プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜 作:匿名S
さて、一回戦が終わって次は二回戦。スタジアムでの試合は注目の対戦カードが選ばれるから、大会初参加のレイタくんが早い段階でスタジアムに来るとは思えない。このままレイタくんの試合を見るには勝ち上がって貰うか、あるいは有名なプレイヤーと偶然当たるかでもしないと厳しいかな。
今からでもイベントホールの方に行くのはありなんだけど、まあそれはスタジアムでの二回戦の対戦カードを聞いてからでもいいか。
と、思っていたら、赤っぽいピンクと黒を基調にした
「いやー、やはり推しの試合はスタジアムで見るのが一番ですな!」
「イベントホールでの試合も真剣な雰囲気がゾクゾクするんですけど、やっぱり声出して応援してもオッケーなスタジアムの方がいいですよね!」
「アカネちゃんしか勝たん!」
「んんwww優勝は黒崎嬢以外ありえないwww」
なんか濃いのがいるな……あとファンの中に一人中学時代の同級生っぽいのもいるけど、まあこっちに気づいてないみたいだし放っておこう。正直関わりたくない。
あ、関わりたくないって周りの人に
「シンイチお兄さん、どうかしたの?」
「いや、なんでもないよ。どうしたの急に」
「そっか……なんかいつもと違う顔してたから」
「悩みがあるならわしとタツキに相談してもよいんじゃぞ?」
「大丈夫だよリューちゃん。もう過ぎた話だ」
タツキくん、鋭いなあ。さすがは主人公枠だ。大丈夫、いざというときはきみが世界を救ってくれるはずだから俺の心配なんてしなくていいよ。
それで……ユグちゃんは寝ちゃったのかな?
「たこ焼きを消化するためにひなたぼっこしてるみたいです」
本当にただの蛇じゃん。
ユキちゃんの膝の上でどこか気持ちよさそうにじっとしてるユグちゃんは、霊力以外はとても強い精霊には見えなかった。なんなら霊力もリューちゃんと女王には劣るんだけど、なんというか本来の力を出せてない感じがする。今見える霊力はともかく、フルパワーならリューちゃんと女王にも並ぶんだろうな。
「二回戦ん!次の試合はぁ!
それにしても相変わらずここの実況はやかましいなあ。実況この人になってからマイクの音量設定が小さめになったのは未だに覚えてる。そういう実況するゲームじゃないから。画面端とかないから。
まあエンタメとしてはカードゲームの大会でこんな実況するのもありなんだろうな。実際観客にはウケてるし。
……ん?待って、今レイタくん呼ばれなかった?
「お、レイタ来たぜ!レイター!頑張れー!」
「レイタくーん!頑張ってくださーい!」
この中の三人に一人は癖が強すぎる実況に気を取られてレイタくんが呼ばれたことに気づかない。そして気づかなかったのが俺です。
なんて思っている間にレイタくんと黒崎さんがスタジアムの所定の位置まで歩いてくる。あ、やべ。黒崎さんと目が合ってしまった。観戦席とはいえ俺が大会にいることに気がついた黒崎さんは一瞬驚いた顔をしたあと、嬉しそうに
「うおおおお!!!アカネたんがこっち見て微笑んだぞ!!!」
「アカネちゃーん!!頑張れー!!!」
「アカネちゃんしか勝たん!!!」
「んんwww勝つのは黒崎嬢以外ありえないwww」
よかった、すぐ近くに気合いの入ったファンがいてくれたおかげでファンサだったことにできた。だからなんだって話だけど、この四人をスケープゴートにして俺は帰ろうかな。なんか黒崎さんに勘違いされてそうだし、次会った時に観戦席にいたことについて聞かれたら気のせいだと言い張ろう。
「シンイチお兄さん帰っちゃうの……?」
「もう行っちゃうんですか…?これからレイタくんの試合が始まりますよ……?」
