ティグル達は海賊と共にルクス城砦とバルベルデ近くに上陸したエリオット軍が迫って来るのに備えてルクス城砦周辺の十の村を襲撃して物資の略奪に凌辱などをしないように十の村に行って村長に話し、それぞれ村を焼き、井戸に毒を放った。
そうして三万の海賊でこちらに迫り、数の多さを活かして強行軍で進軍日数を減らす事を考え、ティグルは二千の騎馬隊で夜襲をするために準備をする事とした。
なのでまずは休息のため、周囲を木の柵で囲い、要所に見張りを立てて交代で休息を取り、食事をとり、横になる際は地面に外套を敷くようにという方法の野営をする。
野営をしながら、エリオットの動きを探るために疲労の少ない者を八十騎、用意して十騎で一組の部隊を八つ編制し、北と東へそれぞれ斥候部隊として四部隊を向かわせたのだ。
そうして斥候を待っている間、ティグルは休む事にし……離れたところで外套を敷いて座り込む。
「仕方なかったとはいえ、流石に村を焼いたりするのはな……」
「ティグルは間違った事はしていない……必要な事だった」
村を失う事になった者達の事を思えば、ティグルの心情は辛いものがある。仮にもアルサスの領主であり、村を守ってきたのだから……幾ら他国の村だろうと思うところはあるのだ。
ふと呟いているとオルガが近づいて来て、声をかけてきた。
「それはそうなんだがな……村人の気持ちを考えるとな……俺達に出来る事は村人の犠牲を無駄にしないためにもエリオットを倒す事だ。ソフィーも救わないといけないしな」
「ん、やろう……」
オルガがティグルの言葉に頷く。
「少し、近くに寄ってくれないか……元気が欲しいんだ」
「分かった」
ティグルの誘いに応じて彼の脚の上へと座り、ティグルは彼女を抱き締めた。
「ありがとうな」
「気にしないで良い」
ティグルは礼を言い、オルガが見つめてきたのに対し、顔を近づけそうして深い口づけを交わしたのであった。
そうして、日が傾いてきた頃に斥候が二万の大軍であり、徒歩で進んでおりティグル達のいるところから二刻の距離にいる事を聞く。
やはり、強行軍で一万を潰しながらエリオット軍は進んできたようであった。
斥候に出た部隊が帰還したところで敵が行軍を止めた事を知ると丘陵地帯を抜けてすぐ、ティグル達のいるところから一刻と少し離れたところにいるのを確認した。
ティグルは幕営を引き払い、兵たちを南へ後退させた。森を背にする形であらためて幕営を築かせた。
そうして弓矢を持つ騎兵が少ないのを補うために紐と布の切れ端で作れ、遠心力で意思を飛ばせる『投石紐』を作らせるなど夜襲の準備をさせつつ、夜も深まった頃に馬に木を削って作った板を噛ませ、蹄を布で包ませる事で馬から音が出ないようにすると動き出す。
闇夜の中で静かに動かなければいけないので、疲労はたまる。何度か兵に休息をとらせながら進んでいき……。
半刻も進むと海賊によるかがり火による幾つかの明かりが見えた。
「幕舎も設置せずに野営とは……」
「夜襲するのは絶好の機会だ。やるぞ」
マトヴェイが顔をしかめるのに対し、ティグルは言いつつ、そうして夜襲をするためにティグル達は動き出すのであった……。