プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜   作:匿名S

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2話『精神的おじいちゃんだから新しいものに中々馴染めないんです許してください』

 

 

 いつも通り仕事を終え、いつも通り家に帰る夜道。

 今日はそんな人気(ひとけ)のない夜道に立ち塞がる影がいる。影というか仮面と黒いローブで素性を隠した人なんだけど。

 

真常(しんじょう)シンイチ……貴様の命、貰い受ける」

 

 どちら様?と言いたいが、大方雇われの殺し屋かなにかだろう。なんかこんな感じの人、前にも来たし。

 もう一々相手の素性を聞くのも飽きたのでさっさと終わらせるべくズボンのポケットからデッキケースを取り出して見せると、相手は軽く笑みを浮かべて……仮面で見えないけど多分笑みを浮かべて宣言した。なんかちょっと嬉しそうだな、話が早くて助かるってやつかな?

 

「バトル!」

 

 それに応えるように俺も宣言する。

 

「バトル」

 

 すると、半透明の壁が俺と相手を囲むように展開される。バトルの始まりだ。

 

「先攻は私だ!ドロー!マナゾーンにカードを置く!」

 

 相手はカードを引きながらそう宣言する。このゲーム、先攻ドローがあるんだよね。別にいいけど。

 

「1コスト!《一番槍》を召喚!コイツは『突撃』を持っているため召喚したターンに攻撃が可能!喰らえ!」

 

 はいはい、残り19点ね。

 さて、相手は速攻畳み掛けるタイプのデッキらしいから確実に潰して帰るか……

 

 

 

 なんやかんやあって、結局速攻デッキだった相手の攻め手を(さば)きながら後半に差し掛かる頃には相手のリソースは尽きかけていた。

 まあちょっと俺の《地獄の門番》の処理に手間取った時点で結構しんどそうだったね。

 

「スペル《炎の贈り物》を貴様の《地獄の門番》に発動!対象が赤色を持つなら戦闘力をプラス3、持たないならマイナス3する!これで戦闘力が0になったそいつは破壊だ!」

 

 あ、ようやく破壊できたらしい。

 

「『緊急詠唱』《悪夢の続き》」

「なにぃ!?」

「このスペルは自分のアニマが墓地に置かれた時、手札から『緊急詠唱』することができる」

 

 専門用語が多くてごめん!アニマはモンスターのこと、緊急詠唱っていうのは条件を満たすと相手ターン中に発動できるスペルのことね!

 

 いやほんと、なんでちょいちょいわかりやすい単語からズラしてくるのかなぁこのゲームの開発者は……

 意味は割と通ってるんだけど単語が定着するまで混乱するってこんなん。緊急詠唱とかはまだ直感的にわかりやすいけどさ。手札誘発とかじゃダメだったのかな?

 

 とりあえずそれは置いといて。

 

「《悪夢の続き》の効果。このターン中に墓地に置かれたアニマと同名のアニマを手札・デッキ・墓地から1枚だけ選んで召喚する。墓地から《地獄の門番》を召喚」

「ワァ…ァ……」

「泣いちゃった」

 

 このゲームはブロックのことを阻止と言うんだけど、《地獄の門番》は自分から攻撃することができない代わりに1ターンに何度でも阻止ができるような能力を持つ。

 

 こいつ1枚の処理に手間取ってようやくどかしたと思ったら復活したから泣いちゃったんだね。

 

「……もういい?」

「くっ……覚えてろ〜!ターン終了!」

 

 覚えてろは負けた時に言うやつでは?

 なんかもう早く帰りたいからぶっぱしよ……

 

「ドロー、マナゾーンにカードを1枚置く。そして追加でもう1枚カードを置く」

「は!?あっ……」

「忘れてたのか……」

 

 このゲーム、後攻は試合中に1度だけマナゾーンにカードを追加で1枚置ける。後攻が(こうむ)る不利に対する救済措置ってやつだ。

 ただしこのルールで置いたカードはターン終了時に試合から消失する、つまり再利用が不可能になる。まあ今はいいけど。

 

「これでコストが足りる。マナを8使ってスペル《大災害》発動。場のアニマを全て破壊する」

「イヤッ…イヤッイヤ……!」

「また泣いちゃった」

 

 結局リソースが枯れた相手はほぼなにもできず、そのまま勝った。

 二回も泣いちゃったのに降参しなかったのはえらいね。

 

「お、覚えてろ〜!」

 

 それさっき聞いた。でも覚えようがないよそんな露骨に素性隠した人なんて。黒ローブと仮面しか覚えられないって。

 

 

 そんな情けなく逃げていく黒ローブ仮面さんをめんどくさいから見逃し、改めて帰路に着いた。

 

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