しかしまわりこまれてしまった。別に実際に回り込んで止められたわけじゃないけど、小学生二人の純粋に残念がる顔と言葉のあわせ技で帰りづらい……
仕方ない、この試合が終わったら帰ろう。レイタくんが決勝戦まで残らない限りは最後まで観戦席にいる理由もないからね。というわけで席に座り直してスタジアムで位置についたプレイヤー二人を見る。
「悪いけど、今日のアタシはいつもより気合い入ってるわよ?アイツにカッコ悪いところ見せられないんだから」
「アイツというのが誰のことなのかは知りませんが、望むところです」
なんか少し話してるっぽいんだけど、バトル開始まではプレイヤーがいるあたりに設置された小型マイクがオンになってないからなに言ってるのかわかんないな……俺のことについて話してなければいいんだけど……心なしか黒崎さんがすごく静かに燃えてる気がする。
「バトル」
「バトル!」
【
「ドロー!マナゾーンにカードを1枚置く!《砂浜の亀》を召喚してターンエンド!」
【
「ドロー、マナゾーンにカードを1枚置いてターン終了」
【
「ドロー!マナを増やして2コスト!《氷の国の住民》を召喚!」
お、偶数の『連鎖』を持つ
あと、出したいアニマがデッキにいる前提なのも俺にとっては大きな欠点だったりする。多分霊力の影響なんだろうけど、こういうの精霊カードがないと安定しないんだよね。出したいアニマがデッキに残るようにたくさん入れたら逆に引く確率自体は上がっちゃうし、引いたら手札が弱すぎるからカードの効果でデッキに戻すか割り切るしかない。
「《氷の国の住民》の『連鎖』を発動!こいつの『連鎖』は4!自身を墓地に置いてデッキから《氷の国の兵士》を召喚!ターンエンド!」
余談だけど『連鎖』を持つアニマは基本的に奇数コストが魚などの海や川の生き物で、偶数コストが人間になってる。人間から魚が出てきたらサメとかじゃない限りなんか変だからね。
【
「ドロー、マナを増やして《猫又・ルナ》を召喚。『召喚時』効果発動。『燃焼』2でこのアニマをマナゾーンに置き、カードを1枚引く」
出た、黒崎さんの精霊さんだ。二又にわかれた尻尾、その片方の先に赤い炎、もう片方には青い炎を灯した黒猫がにゃあと鳴いてマナゾーンに歩いていった。
相変わらず精霊カードはなんでもありだ。『燃焼』によってデッキの上から2枚を墓地に置いて、マナを増やして手札は減らない。しかも機嫌が悪くなければ必要な時に手札に来る。普通にバトルするのが馬鹿馬鹿しくなる手厚さだ。
「ターン終了」
【
「ドロー!マナを増やす!オブジェクト《竜宮城》を発動!効果で手札を1枚デッキに戻してカードを1枚引く!」
《竜宮城》かあ、毎ターン手札交換できるのは優秀だけど、このゲームの場の上限は5枚だ。条件に合うアニマを好きなだけ出せる《乙姫》の
まあ俺が使うと《乙姫》で出したいカード筆頭の《竜宮城の兵士》が手札にきて仕方ないから入れざるを得なかったんだけど。
「《氷の国の兵士》でプレイヤーを攻撃!さらにこいつの『連鎖』6を発動!デッキから6コストで『連鎖』を持つ《氷の国の騎士》を召喚!ターンエンド!」
【
「ドロー、マナを増やす。《焼畑》を発動」
うわ出たよ《焼畑》。これ作った人なに考えてたの?1コストで3枚落として3枚ドローとかやっちゃダメでしょ。TCGの始祖の初期のカードに1コスト3枚ドローあったけど、あれでも墓地落としはしなかったよ。
まあでも、アドバンテージはただ取ればいいってもんじゃない。相手次第では《焼畑》の対処のしようはある。今の黒崎さんがそれに該当するかどうかは知らないけど。
「『燃焼』3でカードを3枚引く。《不死鳥》の『起爆』が発動」
あ、ダメっぽいな。
『起爆』は『燃焼』によってデッキから墓地に置かれた時に発動する効果だ。誰ですか?これにOK出した人は。そして《不死鳥》の効果は……
