一度ヤった後の物語   作:すっごい性癖

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このタイトルが書きたかったがための話なのに、ずいぶん長くなってしまった

そして今回も私はビビって書いてます 怒られたくないので 皆さんも読んでくだされば、コイツ、ココでチキったな、って一発で分かりますでしょう


一度殺った後の物語

 

 

「……」

 

 

部屋の中、ベッドで布団を被り一人震える。

 

 

ガタガタ、ガタガタ。ガタガタ、ガタガタ。

 

 

 

まるで壊れた機械のように、震えに震え、止まらない。電源が切れるまで、バカのように、同じ動作の繰り返し。ゼンマイを巻き過ぎたオモチャのように、その勢いは衰えない。

 

 

 

当然、壊れているのは身体の震えだけではなく。

 

 

 

視界に映るのはくっきりとしたあの惨状。後頭部から血を流し、生気の無い瞳で私を見つめる先輩の顔がこちらを見ている。見ても無いのに映し続ける。

 

 

口から漏れ出る言葉は繰り返し。「あれは夢だ」、「私は殺してない」、「私は悪くない」。この三種ばかりをランダムに繰り返す、出来の悪いラジカセだ。

 

 

 

 

 

 

「違う違う違う違う……」

 

 

 

 

どんなにそれを否定したくても。手には感触が残っている。彼女の首を掴み、叩き落したその感触がしっかりと。意外と軽くて、あっさり落せたその感覚。

 

 

 

「私じゃない、私じゃない、私じゃない……」

 

 

 

いいや、私だ。私が殺した。自分の意思で殺した。カッときて殺した。死んでしまえと思って殺した。殺したくて殺した。殺した、殺した、私が殺した。

 

 

 

「あれは夢、あれは夢、あれは夢……」

 

 

 

夢だったらよかったと。でも違うってわかってる。だって、今だってスッゴク眠い。慣れない山道を登って下って、そのまま帰宅。学校だってあったんだ。疲れた体は睡眠を求めている。夢の中で眠くなるなんてことはない。

 

 

 

「私は悪くない、私は悪くない、私は悪くない……」

 

 

いいや、私は悪い。善悪の基準は何をされたじゃなくて、何をしたか。先輩がどうこうじゃなくて、私が先輩を殺した。だから悪い。私は悪い。極悪非道で浅慮な殺人犯。倫理的、社会的な悪じゃない。刑法にだってしっかり載っている、私が悪だ、と。

 

 

 

 

 

「――ッ!!」

 

 

 

思いきり頭をかきむしる。必死にケアしてきた髪だって気に留めず。今はただ、この苦悩を消し去りたい。

 

 

 

 

 

脳裏によぎる先輩の死に顔。心を押しつぶす、罪の文字と罪悪感。頭に浮かぶ、この後の顛末。

 

 

 

 

きっとすぐ、先輩の遺体は見つかって警察が動く。そうしたらすぐに犯人の捜索が始まるだろう。そして、街中をずっと後ろからおいかけていたところなんて、きっと防犯カメラに押さえられているにきまっている。犯人候補として、私の名前が最初に挙がってくるはずだ。

 

 

 

 

「終わった、終わった、終わったッ!!」

 

 

 

私の人生、すべて終わった!!

 

 

 

 

ガッ、と勢い、ベッドの横のスマホを持ち上げ検索エンジンを立ち上げる。打ち込むのは、『殺人 少年法 減刑』の三言葉。

 

 

適当に上の方のサイトを開き、必死に下から上にスクロールする。

 

 

必死に、若さから生じる自身の将来が生き残る可能性を探し求める。終身刑、禁固何十年、実名報道、etc。そういったものの可能性、すべてが排除されうる甘い世界。ニュースやなんかで取り上げられることも多かったから、なんとなく知っている。たった1人、たった1人殺した程度なら少年法は守ってくれる。

 

 

 

事実、開いたサイトにも似たような例を挙げられている。

 

 

 

 

「……あぁ、やっ――」

 

 

 

 

 

 

「……えっ」

 

 

 

だが、書いてあるのは、私の将来を担保する過去の実例だけではない。

 

 

当然、犯罪者寄りのサイトなんてあるわけがない。書いてあるのは当然、善良で一般的な市民寄りの視点の数々。

 

 

 

『少年法云々以前に、殺人は立派な重犯罪』

 

 

