プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜 作:匿名S
10点評価・9点評価・アクセス・お気に入り・しおり・感想・ここすき等、本当にありがとうございます。
これが第一部の最終話です。
次から何話分かはわかりませんが、今まで登場したカードを色などでわけてまとめたものを投稿しようと思います。
また、第二部からはこれまで以上に決まっていないことが多すぎて、活動報告にて何かしらのアイデアの募集をするかもしれませんし、他の作品の執筆を筆頭にやることがたくさんあるため、更新頻度はかなり落とす予定です。予めご了承ください。
ここまで辿り着けたのは好意的な反応をくれた皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
白銀さんが運転してくれる車でスタジアムの近くの駐車場に向かう途中、あることを思い出した。
そういえば俺、ニクスに『火傷がなおるまで無理はしない』って言っちゃったんだ……
うーん……しかたない、ごめんニクス。バレたら煮るなり焼くなりして。いや、できれば見逃して。ニクスがほぼ無理やり約束させたことだし、おあいこということで。
「到着しました。スタジアムの
あ、もうついたんだ。
「色々ありがとう、白銀さん」
「お構いなく」
ということで車をおりて、黒崎さんとスタジアムに向かう。
「……懐かしいわね」
「……そうだね」
俺が大会に出なくなってもう二年くらい経つんだ、そんな感想にもなる。
「そういえば、ロキが
「そうね。ルナが何かされてないか心配で、起きてすぐデッキを確認したんだけど、1枚カードが減ってたから」
「……それは大丈夫なやつ?」
「大丈夫よ。これからバトルするなら詳しくは言わないけど、何が減ったかはすぐにわかったし、デッキは40枚にしてあるわ」
「ならよかった」
黒崎さんのカードだったんだね。でもロキなんて使ってるのは見たことないから、どうせ変身でもしたんだろう。
そんなことを思ってたらスタジアムの中心、観戦席に囲まれた、試合をするための舞台についた。もう日は沈みはじめて、少しずつ薄暗くなってくる時間帯だ。暗くなってもバトルはできるけど、早くはじめよう。
「言うまでもないけど、本気でやるよ」
「本当に言うまでもないわね。アタシも本気でやるから」
二年ぶりに、今日の最強を決めようか。
「「バトル」」
【
「ドロー、手札を1枚マナゾーンに置いて《地獄に咲いた
【
「ドロー、手札を1枚マナゾーンに置いて《焼畑》を発動。『燃焼』3でカードを3枚引く。この効果で墓地に置かれた《焚き木》の『起爆』が発動。このカードをマナゾーンに置く。ターンエンド」
初手から全力全開だ。でも、今更上振れだなんて言わない。今日だけはそれを受け入れた上で、勝つ。
【
「ドロー、マナを増やして《魂の抽出》発動。《蓮》を『埋葬』してカードを2枚引く。《蓮》の効果でこのカードをマナゾーンにアクティブで置く」
マナを増やすカードは各色に配られているし、だいたいアクティブで置けるからすぐにマナとして使える。だから1コストの《魂の抽出》で《蓮》を『埋葬』すれば実質的に0コストになる。
「《せっかちな葬儀屋》を召喚。『召喚時』効果でデッキから《
だからこうして2コストのアニマを追加で置くことだってできる。まずは《大嶽丸》から墓地に置いて、流れを掴む。
【
「ドロー、マナを増やして《猫又・ルナ》を召喚」
案の定、ルナが出てきた。なんかこっち見てる。
「《ルナ》の『召喚時』効果発動。『燃焼』2でこのアニマをマナゾーンにアクティブで置いて、カードを1枚引く」
ルナはいつも通りにゃあと鳴いてマナゾーンに歩いていく。心なしかその声は『お疲れ』と言ってるように聞こえた。気のせいかな?
