プレイスピリット〜精霊がいるカードゲーム世界で普通のバトルがしたかった男〜 作:匿名S
「《不死鳥》でプレイヤーを攻撃」
「ぐあああぁぁぁっ!!!」
街の栄えた駅から徒歩でおよそ15分程度の距離にあるスタジアム、今日はそこでプレスピこと『プレイスピリット』の大会が行われていた。
「黒崎が決めたぁぁぁぁぁ!!!今回のぉ!大会もぉ!!優勝はぁ!!!黒崎アカネぇ!!!!」
黒髪のツインテールに赤のインナーカラーが入った地雷系は黒崎アカネ。彼女は会場に響く歓声と魂のこもった実況の大声に顔色ひとつ変えることなく、ピンク色のエナジードリンクをストローで飲んで優勝した。
その後は表彰式とファンサービスを経て自由になったアカネだが、あまり機嫌が良くなさそうに
◆
手応えがないとまでは言わない。でも正直物足りない。ここ最近ずっと優勝しっぱなしでスポンサーからの評価は良いけど、別にスポンサーに褒められたくてプレスピやってるわけじゃない。
アタシは昔から負けん気が強かった。負けても立ち上がっては相手を超えていく私を見て、いつしか周りの人はついてこなくなって、気づけばプロになっていた。
でもプロになって大会に出ても、対戦相手のレベルが格段に上がったわけじゃない。アタシがプロになったからって対戦相手がみんなプロになるわけじゃないから当たり前だ。
気づけば大会の優勝数は両手の指で数えられなくなったし、出場すれば必ず上位には食い込む。カードゲームである以上常勝とはいかないけれど、実績と実力でいうなら最上位と言ってもいいと思う。
でも、それに満足してるかどうかは別だ。
アタシはただ勝つんじゃなくて、立ち塞がる壁を超えて勝った時の自分が一段上に登ったあの感覚が好きなんだ。
一時期はメイコだかメイカだか、そんな感じの名前のプレイヤーが急に現れて優勝争いに多少はやりごたえも出たけど、その子がプロになってしばらくしたら急に活動休止してまた不完全燃焼の対戦ばかりになった。
それに、その子がいてもまだ足りない。アタシが満足できる相手を思い浮かべた時、真っ先に浮かぶ顔は決まっている。
「
今思うとアイツはプレスピを楽しんではいたけど、遊びとも競技とも違う感覚でやっていたと思う。なんというか、命をかけて戦っているような、勝てなくなったらそのまま死んでしまうかのような……要するに、それくらいの覚悟を持ってプレスピに向き合っていたように見えた。
アタシは
それができるのはアイツしかいないと思っていたし、アイツこそその相手にふさわしいと思っていた。
でも、アイツはアタシと張り合える実力と向上心を持っておきながら、プロになることなく受験期になると大会から姿を消した。
最初は受験シーズンだったし、アイツも高校受験で忙しいのかなくらいにしか思っていなかった。
でもよく考えたらその前から大会に出る頻度は減っていたと思うし、アタシのファンの中にたまたまアイツの同級生がいたからファンサついでに聞いてみたらアイツは志望校の偏差値を20近く落として勉強を放棄したらしい。
それが本当ならプレスピができなくなるはずがないし、アイツがプレスピをそう簡単に辞めるとは思えない。なにか、アイツのやる気を削ぎ落とすようななにかがあったんだと思う。もしその理由がアタシが弱かったからとかだったらめちゃくちゃ修行しなきゃ。
そんなことを考えながら歩いていたら、噂をすればなんとやら。シンイチの後ろ姿を見つけた。
「……あら?奇遇ね」
「げ」
「失礼な反応ね……ん?」
シンイチが手に持っていたビニール袋。
透けて見えたその中身は、開封済みのカッターナイフだった。
「アナタ……なんで開封済みのカッターなんて持ち歩いて……まさか」
後で振り返ると、アタシは少しナーバスになっていたんだと思う。気づけば手から落ちていたエナドリに構わず、シンイチの肩を掴んで語りかけていた。
結局リスカは誤解だったけど、シンイチはなんというか、気づいたら消えていなくなってしまいそうな危うさがある気がする。
言葉にしづらいけど、なんというかもう自分の役目が終わってると思ってそうな、自分が不要な存在だと認識してそうな感じ。
そんなことはないのに、アタシにとってシンイチは唯一ライバルだって言える存在なのに……
とりあえず、定期的にシンイチのバ先に顔を出すことにした。
◆
なんか最近黒崎さんがよく
「いらっしゃいませー」
あ、今日も来た。俺の顔見てちょっと安心したような顔しないでほしいな。サボってないって。
はいはいお会計ね。いつも通りのエナドリと……強めの缶チューハイ?
「ストローふたつください」
「あの……黒崎さん、一応年確してもいいですか?」
「ん」
黒崎さんが手渡してきた身分証を見せてもらう。そして明かされる衝撃の真実。
黒崎さん、22歳!?5つも上だったの!?