【完結】跡に残るは雪ばかり。   作:朝日橋立

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閑話十一 恵まれた男について

 ヒュー・ハイツマンは、欠伸をして帝都の街を歩いた。

 彼は商家ハイツマンの次男である。彼の家は、大陸系の商人で、グラテン北部に小さな屋敷を建てれる程度には金があった。

 

 彼を端的に言えば、恵まれた男である。

 何をするにしても、親が金を出してくれた。

 しかし、流石にそのような親でも跡取りの問題に直面し、決断した。彼を海軍に入れよう、と。勿論、多少のお金を包む前提で。

 

 その為に、ハイツマンは数週間も前に実家で父に言われた。

「お前を海軍に入れる。どうせ直ぐに将校になれるだろうが、少しの辛抱をしてくれ」と。

 

 結局のところ、厄介払いであった。

 だが、彼にそれを察する知能はなく、そして彼に示唆する人も居なかった。

 

 だからこそ、一つ娼婦に自慢でもして回ろうと考えたのだろう。

 自分から軍役に行く勇ましい男だ、と。

 

 さて、そんな彼は考え街に繰り出したのは良いものの、多少の悩みを抱えていた。

 金を忘れたのである。

 彼が自慢を何時もするのは行きつけの珈琲ハウスで、毎度の如く奢ってきた。

 だのに、今回ばかり奢らないのであれば末代までの恥である。

 

 つい先日、博物館で見るからに金をもってそうな婆さんから財布をくすねたのが問題だったのだろう。

 ふと思いついた罰という言葉を、ハイツマンは笑い飛ばして、人気のない道を歩いていたのだが、突然に声を掛けられる。

「やあ、お坊ちゃん。今は暇かな」

 

 ハイツマンは、声の主であるフードの男を睨む。

 このような怪しい男を見たことがなかったのだ。

 

「アンタが誰だかは知らんが、口の利き方には気をつけろよ」

 軽いジャブのつもりで、フードの男を見下した口調で言う。

 

「ああ、これはこれは。申し訳ありませんね。僕はどうにも学がないものでして、どうにも丁寧な口の利き方というのが分からんのです」

 

 笑った仰々しい口調で彼は続ける。

 

「そうだお坊ちゃん、こんな私めにご教鞭を頂けるかな」

 

 フードの端から、赤とも茶とも言える髪の毛が覗く。

 どうにも馬鹿にされたように思えて、ハイツマンは苛立ちを覚えた。

 

「アンタが何様なのかは分からんが、随分と俺を舐めてるじゃないか」

「いやはや、舐めてなどいませんよ。えぇ、舐めてなど」

 

 フードの男に、更に苛立ちを募らせる。

 男は依然として口を開き続けた。

 

「それで、お坊ちゃんは暇なのですかな。今、僕は賭け事の相手を探してるんですよ」

「賭け事?」

「ええ、ポーカーは分かりますかな。僕はどうもポーカーが好きでして、それでちっと金を賭けるのがひやひやしてそれはもう楽しいもので」

 

 その誘いに、ハイツマンは目を輝かせる。

 彼も同様に賭けポーカーが好きだったのだ。

 

 ハイツマンは、フードの男に案内されるままに歩いた。

 そして、遂には薄暗い家屋へと案内される。

 

 さて、それからである。小さな声でこのように聞こえた気がした。

「すまないな。許せ」

 

「はっ」と、声を漏らしながら振り返ると、そこにあったのはハイツマンと似た茶髪の男が鈍器を振るっている姿だった。




とあるFPSゲームのキャンペーンオマージュの話でした。
ヒューはこれがやりたかった。
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