「《悪魔商人》を召喚。『召喚時』効果でカードを1枚引いて、手札を1枚墓地に置く。ターンエンド」
【
「ドロー、マナを増やす。《せっかちな葬儀屋》でプレイヤーを攻撃」
「《悪魔商人》で阻止」
「《恐怖の幻影》を召喚してターンエンド」
《悪魔商人》を置かれてたのがめんどくさいな。できればこの《恐怖の幻影》の攻撃で1ダメージだけでも通したいんだけど……
【
「ドロー、マナを増やして《闇の回収業者》発動。墓地のカード2枚を手札に戻して、手札を1枚墓地に置く」
黒崎さんは順調らしい。ここからが大変で散っていくプレイヤーなんていくらでもいるけど、黒崎さんがそこで今更
「回収した《焼畑》を発動。『燃焼』3でカードを3枚引く。この効果で墓地に置かれた《不死鳥の雛》の『起爆』が発動。自身を『蘇生』し、1コスト払う」
ダメかあ。
「手札から《焚き木》を発動、このカードをマナゾーンにアクティブで置く。そして《
【真常シンイチのライフ:20→19】
【
「ドロー、マナを増やして《猿の手》を発動。自分の場のアニマ1体を破壊してカードを2枚引く。そしてそのアニマと同名のアニマを『蘇生』して、ターン終了時に『埋葬』する」
ややこしい効果だけど要は墓地効果を時間差で2回発動しつつカードを2枚引くスペルだ。墓地効果が複数回使えたら強すぎるようなアニマは制限がついてることが多いけど、《恐怖の幻影》は別の縛りがあるかわりに回数制限はない。
「《恐怖の幻影》を破壊して、カードを2枚引いて『蘇生』。さらに《恐怖の幻影》が墓地に置かれた時の効果で《大嶽丸》を『蘇生』。《大嶽丸》の『召喚時』効果で相手の場のアニマ全ての戦闘力をマイナス3する」
これで《不死鳥の雛》は破壊できたけど、《恐怖の幻影》にライフを削らせないという仕事は完遂された。ちょっとめんどくさいな……
それに、まだ制約なしにアニマを『蘇生』できるカードを引けてない。
「《闇の回収業者》を発動。墓地のカード2枚を手札に戻して、手札を1枚墓地に置く」
これで《猿の手》と《魂の抽出》を回収する。無理やり『蘇生』できるカードを引かせてもらうよ。
「《魂の抽出》発動。《大嶽丸》を『埋葬』してカードを2枚引く。そして《大嶽丸》の効果発動。このアニマが場から墓地に置かれたなら、1度だけ自身を『蘇生』する」
この《大嶽丸》は放置すると《恐怖の幻影》が5コスト以上のアニマを『蘇生』した時のペナルティでターン終了時に墓地に置かれちゃって、結局自己蘇生効果を使うことになるからこうして遠慮なく活用させてもらう。
お、《地獄からの召喚》が引けた。
「ターン終了時に《猿の手》の効果で《恐怖の幻影》は『埋葬』されて、墓地効果で《せっかちな葬儀屋》を『蘇生』。そして《せっかちな葬儀屋》の『召喚時』効果でデッキから《
《せっかちな葬儀屋》は2コストだから《恐怖の幻影》の効果で蘇生しても墓地に置かれることはない。これで相手のライフを削れればあとが楽になるんだけど。
【
「ドロー、マナを増やして《恐怖の幻影》を召喚。そして《猿の手》を発動」
うわ、そっちもやってくるか……
「《恐怖の幻影》を破壊してカードを2枚引いて『蘇生』。そして《恐怖の幻影》の墓地効果で《不死鳥》を『蘇生』」
《不死鳥》か……
『起爆』による自己蘇生には3コストかかるから、また《焼畑》でもない限りは大丈夫かと思ってたんだけど、上手いことしてやられてるなあ。
「《不死鳥》の効果発動。『燃焼』4で相手の場のアニマ1体とこのアニマを破壊し、その後自身を『蘇生』する。《せっかちな葬儀屋》を破壊」
やっぱりそうなるか……
「2枚目の《
【真常シンイチのライフ:19→18】
