プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜   作:匿名S

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10話『カードゲーム世界で暇した時はどうすると思う?そうだね、大会観戦だね』

 

 

「と、いうわけで今週末の大会に出場してみようと思います」

 

 いつも通りバディマート(バイト先)にやってきた三人。そしてまたしても苦労したらしいレイタくんは唐突に大会に出場する意思を表明した。

 いや、どういうわけで出るの?昨日あったことを大まかには聞いたけれど、それだけだと大会との関連性が見えない。

 

「要するにまた敵が来た時に穏便にプレスピで解決できるように、そして勝てるようになるためにまずは大会に出場して実戦経験を積みながら今の実力を測ろうと思います」

 

 なるほど。強い上に人への攻撃をためらわない精霊さんがいるからこそ、逆に荒事にならないように自分が強くなりたいという気持ちが大きくなったのか。正直なところ襲ってくるやつなんて大抵ろくな目的じゃないし、殺し屋とかも普通にいるんだから別に力づくで撃退してもいいと思うんだけど、レイタくんは優しいね。

 

 まあ確かにあの精霊さん割とレイタくん以外の人に興味持ってない感じだもんね。またなにかある度に氷像を作ってリューちゃんを呼ぶことになるのも大変だし、そもそもリューちゃんが間に合わない場所でそうなったらいよいよ事件だ。毎晩氷漬けの死体が増え続けてこの街が探偵モノの世界になっちゃう。

 というか精霊が人を殺しちゃったら逮捕されるのかな?そんなニュース聞いたことないなあ……いや、よく考えたらこんな世界でそんなことが仮にあったとしたら表沙汰になるわけないか。裏世界の人たちが処理してるに決まってる。

 

「うちの精霊にもよく言い聞かせて反省させたんですが、そもそも僕が弱かったら意味がないですから」

「レイタ大会出るのか!?俺応援に行くぜ!!」

「私も行きたいです!会場に行って屋台のご飯とか食べてみたいです!」

「タツキが来てくれるなら万が一のことがあってもなんとかできるから助かる。ユキは屋台メシ食べたいならちゃんとユカさんに言うんだぞ?あの人こういう時に絶対弁当とか作って持たせてくるタイプだろ」

「そこにわしも加わる。楽しそうな話する時はわしもまぜてよ水くさいのう〜、わし水じゃなくて炎の竜だけど」

 

 楽しそうだね、頑張ってね。

 ……え?俺?前も言ったけど高校生がプライベートで小学生と会ったら事案になりかねない。それに大会はもういいよ。

 ちなみにリューちゃんの小粋なジョーク(配慮)は無視した。

 

 

 

 

「《恐怖の幻影》の効果で《怪人アンサー》を『蘇生』。そして《怪人アンサー》の『召喚時』効果。カード名をひとつ宣言して、相手の手札に宣言したカードがあるならそれをデッキに戻して自分はカードを1枚引く。《焼畑》を宣言」

「なっ……」

「お、反応からしてやっぱり温存してたね。じゃあ戻してね、俺はカードを1枚引くから。あと《焼畑》が墓地・マナゾーン・消失したカードを含めて3枚確認できてないから手札に2枚目以降の《焼畑》を隠してない証明のために手札見せてね」

「うぅ……わかった。だが《天罰》発動!《怪人アンサー》を『浄化』して破壊だ!」

「『緊急詠唱』《悪夢の続き》発動。このターン墓地に置かれた《怪人アンサー》を召喚。墓地から離れたら『浄化』は解除されるから『召喚時』効果も使える。さっき手札に残ってた《飛翔する天使》も戻しちゃってね。そして俺は1枚引く」

「アァ……ウゥ……」

「泣いちゃった」

 

 今日も今日とて帰り道に現れる黒ローブ仮面さんを日課のように倒し……いや、むしろこんだけ戦ってたら一回くらい負けると思うんだけど緊張してるの?この人。別に全然弱くはないんだけど、なんというか運が悪かったりどこかでちょっとしたミスをしたりと、らしくなさがある感じがする。

 まあ明らかに素性を隠して戦ってるから、自然体でバトルできてないのはそうなんだろうね。それに控えめに霊力がついてるのは見えてるから精霊カードは持ってると思うんだけど、黒ローブ仮面さんの精霊さんを見たことがない。

 精霊さんに嫌われてる感じはしないから、ちょっと無理して変装して戦ってる上になぜか緊張しているのが不調の原因なんだろう。まあ、よく考えなくてもこの人が勝手に素性を隠して俺に付きまとっているので同情はしないけど。

 

 あと……そもそもなんでまた帰り道変えたのにこの人いるんだろう。もはや24時間俺の事を見てるんじゃないかとすら思ってしまう。

 ……帰ろ。

 

 

 

 

 さて、今日は休日。5日間で疲れた心と身体をたった2日間で休ませろというあまりにも無茶なことを強いられている日だ。それでも全力で休日を遂行するために、まずは昼寝をしようとしたところで足音を聞いた俺は取り急ぎ着替えて荷物を持ってスタンバイした。

 

「シンちゃんただいま〜」

「おかえり、それじゃあ俺は出るから」

 

 いつも通り母を名乗る理不尽をスルーしようとしたところで、その手に抱えられたダンボール箱の表記に思わず足が止まった。

 

「パソコン買ったんだ」

「そうなの!やっぱり家には必要かなって思って。家族共用だから、シンちゃんも使っていいからね」

 

 当てつけかな?絶対使わない。そもそも共用のパソコンってどんな罰ゲームなのさ。それ『パーソナルコンピュータ』って名前なんだけど知ってる?

 

 

 

 

 さてそんなわけで休日が休みになるとは限らないもので、俺はある意味休日返上で『家から離れた状態で暇を潰す』という仕事をすることになった。とはいえこの仕事も毎週のようにやっているわけで、さすがにそろそろやりたいこともなくなってきた。カードショップにいたらたまに話しかけられるし、あまりゲーセンに入り浸りすぎると手持ちが心もとない。

 

 そういえば、今日は大会があるんだったな……仕方ない、レイタくんの様子を見に行ってみるか……

 

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