プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜 作:匿名S
そんなこんなでバイト先のコンビニから数えて徒歩でおよそ15分、久しぶりにプレスピこと『プレイスピリット』の大会が行われるスタジアムに足を運んだ俺を出迎えたのはプライベートで会う気のなかった小学生たちだった。
「あ、シンイチお兄さん!」
「
「ユキちゃん、別に挨拶を急がなくていいからね。喉に詰まらせちゃうよ」
たしかに屋台のご飯が食べてみたいとは言ってたけど、早くない?観戦席に入る前からもう片腕に屋台メシが詰まった袋を提げた上でたこ焼きを頬張ってるじゃん。
ユキちゃんの首元にゆるく巻きついた緑色の蛇、ユグちゃんもたこ焼きをもらったのかお腹が膨らんでいる。あまりにも見た目が獲物を丸呑みしたあとの蛇なんだ。
「すみません……実家ではこういうものは食べる機会がなかったので、ついはしゃいでしまいました」
「そう……まあいいんだけど、レイタくんはちゃんとエントリーできたのかな?」
「参加者はもう別のところに行ったみたいだから、多分そうなんじゃないか?焼きそばうめー!」
「人間界にある食べ物は格別じゃが、その中でも祭事で食べる味の濃い料理の旨みといったらもうたまらんのう!」
そう答えたタツキくんもリューちゃんと焼きそばを食べながら既にお祭り気分である。精霊って食事の必要あるの?
「ないが、それ故に人間界での娯楽としての人気が高いんじゃ。精霊の中には食べ物目当てで人間界にやってくるものも結構おるぞ?」
そうなんだ……
ひとまず観戦席に腰をおろした俺たちはレイタくんの試合がスタジアムで行われるのを待つことにした。一度に複数の試合をスタジアムで行うのは観客も含めて色んな人にとって負荷が大きいから、最初の方は少し離れた別のイベントホールでほとんどの試合を行っている。
そして毎試合ごとに注目の対戦カードを運営がピックアップして、その試合だけスタジアムで行う形式だ。要するに配信台みたいなやり方だね。
大抵の人はお祭り感のあるスタジアムの方に来るけど、真剣勝負の場の雰囲気を見てみたい人や視察に来たプレスピガチ勢、あとは有望な選手のスカウトなんかはイベントホールの方に行くことが多い。観戦席はないけどよりリアルな空気を味わえるからね。
そんなわけで、レイタくんの試合を確実に見るならイベントホールの方に行った方がいいんだけど、二人ともレイタくんが勝ち上がってスタジアムに来ると確信してるからこそ
「で、レイタの試合っていつなんだ?今やってる試合の次?」
「そうですね、1試合ずつやるんでしょうか?結構時間かかりそうですけど……まあその間は屋台で買ってきたものを食べながら試合を見て待ちましょうか」
「ん?」
「ん?」
「どうかしましたか?」
あ、これ知らなかったパターンだ。
◆
「《ニヴルヘイムの女王》でプレイヤーを攻撃!」
「まーけたー!」
青い髪で右目が隠れた理知的な美少年、
レイタは安心したように一息ついて《ニヴルヘイムの女王》に話しかけた。
「今回は凍らせなかったな、偉いぞ」
「私だって見境なく人を凍らせるわけじゃないのよ?」
「もうそこは疑ってない。僕を守るためだったんだろ?ただお前、前回『攻撃の時につい凍らせた』って言ってたから……」
「あの時は追い詰められて泣きそうなのに、諦めずに頑張ってカードを引いたレイタが可愛くてつい昂っちゃったの。霊力が強いからって無差別に気に食わないものを凍らせる愚者なら私は女王になってないわ」
「そ、そうか……とにかく緊急時を除いて人や物を凍らせないこと、あとやむを得ず人を凍らせる時は可能な限り手加減して相手になるべく危険がないようにすること。わかってるな?」
「わかってるわよ、もう三回は言われてるんだから」
女王は返事こそ反抗的に思える言い回しをするが、態度は満更でもなかった。自分が見初めた少年が頑張って手綱を握り、自分の
「次は二回戦か……対戦相手は誰だ?」
一息つくのもほどほどに気を引き締めなおし、次の対戦相手が誰になるのかを確認しようとしたところで、ホール内にアナウンスが響き渡った。
「次の試合の組み合わせが決定しました。ご自身の携帯端末をお持ちの方は公式サイトで、お持ちでない方は受付でご確認ください。スタジアムでの試合となる方はスタッフが案内いたしますので、名前を呼ばれた参加者の方は受付か近くのスタッフにお声かけください」
「お、もう決まったのか」
携帯端末を取り出して対戦相手を確認しようとしたレイタだが、その手はアナウンスの声によって止まることとなった。
「青枝レイタさん、黒崎アカネさんはスタジアムでの試合となります。受付か近くのスタッフにお声かけください。青枝レイタさん、黒崎アカネさんは受付か近くのスタッフにお声かけください」