「ターン終了時に《猿の手》の効果で《恐怖の幻影》は『埋葬』されて、墓地効果で《
もう出てくるかあ、《焔摩天》。
「《焔摩天》の『召喚時』効果発動。自分の墓地のカード12枚につき5ダメージを与える」
【真常シンイチのライフ:18→13】
「《恐怖の幻影》の効果で《焔摩天》はターン終了時に墓地に置かれる。そして墓地に置かれた《焔摩天》の効果発動。自分の墓地のカードが相手の墓地のカードより12枚以上多いなら、相手に5ダメージを与える」
レイタくんとの試合では使われなかった《焔摩天》の墓地効果だ。いまの俺の墓地は6枚で、黒崎さんが18枚だから発動可能だ。
《焔摩天》は《閻魔王》と違って除去効果と《
《閻魔王》は『召喚時』と墓地効果、どちらか片方しか使えないし、その上で1ターンに1度しか使えないからね。それに対して《焔摩天》は1ターンに1回ずつ使えるから、ダメージ効率だけなら高い。
【真常シンイチのライフ:13→8】
「ターンエンド」
それにしても、徹底的に《大嶽丸》に付き合わないね。今回は自己蘇生効果はもう使っているけど、《大嶽丸》は1回は相手の効果から逃げることができる。だから《不死鳥》の効果ですら《せっかちな葬儀屋》を処理している。
このデッキは割と黒崎さんに勝てるほうだけど、それでも上手いこと対策はされるなあ。
【
「ドロー、マナを増やして《地獄からの召喚》発動。自分の墓地のアニマ1体を『蘇生』して、黒色を持たないなら戦闘力をマイナス3する。《十王の五・閻魔王》を『蘇生』」
「《閻魔王》の『召喚時』効果発動。相手の場のアニマ1体を『埋葬』して、このターンか前のターンに相手がアニマを墓地に置いているなら5ダメージ。《不死鳥》を『埋葬』して5ダメージ与える」
《浄玻璃鏡》をデッキか墓地から手札に加える部分は任意だから今回は使わない。
1枚採用で手札にあるからね、《浄玻璃鏡》。
【黒崎アカネのライフ:20→15】
「《大嶽丸》でプレイヤーを攻撃してターンエンド」
【黒崎アカネのライフ:15→6】
これで1マナ残して《浄玻璃鏡》は使える状態。あとは黒崎さんが《閻魔王》を除去する前に墓地のカードの効果を発動して、《浄玻璃鏡》の『緊急詠唱』の条件に引っかかってくれればいいんだけど。
【
・真常シンイチ
ライフ8/手札5/マナ6/墓地6/デッキ残り21
場:《大嶽丸》(インアクティブ)
《十王の五・閻魔王》
備考:1マナがアクティブ
・黒崎アカネ
ライフ6/手札6/マナ7/墓地19/デッキ残り8
場:なし
備考:後攻のマナ追加の権利未使用
【
「ドロー、マナを増やす。《怪人アンサー》を召喚して『召喚時』効果発動」
まずい、《怪人アンサー》の効果は……
「カード名をひとつ宣言して、そのカードが相手の手札にあるならデッキに戻させて自分はカードを1枚引くことができる。《浄玻璃鏡》を宣言」
やられた。しかも《浄玻璃鏡》が公開されている範囲……スペルは場に置けないから、墓地・マナゾーン・消失したカード。その中に3枚ないせいで手札を見せないといけない。
「……入れてたのね、《白紙の契約書》」
「……まあね」
誓っていままでのバトルで手を抜いていたわけではないよ。ただ二度は絶対通じないし、このデッキならわざわざこんなカード使わなくても張り合えるからいままで入れてなかっただけで。
「《地獄からの召喚》発動。《焔摩天》を『蘇生』して、黒色を持たないからその戦闘力をマイナス3する。《焔摩天》の『召喚時』効果で5ダメージ」
【真常シンイチのライフ:8→3】
「《闇の回収業者》発動。墓地のカード2枚を手札に戻して、手札を1枚墓地に置く」