「自身を『蘇生』し、3コスト払う」
これまた赤の癖に黒の固有能力『蘇生』を持つカードだ。まあそのコストに赤と黒のマナを要求されるから単色のデッキでは使えないんだけど、黒崎さんは赤黒の混合だからなあ。
だから《焼畑》でドローしながら《不死鳥》が出てくるわけだ。前のターンに《猫又・ルナ》でマナを増やしてるからちょうど足りてる。うーん、許せん。
でも不死鳥の一番許せんところはこっちじゃない。
「《不死鳥》の効果を発動。このアニマがアクティブなら『燃焼』4で相手の場のアニマ1体と自身を破壊し、その後自身を『蘇生』する。《氷の国の騎士》を破壊。この効果で『蘇生』された《不死鳥》はこのターン同じ能力を使用できない」
これである。まず固有能力を三つ持たないでほしい。『燃焼』『起爆』『蘇生』を使ってくる上に、マナを使わずになんか除去してくる。自身を犠牲にするのかと思いきや復活するし、とんでもない当たり屋である。
アクティブじゃないと使えない縛りなんてどうせ出たターンは攻撃できないんだから序盤はどうでもいい。そしてこうなると……
「《不死鳥》の『燃焼』で墓地に置かれた《焚き木》の『起爆』が発動、このカードをマナゾーンに置く。ターン終了」
はい、『燃焼』と『起爆』のドミノ倒しだ。こっちが『連鎖』を名乗った方がいいんじゃないかな。
【
「ドロー!マナを増やして……スペル《コールド・ブレス・ユー》を発動!《不死鳥》を選択して『凍結』させ、カードを1枚引く!」
場のアニマを選択して『凍結』させるスペルだね。3コストと少し重いけど自分のアニマを選択したならマナを増やしながらカードを3枚引けて、相手のアニマを選択しても1枚は引ける。《不死鳥》を『凍結』させても効果は使われるけど、攻撃と阻止は1ターン封じられるから無意味ではない。それにしても先に《竜宮城》の手札交換からしなくてよかったのかな。
「1コスト!《
あ、《竜宮城》使わなかった。忘れてたかよほど手札がいいのか、後者であることを祈るよ。
【
「ドロー、マナを増やす。《
うわ、また嫌なのが出てきた。
《火車》の元々の戦闘力は0だけど、墓地のカードに応じて戦闘力が上がっていく。いまの墓地のカードの枚数は……8枚か。まだ戦闘力4で済んでるけど、放置すると『燃焼』する度に強くなって手がつけられなくなる。
レイタくんのデッキは青、青はアニマの対処を動きを止めるだけの『凍結』に頼りがちな上に『連鎖』を持つアニマは戦闘力が低い。それをわかってるから早い段階で《火車》を出したんだ。これはかなり厳しくなってきたな。
「スペル《焚き木》を手札から発動、このカードをマナゾーンに置いてターン終了。《不死鳥》の『凍結』は解除される」
ぶん回ってるなあ黒崎さん。
【
「ドロー!マナを増やして…………《竜宮城》の効果で手札を1枚デッキに戻し、カードを1枚引く!」
だんだんとレイタくんの思考時間が長くなってきたね。やっぱり厳しいんだろう。わかる。
「スペル《海老で鯛を釣る》を発動!手札を1枚デッキに戻し、カードを3枚引く!さらに《コールドスリープ》を発動!」
《コールドスリープ》か、面白いカードを入れてるね。その効果は……
「場のアニマを2体まで選択し、それが相手のアニマなら『凍結』させる!《不死鳥》と《火車》を『凍結』!」
そして自分のアニマを選択したなら1ターンだけ消失させる。『緊急詠唱』を持つカードだ。青の基本は『凍結』で時間を稼いでいる間に『連鎖』で自分のアニマを強くしていくこと、でもこのカードは『凍結』に加えて自分のアニマを安全な場所に逃がして確実に『連鎖』を使える。
でも今回は『凍結』に使ったね。どうやら相手のアニマが怖いみたいだ。
「《