『してはいけない』

 

 

『そもそも少年法の存在自体~』

 

 

 

それらの言葉がずらりと並ぶ。それらの言葉にズサリと刺される。

 

 

 

 

 

 

 

「わかってんだよッ、そんなことはッ!!」

 

 

 

 

 

 

ダンッ、と壁に向けてスマホを勢いよく投げつけた。壁にぶつかり大きな音を立て、そのまま下に急降下。きっと大きく壊れたはずだ。

 

 

 

 

もう、こんなものは見たくはない。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

いっそのこと、自首をしようか。ふと、そう考える。

 

 

少年法による減刑は今調べた通り。それに自首を付け足せば、きっと刑罰はウンと軽くなる。

 

 

 

 

けど、

 

 

「……でも、それでも」

 

 

 

どこまで刑は軽く成ろうとも、多かれ少なかれ支障は生まれる。

 

 

少なくとも、この町ではもう暮らせない。すぐに知れ渡るだろう、私が殺人犯だって。学校だって辞めなくちゃ。お父さんだって、もう仕事は続けられない。お母さんだって買い物にも行けなくなる。

 

 

警察に、一回捕まったらその時点で無傷は不可能。

 

 

 

 

「なんで私がッ……」

 

 

 

そんなことは受け入れられない。

 

 

 

なんで私が、私たちがそんな目に合わなくちゃいけないのだ。悪いのは、人のことを散々弄んだあの女が悪いのに。

 

 

 

 

もちろん殺人は悪いことだってわかっている。それに付随する刑罰があることだって知っている。

 

 

だが、納得できないし、したくもない。

 

 

 

元はといえば、あの女が浮気なんてしなければ、こうはならなかったのだ。今回の件は彼女の自業自得で終わりでだっていいはず。それなのに、……それなのに。

 

 

 

 

――事の発端、その話をするのならば、それこそ自身が彼女に粉をかけたのが始まりだった。それにもかかわらず、私はすべての責を彼女に押し付ける。頭の奥ではわかっているが、どうしても受け入れられないから。死人に口なし。反論してこないあの人に、責任転嫁で言い逃れ。まさに人間のクズそのもので、自分が自分で嫌になる。

 

 

 

 

 

そう、苦悩し続け何時間。

 

 

頭の中は、『悪いことをしたのだから、自首しよう』と『悪いことをされたのだから、捕まりたくない』の二つの思考のみが渦巻いている。

 

 

 

まさに、心の中の天使と悪魔。

 

 

天使は私に人の道を説き続ける。

 

 

『殺人は犯罪であり、償うべきものである』。

 

 

悪魔は私に、都合の良い出まかせ論理を言い続ける。

 

 

『浮気したアイツが悪いんだから、私は悪くない。むしろ被害者だ。捕まる謂われなんてどこにもない』

 

 

 

 

どんどん進む時間と思考。

 

 

 

 

 

 

「……先輩を埋めよう」

 

 

 

選んだのは悪魔の声。

 

 

それも当然だ。

 

 

 

後者を選ぶような人間だから、私は今、こうなっている。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「……おかしい」

 

 

 

昨晩から連絡も寄こさず帰ってこない姉。帰ってこないのならば、そうだとコレまでは連絡を送ってきたというのに。こちらから電話やメッセージ送っても返事もないし。

 

 

 

頭に浮かぶのは姉の姿。

 

 

ここ一月の間に大きく見た目を変えていった姉は、ソレを男の影響であると言った。正確にはキチンと答えてはいないが、アレは十中八九そうだと思う。実の姉だ、何を考えているのかなんてなんとなくわかる。

 

 

 

長い髪は大きく切り落し、気づいたらピアスを開けていて、髪だって染めていた。それに、夕飯の時にちらっと見えたのが見間違いじゃなければ舌だって……。

 

 

 

 

悪い男に捕まったんじゃ、と。そう考えていた。

 

 

 

だから、ひっそりと相談したのだ。ねーちゃんと同い年のくゆりさんに。幼いころからねーちゃん、私、そしてくゆりさんは仲が良かったから。

 

 

学校でのねーちゃんはどうしているか、変な奴に絡まれていないかって。

 

 

そしたら、丁度文化祭かなんかの係でくゆりさんはねーちゃんと話したらしくて、どうだったって聞いたら『可愛らしい、女の子みたいな男の子といた』と。とても、ねーちゃんにそう言ったことを無理やりやらせているようには見えなかったらしい。