2枚目の《闇の回収業者》で1枚目の《闇の回収業者》を戻した。かなり詰めの段階に
「後攻の権利を使ってマナゾーンにカードを1枚置く。そしてもう1度《闇の回収業者》。墓地のカード2枚を手札に戻して、手札を1枚墓地に置く」
それにしても、《怪人アンサー》のドロー効果の部分まで使ってるあたり本当に《白紙の契約書》を恐れていない。この試合ではもうデッキ切れでは負けないという計算ができているんだろう。
「ターンエンド」
【黒崎アカネの状況】
ライフ6/手札4/マナ8/墓地19/デッキ6/消失1
場:《十二天神・焔摩天》(戦闘力2)
《怪人アンサー》
備考:後攻のマナ追加の権利使用済
【
「ドロー、マナを増やす」
いま俺がやるべきことは《閻魔王》を場に残しながら《浄玻璃鏡》を引くこと。それで《焔摩天》の墓地効果を無効化するしかない。
「《猿の手》を発動」
《闇の回収業者》で回収しておいた《猿の手》。これで《浄玻璃鏡》を引ければ《閻魔王》の墓地効果で《焔摩天》を除去してもライフを削られない。
「《閻魔王》を破壊してカードを2枚引いて、《閻魔王》を『蘇生』」
引けなかったか。それなら『召喚時』効果でサーチ、と言いたいところだけど……
《閻魔王》最大の弱点、それは罪のある者しか裁けないことだ。要するに、いままでみんな毎ターンのようにアニマを墓地に置いてスペルを使っているから『召喚時』効果も墓地効果も使えていただけで、相手がなにもしていないなら効果の発動自体ができない。
このゲームのルール上、発動条件を満たしていない効果は使用できない。なのに効果が分割されてないから、《閻魔王》の5ダメージの条件を満たしていないならそもそも全部の効果が発動できないんだ。
だから『召喚時』のほうは使えなくて、《浄玻璃鏡》をサーチできない。《闇の回収業者》でアニマを墓地に置いていてくれればよかったんだけど、この辺はさすが長いこと俺と戦っているだけある。
しかたない、もう出し惜しみはなしだ。ここから勝つためにはこれで
「《白紙の契約書》を発動。お互いに手札を全て墓地に置いて、その枚数ぶんカードを引く」
……一応目当てのカードは引けたけど、してやられてるな。黒崎さんの手札は4枚で、デッキは6枚だった。だからデッキの残りは2枚。ここからあと2ターン、黒崎さんの攻撃を凌ぐ必要がある。
黒崎さんが後攻の権利を使ってわざと手札を減らしてたのが響いてるな……
「ターン終了時に《猿の手》の効果で《閻魔王》が『埋葬』されて効果発動。このアニマが場から墓地に置かれたなら、相手の場のアニマ1体を『埋葬』し、このターンか前のターンに相手がスペルを使っていたなら5ダメージ。《怪人アンサー》を『埋葬』」
黒崎さんは《地獄からの召喚》を使っている。だから『召喚時』効果は使えなくても墓地効果は使える。
これで《焔摩天》の墓地効果を回避しながらダメージを通す。でも────
【黒崎アカネのライフ:6→1】
────1足りない。これは偶然なんかじゃない。黒崎さんは最初からこれを狙いながら動いていた。
《閻魔王》の効果2回と《大嶽丸》の攻撃1回で与えるダメージは19。勝つには1足りない。黒崎さんはこのために戦闘力の低いアニマを徹底的に潰して、自身の効果で1回は除去を回避して攻撃を通してくる《大嶽丸》を完全に無視していた。
黒崎さんが4ターン目に《不死鳥》で《せっかちな葬儀屋》じゃなくて《大嶽丸》を破壊して2ターンかけて処理しようとしてたら《大嶽丸》が逃げて、《閻魔王》が《不死鳥》を処理していた。そうなると戻ってきた《大嶽丸》と残った《せっかちな葬儀屋》が攻撃できていたから、合計21ダメージを与えてこのターンで俺が勝っていただろう。
