近所のクールお姉さんポジの英雄が俺の前だけ甘えてくるんだが?   作:だけたけ

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はい皆さんお待たせしました。だけたけです。

今回は物語が大きく動きます。今までの蛇足という名の時間かせぎはもう存在しません。


ではどうぞ


37話 天使、挨拶する

37話 天使、挨拶する。

 

 

 

「蛍、下がれ。」

「....」

 

古風が漂う城内にポツリと呟きが落ちる。自分から出たその音は真剣そのもので反論を許す雰囲気ではなかった。

 

後ろに下がった蛍を視界の端で捉えながら俺は剣を抜く。

 

「....」

 

刃が鞘の内側を走る音を響かせながら俺の頭は急速に冷えていた。

 

キィンという澄んだ音と共に1つの細長いものが地面に落ちる。

 

「....」

 

そう、俺は不機嫌になっていた。いや、不満と言ってもいい。

 

「何奴....?」

「ナギが壊れた....」

 

俺に吹き矢を放った刺客が退散する気配。それを感じ取って俺は刀を腰に戻した。

 

「....なんでそんな顔してんだ?」

「....」

 

蛍の方を向くと苦虫を噛み潰したようでいて、軽い後悔の色が見えるなんとも言えない顔。

 

「....ごめん、謝るから元に戻ってよ。」

「なんの事でござろうか。」

「弱くなったとか言ってごめん。」

「なんの事でござろうか!!」

 

いやぁほんとに身に覚えのない事ですなぁ!いや、ほんとに!落ち込んでねぇし!いいとこ見せようと頑張ってる訳じゃないしッ!

 

「....パイモンはどこに行ったんだろ....」

「無視は無視で悲しいからやめて?」

 

速攻俺のことを見捨てる蛍。その顔は少し拗ねた様な可愛らしいものになっていた。

 

「ナギが壺の中の家で1人、悲しく泣いていた事を隠してあげよう。」

「ほんとになんのこと?!?!」

 

心当たりが無い。泣いたことなんて人生で一度もないし。むしろ泣いてたのは蛍の方では?ほら、あの....俺がファデュイのフリしてた頃の....ダメだこれ言ったら地雷だわ。え?俺詰んでない?

 

あー....

 

その瞬間、一陣の風が吹いた。

 

「ッ....」

 

顔を手で庇い、そのまま俺は振り返る。

 

顔面に衝撃が走った。

 

視界が暗くなる。その原因を引き剥がそうとするがビクともしない。そうしている内に高い声が辺りに響く。

 

「ナギのバカ!!!旅人のバカ!置いてくなんてオイラのこと嫌いになったのか?!」

「おまっ、パイモンッ?!離れろ!!!抱きつくなら蛍の方にしろよ!なんで俺の方なんだよッ!!」

「うわぁああああん!!!」

 

俺はあわてふためきながらどうにかして俺の顔面に張り付く白い芋虫を振り払おうとするがやっぱりどうにもならない。

 

「....仕方ない、このまま行くか。」

「そのままじゃ戦えないでしょ。パイモン、おいで?」

 

その瞬間、視界が晴れる。

 

「ぷはっ!し、死ぬかと思った....呼吸止まってたぞ!おまっ....」

 

言葉は止まる。その尊い風景を前に俺は一言も発せなくなっていた。

 

蛍に抱きつくパイモン。それに慈愛の笑みを浮かべながら優しく撫でる蛍。....蛍の胸に飛び込んで顔を埋めているパイモン....埋めている....埋め....

 

「おいこら、そこは俺のだ。」

「ちょ、ナギ?!」

 

慈愛がどこ何吹き飛び、顔を真っ赤にする蛍。うん、可愛い....

 

「....そろそろいいでござるか?」

「ああ、悪い....ありがとな。パイモン連れてきてくれて。」

 

ただはぐれただけ。これが物語ならストーリーにはなんの意味もないただの無駄なシーン。

 

羨ましい。

 

そんな感情が浮かんできた。

今度はふざけてはいない。本心からの、真面目な感情だ。なんなのだろう。ほんとになんなのだろうか。

 

思えば蛍に甘えていたのは....

 

いや、辞めよう。これ以上は雑念になる。

 

 

「....万葉、ここまで乗り込んできてよかったのか?」

 

ひとつ頷いて言う

 

「....拙者も不満はあったでござるし乗りかかった船。ここで降りるほど男は廃っておらぬよ。」

 

なにこいつイケメン....爽やかイケメン....これでいて暗い過去があるからこそ嫌味に見えない。というか嫌なところがない完璧超人......

 

「なるほどね、ナギは万葉を参考にカッコつけてたわけだ。」

「うっ....」

 

おいそこ、苦笑しながら見るな。そんなことあったんだみたいな表情するな。あとパイモンはそろそろ離れろ!戦力として蛍がいなくなると割ときついんだよ!

 

「んで....前衛どうするんだこれ....ん?なんか忘れてる気がする....」

「....もしかしてフィルタのこと忘れてる?」

「あ"」

 

パイモンが今帰ってきたとなると........入れ違いになったか?

