魔法科高校生の日日   作:千川 悠汰

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お久しぶりです……
丸1ヶ月どころか2ヶ月も間が空いてしまい申し訳ないです。
本当はSAOと同じぐらいに投稿するつもりだったんですが、だらだら書いていたらあっという間に5月になってしまいました。
次はもうちょい頑張ります。

※5/2 誤字修正しました。


第二十六話

 という訳で。帰宅して早々、俺は家の古式魔法師を何人か集めて()に向かっていた。

 

「若旦那。流石に旦那様にお伺い立てずに蔵ぁ開けるのは不味くないですかね……?」

 

「ん?ああ、なんかビクビクしてんなと思ったけどそういうことか。さっき連絡入れといたよ」

 

 端末をぶんぶんと振って4人の魔法師にアピールする。その途端、露骨にホッというため息と緩んだ空気感が一気に蔵の前に広がった。そんなに親父が怖いのかコイツら。......確かに怖いわ。

 

「まあ、言ってもそんな期待はしてないよ。目録だって大昔に書かれたもんだ。当時の魔法への不理解もあるから多少なりともオーバーに書かれてるだろうさ」

 

 というかそんなやべえ奴持ってたら国にバレるだろ。

 この日本は前世とは違う。軍が存在してて、個人情報をある程度自由にすっぱ抜けるしそれ専用の部隊だって存在する。無論我が家が何の対策も取っていない訳ではないが、国と事を構えるのは無理だと断言せざるを得ない。四葉家のように奥の方のやべえ人たちと繋がりがあったり、1人で諸々ひっくり返せるようなナニカがあるなら話は別だが。

 

「気楽に行こう。ビビり散らかしてたら理解るもんも理解らないだろ?」

 

 大丈夫大丈夫、ほんとにヤバいのは滅多にないからさ。……無いよね?

 

 ◇ ◇ ◇

 

「風情がある……いやこれ風情か?」

 

 保管物が古い物品なだけでホコリまみれカビまみれの倉庫を風情と言っていいのか?なんか怒られるんじゃないかな。

 ま、まあ、歴史的資料がホコリ被ってたなんてよくある話だしいいか。いいのか……?

 

 閑話休題(それはさておき)。左を見れば日本刀、右を見れば具足。かと思えば正面突き当たりの棚には大量の本や巻物。おそらくどれも魔法に関連するものなのだろうが、少し管理の雑さに心配になってくる。もしかして先祖がとうに調べ尽くし、全部碌な効力はないと判断されてたりするんだろうか。

 ───いや、ここまで来て何もせず出る方が問題だろう。男なら、かつて魔法に憧れた者なら、一縷の望みをかけるのが正しい選択肢ではないか。

 

「若旦那!目録で目星つけてたモンの回収終わりました!」

 

「りょーかい。俺もすぐ出るから蔵の外で待機しててくれ」

 

 さて、それじゃあ気になった物でも適当にピックアップして戻るか。

 刀は……そんな何本も持ってても困る。となるとここら辺の山積みの本とか、あとは向こうの棚に倒れてる用途不明の道具類か。本は内容さえ読めればいいが道具系はその筋の専門家にでも聞かないと使い方一つ分からなかったりする。

 

 あ、幹比古に見せてみるか?ぶっちゃけ手の内がどうしたこうしたとか言ってられんしな。ちょっとでも生存率を上げる為にも自己強化につながる手段は出来るだけ使っていきたい。

 あと、達也の気を引けたらなお良しだな。そういう(・・・・)道具がいっぱいあると判ったら向こうとの繋がりも保てたりして。……無理か。

 

 なんて風に色々物思いに更けながら物色したはいいが、やっぱり碌なモノは残ってなさそうだった。精々古めの魔導書が幾つか面白そうだったぐらいか。実戦でやるにはちょーっと不安、というか効果を信用できなさそうだ。

 とはいえ検証含めて再吟味していけばいいか。実際に使えそうなら片っ端からCADに入れておこう。今は一枚でも手札が欲しいところだし、パラサイト戦も考えるとこの手(・・・)の術式はかなり重要になってくる筈だ。

 