 

 

で、私の杞憂だったのかな、って。

 

 

最近のねーちゃんは恰好こそ違えど、様子は前のように戻ってきてて、そのうち元に戻るだろうって、そう思ってた。

 

 

 

だけど、だけどっ。

 

 

 

「ねーちゃん……」

 

 

 

もしかしたら、なんかの犯罪に巻き込まれているんじゃないか。今帰ってきてないのも、連絡が無いのだって。

 

 

 

 

なら……、

 

 

 

「――ッ!!」

 

 

 

勢いそのまま、家を飛び出す。

 

 

これが私の妄想であるのならそれでいい。今頃、彼氏の腕の中でバカみたいにねーちゃんが眠っていたって構わない。むしろそうであってほしいとさえ思う。

 

 

でも、もしも。

 

 

もしもこの妄想が本当だとしたら。

 

 

一秒だって時間が惜しい。その一秒が大きなカギになり得るはずだ。

 

 

 

「……ッ」

 

 

タタタッ、と走りながら片手で携帯でメッセージを書き込む。

 

 

送り先はくゆりさん。文面は、『もし可能でしたら、一緒に姉を探してください。昨日から音信不通なんです』と。

 

 

 

行先なんてわからないけれど。

 

 

 

それでも、絶対に見つけ出す。

 

 

待っててね、ねーちゃん!これで何事も無かったら、一言文句言ってやるから!!

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「……え?」

 

 

家を飛び出し2時間ほど。

 

 

昨晩、先輩を引っ張ったあの場所に着いた私は必死にその遺体を探していた。

 

 

だが、探せども探せども、遺体は見つからない。

 

 

昨晩は真っ暗だったから、おおよその位置にはなってしまっているが、それでも大きく外れてはいないはず。

 

 

いったい、どういう。

 

 

 

「……」

 

 

考えられるのは二つ。

 

 

1つはもうすでに、人に見つかった。

 

 

だけど、この線は相当薄い。だって、そうであるならばここは遺体の代わりに警官が何十人といるはずだ。よしんば見つけた人が通報してないにしても、人の遺体をわざわざ持っていくなんてことはしないだろう。そんなことをすれば、犯人だと疑われるだけ。

 

 

 

で、残ったもう一つの線。

 

 

ソレは、

 

 

「動物……」

 

 

動物が食料として持っていった。その可能性。

 

 

でも、

 

 

「足跡が無いのは何で……?」

 

 

 

人一人の遺体を運べる動物なんて限られている。イノシシやシカ、タヌキなんかじゃない。

 

 

ソレができる山の動物と言ったら、きっとクマだ。

 

 

でも、人一人分の重量を加えたクマが一切足跡を残していないなんて、あり得るのか?

 

 

 

「……いったい、どういう」

 

 

 

頭の中は混乱しすぎてまともに機能してくれない。そもそもまともに寝ていないのに対し、運動量が多すぎる。思考を纏めるエネルギーも残ってはいない。

 

 

 

でも、そんな私でもわかることはある。たった一つだけ、分かること。

 

 

 

「……帰ろう」

 

 

もう、これ以上私にできることはない。むしろ、ココに居ることの方が問題となってくる。

 

 

 

後は神様次第。

 

 

どうか神様。

 

 

捕まりたくないです、捕まりたくないですから。

 

 

 

 

どうか私を見逃して。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「そっちには居たかい?!」

 

 

「いいえッ、そちらも?!」

 

 

 

朝早く。二人別れて必死に走り回り彼女を探す。

 

 

くゆりさんにメッセージを送って数分後、すぐに既読になり、『すぐに行く』とだけ返信してきた。

 

そしてその数分後、ジャージ姿で急いで駆けつけてくれたのだ。

 

 

 

「次はあっちを見てくるから、柚は神社の方を!」

 

 

「わかりましたッ!!」

 

 

それからはこうして数十分に一回、落ち合っては見に行く方向を決定し、再度探索することを続けている。

 

 

未だ、ねーちゃんの情報はつかめていないが、絶対に諦めない。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……、はッッ。み、みつかりませんね……」

 

 

「っはぁ、そうだ、ねっ……。倉持から連絡は?」

 

 

「来てませ、っ……、っはぁ、まだ未読のままです……っ」

 

