【完結】跡に残るは雪ばかり。   作:朝日橋立

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今回と次回は、実験的に文体を試しているので読みづらいかも知れません。
ごめんなさい!


閑話一 チャールズという男について①

 豪奢な宴会場にて、一人の老齢の男が静かに辺りを見渡していた。

 彼の名前を、チャールズ・クロムウェル男爵と言う。一昔前の革命戦争で名を上げたクロムウェル男爵家の嫡子で、愚かな男である。

 

 彼はその全体の為に個を捨てられぬ幼さ故に、地位は一介の役人に止まっている。

 そして、そのことを理解しながらも未だ幼い善性を捨てないのだから、やはり愚かと形容するのが最も相応しいであろう。

 

 さて、そんな彼がどうして宴会に来ているかと言えば、単に貴族である為にというのが尤もらしい答えであろうが、策謀があったことも否定が出来ない。

 

 この宴会よりも大体二ヶ月ほど前、とある計画が決まった。

 その計画というのは、何度目か分からない北方の航路の開拓である。

 今回の宴会は、その指導者が定まった故に開かれたものといっても構わないだろう。

 

 しかしながら、その計画の詳細というのは、未だに決定されていないという。

 彼の計略としては、どうにかしてその決定に一枚噛めないかというものであった。

 

 その為に、彼の視線の先には一人の男の姿があった。

 その男は、ジョッシュ・フランクという海軍の者であった。

 彼は幾度か北方に行った経験豊富な男であるが、悪い噂も目立つ。

 例えば、軽い物で言うとブーツを食ったとも言うし、重い物では殺人の可能性も捨てきれず、人を食ったとも言われる。

 

 けれど、噂は所詮噂でチャールズ男爵も彼を殆ど疑うことはなかった。

 確かにフランク大佐が、有能であるかというと疑問は残ったが、彼に限らず大抵の貴族に言えることである。上に尻尾を振るだけで、その地位を守る人間など数え切れない。

 

 さて、不満はあれどチャールズ男爵は、ジョッシュ大佐に声を掛けた。

「やあ、フランク卿この度は君の大抜擢を嬉しく思うよ」

「おおチャールズ男爵か。ありがとう。私の熱望が通ったのだよ。何と喜ばしいことだ」

「これで君が北方に行くのは、何度目だね? 本当に北方が好きだね」

「確か四回目になるだろう。だが、私の目的は北方航路を見つけることなのだ。既に三回失敗している。諦めなど出来ないのだよ」

 

 これで挨拶は十分だろう、とチャールズ男爵は考え、話題を航海の話に変える。

「それで次の航海のメンバーは、既に決っているかい? 副指揮官だったりは」

「ああ既に決まってる。副指揮官は、あそこに居るフランツ・クロージャー卿だよ」

 

 示された方向をチャールズ男爵が見れば、そこで楽しげに歓談をしているその人がいた。

 フランツ・クロージャー卿と言えば、北方航路の偉大な先駆者の印象が、チャールズ男爵にはあった。

 彼は記憶が正しければ、フランク大佐よりも北方に航海をし、偉大な発見をした人物である。だのに、どうして副指揮官なのだろうか。

 

 そんなチャールズ男爵の疑問を感じとったのか、フランク大佐が言う。

「あのクロージャー卿が補佐をしてくれるのだ。今回の航海で、北方航路は完成するぞ。……ただあまりにも惜しい。彼の生まれが卑しくなければ、きっと彼が指揮官であったろう」

 その言葉にチャールズ男爵は納得をして言う。

「嗚呼、そう言えば彼の方は、本国の生まれではありませんでしたな」

 

 会話をする内に、チャールズ男爵は考える。

 想定以上に詳細が決まっているらしい。どうにかして、手勢を送り込めないだろうか。

 

 その思考の内に、彼は問いかける。

「では他の幹部も決まってるのかい? これから偉大なことを成し遂げる男達だ。祝いの言葉を贈りたい」

「お心遣いありがとう。えっとだね。あそこに居るフィッツ・ジェイムズ卿と……他は誰であったか。済まない少し思い出させてくれ」

 

 さて、その言葉から一枚噛むことが叶わぬ事に気づき、チャールズ男爵は小さく溜息をついた。

 彼自身としては、出来たら良い程度であったが、やはり失敗したら溜息も付きたくなる物だ。

 彼は豪奢な宴会場に似合わぬ陰鬱とした気持ちを抱くのだった。

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