プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜   作:匿名S

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35話(閑話)『調査報告書……?え?これが?本当に?なんか1024GBくらい容量ない?』

 

 

 とあるビルの一室。そこでは黒いスーツを着こなした、まっすぐな金のロングヘアーの女性がある調査報告書を読んで阿呆面(あほづら)を晒していた。

 

 一枚目の報告書には調査対象やその身辺についての情報が記載されており、生年月日から素性、活動範囲にいたるまで詳細に書かれた報告書はさすがだと思いながら二枚目の内容に目を通した瞬間、彼女は宇宙を背景に背負うこととなったのである。

 

 

 

 

 

調査対象の人格・行動について。

 

【見解】

純粋にプレイスピリットを競技として楽しみたかったのに周囲の人間や環境のせいで擦り切れて壊れていくのがかわいそうでたまらなくかわいい、守ってあげたいし壊れていくのも見たい。

 

 

【以下、確認できた状況】

・高校受験の際に志望校の偏差値を大幅に下げたらしく、その影響でやさぐれて勉強を放棄し夜遊びをしていた時期がある。基本的になにをやっても楽しくなさそうで、その時に見せた物憂げな顔や茫然自失とした顔がたまらない。

 

・『コロッセオ』で戦っているときに見せたことのある好戦的な笑みが最高。当時中学生で戦績次第では死の危険があるのに追い詰められても笑みを浮かべていたのがいい。

 

・「死ぬのは怖いし、痛いのも苦しいのも嫌いだ」と言っていたのにプレイスピリットを楽しむためだけに命をかけて、対戦相手に自分と一緒に命をかけてくれたことを感謝したのがどうしようもなくて最高。もうそうでもしないと生きてる実感ができない、あるいは楽しめることがないと思われる。すごくいい。

 

・なのに普段はフラットで素っ気ない雰囲気なのもギャップがいい。そしてそれがおそらく人と深く関わらないようにするために取っている態度なのもいい。

 

・最近はプレイスピリットを含めあらゆることへのやる気をなくしたのか作り笑いを除きほとんど表情を変えない。これはこれでダウナーっぽくていいし、たまに見せる驚いた時や嫌な時の表情がよりかわいく見える。

 

・他の人より精霊が多く寄っているのに精霊に頼らず、必要な時には容赦がない。精霊にすら頼れないのかわいい。

 

・周りの人を傷つけたくなくて壁を作っているのがかわいい、人と話すのも苦手で人と目を合わせないのもかわいい。

 

・そして優しい。自分が良くも悪くも人に影響を与えることを悟っているから深く関わろうとしないし、そのためにどこか素っ気なく見える態度を取っていると思われるのがけなげ。

 

・過去のトラウマと思われる出来事を思い出した時にわずかに顔が歪んだり、トラウマと重なる、あるいはトラウマに近い結果になることが予想されるような出来事があった時にすごく辛そうな様子になるのがかわいそうでかわいい。

 

・責任感や自己犠牲の精神が強く、それゆえに責任を感じるようなことや面倒事は可能な限り避けているのにどうしようもない時は『なんとかする』と言って自分の感情や負荷を無視して全力で向き合うのが救えなくて最高。抱きしめてあげたい。

 

・安眠が好きで休日に家にだれもいない時は昼寝をしたり、金曜日の夜は翌日に学校もアルバイトもないから少し嬉しそうに寝たりする。

大抵は日頃のストレスや母親がテレビを見ながら晩酌をしている時の音などの外的要因の影響で寝付きが悪く、たまに悪夢を見ているのかうなされている様子を見せるのがかわいそうでかわいい。

 

・曲がりなりにも複数人の女性に慕われているのに人と関わりたくないからそれを『面倒事』と認識しており、実際定期的に酩酊して面倒な絡み方をする地雷系やもはや趣味でストーキングする手遅れの金髪、さらには厄ネタの塊である女子小学生に骨を折られたりなど本当に面倒事なのが面白い。

しかも小学生はもちろん事案で、前二人は知名度のあるプロで成人済、真常シンイチは現在17歳で未成年のため事案。だれと関わってもさらなる面倒事を呼びかねないのがどうしようもなくて最高。さらに事情を知らない外野から見たら羨ましく見えるのも救えなくていい。

 

・『雷霆教』の件では両手を雷光に焼き焦がされながらも依代となるカードを破いて組織ごと壊滅させる結果になった。そのあと痛みに顔を歪めながら『焦げた手をどう誤魔化すか』を試行錯誤していた。

優先順位が自分の身よりも周りに無駄な心配をさせず面倒事を起こさないことの方が上になっててかわいそう。かわいい。

 

 

 

 

 

 宇宙に飲み込まれていた金髪の女性は報告書を読み終えてしばらく、ようやく地球に帰還を果たすとなにから言及するべきかを測りかねて額をおさえる。

 

 当然だろう、誰がちゃんとした一枚目の報告書の次に宇宙が書いてあると予想できようか。というか改めて見ると一枚目の報告書の情報も個人を調べたにしては妙に詳細な気がしてくる。

 

 二枚目の報告書の情報がノイズな上に大きすぎたため、一枚目の方も心なしか別の見え方をしてしまっていた。

 

 あと気になる点があったため、すごくためらいながら二枚目の報告書の最後の部分をもう一度見てみると『依代となるカードを破いて』と書いてあったため今度は別のノイズを食らった。

 え?依代のカード破いたの?たしかに前に『雷霆教は依代となるカードすら失った』って言ってたけど、破いたの???なにやってんの????

 

 金髪の女性は今まで食らった宇宙のダメージも含めて再び混乱し、再起動に三分を要した。

 彼女はこの時、なんとなくだがメモリがいっぱいで重くなったコンピューターの気持ちを身をもって理解したような気がしたという。

 

 冷静に考えてほしいが、コンピューター自体に感情はない。人工知能ならともかく。

 

 とりあえず、対処する必要性が生じないまま終わった案件とはいえ、『雷霆教』に関する報告が壊滅から二年後になった理由の半分くらいはこれだろうなと察した。

 大方、調査の途中で性へ……好みに合致する逸材を見つけてついでにストー……調査対象に加えたのだろう。

 

 やりやすいように調査の細かい内容や報告のタイミングなどを現場判断に委ねている弊害が完全に予想外のところで現れていた。

 なにかの間違いで調査対象の組織にやられて帰ってこなくなることなどは兼ねてより危惧していたのだが、なにを間違えたか途中で一般の男子学生に頭をやられて戻ってこられなくなるとは全く危惧していなかった。

 

 当たり前だった。そんな危惧をだれがするというのか。

 

 それはそれとして、他の調査もしっかり終えて帰ってきているから仕事はきっちりこなしているし、対処する必要がないことで一々報告に来る必要もないからまとめて終わらせてから来た方がいいのは理解している。

 さらに言うと『雷霆教』を壊滅させた一般人の情報を簡単に手にすることができたのはこの行動のおかげでもあるのだが、なんというかこう……形容しがたい感情であった。

 

 そしてしばらく考えたのち、ひとまずもっとも大きな疑問点から聞いてみることにした。

 

「あの……これら全部そうですが、特に家での様子などはどうやって……?」

「……」

 

 銀髪のミディアムヘアにメイド服がよく似合うクールな印象の女性、白銀(しろがね)マリナは金髪の女性が再起動するまでゆっくり紅茶を嗜んでいたが、その問いかけを受けると無言で微笑(ほほえ)んだ。

 

 その顔には『追及したらわかってますよね?』と書いてある気がしたので、マリナに『長官』と呼ばれている金髪の女性は考えるのをやめた。

 

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