 

 

息を切らし情報共有。

 

 

合流してもう2時間弱。家を出たのが4時ごろで、そろそろ人通りも増してくる頃合いだ。

 

 

 

「まだ行ってないのって、どっち、っ、でしたっけ?」

 

 

「っ、山の方はまだッ――、だったとおもうっ、よ……」

 

 

 

「山……、っは」

 

 

 

 

そして暫し深呼吸。息が整うのを待って三十秒。

 

 

「行こう、柚」

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?あれは――」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

前から誰か歩いてくる。

 

 

遠くてよく見えないが、2人の人影。

 

 

私は怪しまれないように自然体を装う。

 

 

あくまで私は散歩をしているだけだ、と。やましいことなんて何もない、って。

 

 

でも、それは無駄だった。

 

 

「ねぇ、君……」

 

 

「……」

 

 

ちらり、と顔が見られない様に最低限の角度で声をかけてきた人の顔を覗き込む。

 

 

それは、いつか見たことのある顔だった。

 

 

「君、確かよく倉持といっしょにいた子だよね?彼女、昨日からどこにいるかわからないんだ。何か知ってないかい?」

 

 

「……」

 

いったい、いつ。どこで見たんだったか。

 

 

頭がうまく回らないから、よく思い出せない。

 

 

 

「知りま、せん――」

 

 

なんとか声を振り絞る。もう、私に気力なんて残っていないから。文字通り、命を削って言葉を放つ。

 

ここでヘマをしては水の泡。寿命を削ってでも凌がなくては。

 

そう、ぼんやりと考えている。と、

 

 

「……ぁ」

 

 

相手の後ろに、彼女を見た。

 

 

「ぁ、あぁっ――」

 

 

姿は違う。初めてであった時とも、好みに変えていった時のとも全く違う見た目をしている。

 

 

表情が違う。あんな、真剣に切羽詰まった表情なんて彼女はしない。常に、飄々と、超人然とした姿でいた。

 

 

そもそも前提が違う。彼女は死んだのだ。私の手で。

 

 

 

でも、

 

 

 

「あぁぁぁああああああッ――!!」

 

 

 

確かに感じる彼女の存在。

 

何に先輩を感じているのかは全く分からないほどに別人だというのに、私は彼女のことを先輩にしか見えないし、思えない。

 

 

これも寝ていない脳の錯覚か。

 

それとも、もっと別の何かなのか。それこそ、彼女の親族だとか。私には、それは分からないけど。

 

 

 

脳内にあふれる昨夜の犯罪行為の一部始終。

 

 

 

忘れかけていた罪悪感が息を吹き返し、私を一斉に責めだした。

 

 

 

もはや、耐えきれない。

 

 

ただでさえ溢れかけていたコップの水に、さらに大きく注がれてしまった情報の濁流。

 

 

私は急いでその場から逃げ出した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

走る、走る、走り続ける。

 

 

自身の責任からも、辛い現実からも、厳しい過去からも、何もかも。

 

 

もはや頭は正常に働いていない。

 

 

睡眠不足、思考過多、運動量オーバー。

 

 

さらに加えて先ほどの情報の濁流。

 

 

もう、まともに思考は出来ず、本能のまま動き続ける。

 

 

逃げる、という最上の命令に従って、それ以外はかなぐり捨てて。

 

 

石に躓いた。無視して立ち上がる。

 

 

顔を怪我した。血も拭わず走り出す。

 

 

靴が脱げた。靴下のままでも構わない。

 

 

服も次第に開けだした。直すことはせず、ただただ前へ。

 

 

 

もう、私に思考は出来ない。

 

 

出来ることは逃げるだけ。部屋のベッドの布団の中。あの暖かな温もりの中まで脇目も振らず、走っていく。

 

 

当然、脳が正常に作動していないということは五感だって異常をきたしている。

 

 

味覚、嗅覚は知りようがない。

 

 

素足で走っても何にも感じ取らない触覚と、もはや何も見えない視覚。おまけに何も聞こえない、聴覚だ。

 

 

感じないから無視して走る。

 

 

見えないから転んでしまう。

 

 

 

 

聞えないから、終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っぎゅ――」

 

 

 

ドン、と衝撃が一つ。

 

 

 

幸いなことに、痛覚がマヒしている今、痛みはなかった。

 

 

感じるのは冷たさ、いや、寒さだけ。

 

