プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜 作:匿名S
「決勝戦のぉ!試合はぁ!!黒崎アカネぇ!!
相変わらずやかましい実況に呼ばれてスタジアムに歩いていくと、そこにはこの前まで見かけなくなっていた顔があった。
「久しぶりだね、アカネさん」
伏見メイカ。突然大会に出るようになって、それからすぐに好成績を残して早い段階でプロになったプレイヤーだ。そして優勝争いに頻繁に絡むプレイヤーでもあった。
つい最近まで活動を休止してたみたいだけど、今は憑き物が落ちたかのようにスッキリとした顔をしてアタシの前に立っている。
「いい顔するようになったわね。なにか嬉しいことでもあったの?」
「ああ。憧れの人と全力でバトルして、しかも『強くなったね』って言ってもらえたんだ」
そんなことがあったのね。確かにそれは嬉しいし、ここまで調子が良さそうなのもわかる。
「よかったわね」
「うん。でもアカネさんが羨ましくもなったかな」
「なによそれ」
「アカネさんは現役時代の
……現役時代の、彼?
もしかして、憧れの人って…………
「僕がもっと早く大会に出ていれば現役時代のシンイチくんと全力で戦えたのかなって思うと、
「……」
アタシの頭の中で、デフォルメされたちっちゃなアタシが何人も出てきて色んなことを言ってる。
『シンイチはすごいんだから!憧れるのも当然よね!』
『当時からライバルって言えるくらい戦えたのはアタシだけなんだから!』
『シンイチとバトルしたなんてズルい!アタシもバトルしたい!』
『ちょっと、シンイチに無理させないでよ!今のアイツは心が万全じゃないんだから!』
「……アカネさん、ぼーっとしてどうしたの?」
はっ、脳内会議みたいな何かが発生してフリーズしてた。
とりあえず、ここであんまり話して試合開始の時間を遅らせるのも良くない。今は気になったことの中ですぐ聞けることだけを聞くことにした。
「ふたつだけ聞かせなさい。全力でバトルしたっていうのはシンイチも全力だったってこと?」
「多分全力だったと思うよ。最後の方は焦ってるところを見せてくれたし」
「そう。バトルの結果は?」
「負けちゃったよ。あと一歩だったんだけど、《蜘蛛の糸》で逆転負けしちゃった」
シンイチに《蜘蛛の糸》まで使わせた、つまりそれだけ追い詰めることができたということだ。
それが本当なら確かにメイカは強い。それはそれとして……
「そう。潰すわ」
「なんで!?」
理由なんてこの際どうでもいいわ。
「バトル」
「バトル!」
【
「ドロー!手札を1枚マナゾーンに置いて《一番槍》を召喚!」
先攻で《一番槍》、いつも通り赤白に《一番槍》みたいな透明を混ぜた
「『突撃』を持つ《一番槍》は場に出たターンでも攻撃できる!プレイヤーを攻撃してターンエンド!」
【
「ドロー、手札を1枚マナゾーンに置いてターンエンド」
【
「ドロー!マナを増やしてスペル《焚き木》を発動!このカードをマナゾーンに置く!」
2ターン目に《焚き木》なんてアグロじゃ手札悪くなきゃしないわよね?デッキもある程度調整されてると思った方が良さそうね。
「《一番槍》でプレイヤーを攻撃してターンエンド!」
【
「ドロー、マナを増やして《猫又・ルナ》を召喚。『召喚時』効果発動。『燃焼』2で自身をマナゾーンに置いてカードを1枚引く」
デッキの上から2枚が墓地に置かれ、ルナが一度鳴いてマナゾーンに歩いていった。
「『燃焼』によって墓地に置かれた《
《
墓地が減るから《火車》みたいに墓地のカードを参照するカードがある時は使わないこともあるしそもそも入れないこともあるけど、今回は《火車》なんて『浄化』で効果を無効にされて意味なくなるだろうしちょうどいい。
それにしても、前から思ってたけど見た目が
【ターン終了時の黒崎アカネの状況】
ライフ18/手札7/マナ3/墓地1/デッキ残り29
【
「ドロー!マナを増やして《イカロス》を召喚!《一番槍》でプレイヤーを攻撃してターンエンド!」
鬱陶しいけど、《一番槍》はまだ処理しきれない。仕方ないわね……
【
「ドロー、マナを増やして《不死鳥》を召喚」
《不死鳥》は『起爆』で自身を少ないコストで『蘇生』できるからそれで出した方が得だけど、『燃焼』から確実に《不死鳥》を落とせるとは限らないからさすがに仕方ない。手札から出しても効果は変わらないし。
「《不死鳥》の効果発動。このアニマがアクティブなら『燃焼』4で相手の場のアニマ1体と自身を破壊し、その後自身を『蘇生』する。この効果で『蘇生』された《不死鳥》はこのターン同じ能力を使用できない。《イカロス》を破壊してターンエンド」
【ターン終了時の黒崎アカネの状況】
ライフ17/手札6/マナ4/墓地5/デッキ残り24
