プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜   作:匿名S

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38話(閑話)『黒崎アカネの心配』

 

 

 ある日曜日、最近テストプレイでプレスピしっぱなしだったからたまには他のゲームでもしようと思ってゲーセンに来たらシンイチがいた。なんか見たことある子たちを連れて。

 

「なんか収拾つかなそうな状況になってるわね。引率(いんそつ)にでもなったの?」

「きみも含めてね」

「失礼ね……相変わらず」

 

 この前シンイチがいた大会でバトルした子と、応援していた子ふたり。あとのひとりは知らない子だけど、まあクラスメイトでしょ。

 

「このゲーム、4人で対戦できますよ!みんなでやりませんか?」

 

 小学生4人がレースゲームの方に行ったのを後目にシンイチの向かう先についていく。

 

「ほら、マシロちゃんも一緒にやりましょう!」

 

 そう言って緑髪の子が、シンイチの方と小学生たちの方のどっちに行くか迷っている様子の白黒の髪の子を連れて……マシロちゃん?

 

 なんか聞いたことあるような……あ、思い出した。メイカと飲んで色々聞いたあとに軽く酔った勢いでシンイチを待ち伏せした時に聞いた名前だ。

 なぜかそこからの記憶がなくて、目が覚めたら茂みの中にいたけど確かに聞いた。

 

 え、じゃああの子がシンイチの言ってたマシロちゃん……?小学生よね……?

 

 事情があるのは察しがつくけど……そもそも小学生の女の子にプレスピを教えるってどういう事情なんだろう。

 でも、シンイチはなぜか殺し屋に狙われたことがあるみたいだし、きっと想像もつかないような理由があるんだろう。

 何かあるならもっとアタシを頼ってほしいと思うけど、部外者が気安く首を突っ込んでいい話かもわからないから言い出しにくい。

 

 アタシにできることはせいぜいシンイチに無理しないように言うことくらいなのがもどかしい。それすらもしかしたら余計なお世話なのかもしれないし。

 

 

 あ、シンイチがガンシューのボックスに入った。ちょうどいいからアタシもやろ。アイツに協力することの大切さを教えてやるんだから。

 ……本気でガンシューでそんなことを伝えられるとまでは思ってないけど、そういう姿勢くらいは出していかないとね。

 

「私もやるわ」

 

 アタシがボックスに入ってそう言うと、シンイチは少し嫌そうな顔をしたけどすぐに諦めたらしい。

 

「……まあいいか、足引っ張らないでね」

 

 相変わらず失礼ね。でもすぐ受け入れるし、機嫌を損ねた様子はないから本気で拒絶してるわけじゃないのはわかる。

 意図的に素っ気なくしてるんならその程度じゃ退()いてあげないんだから。

 

「こっちのセリフよ」

 

 ……それにしても、ボックスにふたりで入ると近いわね。

 

 

 

 このゲーム、敵硬すぎじゃない?攻撃までに倒し切るの結構難しいんだけど。

 

 でもふたりで同じ場所を撃つのは思ったより上手くできた。嬉しい。

 

 何度かコンティニューしながらステージをクリアしていく。

 

 思えばシンイチとバトルすることはあっても協力して一緒に何かをすることはなかったかもしれない。プレスピは一対一のゲームだから当然だけど、プレスピ以外で何かをした記憶はほとんどないからこういうのも悪くないわね。

 

 それにしてもコイツ、全然心拍数上がってないわね。ゲーム内でも『ビビらなさすぎて面白くない』って言われてるじゃない。

 なのにアタシだけずっとビビってる判定なの、なんか恥ずかしい……

 

 結局最後までクリアしたけど、このゲームのことを知ってるっぽいシンイチに何度か助けられた気がする。もどかしいけど、それはそれとして一度やってみたかったことがあった。

 

 手をグーにしてシンイチの方に差し出す。すると、シンイチもそこに拳をあわせてくれた。グータッチというやつだ。

 アタシはシンイチのことをライバルだと思っているけれど、こういうことはしたことがなかった。そもそもコイツはハイタッチとかするタイプじゃないし、アタシのキャラでもない。

 

 だからはじめてやってみたグータッチに応じてもらえて嬉しかった。

 

 シンイチは、どう思ってるんだろう?