 

すごく、寒い。さむい、さむい。こごえてしんでしまいそう。

 

 

 

 

誰か、お願いだから温めて。

 

 

私のことを温めて。

 

 

抱きしめて、ぎゅっと温めて。

 

 

 

むかしからずっと、さむかったの。

 

 

いっしょに、よこにいるだけでいいから――。

 

 

 

――――。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「なんだったんです?」

 

 

 

「……さぁ、わからない。それより、早く山の方を見に行こう」

 

 

 

「そうですね。……変なの」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ん~~~♪」

 

 

上機嫌な鼻声が山の中を木霊する。

 

 

少女は、昨晩から一晩駆けて集めた素材をドサリ、と地面に置く。

 

 

「ただいま帰りましたよー、楓さん♪」

 

 

その声は酷く甘く、そしてどこか冷たさを孕んでいた。とても楽しそうに、恋人に囁くように話しているのに、その先は寒々とした狂気の海。

 

 

「いやー、なんか外から見られてるなーとは思ってましたけど、まさか楓さん、殺されちゃうなんて……。油断してちゃダメなんですよ?」

 

 

少女の口ぶりは酷く軽い。まるで夕飯のメニューを母親と話しているかのような軽やかさだ。

 

 

 

だが、その内情は正反対。

 

 

話している内容は酷く重く。恋人が殺された後、それも目の前で、との発言とはとても思えない。

 

 

しかし、彼女はずっと上機嫌のまま。ニコニコと、自身の喜びを隠さない。

 

 

「もっと楓さんとイチャイチャしたかったな~。えっちももっとしたかったし、もっと生きてる楓さんのこと、斬りたかったのに……」

 

 

「まぁ、でも。死んでしまったものは仕方ありませんね。自然の摂理です!」

 

 

本当に、本当に。心の奥からの無邪気な言葉。無邪気な分だけ、恐ろしい。

 

 

「しょうがないので楓さんのお墓を作りましょう!」

 

 

 

「それとはく製も!!」

 

ペロリ、と。少女は下品にも舌を舐めずりまわした。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「最初はおなかの中のも全部出しちゃわないとね?はく製にするには、中から防腐しないとだし」

 

 

「――あぁっ。楓さんの柔らかなお腹が私の手で縦に割けてく……。かわいい♡」

 

 

「胃に腸に心臓。肺に腎臓、肝臓にその他一杯。どれから行こうかな?」

 

 

「決めた!」

 

 

「やっぱり最初はココだよね、子宮!」

 

 

「ぁぐ――、んむ。……おいしい♡」

 

 

「女の子同士だから子供は作れない、いっしょに成れないって思ってたけど間違ってたよ」

 

 

「今こうして、楓さんのココを食べて、私の中で一緒にすれば、それはもう子作りと一緒だ!」

 

 

「んふふ~、楓さん?私たち、今、えっちしてるってことだよね?子供を一緒に、私のお腹の中で作ってるって……。大好きだよ、楓さん♡」

 

 

「……次はどこにしようかな?やっぱり、ゲン担ぎも込めて心臓かな?」

 

 

「それとも、脳?」

 

 

「……よし決めた、脳にしよう!」

 

 

「これで楓さんの思考と私の思考が一緒に重なって、正真正銘の一心同体の思考になれるんだ」

 

 

 

……

 

…………

 

 

「ふぅ、あらかた食べ終わりましたね」

 

 

「美味しかったです、楓さん。ごちそうさまでした」

 

 

「大好きです♡」

 

 

「……それじゃあ、これから防腐処理に行きますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ふーっ、やっとできましたーっ!」

 

 

「お墓も出来ましたし、喜んでくれますよね?ねっ?」

 

 

「その内、私の分の素材も集めたら隣に私のはく製も飾りますから、そしたら寂しくないですよ。待っててくださいね?」

 

 

「よいしょっ」

 

 

少女は一通り自身の心を語ると、地面に何らかの札を刺しこんだ。

 

 

そこに書いてあることはたった一つ。簡素に纏まった文章が一つだけ。

 

 

『倉持 楓 ここに眠る』

 

 

二月後、この札は二枚へと転じた。




ここまで短い間でしたが、御付き合いくださり誠にありがとうございました

なお、後日談的な話として柚とくゆりはくっつきます これでハッピーエンドですね、やったー
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