送られてくる感想や評価に元気をもらいながら再投稿です。
暇潰しにオラリオを探検している最中、うっかり迷い込んでしまったダイダロス通りから脱出するため、
奇人ダイダロスとその子孫たちが人生を賭けて作り上げていた
「むふ。おにぎり、具は何が入ってるのかな」
まるでハイキングにでも来たかのような呑気すぎる言葉と共に弁当箱を取り出したリリアは、近くにあった手頃な倒木に腰掛けると、その瞳をキラキラと輝かせながら蓋を開けた。
中に入っていたのは、店で売られていてもおかしくないほど綺麗な三角形に握られ、手で持ちやすいように大きめの焼き海苔で包まれた2つのおにぎりだ。
リリアが【ニニギ・ファミリア】の
むしろ逆──前世では専門店のものも含め、東西南北の様々なおにぎりを食べ歩いていたリリアは、湿気てこそおにぎりは真の美味しさを発揮するとさえ考えていた。
そんな2つのおにぎりを見比べて、自分はどちらを食べようかと悩むリリア。
困り果てた末に、天の神様の言う通り、と交互に指差す方法で左のおにぎりを選んだ彼女は、残った右のおにぎりを牛の獣人(だと思い込んでいる)アステリオスへと差し出した。
「おひとつどうぞ」
「……いいのか?」
まさか
不倶戴天の天敵同士である人間とモンスターは、本来ならこうして対面した次の瞬間には互いの武器を交え、どちらかが力尽きるまで続く命懸けの戦いを始める。
だというのに、目の前の小さな
恐怖のあまり現実を見失った狂人か、はたまた底抜けの偽善者なのか。
不思議そうな表情を浮かべながらおにぎりを差し出し続けるリリアの行動が理解出来ず、完全に動きを止めてしまったアステリオスに、
「うん。一人で食べるよりも、みんなで食べたほうが美味しいから」
それは、米を愛する以前に「食」そのものを愛するリリアが導き出した、単純明快なひとつの結論。
拠点で食べるご飯がこの世界に生まれてから一番美味しいと感じるのは、千穂やリフィーリアが心を込めて調理してくれるから──だけではない。
好きな食べ物を、ニニギや伊奈帆たちと一緒に食卓を囲んで食べるからこそ、食事という行為が単なる栄養補給を超えた娯楽として成立するのだ。
きっと弁当箱に入っていたおにぎりがひとつでも、リリアはそのおにぎりを半分に割ってアステリオスへと差し出しただろう。
「……なら、いただこう」
「よろしい」
生まれたばかりの怪物であるが故に食事という行為への執着が希薄なアステリオスは、まだリリアの言葉を全て理解できた訳ではない。
けれど、理解できないからといって彼女の厚意を無碍にするのは、なんだか
力の加減を間違えてうっかりおにぎりを潰してしまわぬよう、おそるおそるリリアから受け取るアステリオス。
その気になれば幼子の小さな頭を握り潰す事など容易い怪物の手におにぎりを置いたリリアは、満足そうに頷くと倒木に座り直し、自分のおにぎりを頬張るのだった。
「むふ、やっぱりおにぎりは湿気ても美味しい」
「そういうものなのか」
「シンプルイズベスト、米料理の基本にして奥義だよ」
おにぎり、またの名を握り飯。
日本に生まれた日本人であればこの料理を食べたことの無い者はいないであろう超基本的な料理は、基本だからこそ料理人の腕前が試される。
米の炊き具合、塩加減、握り方。
卵料理で本当に難しいとされる料理がオムレツであるように、基本的な料理というものはすべからく味を左右する要素が少ないからだ。
その点を踏まえても、千穂の用意したおにぎりはリリアにとって大満足の軽食であった。
昼前にリリアと
「んむ、おにぎりの具は梅干し……王道にして梅干し自体の味に大きく左右される、チャレンジングな味わい」
「そうなのか」
「そうなのです」
加減を間違えるとその自己主張の強さから途端に味のノイズとなりがちな塩も、米の甘味を引き立てながら自身の旨味も伝える良い塩梅だ。