 

 

 

「それじゃあ、僕たちは先に帰ります」

「またなー!」

「さようならー!」

「さ、さようなら……」

「またね」

 

 ガンシューが終わるともう夕方だったから、小学生たちが帰っていまはふたりきり。

 

 このままだと流れに乗ってシンイチも帰るって言い出しそうだから、先んじて提案した。

 

「ねえ、ラーメン食べに行かない?」

 

 ここからすることと言ったらご飯くらいしかない。ただこの辺は居酒屋が多いから消去法でラーメン屋。でも寒いし日も落ちるからちょうどいいかなと思ってしてみた提案は意外にもすんなり受け入れられた。

 

「らっしゃい!」

 

 近くのラーメン屋で食券を買って席につくと、シンイチはお冷をひと口飲んでから聞いてきた。

 

「今日は飲まないの?」

「今日はいいのよ、アナタがいるからね」

「そういうものなの?」

「そういうものなの」

 

 シンイチがいるのにお酒なんて飲むわけないじゃない。

 

「そういえば、この前言ってた『マシロちゃん』って小学生だったのね」

 

 せっかくだからアタシも気になることを聞くことにした。

 

「アナタもしかしてロリコ──」

「違う」

「冗談よ」

 

 言い切る前に否定したシンイチを見て少し安心する。本当に小学生好きとかだったら次からどう接したらいいか悩むところだった。

 

 ただ……

 

「……事情は聞かないでおいてあげる」

「……ありがとう」

 

 結局アタシにできるのは深入りしないことくらいなのよね……

 

 今回に限ってはマシロちゃん側の事情もあるだろうから、なおさら強引なことはできない。

 

「へいお待ち」

「「どうも」」

 

 店主さんへの返事が完全に被ったから、微笑ましいものを見る顔で笑われた。まあわざわざ気にすることはないけど。

 

 

 

「また明日からテストプレイなの」

 

 ラーメン屋を出て駅へ向かう途中、シンイチに話しかける。

 

「そうなんだ」

「さすがにそろそろ疲れてきたけど、もうすぐ終わるらしいから頑張るわ」

「頑張ってね」

「そういうアナタは頑張りすぎるんじゃないわよ?」

 

 顔を歪めたシンイチに思わず笑ってしまう。

 

 もうお見通しなのよ、アナタがそういう人だってことくらい。

 

 大会に出なくなったばかりのころは高校受験が忙しいのかなくらいにしか思っていなかったけれど、最近またシンイチと会うようになってわかった。

 コイツはアタシが想像しているよりずっと重荷を背負って、無理をして、辛い思いをしてきたんだって。

 

 ……そう考えると、すぐに気づいてあげられなかった自分が不甲斐ない。せめて少しでも、今からでもシンイチが自分を大事にできたら。そう思って語りかけた。

 

「本当に、頑張りすぎるんじゃないわよ。シンイチ」

「……頑張らせてくる世界が悪いと思わない?」

「普段一時間かかる宿題を頑張って30分で終わらせたらママに『あと30分勉強しなさい』って言われたこととかないかしら?」

「わかったよ。要するに、無茶な要求に無理して応えてるとそれにつけこんでもっと無茶振りされるからやるにしても適度に力を抜けってことね」

「わかってるじゃない」

 

 でも、わかってるだけじゃ意味はない。

 

 理屈ではどれだけわかっていても、シンイチは必要があればいくらでも無理をすると思うから。

 

 アタシは前からシンイチに対して『気づいたら消えていなくなってしまいそう』と思っていたけど、最近はよりその色が濃い気がする。

 

 消えるどころか、壊れてダメになっちゃいそうでどうにも目を離したくない気持ちになる。

 

「他人に優しくしたっていいけど、自分を一番大事にしなさいよ。シンイチ」

 

 いつの間にかシンイチの足もとに来てたルナも同意するように鳴いた。ルナからも言ってやりなさい。

 

 

 

 さて、アタシも明日からもう少し頑張ってテストプレイを終わらせないとね。終わったら今度はアタシからシンイチを呼び出して一緒に出かけようかしら?

 

 ……あ、そういえばアタシ、シンイチの連絡先知らないわ。

 

 もう解散しちゃったし……また会った時に教えてもらお。

 

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