プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜   作:匿名S

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48話『カードゲーム世界で人から託されたカードは大体活躍する。それはわかる。それにしても……強くない?』

 

 

先攻(トオル)1ターン目】

「俺のターン!ドロー!手札を1枚マナゾーンに置き、透明のスペル《台座に刺さった(けん)》を発動!」

 

 レイタは見たことのない透明のスペルに(まゆ)をひそめる。

 

 透明のカードは特定の色に該当せず、基本的にコストに色の指定がない。そのためどんなデッキにでも採用できるが、その代わりに色つきのカードには劣る凡庸(ぼんよう)なカードだ。

 

 それを逆手にとって《一番槍》や《特攻隊長》のような特定の色のカードとして実装するには強すぎる標準ステータスで『突撃』を持つアニマを透明のカードとして出し、速攻デッキ(アグロ系)の補助や初心者の味方として運用させることもあるが、レイタが知る限り透明を主軸にしたデッキは存在しない。

 

 もしも『透明のカードを主軸にした強いデッキ』があるのなら、それは色の否定であり、ゲーム性の崩壊を招きかねない。きっと《台座に刺さった剣》もメインプランの補助になるようなカードだろうとレイタはあたりをつけた。

 

 実際、レイタの予想は間違ってはいなかった。

 

「デッキか手札から《エクスカリバー》1枚をマナゾーンに置く!さらに手札から置いたならカードを1枚引く!」

 

 その効果が()()()()()()()()()()()()

 

「1コストでマナ加速……?しかもドローつきで、最低でもデッキ圧縮は確定って、なんなんだそのカード……?」

「知らなかったか、まあ仕方ないな。プレスピに詳しいわけじゃないが、俺も手に入れるまで知らなかった。ターンエンドだ!」

 

 

後攻(レイタ)1ターン目】

「ドロー!手札を1枚マナゾーンに置いて《砂浜の亀》を召喚!ターンエンド!」

 

 

先攻(トオル)2ターン目】

「ドロー!マナを増やして《ガウェイン》を召喚!」

 

 現れた騎士にレイタは目を見張り、思わず声をあげる。

 

「2コストで戦闘力6……!?」

「ターンエンドだ!」

 

 

後攻(レイタ)2ターン目】

「ドロー!マナを増やして《せっかちな葬儀屋》を召喚!」

 

 前のターンで召喚した《砂浜の亀》は戦闘力0だが阻止に使える。そして戦闘で破壊されればマナゾーンに置かれるアニマだ。

 《ガウェイン》のオーバースペックに驚かされたレイタだが、阻止さえできれば大した脅威ではないと考え準備を進める。

 

「《せっかちな葬儀屋》の『召喚時』効果発動!デッキから《ニヴルヘイムの女王・ニクス》を『埋葬』する!ターンエンド!」

 

 

先攻(トオル)3ターン目】

「ドロー!マナを増やして《魔術師・マーリン》を召喚!『召喚時』効果でデッキから《マーリンの予言》を手札に加える!」

 

 戦闘力1とはいえ、知らないアニマが知らないスペルをサーチしてきて困惑するレイタ。しかし、やることは変わらない。あくまで冷静に努める。

 

「1コストスペル《マーリンの予言》を発動!デッキから《湖の乙女・ヴィヴィアン》を手札に加え、このカードをマナゾーンに置く!」

「また1コストでマナ加速……!しかも手札が減らない……!?」

 

 レイタは知らないことだが、トオルにとって言う必要もないので言っていないこと。

 

 それは《台座に刺さった剣》も《マーリンの予言》も、そのオーバースペックの代償として()()()()()を場に出すことなく勝利すると()()()()()という非常に重い制約を抱えていることだ。

 

 それ故に、このデッキのカードはある意味()()()()()のためだけに存在していると言っても過言ではない。

 

「《ガウェイン》でプレイヤーを攻撃!」

「《砂浜の亀》で阻止する!……なっ!?」

 

【青枝レイタのライフ:20→14】

 

 阻止したのにライフが減ったことに驚愕するレイタ。知らないパワーカード続きでそろそろ何度目の驚愕かも忘れそうだったが、残念なことにまだそれは終わりそうになかった。

 

「マナゾーンにある《ガラティーン》の効果!このカードがマナゾーンにある限り、自分の場の《ガウェイン》が相手のアニマとの戦闘に勝利したなら、相手のアニマの戦闘力を上回った分だけ相手プレイヤーにダメージを与える!」

「マナゾーンのカードが効果を……!?」

 

 透明のカードには赤の『燃焼』や青の『凍結』のような透明ならではの固有能力がない。あるのは『突撃』や『召喚時』など、どんな色のカードでも与えられる能力と一部のカードが持つ『飛翔』の劣化版である『透過』くらいだ。しかも『透過』も透明のカードのみが持つわけではない。

 

 だからこそ、もしも『透明のカードを主軸にした強いデッキ』があるのなら、それは『単純に書いてあることが強い』か……あるいは『固有能力という型にとらわれない能力を扱う』かといった特徴を持つデッキだろう。

 

 固有能力ではなく、特定のカードを使用する場合にのみ能力を発揮するカード。限定的な使用方法でしか効力がないからこそ、透明だけでも強い。

 

 今トオルが使っているのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()デッキであることをレイタはなんとなく察した。

 