更にもう一口深くへと食べ進めると、おにぎりの中心に埋め込まれていた梅干しが宝石のように顔を出し、甘酸っぱい独特の風味で口の中を爽やかに刺激する。
【ニニギ・ファミリア】の漬け物担当であるミシマ・千恵が丹精込めて漬けた梅干しは、隠し味に蜂蜜が使われており、ほんのりと甘く優しい後味が特徴だ。
米自体の甘味とは対極ともいえる梅干しの酸味が、オラリオを歩いていたリリアの疲れを癒し、同時に味のコントラストとなって食欲を沸き立てる。
本来であればパリパリとした食感であるはずの焼き海苔は少し時間が経ったせいで湿気てしまっているが、代わりに海苔の風味を強めており、食べやすさと味の両立を実現していた。
お米は炊き立てが至高ではあるが、出先で食べる冷めたおにぎりもまたオツなものなのだ。
しばし無言でおにぎりを食べ進め、あらかた腹に納め終わったリリアは、隣に座る人物がおにぎりをじっと見つめたまま食べていない事に気がつき、手早くおにぎりを食べ終えると隣に座る「彼」に話しかけた。
「おにぎり、食べないの?」
「……いや、食べる」
少し不安そうに問い掛けたリリアにそう言って、覚悟を決めたアステリオスは、自分の手の平にちょこんと乗っていたおにぎりを口の中に放り込む。
リリアは何口も頬張って完食したおにぎりだが、
なんとも言えない表情でしばらく咀嚼した後、ごくりと音を立てて飲み込んだアステリオスへ、リリアは笑顔で問いかけた。
「それで、お味はどうでした?」
「……分からない」
「え、分からない……?」
だが、食事初心者であるアステリオスから返ってきたのは、そんな玉虫色の解答。
おにぎりが彼にとって少なすぎたと言うのもあるが、料理を生まれて初めて食べたせいで、口の中に広がる味をどう評価したら良いのか分からない──というのが「分からない」という感想になった最も大きな原因だ。
「その……なんだ。毒を食らった時のような、吐き出したくなる感覚はしない。むしろもっと食べたいと思っているから、美味しい……のだと思う」
それでも、決して味に満足しなかった訳ではないということを、普段使わない語彙も用いてなんとかリリアに伝えようと努力するアステリオス。
身振り手振りを交えながらおにぎりの美味しさを表そうといじらしい姿を見せる彼に、リリアは不評ではなかった事に安堵しながら微笑んだ。
「ふふ、美味しく食べてくれたのは伝わった」
「む……そうか」
「でも『美味しい』が分からないなんて、少し変わってるね」
「……」
リリアの言葉にそこはかとない理不尽さを感じたアステリオスは返事の代わりにひとつ鼻息を吹くと、椅子の代わりに座っていた倒木から立ち上がり、側に立て掛けていた
一緒に立とうとしたリリアを片手で制し、無言で両刃斧を構えたアステリオスの視線の先で、侵入者の存在を感知した
『ギチチ、ギチギチ……!』
その数、述べ10体。
全てリリアよりも大きな身体を持つ蜂型のモンスターであり、ひび割れた壁から這い出るように産まれた彼らは数秒後には自らの羽を震わせて飛び立つと、肥大化した毒針をこれ見よがしにアステリオスへ向ける。
「耳を塞いでおけ」
「……ん、分かった」
幼子の体など絹のように噛み裂けそうな鋭い大顎から威嚇音を鳴らすモンスターの様子を油断無く伺いつつ、背後に庇うリリアが指示通り耳を塞いだのを確認したアステリオスは。
「──ヴォオッ!!」
『ギッ』
その名を体現するかの如き凄まじい踏み込みで、モンスターの群れへと吶喊した。
衝撃で砕け散った地面を置き去りに、巨体に似合わない俊足を見せた彼は、一瞬で目の前に現れた敵の姿に驚くことすら出来ない蜂の横っ面へ両刃斧を叩き込む。
それは断末魔すら許さない、断頭台の一撃。
己の質量と莫大な運動エネルギーを以て頭から胴体までを割り砕いた両刃斧は、近くにいた蜂の数体をも巻き込んで、周囲に彼らの
