降る雪に、身体を震わせます。
本日は快晴ですが、どこからともなく淡い雪が現れているようです。
「寒くないですか?」
しっかりと着込んだ防寒着の彼女に声を掛けます。
少し前、この船に乗り込むことになったスノー族の女の子。名前はサヴィクというらしいです。
声を掛けられた彼女は、ゆっくりと顔を横に振ります。
今のところ殆ど彼女の声を聞いたことがない気がします。
何か嫌われることをしてしまったのでしょうか。
それとも私の格好が問題でしょうか。
今はしっかりと制服を着こんでいます。
人を威圧してしまうので好きではないのですが、どうもこの寒さに配られた防寒着だけでは頼りない印象を受けたのです。
「私はどうもダメです。寒くて、ほら震えてるでしょう」
手袋から手を出し、彼女へと見せます。
船内だとまだマシですが、甲板では震えを止められません。
さて、そんな私の様子を見たサヴィクさんは少し笑ったように見えました。
おお、珍しい、と驚きを覚えています。
「慣れなのですかね?」
疑問を声にすると、彼女は悩むような表情を見せます。
どうやら嫌われているようではありません。
そこに一安心をしました。
「私はこれが好き」
サヴィクさんは悩んだ末に、いまいち理解のできない解答をくれました。
しかし、この肌を刺す寒さが好きとは酔狂なものです。
もとより甲板にいたのは、サヴィクさんに連れられたためでありますから、彼女の嗜好は疑いようもありません。
「シアは好き?」
「そうですね……。私にはどうにも寒すぎますから、少し苦手です。寒さを超えてもう痛くて痛くて。どうして好きなんですか?」
「綺麗だから」
笑ったサヴィクさんの顔を同性ながら、格好の良いものだと思いました。
それと同時に、嬉しさもあります。
随分と久しぶりに会話が出来ていたからです。
「ほら見て、シア」
サヴィクさんは、私の手を取ると、右舷へと寄って遠方を指さします。
彼女の手の暖かさに驚きながらも、示された方向へと視線を動かします。
すると、大きな流氷がまた別の流氷とぶつかり、砕けています。雄大な光景です。
「綺麗?」
サヴィクさんは確認するように声を発します。
それに、壮大さが勝っていると思いつつ、返事をしました。
「ええ、綺麗ですね」
さて、その間ずっと手は繋がったままでした。
サヴィクさんの手は依然として暖かく、とても不思議でした。
そもそもとして、彼女が寒いところの人であるということもあるのでしょう。
けれど、結局のところその要因はよく分かっていません。
ただ、この時のことでよく分かっていることがたった一つだけあります。
サヴィクさんの手はとても暖かったのです。
この温もりは今でも思い出せるような気もしますが、しかしこれも正しいのかはどうにも分かりません。
私はどうやら自分の記憶を酷く信用が出来ない様です。