プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜   作:匿名S

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15話(閑話2/2)『青枝レイタの発掘』

 

 

 急にカードが変わったのには驚いたけれど、女王……じゃなかった、ニクスが『カードの名前を変えただけだから気にしなくていい』と言っていたからひとまず置いておくことにした。

 それにしても、夜中まで寝ていたからここから寝付くのも厳しいな。今は夜中の二時過ぎ、少しデッキの調整でも……いや、違う気がする。

 

 あの大敗は今自分の中にあるものだけでなんとかしようとしてもどうしようもない。そう思ったからひとまず携帯端末で検索して青色のデッキを使う強いプレイヤーの試合を見てみることにした。

 あわよくば黒崎アカネさんを倒しうる青色の使い手の試合を見つけられないかと思いつつ調べてみると、三年くらい前の大会の中継動画にたどり着いた。

 

「これは……!」

 

 その試合は二人の実況解説が事細かに試合やカードについて説明してくれていて、選手の狙いやなにが試合を動かしているのかがすごくわかりやすかった。

 

 誰がバトルしているのかはカメラが遠くてよく見えなかったけど、ひとつめの動画からその選手の試合は僕を魅了した。

 

「おお!?青黒のデッキは初めて見たぞ!?」

「《地獄の門番》で『連鎖』持ちを相手の攻撃から守りつつ序盤動けてますね、《異世海老(いせえび)》が1ターン目から置けたのが効いてます!」

「さあさらに《悪夢の続き》で『連鎖』持ちを蘇生していく!」

「『連鎖』はマナを使わないので『緊急詠唱』のためのマナを残しやすいんですよね、それで《悪夢の続き》か……黒縛りがないのが活かされてますね!」

 

「さあ《恐怖の幻影》が睨みをきかせている!」

「『連鎖』持ちを倒したい、でも攻撃したら《恐怖の幻影》が阻止してきて『連鎖』持ちがさらに増える特大のジレンマです!《恐怖の幻影》で5コスト以上のアニマを『蘇生』しても自分のターン終了時に墓地に戻ってしまいますが、裏を返せば自分のターンの終わりまではいてくれるので『連鎖』でその制約を踏み倒せるんですよね!」

 

 思わず笑みがこぼれる。合理的で磐石なプレイだった。僕も青黒にしようかな?いや、デッキだけじゃなくて自分自身も強くならなきゃ。

 次の試合の動画も見よう。

 

「《コールドスリープ》で自分のアニマを2体、ターン終了時まで消失させて逃がした!これはライフで受けて次のターンの盤面を強くする選択か!?」

「一度流れを掴んでしまえば『連鎖』も通りやすくなると踏んでアニマを大事にする判断ですね、これで次のターンの()()()()の盤面はかなり強いぞ?」

 

 ……真常(しんじょう)選手?

 

「最後の最後、《コールドスリープ》を使ったターンで減ったライフは『凍結』で守り切ったァ!」

「しかも『凍結』は()()()()()()()()に解除されますから、相手ターンに《砂浜の亀》から出てきた《浦島太郎》で『凍結』させれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんですよね!」

「一時的な不利を恐れず、中盤に《コールドスリープ》で場を空けたことで減ったライフを『凍結』で守りながら相手の阻止ごと封じて詰めきった、完璧なゲームメイク!決勝戦進出は()()()()()()!これで決勝戦は真常シンイチVS黒崎アカネの試合に決定だァ!」

 

 真常シンイチ……!間違いない、この動画、シンイチさんの現役時代のものだ……!!

 しかも次は黒崎アカネさんとの試合!!動画は……ある!!

 

「この試合は《竜宮城》を使わず盤面の広さを十全に使っている!」

「このゲームは不要なカードをマナゾーンに置いてマナとして消費できるので、それで上手く折り合いをつけていますね。手札の質は《海老で鯛を釣る》で高めて間に合わせています」

「おっとこれは温存していたか!?《乙姫》の着地前の《海老で鯛を釣る》だ!おそらくは《竜宮城の兵士》を戻したでしょう!」

 

「マナを増やして『緊急詠唱』を匂わせながら《乙姫》を出した!」

「コストが足りるからってすぐに《乙姫》に飛びつかなかったのは我慢強いですね!それまでを『連鎖』持ちでやりくりしてしっかり《酒呑童子》で詰まない動きをしています!」

 

「さあ《焔摩天》の射程圏内にも入らないように警戒している!」

「《鬼に金棒》を付与した《酒呑童子》の貫通2回攻撃は《竜宮城の兵士》2体で阻止しても10ダメージ、《砂浜の亀》で阻止して《浦島太郎》で2回目の攻撃を『凍結』で止めても9ダメージ入るので『緊急詠唱』による攻撃前の『凍結』を警戒させてますね!これさえ凌げば《焔摩天》でもまだ負けないぞ!?」

 

 ……あ。

 

「いやこの試合は惜しかった……!最後にフィニッシャーが引けていれば勝負は真常選手に傾いてもおかしくなかった……!」

「やはり『燃焼』でデッキを減らして最後には《バックドラフト》で回収できる黒崎選手の方が最後の最後に勝ちを拾いやすいですね……もっともそれは黒崎選手が『燃焼』でデッキを燃やし尽くさないように気をつけながら戦っていたことへのご褒美のようなものですが、《酒呑童子》に耐えた真常選手も黒崎さんのライフを削りきれるようなご褒美を引きたかったところでしょう」

 

 この試合、最後にシンイチさんが《ニヴルヘイムの女王》を引けていれば勝ってた。

 つまり、ニクスが力を貸してくれるなら、僕にシンイチさんみたいな戦い方ができれば、黒崎アカネさんにも届きうるということだ。

 

 振り返れば今まで僕はカードに頼り切りだったかもしれない。《乙姫》にニクス、単純で強いカードを使って僕自身が強くなったと思い込んでいた。

 少しずつでもいい、カードの使い方への工夫や相手の強みを知って警戒するような、シンイチさんのような戦い方を学ぶ必要がある。

 

 

 先が見えないほど暗くて長い道に、小さいけれど確かなゴールが、光が見えた気がして、眠くなるまでシンイチさんの試合の動画を見ていた。

 

 そして生活リズムが崩れた僕は次の学校で寝坊した。もう夜更かしはしない。

 

 

 

 

「今日は塾の前に来たんだ」

「はい。タツキとユキにはこの前心配かけたことを謝って、先に行かせました。あとから聞いたんですけど、シンイチさんも来てくれてたんですよね?心配かけてすいません」

「気にしなくていいよ、だれしもが通る道だ。それで、いま来たってことはなにか買ってくの?」

「カフェラテのM、アイスで」

「了解」

 

 レイタくんが珍しくあくびをしたから、アイスカフェラテの容器を渡しながら聞いてみた。

 

「珍しいね、レイタくんが眠そうにしてるの」

 

 そう言うと、レイタくんは答えになってなさそうでよく考えたらなってる返事をした。

 

「シンイチさんの過去の試合を見ました。僕にプレスピを教えてください。……え、どういう表情してるんですか?」

 

 ……梅干しを一気に口に詰め込まれたみたいな表情、かな。

 

 

 言っておくけど、昔は青色の使い手だったとかじゃなくて色んなデッキを試す中でたまたま青色も使っただけだからね?ふたりめの指南はしんどいって。

 

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