カツンカツンとリズミカルな足音が響く。今日は久しぶり
「
愛を込めた元気な挨拶。何か返事が来るかと待っても、何も帰ってこない。
「あれ、おかしいなこの部屋にいると妹たちに聞いたのだが……」
そうやって書類の積まれた机の方に近づく。するとそこには、机に顔を伏せた状態の代理人がいた。
「っ!大丈夫か代理人!」
何かあったのかと彼の体を揺らす。いろいろと恨みを買っているし、こんな激務だから何があっても不思議じゃない。最悪の考えが頭をよぎった刹那。
「スピ―、スピ―」と、寝息が聞こえた。
「な、なんだ居眠りしていたのか……まったく感心しないぞ」
よく見ると顔にはよだれの跡があるし、なんなら頭がの下にはしわくちゃで少し湿気った書類、床にはペンが落ちていた。結構強く体を揺すったが、それでも起きないくらい深く眠っている。
「とりあえず何事もなくてよかった」
ほっと胸をなでおろす。久々の再開が死に顔だなんてたまったものじゃない。それに比べればこの寝顔なんて、眼福ものだ。
「ふっふっふ、こんなによだれを垂らして……全く書類もぐちゃぐちゃじゃないか」
なんて言いながら書類やペンを軽くまとめる、最後に彼の頭の下の書類を取ろうとするが。
「うーん……引っ張り出すのは破れそうだし、だからと言って起こすのはなんだか……」
可哀そうだと思う。仕事なんだから起こすのが正しいのだが、居眠りというには深く眠っていたし、先述の通りなんだか可哀そうだし、悪い気がする。何より、彼と二人きりでなかなか見ることのない寝顔を独り占めできる。起こすなんてそんなもったいないこと出来ない。
「そうだ、ベッドに移してやろう」
少し考えて出た結論はそれだった。この部屋には泊まり込みの仕事が多い彼のために仮眠用ベッドがあるので、そこに寝かせることにした。
「起きないように、そっと……よいしょっと」
彼を優しくゆっくりと抱き上げる。妹たちを抱くときのように、包み込むように。でも、そんなもう妹たちとは違うそのゴツゴツした体と体温を感じる。なんだかこっちが包み込まれているように錯覚してしまう。それに、なんだか安心する気がした。これがある種の男らしさなんだろうか。でも、寝顔はとっても可愛いし、なんだか甘えさせたくなる。
「まったく、こうなる前に頼ってほしかったぞ。私はあなたのものなのに、あなたが頼ってくれないなんて、寂しいじゃないか」
思えば今までにも扉をノックした後のレスポンスが悪かったり、気づかれないようにあくびをしていた気がする。おそらくこんな居眠りも初めてではないのだろう。
「いつも頑張ってるな、代理人は」
彼をベッドに寝かせて頭を撫でながらつぶやく。
「パン……ター……好きだよ……」
答えるように寝言をつぶやいた。
「好きだぞ、私の代理人」
彼への気持ちを証明するように、私は彼の唇に、そっと唇を重ねた。