

 エルフの双子は互いが蘇生したことを確認した後に、生き残っていた魔獣を纏めてアインズの下へ向かおうとした瞬間に、舐めとられて食われた。

 

 デミウルゴスは穴の開いた外壁の向こうにいた蛇王龍と不意に視線が合って、何故か突然に心臓が止まって再び死んでしまったらしい。別にどうしても食べたい訳でもなかったのでそのまま放置された。後で気が向いたら舐めとられるだろう。

 

 セバスもまたアインスの下へ向かおうとしたのだが、その途中で舌が伸びて来て近くにいたナザリックの同胞を突き飛ばして助けた後に舐めとられた。

 

 パンドラズアクターはアインズならばすぐさまナザリックの放棄を決断するだろうと考えて、蘇生した次の瞬間にはナザリックの宝物庫にあるアイテムの中で絶対に手放せない物を纏めていたのだが、だからこそ伸びて来た舌に絡めとられてしまう。

 

 

「ア、アインズ様ッ!? お逃げください!!」

 

 

 そしてアルベドは、外壁を突き破って玉座の間に侵入してきた蛇王龍の舌を見た瞬間に、彼を突き飛ばして助けるのだが、別に舌は獲物を選別していた訳ではなくエネルギー源を求めていただけなので、どちらでも良かったのか迷わずアルベドを絡め取って飲み込んだ。

 

 

「アルベドぉおおおおおおおッ!?」

 

 

 アインズが手を伸ばした所で意味などなく、アルベドは食われるのが自分であったことを誇りながら僅かな笑みを浮かべると、そのままアインズの視界から一瞬で消えていった。

 

 蛇王龍はアルベドが持っていたワールドアイテムを捕食して満足そうにしながらも、似たようなエネルギー源が近くにあったのでまたギルドに鼻先を突っ込んで舌を伸ばす。つまりはアインズが持つワールドアイテムを求めた。

 

 

「なんなんだお前は!?」

 

 

 また伸びて来た舌を前にアインズはそう叫ぶ、危機的状況だというのに何度も沈静化が起こる為に危機感や恐怖感が消えてしまうのだろう。何度も絶望が襲ってきても、いつまでたっても本当の意味で焦れない。

 

 

「楽しいのか、そんなんで!? 俺たちがお前に何をしたって言うんだ!? 突然やって来て、暴れまわって、食い散らかして……なんだよこれ、理不尽すぎるだろ!! ふざけんな!!」

 

 

 いつもやっている完璧な支配者の演技を投げ捨ててただ叫ぶ、この理不尽に、この不条理に慟哭する、そして無駄と内心ではわかっていながらも魔法を放って舌を遠ざけようとするのだが、何もかもが意味をなさなかった。

 

 

「うぁあああッ!? やめろ!! ま、まだ何もできていないんだ、皆と会えてない、こんなッ、こんな終わり方ってないだろ、こんな理不尽……いやだ、うわあああああああッ!?」

 

 

 そんな叫びや嘆きが蛇王龍に届く筈もなく、アインズは舌で舐めとられて飲み込まれていく。近くにあったギルド武器もついでに舐めとられてしまう。

 

 

 巨大な筋肉の塊である舌に巻き取られた瞬間にアインズの体はベキベキと音を立てて砕けていく、そうやって一瞬でHPゲージが真っ赤になると視界の全てが暗闇に覆われる。

 

 アンデットであるが故に暗闇であってもハッキリと見渡せるアインズの視界は、そこにあったあらゆる物が認識出来てしまう。

 

 

「あ、あぁ、皆……すまない、すまない」

 

 ナザリックの守護者たちが、暗闇の中にいた。誰もが皆、舌で押しつぶされて腹に収まったのだろう。そこにはツアーもいて番外席次もいて、ナザリックのNPCたちも多くいるのがわかる。

 

 エネルギーが、ユグドラシル的な言い方をするのならばMPは一瞬で吸収されてしまうのだが、残った体は長い時間をかけて消化されていくことになるのだろう。

 

 

 世界最強のドラゴンも、人類の守護者も、死の支配者も、最悪のNPCたちも、ここでは仲良く餌でしかなかった。とても平等であり、どうしようもないほどに対等であった。

 

 今ならばどんな相手とも仲良くなれるかもしれない、無駄な幻想ではあるが確かに彼らは対等な立場であるのだろう。

 

 

「なんだこれ、クソゲーじゃないか」

 

 

 最後にそんな恨み節を零してから、アインズは持っていたワールドアイテムから光が消えたのを感じ取るのと同時に、自らの意識も手放して、二度と目覚めることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからのことを少し語ろう。

 

 

 ナザリックを飲み干した蛇王龍はそのまま得たエネルギーを使って脱皮を繰り返し、際限なく大きく成長していった。それからは圧倒的な力で星と完全に融合すると、めぼしいエネルギーを求めて世界中で食事を行ったそうだ。

 

 

 戦いではなく、食事。狩りですらなく、捕食。ただそれだけ。

 

 

 彼にとってはツアーの覚悟も法国の歴史もナザリックの存在も、等しく意味がなく価値もなかったのだろう。正義や悪でもなく、言葉を尽くす対話でもなく、願いでも未来でも営みでもなく、どこまでいっても蛇王龍にとっては捕食でしかなかったのだ。

 

 

 ただ、それだけ。それ以上でもそれ以下でもなく。怒りでも優しさでも悪意でも殺意でもなく、ただ食事をしただけである。

 

 

 ナザリックを食べ終えた後は龍脈に干渉して星と一体化すると、地上に存在するめぼしいエネルギー源を求めて食事を繰り返す。

 

 

 それは真なる竜王たちであったり、八欲王のギルドであったり、ユグドラシルからやって来たプレイヤーたちであったりと様々であったが、どれも等しく蛇王龍は飲み込んだことだろう。

 

 竜は絶滅して、人類も絶滅して、色々な文明や歴史や種族も滅んだ。

 

 地上からめぼしいエネルギーが消えたことに気が付いた蛇王龍は、新しいエネルギー源を求めて空を見上げたことだろう。

 

 

 星と一体化した彼は、新しいエネルギーを宇宙に求めたのかもしれない。

 

 

 この星を船にして、宇宙を旅するのだ。

 

 

 そうやって様々な星を渡り歩き、エネルギーを得て、また星を船にして宇宙を旅すること幾星霜。

 

 

 千年か、万年か、億年か、数えきれないほどの時間を旅した蛇王龍は寿命で死ぬことになる。永遠など存在せず、星にだって寿命があるのだから、彼だって終わりがやってくる。

 

 

 自身の死期を悟った彼はとある星に落ちて意識を手放した。彼が死ぬと彼が内包していたエネルギーはその星へと還元されて、莫大なエネルギーを惜しみなく星に与えることになった。

 

 

 その星には多くの緑と生命が溢れて、様々な営みで包まれることになるのだが、別にそれは語るようなことでもない。

 

 

 

 

 

 

 

~FIN~

 

 

 

 

 

 

 

 

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