「だが、《砂浜の亀》の効果は発動する!このカードをマナゾーンに置く!」

「まあいいだろう、ターンエンドだ!」

 

 

後攻(レイタ)3ターン目】

「ドロー!マナを増やして……」

 

 レイタは悩んだ。カード名を指定する代わりに破格の能力を持つ《ガウェイン》と《ガラティーン》のコンボから少しでも逃げるべく《ガウェイン》を『凍結』させたい。

 しかし、今までの経験とシンイチからこのデッキを借り受けた際に聞いた話がレイタをいつもより強気にした。

 

「《せっかちな葬儀屋》で《魔術師・マーリン》を攻撃!そして……」

 

 シンイチ曰く『たしかに序盤からライフを守るのも大事だけど、多少のライフよりもニクスを早く出すほうがいいことが多いかな。よく考えてから決めるのが一番だけど』とのことだ。

 

「スペル《コールド・ブレス・ユー》を発動!場のアニマ1体を『凍結』させ、自分のアニマを『凍結』させたならカードを3枚引いてこのカードをマナゾーンに置く!《せっかちな葬儀屋》を『凍結』!ターンエンド!」

 

 相手のアニマを選択しても1枚ドローできる《コールド・ブレス・ユー》だが、自分のアニマをわざわざ『凍結』させるという不利を背負う対価は中々のものだった。

 

 

先攻(トオル)4ターン目】

「ドロー!マナを増やして《ガウェイン》でプレイヤーを攻撃!」

「くっ……!」

 

【青枝レイタのライフ:14→8】

 

「《トリスタン》と2枚目の《ガウェイン》を召喚!ターンエンドだ!」

「《せっかちな葬儀屋》の『凍結』は解除される……!」

 

 

先攻(トオル)4ターン目終了時の状況】

柄本(つかもと)トオル

ライフ20/手札2/マナ6

場:《ガウェイン》×2(1体がインアクティブ)

《トリスタン》

 

・青枝レイタ

ライフ8/手札6/マナ5

場:《せっかちな葬儀屋》

備考:後攻のマナ追加の権利未使用

 

 

後攻(レイタ)4ターン目】

「ドロー!マナを増やしてスペル《地獄からの召喚》を発動!墓地のアニマ1体を『蘇生』して、黒色を持たないなら戦闘力をマイナス3する!《ニヴルヘイムの女王・ニクス》を『蘇生』!」

「ここから本領発揮ってところね」

 

 現れたニクスが手をかざすと、トオルの場の騎士たちが凍りつく。

 

「《ニクス》の『召喚時』効果!場のアニマを5体まで『凍結』させる!《トリスタン》と2体の《ガウェイン》を『凍結』!」

「で、出たな……!」

 

 トラウマになっているのか、あるいは武者震いなのか、トオルはニクスを見て身を震わせる。

 

 しかし、手札こそ少ないが状況的にはトオルが有利だ。この弱体化したニクスを突破してその有利を維持することは今のトオルには造作もないだろう。

 

 その余裕があるからだろうか、トオルに疑問を抱かせたのは『連鎖』を持つアニマが場に出ておらず、ニクスをわざわざ墓地に置いて弱体化させてまで『蘇生』した今のレイタのデッキと戦法だった。

 

「《せっかちな葬儀屋》でプレイヤーを攻撃してターンエンド!」

 

【柄本トオルのライフ:20→18】

 

 

先攻(トオル)5ターン目】

「ドロー!マナを増やす!」

「……ん?」

 

 レイタは疑問の声をあげる。

 

 《ガウェイン》の戦闘力が下がったのだ。

 

「《ガウェイン》は5ターン目以降、戦闘力が2になる……」

 

 それでも標準ステータスだが、やはり損した気分なのかどこか残念そうにトオルが説明する。

 

「だが!ここからは俺も本領発揮だ!マナゾーンの《毒を塗った剣》の効果を発動!自分の場に《トリスタン》がいるなら、それを破壊する!」

 

 またマナゾーンのカードの効果かと苦い顔をしたレイタだが、その効果は自爆させるもの。だが本当に自爆させるだけのはずがない。何かある。すぐにそう察して身構える。

 

「《トリスタン》の効果発動!このアニマが破壊されたなら相手の場のアニマ1体を破壊する!《ニヴルヘイムの女王・ニクス》を破壊!」

 

 《ニクス》を突破したトオルだが、マナゾーンにある《毒を塗った剣》はあくまで効果を発動させただけであり、まだ7つあるマナをひとつも使っていない。そして、7コストは明確にカードが強くなる値だった。

 

「《アーサー王》を召喚!」

 

 円卓の騎士、偉大なる王が現れた。

 

 

 

 王が現れたことで、トオルのデッキはアーサー王伝説をモチーフにしたものであることが確定した。

 

 一部のカードについている『あるアニマを場に出すことなく勝利すると敗北となる』という非常に重い制約。その『あるアニマ』こそが《アーサー王》だった。

 

 これが低コストのアニマなら雑にどこかで一度出して条件を満たし破格の効果を悪用することもできたが、さすがに7コストとあっては《アーサー王》を活かして戦うしかない。

 

 円卓の騎士以外の選択肢と共に迷いを捨て、ただ愚直に戦うその様は、付け焼き刃ながらある意味では柄本トオルにとってのひとつの答え(結論)だった。

 

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