一気に国が変わった。
【
・青枝レイタ
ライフ20/手札2/マナ5
場:《竜宮城》(オブジェクト)
《砂浜の亀》
《ピラニアの群れ》
・黒崎アカネ
ライフ18/手札6/マナ7/墓地8
場:《不死鳥》(凍結)
《火車》(戦闘力4)(凍結)
備考:後攻のマナ追加の権利未使用
【
「ドロー、マナを増やす。《不死鳥》の効果発動。『燃焼』4で自身と《ピラニアの群れ》を破壊し、自身を『蘇生』」
わあ、全く思い通りに行かないじゃん。《コールドスリープ》で逃がしておけばよかったのに。そしてこれで墓地は12枚、《火車》の戦闘力は6か。
「《酒呑童子》を召喚。『召喚時』効果でデッキか墓地から《鬼に金棒》を1枚手札に加える。墓地から手札に」
ついに出たか、数多のプレイヤーを叩き潰してきた《酒呑童子》。そろそろヤバいかもしれないね、どうする?レイタくん。あと《鬼に金棒》の回収で墓地が11枚に減ったから《火車》の戦闘力は5になった。焼け石に水だね。
「ターン終了。《火車》の『凍結』は解除される」
【
「ドロー!マナを増やして……《砂浜の亀》で《不死鳥》を攻撃!」
戦闘力0の《砂浜の亀》での攻撃、一見無駄でしかないけど、これでようやくまともに動ける感じかな。
「《砂浜の亀》が戦闘で墓地に置かれたなら、マナゾーンに行く!これでマナは7!7コスト《乙姫》を召喚!」
《竜宮城》から《乙姫》と《竜宮城の兵士》3体が出てくる。親の顔より見た光景だ。
「《乙姫》の『召喚時』効果でデッキから《竜宮城の兵士》を3体召喚!そしてそのうちの1体の『連鎖』:1を使用!自身を墓地に置いて《砂浜の亀》をデッキから召喚!ターン終了!」
定番の昔話、浦島太郎セットだ。めちゃくちゃわかりやすくて強いから人気のコンボだね。
ちなみに『連鎖』で出てきた以上《砂浜の亀》も『連鎖』を持ってることになるわけだけど、だからといって《砂浜の亀》の『連鎖』からなにか出せるってことはない。なぜならあのカードはたしかに『連鎖』を持っているが、その数値は0だからだ。
『連鎖』で出せるのは『連鎖』を持つアニマだけ。だから終点になるアニマは『連鎖』:0を持つことで条件を満たしつつどこにも繋がらないようになっている。
これで《砂浜の亀》を阻止に使って、戦闘で破壊された時にマナゾーンにカードが7枚以上あるから《浦島太郎》が出てきて相手のアニマを2体『凍結』させるって算段だけど……
【
「ドロー、マナを増やす。《不死鳥》の効果発動、『燃焼』4で《砂浜の亀》と自身を破壊して自身を『蘇生』」
「くっ……」
まあこうなるよね。《砂浜の亀》は
「スペル《鬼に金棒》を発動。自分のアニマ1体を選択する。そのアニマが相手のアニマとの戦闘に勝利したなら、相手のアニマの戦闘力を上回った分だけダメージを相手に与え、インアクティブになったなら一度だけアクティブになる。《酒呑童子》を選択」
そしてこれはいよいよヤバい。まず《不死鳥》の効果と《鬼に金棒》を使って墓地に行ったことを計算に含めて墓地は16枚、《火車》の戦闘力は8。
しかも《鬼に金棒》によって阻止してもダメージを通される上に二回攻撃を持った戦闘力9の《酒呑童子》ができあがった。そしてそれだけじゃない。《酒呑童子》には
「《酒呑童子》でプレイヤーを攻撃、《酒呑童子》は『燃焼』3しなければ攻撃できない」
ほら出たよこれ。攻撃をする代償としてデッキの上からカードを3枚墓地に置く。『燃焼』はデッキを燃やして火種にすることで効果を使うイメージで作られてるから一応コストとかデメリットのつもりで、『起爆』がそれに対するリカバリーみたいな感じだと思うんだけど、これをデメリットにすれば戦闘力9で貫通持ってて二回攻撃してオッケー!って言った人はだれなの?ねえだれなの?
