プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜 作:匿名S
マイカさんが持ってきてくれた回収したカードを見ながら《焼畑》や《焚き木》の……というか赤のカード
「……シンイチさん」
「なに?」
レイタくんが少しためらいがちに話しかけてきた。
「その……これから敵のいる場所に行くわけですし…………僕のデッキも……」
あぁ……そういう感じね。
なにをもじもじしながら話しかけるようなことがあるのかと思ったら、タツキくんのデッキ調整の流れに乗じて自分のデッキも見てほしいと思ったわけだ。
いつもならこういうのは断ってる……というか、しらを切って誤魔化してるところだけど、さすがにここで私情で断ってなにかあったら大変だ。
そして、そういう状況に
「いいよ、デッキ見せて」
それを聞いたレイタくんは顔をぱあっと明るくした。さっきから思ってたけど、そこの
「……
さすがにわかるよ。なんか霊力がわかりやすく揺れてた。
とりあえずレイタくんのデッキを見せてもらったわけだけど、正直そんなに変な構築じゃない……いや、世間一般的には青黒の時点で変な構築ではあるんだろうけれど、一応整ってはいる。確定で引けるであろう《ニクス》以外はちゃんと必要なカードが3枚あるし。
あとはプレイングと練度、それと目的によると思うんだけど……
身も蓋もない話で申し訳ないんだけど、青黒で『連鎖』持ちを『蘇生』するのって微妙なんだよね。序盤は悪くないけど、そこで上手くいかなかった時が厳しい。
『連鎖』を持つ
それなら最初から強いカードを『蘇生』した方がいい。それこそ《ニクス》とか。
まあ『蘇生』頼りの戦術と違って墓地落としと『蘇生』が揃わない時に『連鎖』で戦ったり『凍結』で時間稼ぎができるっていう利点もあるから、『連鎖』と『蘇生』の組み合わせ自体は微妙といっても実戦レベルでのパフォーマンスは悪くない。
…………これも
「……タツキくん、このデッキ借りていい?」
「別にいいけど、まだなんも変えてないよ?」
「大丈夫。リューちゃん、悪いけど一回だけ俺と一緒にバトルしてくれる?」
「ほう、珍しいのう。お主がバトルするなどと言うのは」
そりゃしたくないけど、こっちも可能な限り準備してから行く必要があるんだ。仕方ない。
「マイカさん、追加注文でとりあえず青と黒のカードもひと通り持ってこさせてくれる?それと近くのバトルできる場所に案内して」
「わかりました。マリナさん、私は連絡してくるので案内をお願いします」
「かしこまりました」
ここまで話が進んだところでレイタくんが驚きと緊張が混じったように聞いてきた。
「シンイチさん、もしかして……」
「まあ多分想像通りかな。今からタツキくんのデッキを借りた俺とバトルしてもらう。確認のためにね」
そもそもの話、タツキくんのデッキに明らかに問題があったから調整することにしたのであって……強くなるなら構築を練るのはもちろんだけど、先に
というわけで、勝ちました。
「負けました……」
「タツキくんとのバトルってどのくらいの勝率なの?」
「大体6割から7割くらい、ですかね……」
「レイタくんが大会に出たあと、青単色から青黒のデッキに変えるまでに何回くらいバトルした?タツキくん以外の人も含めて」
「……10回前後、くらいです」
一回バトルしただけで断定するには
レイタくんの問題、それは根本的な練度不足だ。
リューちゃん……《ムスペルヘイムの竜》の5ダメージの圏内に入らないとか、盤面の取り合いとか、一回バトルしただけでそういう部分にまだ
具体的にはなんどもタツキくんと戦ってるはずなのにライフが残るからと《コールドスリープ》で自分の『連鎖』持ちのアニマを逃がしてリューちゃんの圏内に
前者は細かい話をするまでもなく、1ターン盤面をあけて攻撃をライフで受けてもいいかどうかの見極めがうまくできなかったわけだし、後者についてはおそらく《地獄の門番》を『自分のアニマを守るカード』という考えで運用していたから切り捨てるべきでない場面で切り捨ててしまった。
《地獄の門番》は本質的には『自分のアニマを守る』というよりは効果通り『相手のアニマを止める』カードで、その副次的な効果として自分のアニマを守れるという結果になるだけだ。と、俺は考えている。
早い話、《地獄の門番》を
そうすればリューちゃんの射程圏内に入らずに済んで《ニクス》が暴れられるようになっていた。
手札的にはレイタくんが勝っていてもおかしくなかったと思うんだけど、こういう細かいところで勝敗が変わってしまった。レイタくんのデッキが弱いんじゃなくて、勝ちきるのが難しいデッキを選んでしまっているんだなあ。
「あの、シンイチさん……僕は、どうしたら……」
何回か上手くいかなかったからって構築から
最悪の場合だけど、最終的に灯台の
仮にデッキが悪かったとしても、それは
もし違ったら俺の思い上がりになっちゃうけど、レイタくんは大会での挫折から俺が青黒を使った時の試合を見つけてそこを目指してしまった。それがよくなかったんだろうなあ。
青単色での立ち回りをしっかり練習して理解してから黒と混ぜるほうがいいだろうに、俺が青黒で準優勝まで行った試合を見つけてしまったせいでその前に
基礎より先に応用をしたってうまくできることはないのに、挫折の不安を解消するために
でもいまはさすがに勉強してる時間まで取れない。ここは一度簡単なデッキを使ってもらうことにしようかな……
「お待たせしました。カードが届きました」
俺がレイタくんになにか言う前にマイカさんが来てそう言った。でもいいタイミングだ。
「大丈夫だよレイタくん。いまデッキを作るから、さっきの部屋に戻ろう」
部屋に戻ってアタッシュケースに入れられたカードを手に取っていく。というか、アタッシュケースいっぱいに入ったカードを見ると某有名TCGのアニメの社長を思い出すなあ。『このカード全部と交換してくれ!』とか言ってるやつ。
これと、これ、それからこれも……
よし、とりあえず必要なカードはちゃんとあるね。これはまとめて置いといて、最初にマイカさんが持ってきてくれた回収されたカードのほうももう一度見ていく。
「レイタくん、いまから渡すデッキは今回限りで、この件が終わったら青単色をもう一度使ってみようか」
「……青黒より青単色の方が強いんですか?シンイチさんは青黒で使っていたのに」
早い段階で
「どっちのほうが強いとかはないかな。それと、俺の試合が中継された数が青黒のほうが多いだけで、その前になんども青単色で大会に出てるよ」
「確かに、いくつか青単色の中継もありました……じゃあ……僕が、弱かっただけ、ですか……」
「…………成長途中ってだけだよ。いまはこれから渡すデッキを使ってほしい。難しくないし、勝ちやすいはずだ」
今回はその場しのぎみたいなものだ。あのデッキはいまのレイタくんにとって扱いがちょっと難しいから、いま勝つためのデッキを使ってもらうだけ。
幸いにも、いい感じにできそうだからね。