場:《不死鳥》
【
「ドロー!マナを増やす!スペル《
《光臨》。確か手札から白色を持つアニマを1体召喚し、そのアニマが4コスト以上ならターン終了時に手札に戻すスペルだ。
大体《
「《光臨》の効果で手札から《
……やっぱりデッキ調整もしたみたいね。
「《玉藻前》の効果発動!『燃焼』9で相手の場のアニマ1体を選択して自分の場に移動させ、場を離れるまで自分のアニマとして扱う!《不死鳥》を選択!」
《不死鳥》が持っていかれた。《玉藻前》はターン終了時に手札に戻るとはいえ、デッキを燃やすのが遅れるのは面倒ね……
「《一番槍》と戦闘力4の《不死鳥》でプレイヤーを攻撃してターンエンド!ターン終了時に《光臨》の効果で《玉藻前》は手札に戻る!」
【先攻4ターン目終了時の状況】
・伏見メイカ
ライフ20/手札2/マナ5/墓地11/デッキ残り21
場:《一番槍》(インアクティブ)
《不死鳥》(インアクティブ)
・黒崎アカネ
ライフ12/手札6/マナ4/墓地5/デッキ残り24
場:なし
備考:後攻のマナ追加の権利未使用
【
「ドロー、マナを増やしてスペル《地獄からの召喚》を発動。墓地の《
序盤から《一番槍》に攻撃され続けて、もう《飛翔する天使》の攻撃三回の射程距離に入ってる。耐え凌ぐ事より先に相手を倒すことを考えなきゃ。
「《酒呑童子》の『召喚時』効果でデッキか墓地から『鬼に金棒』を手札に加える」
今回はデッキから手札に加えた。
「ターンエンド」
【ターン終了時の黒崎アカネの状況】
ライフ12/手札6/マナ5/墓地5/デッキ残り22
場:《酒呑童子》
備考:後攻のマナ追加の権利未使用
【
「ドロー!マナを増やす!《不死鳥》の効果発動!『燃焼』4で《酒呑童子》と自身を破壊し、その後自身を『蘇生』する!」
マナを使わずに除去ができて、さらに『起爆』を狙えるからって素直に《不死鳥》の『燃焼』を使ってきたわね。もしかしたら《天罰》とか入れてないのかしら?
「じゃあ《不死鳥》がアタシの墓地に戻るから、アタシの場に『蘇生』されるわ」
「えっ……」
「それと《酒呑童子》の効果発動。このアニマが相手によって場から墓地に置かれたなら、相手の場のアニマ1体を選択して破壊する」
「……えっ?」
まだ経験は足りてないみたいね。《不死鳥》の効果はそういう処理になるのよ。
そして《酒呑童子》が墓地から頭だけの状態で出てきて『鬼に横道なし!』と
「……仕方ない、《
出てきたわね、《神告の天使》。これで次のターンからは《飛翔する天使》が攻撃してくるようになる。
「《神告の天使》の『召喚時』効果で自身をデッキに戻し、次のターン開始時に白色を持つアニマをデッキから召喚する!ターンエンド!」
【
「ドロー、マナを増やす。スペル《鬼に金棒》発動。自分のアニマ1体を選択し、そのアニマが相手のアニマとの戦闘に勝利したなら相手のアニマの戦闘力を上回った分だけダメージを相手に与え、インアクティブになったなら一度だけアクティブになる。《不死鳥》を選択して《一番槍》とプレイヤーを攻撃」
これで《一番槍》を倒して超過ダメージの3点とプレイヤーへの攻撃の4点でメイカは残り13点、次のターンに出てくる《飛翔する天使》も《不死鳥》で処理できる。
「《火車》を召喚してターンエンド」
『浄化』されたら意味ないアニマだけど、ここまで一度も『浄化』を持つカードを使ってないから出しておく。
《火車》は墓地2枚につき戦闘力が1上がる。まだ墓地が7枚だから戦闘力は3で《飛翔する天使》で取られるラインだけど、そうなったら《不死鳥》が残るしライフも減らない。
2枚目の《光臨》で《玉藻前》でも出さない限り裏目にはならないから、置くなら今よね。
【ターン終了時の黒崎アカネの状況】
ライフ12/手札4/マナ6/墓地7/デッキ残り21
場:《不死鳥》(インアクティブ)
《火車》(戦闘力3)
備考:後攻のマナ追加の権利未使用
【
「ドロー!マナは増やさない!前のターンに使った《神告の天使》の効果でデッキから《飛翔する天使》を召喚!この効果で5コスト以下のアニマを召喚したなら、そのアニマに『突撃』を付与する!」
その《飛翔する天使》でどこを攻撃するのか、それで結構アタシの動きも変わる。
さあ、どう来るのかしらね。
「《飛翔する天使》は『飛翔』を持っているから阻止されない!プレイヤーを攻撃!」
《不死鳥》も《火車》も無視した?残り8点をここから削る算段があるのかしら。
「スペル《天罰》を発動!相手の場のアニマ1体を選択し、『浄化』して破壊する!《火車》を破壊!」
なるほど、温存してただけってことね。
「《送り犬・ポチ》を召喚してターンエンド!」
……あのアニマ、名前がついてるから精霊ね。ルナと同じなのかしら?
