プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜 作:匿名S
「
「……そういうお前は誰だ」
「その精霊カード、貰い受け──」
黒づくめの男が言い切るより早く、その身体は氷漬けになった。
レイタが振り返ると、そこには不機嫌そうな顔をした青い髪と白い肌の女が立っていた。高貴な出で立ちと気難しさを醸し出す彼女はレイタの精霊である。
「無礼」
「やりすぎだ……」
レイタは精霊を諭すが、彼女は不満気な顔のまま聞き流すだけであった。レイタも長々と道理を言い聞かせるのは諦めているため、すぐに切り替えて携帯端末を取り出す。
「せめて死なない程度に溶かしてやれ……とりあえず通報しておくか」
「無理よ」
「え?」
「私、凍らせたものを中身ごと爆ぜさせることはできるけど溶かすことはできないの。そのうち溶けるからいいんじゃない?」
心底どうでもよさそうに精霊が言うと、レイタは顔を青ざめて声を張った。
「誰かー!火貸してくださーい!」
「ヤニカスの急患?」
「お前も少しくらい慌てろ!」
本気で黒づくめの男に興味を持っていないのだろう、気の入っていない例えツッコミをする精霊にツッコミを入れるレイタだが、人気のない夜道でそもそも人がまともにいるはずがないので慌てても仕方がなかった。
しかし、今日は運のいいことに救いの手があったようだ。
「あれ、レイタなにしてんだ?」
「タツキ!火貸してくれ!」
「レイタ…いくら大人びてるとはいえタバコはダメだって」
「なわけないだろ!そこの人の氷溶かしてやってくれ!」
タツキの天然ボケを一瞬で受け流し、レイタはタツキの肩に乗る《ムスペルヘイムの竜》の精霊に呼びかけた。
「わしに任せろ」
《ムスペルヘイムの竜》はそう言うと小さい身体で優しめに炎を吐き出し、黒づくめの男の氷を溶かしてやった。それを見てレイタは胸を撫で下ろして竜に声をかける。
「助かった……ありがとう、《ムスペルヘイムの竜》」
「それでは呼びづらいだろうレイタよ。タツキとユキのようにリューちゃんと呼んでいいんだぞ?」
「……それはそれで呼びづらい」
どうやら、レイタにとっては少し恥じらいを感じる呼び方らしい。
一方、別の夜道にて。
「
「そうですが、どちら様でしょうか……?」
「貴様の持つ精霊カードを寄越せ、さもなくば──」
案の定、言い切る前に黒づくめの男は倒れた。
「だ、大丈夫ですか!?」
慌てて黒づくめの男に駆け寄ったユキ。そんな彼女に、黒づくめの男の足元にいた小さな緑の蛇が話しかけた。ユキの持つカードの精霊、通称『ユグちゃん』である。
「こっそり噛んで即効性の毒を少し入れただけです、すぐに起きるので大丈夫ですよ」
「あ、そうなんですね」
「それより今のうちに退散しましょう、あまり遅くなるとユカさんが心配しますよ」
「はい、そうですね!」
ユキはユグちゃんと談笑しながら家に帰った。