 そう思って蔵から出ようとした際、カラン……と何かが倒れる音がした。布巻きの……棒、か?つっかえ棒か何かだろうか。まあいいか。こんなこと気にしててもしょうがない。

 

「っし。おーい、撤収するぞー!」

 

「若旦那以外は全員外出てます!」

 

 マジか、皆んな早いな。なら俺もちゃっちゃと片付けて戻るか。

 持っていく魔導書と巻物は上手く積んで抱え、ついでに蔵から出るなり埃を払った。

 

「ぶぇっくしょい!!」

 

 ずー……あー。ダメだ、やっぱり一回掃除するか。埃凄かったし、あれだと余計なものまでカビたりしてそうだし。

 

「わりい、皆んな。先に掃除しちまおう」

 

 一応親父にも連絡取ってと……『壊さないように気をつけろ』ね。了解ですよっと。

 

 そして、だ。

 これは割と有名な話だが、古文書などの古い紙媒体を触るときは清潔にした素手が基本だ。手袋などをすると繊維が紙の繊維と引っかかって紙が壊れてしまうからなのだが……無論魔導書だってそうだ。別に何か特別な防護機能がついているわけでもないので、取り扱うにはそれなりに神経を使う。なので運び出した古い巻物や本は一度別の部屋に運ぼうと思っていたのだが───

 

「紙と紙の間の埃がっ……うげっカビ生えてる!!」

 

 と、管理を怠るとあっという間に埃が溜まり、カビが生え挙げ句の果てに虫に喰われる。幸いにも流石に物が物だからか、長期スパンながらに管理はされていたらしくまだ何とかなる範囲で済んでいそうだ。となればさっさと掃除して天日干ししてしまおう。向こう数日は晴れているので手早くやれば問題なくいける筈。という訳で屋外に全部持っていってしまおう。

 

「えーと、まず毛先が柔らかいブラシでカビや埃を払う、と」

 

 家の魔法師たちと共に備品の刷毛やらブラシを持ってきて丁寧に払っていく。紙が破けたり穴が開いては元の木阿弥なので慎重に。

 続いては柔らかい布やペーパータオルに消毒用エタノールを少しだけ含ませ、力を入れ過ぎずに拭っていく。力を入れすぎると破けるのはいうまでもないだろう。

 

 一冊が終わり、さて次はと山積みになった大量の古書を見る。これ……終わるか?

 

「っすー……お前ら急ぐぞ!!」

 

 こりゃ全員で頑張っても終わるか怪しいぞ。掃除と並行して天日干しの用意をさせて少しでも早く終わるようにしなければ。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「ねっむ……」

 

「寝不足?」

 

「ちょっと季節外れの大掃除をしてさ。夜中までかかった……もう絶対やらねえ」

 

 結局あの後真夜中と言っていい時間になるまで掃除は続いた。なんだかんだで大変だったのは保管物の輸送だったな……

 

「この時期だと珍しいね。何か大事な物でも見つかったの?」

 

「んー……まあ、それも含めてこれから調べるってとこ。何割が価値ある物なのか、ただのガラクタなのか。使えるとこ全部使って調べ上げるよ」

 

 そうなんだね、と(しずく)が相変わらず微妙に感情が読めん顔で頷く。うーん、クール美人。

 

「……何か顔に付いてる?」

 

「いんや。ちょっと俺が呆けてただけだ」

 

 昼食の時に幹比古(みきひこ)達也(たつや)に話を振るとして、どれぐらい喰いついてくれるかだよなあ。よく見るやつだねとか言われたら発狂するかもしれん。少なくともキチゲは解放する。

 

 ていうか流石に眠すぎるな。昼食まであと1コマでしかも一般科目か。なら……寝れるな。

 

「あー、雫。昼食の時間になったら起こしてくれないか?」

 

「いいけど……体調悪いなら保健室に行った方がいいよ。無理してまで授業受ける必要はないんだから」

 

「ほんと仮眠取るだけだから。課題はちゃんとやるし」

 

 数学とかだったらそんな事してる余裕はないが、確か次のコマは公民だったはずなので一回ぐらい爆睡かましても取り返せる範疇にある。前世でははっきり言って不真面目の部類だった俺だが、流石にその態度で魔法科高校に居られるほどの才能はないので、今世はめちゃくちゃ頑張っているのだ。

