寒すぎる空気に、身体を震わせ、冷たい缶詰を食べていました。
大部分が凍っているような気もします。
ただ解けるまで待つのも途方もなく、そのまま口にします。
医務室の気温は、水の凍らない程度になっています。
居住区も似たようなところです。
これで三度目の越冬ですが、私の仕事はだいぶ楽になったことと思います。
ノクス号からの病人が来なくなったという影響もあれば、何人か病人の人が死んだということもあります。
人が死んで楽になった、と喜ぶのも些かどうかと思われますが、実際これが事実なのです。
私は楽になって、多少なりとも嬉しさがありました。
そもそも私はノクス号の隊員など、微塵も知りはしませんし、信用もできない。
思えば、彼らに信用のできる要素などなかったのです。言ってしまえば、私たちの敵が減ったのです。
「サヴィクさん、生きてますか?」
缶詰を半分ほど食べたところで、どうにも食べる気が失せて背後の少女に小さく声を掛けます。
此処には他にも人が詰め込まれているため、何やら文句を言われるのが面倒だったためです。
どうやら本日は、彼女の意識がしっかりしていったようです。
頷きながら、久方ぶりに声を発しました。
「うん」
「それは良かったです」
「シア、大丈夫?」
「ええ、私は結構元気です」
サヴィクさんは、何だか悩まし気に目を閉じます。
その様子を見ていると、やはり不思議な感情が巻き起こってしまいます。
何だか彼女が小さく見えてしまいます。強いて言うならば、庇護欲とかでしょうか?
そう考えると、やはり私には余裕がまだまだあるようです。
申し訳なさに似た感情もありましたが、きっと私は運がいいのでしょう。
うんうん、と自分の幸運に感慨深く思っていると、そういえばと忘れていた仕事を思い出します。
「あっ、ごめんなさい。仕事ありました」
断りを入れて、一度医務室の人たちを見渡してから、居住区角の方へと出ていきます。
医務室には、ぱっと見たところでは死んだ人は居ませんでした。
ただ居住区の方は少しばかり寒いので、何人か死んでるかもしれませんね。
実際、見たところでは何人か死んでそうな人がいるので、溜息が出てしまいます。
もしかしたら生きている可能性を信じて、確認をしたところ、死んでいました。
不幸な人達ではありますが、どうも仕方のないことです。
運ばないといけない、と思いながらも、どうにもやる気が起きずに、死顔を見ていました。苦しそうな顔です。
……何だか見たことがあるような気がします。
確か停泊地で、一緒に祭壇を飾った人だった気がします。
可哀そうにな、と思ってしまいます。
でも、実際死んでしまったのですから仕方ありません、ここで腐らせるわけにもいきませんし。
「ちょっと手伝ってください」
適当な隊員に声をかけ、幾つかの死体を最下部の方へと運びました。
何だか最初はなれませんでしたが、幾度も繰り返すと慣れるものです。
この頃からでしょうか。密かに、魔女なんて言葉が聞こえるようになったのは。
これは確かに古風な表現です。ただ、人は恐ろしいものですね