当然、群れの中心に飛び込む形となったアステリオスは態勢を立て直したモンスターたちの攻撃を受けるが、
『ギァアア!!!』
「──ォオッ!!」
冒険者の鎧程度なら容易く貫通するはずの毒針が黒い毛皮の表面を虚しく滑った次の瞬間には、裂帛の気合いと共にアステリオスの剛腕が閃き、砲撃のような凄まじい衝撃音と共にスクラップがその数を増やす。
残るモンスターは5匹。
第一級冒険者が相手だったとしても負けるつもりは微塵もないが、そうなった場合は相手を殺さぬよう手加減をする余裕はないだろう。
その結果として、人との共存を望む同胞たちの足枷となってしまうのはアステリオスとしても避けたい。
『ギチギチギチ……!』
「……」
手札を一枚封じられた状況。
しかし、それがどうしたというのだ。
咆哮が封じられたところで、全ての敵を屠るまでの手順が少し増えるだけだ。
いくら蜂の攻撃を受けても傷ひとつ付かない鋼の肉体を奮わせ、アステリオスは壊滅寸前の哀れな
1体を両刃斧で唐竹割りにし、背後へと回り込んでリリアに襲い掛かろうとした蜂を蹴りで粉砕し、自棄になったのか碌な技も織り交ぜずに集団で飛び掛かってきた残りを純粋な暴力で轢き殺す。
「ゥオオオオッ!!」
正に蹂躙。
正に無双。
一騎当千の活躍で瞬く間にモンスターの群れを鏖殺したアステリオスは、手応えの無い相手だった事に不満げに鼻を鳴らし──リリアの無事を確かめようとして、何かに気付いた様子で動きを止めた。
アステリオスは恐れたのだ。
振り向いたとき、あの小さないきものが自分にどういった目を向けるのか。
強さを恐れられるのは、まだ良い。
それは終わりのない闘争に明け暮れた日々の中で、数え切れないほどの敵から浴びてきた感情だから。
けれど。
もしも彼女から「
──それは、少し堪えるかもしれない。
そこまで考えて、アステリオスは何故己はここまでリリアからの印象を気にするのか自問した。
これまで遭遇した冒険者には、例え醜い怪物と蔑まれようと、化け物と恐れられようとも気にすることはなかったというのに。
迫り来る敵を屠り、力尽きるまで戦い続けていた頃のアステリオスならまだしも、
一度光を知ってしまった者が、もうそれ無しでは生きていけないように──
「えっと……獣人、さん?」
「……ああ」
結果から言えば、彼の不安は杞憂となった。
初めて会った時からアステリオスを怪物として恐れなかったように、リリアは真っ直ぐな瞳で
その目には強大な力への恐れも、怪物への嫌悪も無い。
むしろ、自分の窮地を助けてくれたアステリオスへの好意的な感情すら浮かんでいた。
そんなはずはない。
彼女はヒトで、己は怪物。
決して交わることはない存在──その筈なのに。
誰よりも人類との共存を望んでいながら、誰よりもその願いが叶うことは無いのだと絶望していた同胞達の言葉とは真逆の状況に、アステリオスは困惑した。
目の前で起きた蹂躙劇の主役が、他ならぬアステリオスである事は分かっているはずなのに、その暴虐の嵐を見たはずなのに、まるでおとぎ話の
「ありがとうございます。助けてくれて」
「……いや、問題ない」
──リリアは良くも悪くも、
何故なら、彼女の判断基準は全て「米」。相手がお米のことをどれだけ愛しているか、または尊重してくれるかが彼女の好感度を決めると言っても過言ではない。
なんなら「同じ釜の飯を食えばみんな友達」と本気で考えているほど生粋の米狂いだ。
あとは、リリアがこの世界に生を受けてから一度も
未だにアステリオスがモンスターだと気付いていない彼女からしてみれば、彼は「一緒におにぎりを食べたちょっと牛っぽい獣人の男性」でしかない。
つまりはソウルフレンドだ。
心の友よ。
そんな
だから、躊躇なくアステリオスに近づいて、その大きな手に触れることだって出来る。
