プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜   作:匿名S

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42話『重要なことは先に言っておくのが誠意のひとつであるという考えからこのタイミングで明かされる真実』

 

 

「しかし、それではやりづらくなりませんか……?」

 

 俺の提案にためらいを見せるマイカさん。

 

 ちなみにまだおでこをさすっている。あのデコピンめちゃくちゃ痛そうだったもんね。

 

 それはさておき、妹である伏見(メイカ)さんの反応からこの組織のことを言ってないのは察しがつく。つまり説明の必要がなくて、かつ余計な心配をかけそうなことは言わないのがマイカさんなりの気づかいなんだろう。

 

 でもこれから『神降ろし』の阻止のために敵の隠れ家に乗り込みに行くんだから、どうせどこかのタイミングで敵に明かされるでしょ。

 それで動揺したりするくらいなら最初から知っていたほうが覚悟もできるというものだ。それに、相手の戦力次第では()けられるかもしれないからね。

 

「むしろ説明しておいたほうがいいと思うよ。というか説明しないなら俺が勝手にするから、せめて正しい知識を持ってそうなマイカさんから説明したほうがいいんじゃないかな」

 

 というわけで選択肢はどっちが説明するか、その点だけに絞らせてもらう。

 

「…………わかりました。私が説明します」

 

 マイカさんはそう言って紅茶をひとくち飲み、凛とした雰囲気をもう一度整えて話をはじめた。

 

 

 

 

 『適性のある者を依代(よりしろ)とし、祈りを捧げることでその身に神を宿す』ことを『神降ろし』と説明しましたが、現在『神降ろし』は禁じられ、精霊が宿る依代の種類も、祈りの方法も実質的に制限されています。

 

 その依代が『カード』、そして祈りの方法が『バトル』です。

 

 先程『狐が神の遣いとして一時的に依代になることがあった』と言ったようになんらかの理由で精霊の方からカード以外のものを選んで一時的に宿ることがありますし、バトル以外の祈りで精霊が来ることもあります。

 祈ること自体は止めようがなく、止めるべきことでもないので危険がなければ問題ありませんが、意図的にカード以外のもの……特に生物を依代にすることは固く禁じられています。

 

 強大で霊力の消費が激しい精霊や神の脅威をおさえるために。

 

 

 ……かつて神話として語り継がれ、歴史の教科書にはほとんど記載されず、今では当たり前の存在となった『実在する精霊』……彼らは歴史の裏で様々な目的や方法で人間界に降り、活動してきました。

 

 祭りや料理に興味を持ち、人間界の文化を楽しむべくやってくる精霊。

 祈りに応じて人を助けたり、なにかを伝えるためにやってくる精霊。

 ひとえに人間を好み、人と交流をするために人間界に降りる精霊もいたそうです。

 ほかには悪しき者を裁く精霊や人をそそのかす精霊など多種多様な者がいたそうですが、それらはほとんど問題ではありません。

 

 もっとも大きな問題は、人が精霊を味方につけ、争いごとにその力を借りるようになったことです。

 

 精霊の中に好戦的な者がいるのも災いし、規模の小さな争いでも多くの血が流れる時期が度々訪れました。

 

 やがてそれに心を痛め、危機感を覚えた人間と精霊が力をあわせ、流れる血を減らすべく祈りはゲームになり、厳格なルールが作られました。

 多くの精霊や神の力によってそのルールは大きな強制力を持つようになり、多くの人間の力によってこのゲームは世の中に普及しました。

 

 精霊と人間の関わりを絶たず、可能な限り犠牲を減らすために。

 

 

 そのゲームこそが『プレイスピリット』。

 

 

 語源を『Pray to the spirits(精霊に祈りを捧げること)』に持つこのゲームこそが、精霊と人間が作った平和と友好の証なのです。

 

 

 

 

「……それって聞いてなんかやりづらくなることあった?」

 

 タツキくんが率直に聞いた。

 

「自分たちが楽しんでいたゲームの正体を知ってしまえば、やりづらくなってしまうかと思いまして……」

「そんなことないって!『精霊と人間が作った平和と友好の証』……だっけ?そんな想いが込められたゲームだって聞いてやりづらくなることなんてないぜ!」

「僕もそう思います。むしろ『神降ろし』を止めたいという気持ちが強くなりました」

 

 さすがだなあ、タツキくんとレイタくんは。

 

 でも話はまだ続ける必要がある。重要なことがまだ残ってるからね。

 

「それで、『プレイスピリット』という降霊の形式を精霊や神と協力して作った以上、そこにルールが付与されてるってことだよね。カードゲームとしてのルールじゃなくて、精霊に対する制約みたいなものが」

 

 それを引き出しておかないと情報がまだ足りない。俺から言ってもいいけど、どうせなら色々知ってそうなマイカさんに最後まで言わせよう。

 

「はい。まず、プレイスピリットはゲームでありながら祈りを捧げる行為そのものでもあります。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()精霊はそれに()かれて降臨しやすくなります」

 

 まずそれだよね。

 

 『雷霆教(らいていきょう)』のアジトに入った時もたくさんの人が次々とバトルをしていた。あれはそういうことだ。

 

 つまり……

 