「《竜宮城の兵士》で阻止……ッ…!」
「《酒呑童子》は《鬼に金棒》の効果でアクティブに戻る。もう一度『燃焼』3してプレイヤーを攻撃。この『燃焼』でデッキから墓地に置かれた『不死鳥』を3コスト払って『蘇生』する」
わあ、《不死鳥》が増えた。そしていま墓地は《酒呑童子》の二回の『燃焼』も含めて21枚、《火車》の戦闘力が10になっちゃった……
「《竜宮城の兵士》で阻止……ぐっ…!」
《竜宮城の兵士》の戦闘力は4、《酒呑童子》の戦闘力は9。《鬼に金棒》の効果で相手のアニマの戦闘力を超えたぶんのダメージを相手に与えるからこれで10ダメージだね。
「《火車》でプレイヤーを攻撃」
「《乙姫》で阻止……!!」
「2体の《不死鳥》は『蘇生』によってこのターンに場に出たアニマだから攻撃できない。ターン終了」
【
・青枝レイタ
ライフ10/マナ7/手札1
場:《竜宮城》(オブジェクト)
・黒崎アカネ
ライフ18/マナ9/手札5/墓地21
場:《酒呑童子》(インアクティブ)
《火車》(戦闘力10)(インアクティブ)
《不死鳥》×2
備考:後攻のマナ追加の権利未使用
【
「僕のターン…ドロー……!マナを増やす!」
あ、強い霊力。どうやら案の定駆けつけたらしい。
「《ニヴルヘイムの女王》を召喚……!!『召喚時』効果で場のアニマを5体まで選択して『凍結』させる…!!相手の場のアニマ4体を『凍結』!!!」
レイタくんの切り札にして強力な精霊さんである《ニヴルヘイムの女王》、そして女王によって凍らされた自分のアニマ4体を見ても表情ひとつ変えない黒崎さん。どっちが氷の女王かわからなくなるレベルだ。
女王も黒崎さんの反応でどうやら察しているらしいね。そもそも黒崎さんは手札が5枚もあってマナを残した上でターンを終了している。
ただたくさん手札やマナがあるからって欲張ってアニマを出さない、こういう状況への警戒は当然してるってことだね。それに……
「ターンエンド……!」
【
「ドロー、マナを増やす。スペル《バックドラフト》を発動。自分の手札を3枚墓地に置き、自分の墓地のカードを1枚手札に戻してそのコストをマイナス3する。ただし、自分のデッキが2枚以下ならマイナス3ではなく自分のデッキ枚数と同じコストにする」
「なっ……!」
黒崎さんのデッキは開始時のドローで1枚減って、残りはピッタリ0枚。『燃焼』の弱点である爆速で減るデッキの制御が完璧だ。完璧すぎて思わずニヤついてしまう。正直、精霊カードを持たないがゆえの引きの微妙な不安定さも含めて俺にはあんなことはできる気がしない。
そういう意味では虚しくもあるけど……仮に俺が精霊カードの力を借りようと思っても打算ありきで精霊に気に入られるわけがない。そこは仕方ないと言うしかないし、後悔もしていない。
それに、黒崎さんが完璧だったのはデッキ枚数の制御だけじゃない。あれを見るのは久しぶりだな。
「《バックドラフト》の効果で手札に戻したアニマを召喚────」
久方ぶりに拝むことになったその姿。南から現れた、神聖なまでに黒く、平穏なまでに燃えたぎる守護者。
「────《
まあ、さすがに運が悪かったと思うよ。
少なくともレイタくんが二回戦で当たるべき相手ではなかった。
お、女王も冷や汗を流した。レイタくんの話によると強気で無茶苦茶なことをする女王でもビビることがあるんだね。それもそうか、あのカードは精霊カードではないけど、その上でなお神を冠するカードは強い。昔俺も見たことがあるけど、本当にめんどくさかったよ。
「《
「ぁ……」
レイタくんも察したらしい。黒崎さんのマナゾーンのカードは10枚、手札は1枚、デッキは残り0枚、場にはアニマが5体。全部足して16枚、そしてそれ以外のカードは全てスペルの使用や『燃焼』で墓地に行った。さて、
「私の墓地のカードは24枚、つまり10ダメージをアナタに与えるわ」
お、勝ちが確定したからか口調が人と話す時のものに戻った。めちゃくちゃ集中してて別人かと思ったもんね。いや前にも集中してる時にあんな感じになってるの見たことあるけど、二年くらい大会に出てないから久しぶりにあんな感じの黒崎さんを見た。
「ぁ……があああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
そんなわけで、レイタくんは《乙姫》や《ニヴルヘイムの女王》を使った上で黒崎さんのライフを2点削っただけで焼き尽くされて二回戦敗退となった。なんなら後攻のマナ追加の権利すら使われてない。まあそれは調整のためだったのかもしれないけど。
これで俺が試合が始まる前に言ってた通りに帰れる。
「レイタ……」
「レイタくん……」
未だかつてないボロ負けに目元を腕でおさえながらスタジアムから退場するレイタくんと、そんな彼を心配するように声を出した小学生二人を