「そう言えば自己紹介がまだでした。──リリア・ウィーシェ・シェスカです。気軽にリリアと呼んでください、獣人さん」
「……アステリオスだ」
「あすてりおす……
迂闊に触れたら壊してしまいそうな幼い手が、怪物の手と重なった。
初めて触れた小さくて
はしゃぐ幼女と動かない
それからしばらくして。
多種多様なモンスターで構成されたダンジョン渾身の第2波も労せず殲滅したアステリオスは、精霊の欠片たちから帰還するべきだと進言されたリリアとの別れの時を迎えていた。
「リリア」
「ん……」
「また会おう」
「……うん!」
怪物である自分がヒトとの再会を望むとは。
それも、自分の
アステリオスは内心でそう自嘲しながらも、どこか清々しい気持ちだった。
そんな彼の想いを悟ったのだろう、気を取り直したリリアも元気よく答えると、何か思いついた様子で小袖の懐を漁り──鮮やかな緑色に染め抜かれた、一枚の薄布を取り出した。
「よし、お近づきの印。
「……すまない。それはどう使えば良い?」
「えっと……うーん。モーさん少ししゃがんで、角に手が届くくらい」
全体的に牛っぽいから「モー」さん。
本名に掠りもしない上に失礼極まりない渾名だが、アステリオスは気にする事なくリリアの指示に従い、彼女の手が己の角に触れる位置まで頭を下げた。
すると、リリアはアステリオスの角にくるくるとハンカチーフを巻きつけて、まるでリボンの様に端を縛り付けるのであった。
「うむ。これでよし」
「……感謝する」
「くるしゅうない」
初めて貰った、人間からの贈り物。
その事実を噛みしめるだけで温かな気持ちになったアステリオスは、己が返せるものは何か無いだろうかと考えた末に、彼女へひとつの誓いを立てる事にした。
「リリア。再戦の
「ん。モーさんの夢、叶うといいね」
「だが、もしお前と再び相見えることがあれば。……その時は、この身に出来ることなら何でも力を貸すと誓おう」
「……いいの?」
「約束する」
それは契約書や魔法による強制力もなければ、アステリオスがこの誓いを守る義務もない、単なる口約束。
しかし、この時交わされた誓いは2人にとって単なる口約束以上の意味と強制力を持ち、近い未来においてアステリオスは重要なある「役割」を果たす事となる。
前代未聞の、
ハンカチーフを渡したのは見返りを求めての行動ではなかったリリアだが、彼の心遣いを嬉しく思い素直に受け取ることにした。
それとは別に、彼女の
「それじゃ、ばいばい」
「……ああ。また会おう」
そんなやり取りの後、遂にリリアは地上へと帰還した。
迷宮の天井に空いた穴が塞がる前、遠くの方でリリアの悲鳴が聞こえたような気がしたが、アステリオスは気のせいだろうと考えた。
小さな「友」との突然の出会いに思いを馳せつつ、穴の痕跡すら見当たらなくなった天井をしばらく見つめたアステリオスは、フッと朗らかな笑みを浮かべると、最初の目的地──迷宮の深層へと歩き始めた。
先程のモンスターとの戦闘音に、他の冒険者たちが引き寄せられた気配はない。
この隙を逃さず一気に深層まで潜ってしまおうと考える心とは別に、アステリオスの手はそっと、角に巻かれた
さて、ハイエルフの幼女と
その様子を陰ながら監視し、人知れず頭を抱え悶える元人間の姿があった。
「ぬおおぉぉ……嘘だろう、誰か嘘だと言ってくれ……!」
「どうした、フェルズ」
ここはギルド本部の地下にある「祈祷の間」。
四隅の松明に照らされた地下神殿の中で、迷宮都市の創設神である大神ウラノスは、彼の私兵として暗躍する
いつもであれば雇い主であるウラノスの問い掛けにはすぐに答えるフェルズだが、珍しい事にウラノスの言葉も耳に入らないほど動揺した様子で、ぶつぶつと何言かを呟いていた。
「……
「
「ぐ……!? す、すまないウラノス。取り乱した……」