「ターンエンド」
もちろん、このターンに《大嶽丸》で攻撃なんてしたら《焔摩天》に阻止される。
そうしたら《閻魔王》がまだ《猿の手》の効果で墓地に置かれてなかったから俺の墓地は12枚、黒崎さんは《焔摩天》が戦闘破壊されて24枚になるから、また《焔摩天》の墓地効果を発動されて俺の負けだ。だから攻撃できない。
そもそもこの《焔摩天》を突破しても勝ちにならないし、『緊急詠唱』のためのマナは残しておきたい。幸いにも引きたいカードは引けた、あとは変なことをされないように祈るだけだ。一点読みの《怪人アンサー》とか。
【
・真常シンイチ
ライフ3/手札4/マナ7/墓地13/デッキ残り15
場:《大嶽丸》
備考:4マナがアクティブ
・黒崎アカネ
ライフ1/手札4/マナ8/墓地24/デッキ残り2/消失1
場:《十二天神・焔摩天》(戦闘力2)
備考:後攻のマナ追加の権利使用済
【
「ドロー、マナを増やす」
【手札4枚/デッキ1枚】
「《バックドラフト》発動。手札を3枚墓地に置いて、自分の墓地のカード1枚を手札に戻し、そのコストをマイナス3する。ただし、自分のデッキ枚数が2枚以下なら代わりにそのコストをデッキ枚数と同じにする」
これで黒崎さんの手札は《焔摩天》1枚。
《怪人アンサー》とかはないらしい。
「回収した《焔摩天》を1コストで召喚。『召喚時』効果で10ダメージ」
なら、こうするしかない。
「『緊急詠唱』、《蜘蛛の糸》発動。自分のライフが0になるならその直前に『緊急詠唱』できる。このターン、自分のライフは1を下回らない」
これでライフは1残る。そして……
「そして、自分の墓地のアニマ1体を選択し、そのアニマ以外の自分の手札・場・墓地のカード全てを消失させ、選択したアニマを『蘇生』する」
そのアニマが場を離れたら、ターン終了時に俺は敗北する。けど、これでもう関係ない。
「《閻魔王》を『蘇生』。そして『召喚時』効果で《焔摩天》を『埋葬』して相手プレイヤーに──」
ん?
閻魔王が困った顔をして、腕でバツをつくって俺に向けている……?
……っ、やられた!!
「一応言っておくけど、アタシが賭けたのはアナタが《蜘蛛の糸》を引いてないことじゃない、
俺は《猿の手》も《白紙の契約書》も使ってカードを引いている。結果的に黒崎さんの《バックドラフト》を補助することになってもだ。
それは《蜘蛛の糸》を探していたからだったし、俺は無意識に《蜘蛛の糸》を引けなかったことに黒崎さんが賭けているのだと勘違いしていた。
二年ぶりだからか、なんて言い訳していいのかわからないけど、この人をまだ舐めていたかもしれない。
「《バックドラフト》で墓地に置いたカード、全部スペルか……」
「そうよ。今回は2枚目以降の《焼畑》も《バックドラフト》もデッキの底に眠ってたわ。まあ、《闇の回収業者》で手札は調整してたから《白紙の契約書》を使われなくても《蜘蛛の糸》は対処するつもりだったけど」
《閻魔王》が『召喚時』効果を発動させるための条件は『
そして、罪のない者を裁けない《閻魔王》は発動条件を満たしていなければそもそも効果を使用できず、《焔摩天》を除去することも、《浄玻璃鏡》を持ってくることもできない。
赤黒のデッキでアニマを墓地に置かずに《閻魔王》を封じるとか、なんてことやってのけるんだこの地雷系……!!!
「……デッキの底のほうにアニマがあったら負けだったんじゃない?」
「バトル中だから詳しくは言わないけど、デッキに何が残ってるかは覚えてるんだから、デッキを全部使うならこういう判断だってできるわ」
今更だけど、ほんとなんなんだこの人……!
