【完結】跡に残るは雪ばかり。   作:朝日橋立

45 / 75
お久しぶりです!
遅くなってごめんなさい。連載再開はまだですが、生存報告で出します。


閑話九 尊敬する人についての日記。

 心地の良い揺れと、静かな夜には思わず、この睡魔に身を任せてしまいたいと思います。

 それに、目前では火の穂がユラユラと揺れていて、どうにも眠気が絶えません。

 

 しかし、本日は眠る訳にはいかず、この暇を紛らわすために、これを書こうと思います。

 どうにも欠伸は留まるところを知らないようで、時折字が崩れてしまいます。

 今は何度も頭を振って、眠気を払おうとしています。

 

 ふと、何も考えずに書き出したものですから、私の尊敬する方でも書こうと思います。

 尊敬する人を今一度改めて書くというのも、不思議なことであります。

 ですが、私自身こういったことは恥ずかしさもありつつ、面白いとも思います。

 

 私は今となっては、もう古い知り合いの声を明確には思い出すことが出来ません。

 確かに、顔を覚えてはいるのです。しかし、この記憶の何て頼りのないことでしょうか。

 ですからこそ、過去の想起、回想を面白く思うのです。

 

 さて、話が逸れてしまいましたが、尊敬する人です。

 少し考えるだけでも、何人も顔が浮かびます。

 お父様やお母様、レイラさん達……。

 全てを書いていたら、とても書き切れはしません。

 

 ですから、近くにいる人のことを書こうと思います。

 この船の艦長、フランツ・クロージャーさんです!

 

 初めて出会ったのは、記憶が正しければ一年ほど前になるでしょう。

 ランダイン学校の門を潜った初めての日。

 第一印象は、酷く嫌な人でした。

 

 あの頃の私が大人は全て醜い精神性を伴った動物だ、と考えていたこともあるのでしょう。

 それに、彼は物事を教えるのではなく、それに至る道理を考えさせたがる節がありました。

 これも何とも慣れないもので、悪印象を抱きました。

 

 しかし現実、彼は好ましい人だったと思います。

 道理を考えるという大切なことを教えていただけました。

 

 思うに、物事を知っているだけでは大して役には立たないものです。

 論理のない知識は、きっと付き纏う重しになりうるのだと思います。

 例えば、料理法を知っていても、それを作る道具を知らなければ料理はきっと成立しないものでしょう。この例え話に道理が通っているかは分かりませんが。

 

 さて、大切なことを教えて頂いたということ以外にも勿論理由はあって、これはきっと彼が私を一人の人として扱ってくれていたということでしょう。

 例えば、両親やチャールズ男爵はきっと私を子供として扱いました。レイラさん達は、友達というよりも年の離れた妹のような、庇護対象として見ていた節があります。

 

 しかし、彼は私をたぶん一人のシア・アトウッドとして見ていると思います。

 一人の人というのも我ながらよく分からないことに思えますが、そのように思えるのです……。

 

 

 

 酷く驚くべきことですが、今船が揺れました。

 しかし、その折に懐かしいものを見つけました。

 チャールズ男爵頂いた珍しく刃の付いたペーパーナイフです。

 少し前、どこかに失くしてしまったのですが、ちょっとした隙間から今出てきました。

 

 何とも嬉しいものです。

 一気に目が覚めたので、もう日記も終わろうと思います。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。