【
「ドロー、マナを増やす」
《不死鳥》の攻撃か効果で相手のアニマを除去したいけど、攻撃だと《送り犬》に阻止される。でも《飛翔する天使》でライフを削ってくるなら次のターンは《不死鳥》がフリーになる。それに『燃焼』のデッキ制御も考えなきゃいけない。
ここは……
「《不死鳥》で《飛翔する天使》を攻撃」
「《送り犬・ポチ》で阻止!そして《送り犬・ポチ》の効果発動!このアニマが場を離れたなら、次のターンの終了時まで《飛翔する天使》は攻撃とカードの効果の対象にならない!」
まあ、そうなるわよね。
……仕方ない、ちょっと強引に準備を進めるわ。
「《焼畑》を発動。『燃焼』3でカードを3枚引く。スペル《再点火》発動。このカードの効果は直前に使った『燃焼』を持つカードと同じ効果になる」
「つまり……」
「『燃焼』3でカードを3枚引くわ。それと《焚き木》と《
「えぇ……」
この程度で困惑するんじゃないわよ?まだやるんだから。
「スペル《バックドラフト》発動。自分の手札を3枚墓地に置き、自分の墓地のカードを1枚手札に戻してそのコストをマイナス3する。《焼畑》を手札に戻して発動。『燃焼』3でカードを3枚引く」
これでかなり進んだわね。
「ターンエンド」
【ターン終了時の黒崎アカネの状況】
ライフ8/手札8/マナ8/墓地21/デッキ残り2
場:《不死鳥》(インアクティブ)
備考:後攻のマナ追加の権利未使用
【
「ドロー!マナは増やさない!」
メイカは手札が少ないから前のターンからマナを増やしていない。でも表情的にまだ倒す算段はついてないと思う。
「スペル《祈願》を発動!カードを2枚引いてライフを3回復する!」
表情が変わった。というか顔に出やすいわねこの
「《飛翔する天使》で《不死鳥》を攻撃!」
あと2回攻撃すればライフを削り切れたのにわざわざ相打ちで《不死鳥》を倒しに来た。間違いなく次のターンを凌げば勝てるようなカードを引いてるわね。
《祈願》のせいでこっちの勝利は遠ざかったけど、諦める気はない。やれるだけやってみせるわ。
「《断罪の天使》を召喚してターンエンド!」
【先攻7ターン終了時の状況】
・伏見メイカ
ライフ16/手札2/マナ7/墓地24/デッキ残り6
場:《断罪の天使》
・黒崎アカネ
ライフ8/手札8/マナ8/墓地22/デッキ残り2
場:なし
備考:後攻のマナ追加の権利未使用
【
「ドロー、マナを増やす」
【手札8/マナ9/デッキ残り1】
「2枚目の《バックドラフト》発動。手札を3枚墓地に置いて墓地の1枚目の《バックドラフト》を手札に戻す。自分のデッキが残り2枚以下ならコストをデッキ枚数と同じにする」
【手札5/墓地25】
「回収した《バックドラフト》発動。手札を3枚墓地に置いて墓地のカードを手札に戻し、そのコストをデッキ枚数と同じにする」
【手札2/墓地28】
「回収したスペルを発動」
【手札1/墓地29】
アタシを中心に炎が燃え上がり、メイカが
「な、なんだいそれは……?」
このカードはアタシ以外に使っている人はおろか、持っている人すら見たことがない。
言わば、ジョーカーみたいなものだ。
「《終わらせる炎》」
メイカが冷や汗をかいている。そんなに怖がらなくて
「《終わらせる炎》の効果。次に使うカードのコストを払うなら、自分のマナゾーンのカードをコストと同じ数だけ墓地に置くことでコストを払ったことにできる」
要するに、マナゾーンのカードがインアクティブになっててマナとして使用できない状態でも、墓地に置くことで無理やりマナとして使えるカードだ。
「手札からアニマを召喚」
アタシのマナゾーンのカードが7枚燃え尽きて墓地に置かれる。
【手札0/墓地36】
「《
さあ、燃やし尽くしましょう。
「《焔摩天》の『召喚時』効果、自分の墓地のカード12枚につき5ダメージを相手に与える」