「つまり、敵の隠れ家についたら余計なバトルは()ける必要があります。そのバトルも『神降ろし』の祈りの一部になる恐れがあるからです」

 

 だから可能ならニクスに敵を全員凍らせてほしいところなんだけど、まあそういうのをさせないために大がかりな謎技術を使って霊力を吸収することでパワーバランスを崩したんだろう。全員凍結ルートはできたらラッキーくらいに思ったほうがいい。

 

「そして、もし神が降臨した場合はバトルを仕掛ける必要があります」

「……それは大丈夫なんですか?」

 

 レイタくんが疑問を投げかける。

 

「プレイスピリットは精霊に祈りを捧げて呼び出す方法であり、それと同時に精霊を帰還させる手段でもあるのです」

 

 マイカさんは回答をしつつ話を続けた。

 

「こっくりさんという降霊術を聞いたことはありますか?あれのはじめ方も終わらせ方もどちらも呼びかけですから、そんなものなのですよ」

 

 ……いまの子供にもこっくりさんって通じるのかな?

 

「他の降霊術と明確に違うのは、プレイスピリットはカードゲームによるバトルを行うことです。その理由は争いの手段を武力からゲームに代替(だいたい)する余地を作って穏便にするためでもありますが、(おも)な理由としては『霊力を持つ者が直接バトルをして負けた場合、その霊力の大部分を失う』というルールを精霊(考案者)たちが付与するためです」

 

 そうだったんだ。それははじめて聞いた。というか人間に取り()かれてもバトルで倒せば追い出せるくらいに思ってた。

 

 だから基本的に精霊はカードに宿って、人間に力を貸す形で一緒にバトルするんだね。精霊自身が直接バトルをしたという判定にならないように。

 

「そして『霊力を持つ者はバトルを挑まれたら応じなければならない』という決まりもあります。これらのルールにより、勝つことさえできれば精霊を無理やり依代から()がすか、精霊界に帰還させることができます。強い精霊でも霊力を大きく削れば依代となる生物の自我が勝って無理やり(はじ)き出せるからです」

 

 昔の人や精霊も色々頑張ってルールを作ったんだなあ。

 

「そうなると大抵は霊力がなくなって消滅する前に精霊界に帰還するので、ほぼ確実に精霊を退散させられるのです」

「要するに、神がいてもバトルで勝てばいいってことだろ?なら話は早いぜ!」

「……私の心配は杞憂(きゆう)だったようですね。では──」

 

 もう行きたいのかうずうずしてるタツキくん、そしてだれも気にしてなさそうな様子に安心して行動を開始しようとするマイカさん。

 

 たしかに話としてはその通りなんだけど、ちょーっと待とうか。

 

「タツキくん」

「どしたの?」

「悪いけどちょっとデッキ見せてもらっていい?」

「おう!」

 

 これこそ杞憂だったらいいなと思ったんだけど、こっちは当たってしまった……

 

 なぁにこれぇ。

 

「……マイカさん」

「なんですか?」

「この組織、いままでの活動で回収したカードを保管してるよね?」

 

 俺がそう言うとマイカさんは目を見開き、質問を返した。

 

「な、なんでわかったんですか……?たしかにその通りですが……」

「このビルから一箇所に固まった霊力を感じたんだ。もしかしたら、いままでの治安維持活動で回収してきたカードについてる霊力の残滓(ざんし)なんじゃないかと思ってね」

「霊力を感じ取る…?そんなことが……??私にもできないのに……???」

 

 私にもできないって言われてもマイカさんの生まれは名家ってことしか知らないんだけどね。

 

 いやまあ、こんな組織にいるんだから精霊や神と関わりのある家なんだろうけどね。それこそ神社とか?巫女さんだったのかな。

 

「で、そのカードを貸してほしいんだ。少なくともタツキくんだけでもデッキを強化してから行きたい」

 

 タツキくんのデッキははっきり言って、スターターデッキを少しいじったみたいな内容だった。一応言っておくとデッキ自体はシンプルだし破綻(はたん)はしてない。

 それにリューちゃんが絶対引けるから流れを取っちゃえば勝てるんだろうけれど、リューちゃんがいなくて相手が強かったら『これでどうやって戦えばいいんだ?』ってくらいの内容だ。

 

 まあ、主人公や強いキャラクターは拾ったカードで勝つものだし、タツキくんもその例に漏れないだけなんだろうけど……

 

「……わかりました。それと、必要があれば私の傘下(さんか)にあるカードショップからもカードを持ってこさせます」

「気前がいいね。とりあえずいますぐに《焼畑》と《焚き木》を2枚ずつ持ってきてもらっていいかな」

「タツキ……お前《焼畑》と《焚き木》ピン刺し(1枚採用)だったのか……?」

「1枚しか持ってなかったからな!」

 

 レイタくん……きみがいままでタツキくんのピン刺しに気づかなかったように、それで引けちゃうのが主人公あるあるなんだ……

 





※タツキくんは6話でバトルした際『《焼畑》引いてドローでさらに《焼畑》引いたりとかできないかな?』と言ってますが、天然につき1枚しか持ってないし入れてないのを完全に忘れています。

まあ、バトルしてると採用枚数忘れはたまにありますよね……
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