ここがカードゲームの世界だからか、前世に比べて他の人のレベルがあんまり高くない気がするとは思っていたんだ。神といわれる精霊でも慢心があるし、色々制限があるだろうに自分でカードを作ったりするから隙ができて結局勝ててしまうくらいに。
でも、この人だけレベルが高すぎる。というか前世でもこんな意味のわからないことをやってのける人は見たことがない。少なくとも身の回りにはいなかった。
ここから《浄玻璃鏡》を引いても相手の場に《焔摩天》が2体いるから単純な頭数の差で負ける。次のドローでアニマを引いて1体の攻撃を阻止しても《焔摩天》の攻撃を《閻魔王》が阻止して相打ちになった時点で《焔摩天》の墓地効果が発動して負けるし、こっちから攻撃しても黒崎さんからしたら《地獄からの召喚》の効果で戦闘力が下がっているほうの《焔摩天》で阻止すればいいだけの話だ。
そしてもう一度《白紙の契約書》を引いても手札が0の黒崎さんにはなんの意味もない。
これで、俺の勝ち筋はひとつしかなくなった。
それは《閻魔王》を墓地に置けるカードを引いて、発動条件を満たしている墓地効果でダメージを与えること。
「お互いやれるだけやったのよ、そのドローにお互い全部賭けましょう。ターンエンド」
【
・真常シンイチ
ライフ1/手札0/マナ7/墓地0/デッキ残り15
場:《十王の五・閻魔王》
備考:《閻魔王》が場を離れたなら《蜘蛛の糸》の効果でターン終了時に敗北する。
・黒崎アカネ
ライフ1/手札0/マナ9/墓地27/デッキ残り1/消失1
場:《十二天神・焔摩天》(《地獄からの召喚》による弱体化のため戦闘力2)
《十二天神・焔摩天》(戦闘力5)
備考:後攻のマナ追加の権利使用済
【
「俺のターン────」
デッキに何枚残ってるかとか、確率とか、いまこの場においてはただの参考情報でしかない。
こうなってしまった以上、引くしかないんだ。
「────ドロー」
引いたのは……2枚目の《地獄に咲いた蓮》だった。
《焔摩天》1体の攻撃は阻止できるけど、2体目を通したら負けだし、戦闘力が同じアニマである《閻魔王》で阻止しても負けだ……
「《地獄に咲いた蓮》を召喚、ターンエンド」
【
「ドロー、戦闘力5の《焔摩天》でプレイヤーを攻撃」
「……《閻魔王》で阻止」
一応これで《閻魔王》が墓地に置かれたけど、
《閻魔王》は、罪なき者を裁かない。
「《焔摩天》の効果発動。自分の墓地のカードが相手より12枚以上多いなら5ダメージを与える」
俺が逃げていた二年間、そのあいだもプレスピに打ち込み続けた黒崎さんの《焔摩天》の炎が、全てを焼き尽くした。
【真常シンイチのライフ:1→0】
「ほんと、どういう計算能力なんだか」
「アタシにできるのなんて再現くらいよ。独創性は昔からずっと足りない」
「再現ができればだいたいできるよ、先駆者である必要はないんだから……」
日没間際、この結末を見届けるために顔をのぞかせていたんじゃないかってくらいに踏ん張っている夕日の中、俺と黒崎さんは話しながらスタジアムを出て駐車場へ向かっていた。
「再現だけしてれば勝てるってわけじゃないんだから、時には1から何かを作り出して、先駆者にならなきゃいけない時もあるでしょ?」
黒崎さんは懐かしむように続ける。
「だって、
「……いまではテンプレのひとつだけどね」
「そんなもんよ」
「それもそっか」
昔の話を持ち出すね。まあ、前世のカードゲームのことをずっと思い出してる俺も人のこと言えないけど。でも……
「でも、そのデッキは黒崎さんじゃなきゃ強くないよ。すごいのはきみだ」
「……珍しいわね。アナタが人のことを素直に褒めるなんて」
「俺のことなんだと思ってるの?」
黒崎さんは素直な賞賛に少し目を見開いて失礼なことを言うと、俺のツッコミみたいな返事には答えずに柔らかく笑っていた。失敬な。
「アタシ、引退しないわ。プレスピの楽しさを思い出せた。それに、約束したんだから。アナタが戻って来るなら待ってるって」
「…………楽しいよね、カードゲーム」
まあ、これで少しは気が晴れたんじゃないかな。
「ありがとね、シンイチ」
久しぶりに微笑みを見せた黒崎さんを、茜色の空が照らしていた。