【完結】跡に残るは雪ばかり。   作:朝日橋立

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第十四話 魔法についてです。

 先日、チャールズ男爵とのお出かけにより、学校に通うことが決まった私は、紺を基調とした真新しい制服に身を包み、初めての登校をしました。

 私が通う学校は、ランダイン高等教育学校と言い、大体二十年ほど前と近頃に作られた学校です。

 

 この学校に通う決め手になったのは、単にランダインにある学校の中で一二を争うほど大きかったのが理由でしょう。

 それに、この学校は貴族の男性でなかろうと入学が出来る珍しい学校であったことも考えられます。

 

 当時は素晴らしいところだな、と感じつつも申し訳なさもありました。

 その罪悪感が何由来のものかは分かりませんが、きっとチャールズ男爵にお金を出して貰っているであろうことだったと思います。

 

 さて、その学校に着いたばかりの私は、男の人に声を掛けられました。

「君がシアだったかね」

「はい、シア・アトウッドです。宜しくお願いします」と、名乗りながらも声の方向を向けば、そこには少し厳しそうな男性がいました。

 

 その男性は、チャールズ男爵のように髭の生えてはいませんが、それでも冷たい雰囲気を感じました。

 たぶん原因は、彼が若く見え、しっかりとした服を着ていたからでしょう。

 

「私はフランツ・クロージャーだ。着いてきたまえ」と、彼は手短に言うと踵を返しました。

 何とも適当な、と思いはしましたが反抗しても意味はないので、彼の背中を追います。

 

 そうして追うこと十数分、私は一つの教室の前で彼に言われます。

「君は本学に特別待遇で迎えられている。ただ時間はないことを忘れないでくれ」

「はい」と、少し緊張をして私は返します。

 

 それを聞くと、彼は教室の扉を開いて言いました。

「宜しい。ならば歓迎しよう。シア・アトウッド、この学校生活が君にとって有意義であることを祈るよ」

「ありがとうございます」と、お礼を返しながら、彼が手招きをする教室にお邪魔します。

 

 その教室内には、机が一脚のみ置かれていました。

 はて一体どうしてなのか、と疑問に思っていれば、クロージャーさんが言います。

「君は確か十歳かそこらだったか……。こういうのも何だが、周りは年齢も理解力も、そもそもの基礎が違う。だからこそ、基本マンツーマンだ。楽しい学校生活は期待しないでくれたまえ」

 

 ああなる程、と思うと同じくして、些かばかりの違和感が残ります。

 私が魔法を使え、加えてチャールズ男爵による無理矢理の入学だったとしても、少しばかり特別待遇が過ぎるのではないか、と。

 

 さて、そうは思っても声に出すことはなかったため、クロージャーさんが言います。

「早速だが授業だ。魔法の使い方は分かるかね?」

「いいえ、分かりません」

 

 正直に答えつつも、彼は使い方を教えることが出来るのだろうか、と気になりました。

 私の短い人生でも、確かにこの魔法と年中付合ってきたわけです。しかし、全く以てその末端さえ知れないのにもかかわらず、教鞭のみでそれを扱えるようになるのでしょうか?

 

「そうか、それじゃあ仕方がない。私では非凡の君に教えられない。だから、後回しだ。君はそうだな……。魔法がどんなものか知っているか?」

「特別な才能でしょうか?」

「ああ、言ってしまえばその通りだ。しかし、能力には何らかの理論がある。腕を曲げるのに筋肉が収縮し、伸ばすときには弛緩するのと同じように」

 

 確かに言われてみればそうなのかも知れない、と思いました。

 しかし、そうは言われても分からないものは分からず、はあ、だのと相槌を打てば彼は言います。

 

「現代だと、魔法には脳味噌の動きが関係している、とされる。現実にその推測が正しいかは分からないのだがね。しかし、少なくとも何を原動力にしているかは判明している。なんだと思う?」

 

 突然の質問に、怪訝に思いながらも考えます。

 腕を曲げるときには、少しではありますが腕に力を込めます。

 であるのならば、それと同じように魔法を使うときにも何かしらの力を込めるのでしょう。無から何かを創世できるのは、きっと神様だけです。

 

 では、一体何が脳味噌に作用をし、魔法という結果を生み出すのでしょう。

 しかし、こう考えてれば幾許か疑問が残ります。一体どうして、脳味噌の能力が世界に大きな影響を与えるのでしょうか?

 結局の所彼の話す推測が正しいのであれば、脳味噌という小さな世界の事柄が現実世界という大きな世界に、無条件に反映されることになるでしょう。

 それは何がとは言えませんが、可笑しな気がしました。

 

 例えるのならばそうです。コップに水を注いだとして、そのコップ内の影響が湖に伝播することがあるでしょうか?

 コップという壁に区切られているのですから、あり得ない話でしょう。

 同じように、脳味噌内と現実という空間に区切られたものだというのに、その脳味噌の単一の機能によって影響を与えることが出来るのでしょうか?

 

 ……さて、私は幾許か考えた挙げ句、彼に言いました。

「質問に対する答えとは言えませんが、そもそも魔法とは、どういったものなのでしょうか? 例えば腕を曲げるという動作には、微々たる風を起こすという結果が伴います。しかし、たったそれだけの結果しか伴いません。であるのなら、どうして動作を伴わない能力によって、大きく現実に影響を与えられるのでしょう……」

 

 その言葉の内に、魔法について考えを巡らせます。

 少し前に聞いた話通りであれば、私の魔法は浄化らしいのです。

 しかし、一体どうして脳味噌の力で掃除が出来るでしょう。それに、どうして”私の”魔法なのでしょう。何らかの原理があるはずであれば、才能のある人は普遍的に使えるはずです。

 

 ふと、思いついたことがあったので声に出します。

「もしかしたら脳味噌の思考に形があって、それが外にあるナニカに影響を与えるのじゃないでしょうか?」

 

 満を持して答えようとしていたクロージャーさんは、多少驚いたような表情をしたあとに言います。

「確かにその説もある。だが、通説では空気中に漂う魔力の元、魔素を取り込み、それを思考によって放出することで魔法を行使している、とされる」

「魔素、ですか?」

「私には見えないから言伝となるが、曰く上位の魔法使いになれば空気中に小さな光が見えるらしい。聞けば、それの流れを見て魔法の才能の有無と形質を見分けてるらしい」

 

 そういった説明を受け、私はなる程と納得をしました。

 唐突に私の魔法の才能がある、と才能が見出されたことも当然です。

 きっと偶然立ち寄った魔法使いの役人が、上に報告したのでしょう。

 

 しかし、です。納得できないこともありました。

 魔力の元を取り込み、それを放出して行使するのだとしたら、どうして魔法は個人にとって固有のものなのでしょう?




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「ガールズラブ」のタグを外しました。
少し脳内を整理した結果、いらないだろうという結論に至りました。
加えて、「ちょいミリタリー」と「ダーク」のタグを追加しました。
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