「ア、アカネさんの墓地は……」
「36枚。つまり15ダメージを与えるわ」
《焔摩天》が今までで一番強い炎を出してメイカを焼く。
「ぐっっっ……!!」
「涙目にならないの。まだライフは1残ってるじゃない。ターンエンド」
【後攻7ターン終了時の状況】
・伏見メイカ
ライフ1/手札2/マナ7/墓地24/デッキ残り6
場:《断罪の天使》
・黒崎アカネ
ライフ8/手札0/マナ2/墓地36/デッキ残り1
場:《十二天神・焔摩天》
備考:後攻のマナ追加の権利未使用
【
「ドロー!マナを増やして……《天界の王・ヤマ》を召喚!!」
そのカードは……
「《天界の王・ヤマ》の『召喚時』効果発動!自分の墓地のアニマを3体まで選択し、その効果を得る!《一番槍》《飛翔する天使》の効果を得て『突撃』と『飛翔』を持つ!そして《ヤマ》は1ターンに1度、インアクティブになったならアクティブに戻すことができる!」
アタシのデッキの残り1枚、それは3枚目の《
『起爆』で墓地から手札に戻る、1コストで1ダメージを与えるスペル。
3枚入れて2回しか『起爆』してなくて、ドローで引いてもいないから把握するのは簡単だった。
だから、このターンさえ凌げば勝ちだったんだけどね……
「《天界の王・ヤマ》でプレイヤーを2回攻撃!」
【黒崎アカネのライフ:8→0】
試合も表彰式も終わって、スタジアムの選手が待機する部屋でメイカと話した。
観客が通るかもしれない場所で話すにはアタシ達は目立つから、二人ともバトルで疲れたから少し休みたいと言って貸してもらった。
「アナタ、最初に現役時代のシンイチとバトルしてたのが羨ましいって言ってたけど、アタシからしたら二年前なのよ。二年もシンイチとバトルできてないんだから、アタシにとってはメイカが羨ましいわ」
「……そう、か」
「でも、アタシはシンイチに無理にプレスピをやってもらう気はないの。シンイチと本気でバトルしてたあの時期がアタシにはもうあるんだから、もし戻って来なくても元気に生きててくれればそれでいいわ」
これは間違いなく本音だ。
シンイチがプレスピをやりたくないなら無理にやらなくてもいいし、万が一それでもバトルしなきゃいけないような状況なら、そうならないようにしてあげたい。
本気でバトルできて競い合えたあの頃があるんだから、アタシは
それは間違いなく、シンイチのおかげだ。
シンイチがいなかったらアタシはここまで強くなれなかった。ただ負けん気だけ一丁前でそこそこ程度の実力のプレイヤーとして埋もれていた。
だから感謝してるし、恩返しってほどじゃないけど、シンイチには幸せになってほしい。
「……アカネさん。本音の一部分だけを言っても、隠した気持ちはなくなったりしないよ」
…………
「そうね……お互い同じ望みを持ってるんだもの、誤魔化すなんて意味ないわね」
「ああ。アカネさんも、シンイチくんとまたバトルしたいんだろう?」
シンイチは気づいたら消えてしまいそうな危うさがあるような気がするし、プレスピのモチベも心も
でも、心に嘘はつけないわね。
「ええ。正直、また何度でもバトルしたいわ。シンイチに追いついて、追い越されて、また追いついて、そうやってどこまでも強くなりたかった」
「そうか……」
少しの沈黙の後、メイカが遠慮がちに聞いてきた。
「アカネさん、貴女はそれだけシンイチくんとのバトルを楽しんでいたのに、どうして彼がバトルしなくなった今もまだプレスピを続けていられるんだい?」
そんなの考えるまでもない。
「決まってるじゃない。シンイチがいつ戻ってきてもいいようにアタシ自身が
「そうか……アカネさんと比べると、僕は自己中心的だったなあ」
「アナタ、結局どうやってシンイチとバトルなんてできたの?」
「……」
「……」
この後、話を聞いてそこそこ引いた。