 

「ふぉわわぁ……んじゃ、おやすみー……」

 

 えーと、起きたら食堂行って、写真に撮った古文書を幹比古とか達也に見せて、そんで…………なんだっけ。

 

 

 

 

 

 ───眠い……けど、起きなきゃいけない気がする……

 

 薄ぼんやりとする意識の中、少なくともお袋や姉の声とは違う女性の声が聞こえてきた。誰かに頼んだんだっけ。

 

「ねえ、授業終わったよ」

 

「ん……?お、あぁ。あー……」

 

 一度、二度と大きな欠伸をする。同時に脳に酸素が周り意識がはっきりしてきた。なるほど、どうやら授業終わりに合わせて雫が起こしてくれたらしい。

 よく寝た。いやマジでよく寝た。普段は割とよく寝てるからか、却って昨日の夜通し作業が大きなダメージになっていたようだ。

 

「わり、助かったわ。ほんとよく寝た〜」

 

「ううん、一声かけるだけで起きてたから。私は特に何もしてないよ」

 

「いやいや。誰かに声かけられるかどうかってだいぶ違うからさ。あ、やばい肩痛い……」

 

 流石に机で寝たのが良くなかったか。肩全体がバキバキと悲鳴をあげている。今度からは雫の言う通り、保健室に行ってちゃんと寝た方が良さそうだな。ああいや、別に何回も学校で寝る気はないけど。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「肩、本当に大丈夫?」

 

「まあ時間経過でなんとか。突っ伏して寝るもんじゃねえな」

 

「寝るって……4限の授業でか?」

 

 レオが本気か?みたいな顔をして尋ねてきた。別にサボってた訳じゃ───いや、やってる事はサボりだな。

 

「ちょっと昨日な。徹夜で掘り返したり掃除したりしてたから全然寝れなかったんだよ」

 

 端末を取り出し、データ化した目録や古文書、武具を皆んなに見せる。

 その中でも特に古文書は達也や幹比古にウケが良かった。よしよし、興味を惹けたのはかなり大きいぞ。正直俺1人で全部調べるのは嫌……時間がかかるので、この2人は是非とも巻き込みたいと思っていたところだ。

 

「それは一体、どういう物なんだ?」

 

「分かんね。これから調べようと思ってるとこなんだけどさ〜。あ!そうだ。達也も見るか?」

 

 達也を含む全員がザワっ……と雰囲気を変えた。恐らくは、何言ってんだコイツという反応だろう。古式魔法関係と思われる資料を、何の要求もなく開示します!なんて言うんだからそりゃあ気が触れたかと思われるだろうな。

 

「ぶっちゃけ何も分かってないし、解析しようにも知識と手が足りないから独占しててもしょうがねえんだ。それなら知識があったり技術があったりする奴に見てもらいたい。本だって興味や需要がある奴に読んでもらう方が本望だろ?」

 

 果たして俺の説明に納得したからなのか、それともコイツ大丈夫か……という憐憫からくる物なのかは分からないが、何はともあれ達也と幹比古も解析に参加してくれることになった。達也の方は論文コンペに聖遺物(レリック)と抱えるものが多いから中々進まないだろうが、それでもトーラス・シルバーのシルバーの頭脳に期待しない方が難しいだろう。

 

「達也は一応メインの方あるんだから程々にな?あ、でも幹比古。お前にはめちゃくちゃ期待してる、というかお前が頼みなんですよろしくお願いしますっっっ!!!!」

 

「えっ、えええっ!?そんな事言われても困るよ!そりゃあ、出来る限りのことはするけどさ……」

 

 へっへっへ。これで幹比古は行けるだろう。そして多分幹比古のことだ。よっぽど出なければ解析した情報を隠そうとはしないだろう。俺はその解析してもらった情報にタダ乗りするって寸法よ。へっへっへっ……

 

「あのー……すごい悪いお顔になってますよ?」

 

 美月(みづき)さんの注意を受けて慌てて髪を掻いて誤魔化した。流石に公共でする表情じゃなかったか。

 

 




恒例の蛇足
刀や棒切れの説明は追々やります。朔には接近戦を頑張って鍛えてもらいたい所存です。
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