──瞬間、祈祷の間を席巻する大神威。
このままでは話にならないと判断したウラノスが、気付け代わりの神威を発したのだ。
魂を直接揺さぶるような圧倒的な気配を前に正気を取り戻したフェルズだが、その声はまだ抜けきれぬ驚愕の深さを示すように震えていた。
「何があった」
「……私の黒歴史とでも呼ぶべきものを、どこかの誰かが勝手に完成させていたらしくてな。思わず正気を失った……」
「それは、
「……そうだ」
気落ちした様子でウラノスの質問に返答したフェルズの顔は黒のフードで隠され窺い知ることは出来ないが、もし顔を見ることが出来たなら、間違いなく苦虫を何匹も纏めて噛み潰したような苦渋の表情を浮かべているだろう事は察せられた。
元「賢者」の黒歴史。
神として下界の歴史を観察してきたウラノスには、その単語から推察出来る事は色々とあるが──ここまでフェルズを動揺させる存在といえば、十中八九「賢者の石」に纏わる事柄だろう。
続きを促すように沈黙したウラノスを前に、しばらく考え込んでいたフェルズだが、やがて重々しく口を開くと賢者の黒歴史──おとぎ話で讃えられる程の知恵者が愚者へと堕ちた第一歩の話を始めた。
「……私が今の姿に、愚者へと成り果てた原因はウラノスも知っての通り。私が人生を賭けて生み出した最高傑作『賢者の石』を、当時の主神が目の前で破壊した事にある」
「ああ。他でもないお前から聞いたことだ」
「あの憎き主神に石を破壊され、あまつさえ嘲笑われた当時の私は果てのない妄執と怒りに囚われ……計画してしまったんだ。
「……そうか」
神殺し。
それは、神時代を生きる下界の人間にとって最大の禁忌であり不可能の象徴。
全知全能の
天界に送還するのも神のみが行える行為であり、その送還にしても神を完全に殺している訳ではない。
文字通り「なんでもあり」の
その神殺しを計画したのだと告解したフェルズに、ウラノスはただ頷くだけだった。
「簡単に言えば、人工的に多数の精霊の血を受けた『精霊の愛し子』を生み出し、それを生贄とすることで精霊たちの暴走を意図して引き起こす──人型の自爆兵器だ」
「それがあの幼子だと?」
「ああ。複数の精霊の血やその強大な力に耐えきれる器を用意したり、結局生贄に捧げた所で暴走するかは精霊の主観次第だったりと、荒唐無稽かつ杜撰すぎる
どこかの誰かが、その「計画未満の思いつき」を掘り起こして完成させてしまった、という訳だ。
肉体は腐り落ち、骨だけとなった両の手の平で顔を覆うフェルズ。無くなって久しいはずの胃袋が、ぎゅるぎゅると音を立てて痛みを訴えている気がした。
今なら涙だって流せる気がする愚者の
現状、自主的に
それはフェルズ曰く「完成した神殺しの兵器」だと言うが、概要を聞く限りでは彼女が死ぬと起動するタイプの爆弾と取ることも出来る。
彼女はウラノスたちの目的である「人と
「……試す価値はある、か」
そして、ウラノスの神意は定まった。
彼はとうとう床を転がり始めたフェルズを再び神威で叩き起こすと、ギルド本部であの幼子がどこの
人の子の噂など半日もあれば末端まで広がるこのオラリオでまだ話題になっていないということは、どこかの零細ファミリアに所属している可能性が高い。
ならば、ウラノスが取る行動はひとつ。
「今はまだ、表舞台に出て来てもらっては困る」
その存在を限りなく隠蔽する。
他の神に──都市に仇なす存在に見つからぬ様に。
こうして、本人の与り知らぬうちに壮大な計画へと組み込まれ始めたリリアだが、彼女についてウラノスはひとつ
その見落としに勘付いたのは、悲しいかな、
「──そういえば、いったい何の目的であの幼子はダンジョンの20階層にいたんだ?」
こうして、哀れな
・ウラノス
後の被害者B。
・フェルズ
後の「米キチ被害者の会」筆頭。
大昔に消えたはずの胃袋と涙の再開を果たす。