 

「万葉はなんでここに俺らがいるってわかったんだ....?」

「....んふふ....どうだぁ!変装だ!私は変装ならぬ変身を覚え....いっだぁ?!殴ることないでしょ?!」

 

俺は姉をフルボッコにした。

 

 

暫くして

 

 

「んじゃあ城に苦言を言いに行くって言っていた万葉は今何してんだ?」

「さぁ....」

「さぁってお前な....」

 

あれからフルボッコにしたことを蛍に怒られたり、武士と戦ったりと色々あり、その道中....何故万葉をフィルタが知ってるんだ?という疑問が浮かんだ。過去にもフィルタは万葉に会ったことは無いと思う。

 

「....コロンビーナ、戻っておけ」

「....へ?」

 

間抜けな声を出しながらもフィルタは迷いなく姿を変えた。まぁまぁ身長が高かったものが今は少女のような背丈に変わり、服も和風のものから洋風なものに変わった。

 

「....蛍、落ち着けよ。」

「....」

 

目線をやると蛍の頬には1つの光が筋として落ちていった。それは涙か汗か。俺がいる角度では確認できない。

 

目の前の角から誰かが歩いてくる。

 

金と紺色意匠を身につけた、背丈の高いの男。ともう1人の計2人。

 

俺の頭の中は荒れ狂っていた。

 

 

知らない。

 

 

こんなもの知らない。

 

 

こんな物語(・・)

 

 

心臓がうるさい。心の疑問の声が今にも口から飛び出しそうで、

 

それを堪える口が震える。

 

鯉のように口はパクパクと動き、腕はワナワナと握りしめた拳と共に揺れていた。

 

それはダメだろう、

 

それはあっちゃダメだろう....?

 

必死に否定しようとする頭を片手で抑えて俯く。目線は外さない。

 

縦に並ぶその2人、歩く度にチラチラと見えるその後ろの金色(・・)が見える度に確信が深まる。

 

「は、はは....」

 

乾いた笑いが俺の口から漏れた。

 

処理できる脳のキャパを超えた。

 

 

その、金色の衣装を来た後ろの男の手にあるもの。手下げの様に持つそのものを見て俺は蛍と出会い、初めて....

 

戦わずして膝を付く。

 

「お前らは幕間に出てくるだけだったはずだろ.....」

 

 

 

何がどうなってる?お前ら....お前らは....

 

 

 

「なぁ、応えろよッ!お前がなんでそっち側に行ってんだ?!」

 

今までで最大の未知に遭遇し、俺は叫んだ。

 

「ん?空、知り合いか?」

「ああ....そうだね。久しぶりだね、蛍。」

 

その、空....蛍の兄は、手にある....雷電将軍の頭を掲げながらそう言った。

 

 

 

__________________________

 

 

 

「うぁぁぁあああああああッ!!!!」

 

気付けば地を蹴り、前へ飛び込んでいた。

 

2人の顔が近くなる。間合いに入った等とは最早考える余裕無く、我武者羅に手に持った刀を振り回す。

 

そこには戦術も剣術も、理性も無い。本能のまま、感情のまま、振るう。

 

『千氷舞花ッッッ!!!!』

 

雷電将軍が死んだ。

 

首から上のそのモノ(・・)がいやでも現実を突き付けてくる。

 

別に気にする必要は無いじゃないか。

元から交渉が決裂したらそうするつもりだったんだ。革命軍と手を組んだんだぞ、そんなこと分かりきっていただろう?

 

自問自答が冷静な頭のどこかで繰り返される。

 

簡単にいなされる刃、飛び散る火花を見ながら何処か思う。

 

「ッぁぁぁああああッ!!!!」

 

叫ぶ自分は何に怒っているんだろう。

 

目から溢れる何かを振り切りながら俺は考える。

 

「殺すッ!!!!」

 

 

殺す?何故?

 

 

「絶対に許さないッ!!」

 

許さない?何故?

 

 

「死ねよッ!死ねよぉぉおおおッッ!!!!」

 

死ね?何故?

 

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故なぜ何故何故何故何故何故なぜなぜ何故何故なぜ何故なぜなぜ何故何故なぜ何故なぜなぜなぜ何故なぜなぜ何故何故なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ何故なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼ

 

ああ....なんか、もうどうでもいいや....

 

 

氷妄ノ雹(ひょうもうのひょう)

 

宙に浮かぶ剣が、通路を埋め尽くす氷の壁のように並んでいる剣が全て雹になり、相手に襲いかかる。

 

 

ハズだった。

 

 

「待ってッ!!!ねぇ待ってよッ!ナギッ!」

「ッ....ぁぁああああッ!」

 

後ろから蛍の声が聞こえた。ごちゃごちゃの頭の中でその声だけがやけにはっきりと聞こえる。

 

一瞬、腕に入っていた力が抜ける。我に返り、もう一度力を入れようとした。その時だ....

 

ミシミシ....

 

嫌な音が聞こえた。

 

木が軋むようなそんな音。

 

雹の壁、宙に浮いていたそれらが力を抜いた瞬間に全て廊下の上に落ちたのだ。氷は元は水、その大量の水の重みに耐えられなかった床が限界を迎えた。

 

目の前が消えた。目の前から、そのまま....何もかもが....

 

俺らが頑張って登ってきた階層を滑り落ちていく。石垣さえも滑り落ち、地面に当たり、やっと止まった。

 

動く影はない。

 

いや、正確には分からない。砂埃で煙幕のようにそこだけが見通せないのだ。

 

空が見える。俺の目の前の廊下が切り取られたかのように消えている。

 

俺はもう一度膝を着いた。今度は腰を落としてもう立てないというように....

 

「....んなの....んなのアリかよッ!うわぁぁああああああああああッ!!!!!!!」

 

そんな喉が裂けても叫び続ける俺を呆然と見ている蛍に....俺は気付かなかった。気づかなかったのだ。

 

「おに、いちゃん....なん、で....」

「ッ....」

 

行き場のない怒りが溢れそうになる。すんでのところでなけなし理性が働いた。

 

蛍は悪くない。あたるべきじゃない。

 

「は....あはは....」

 

やっと、やっと気づいた....やっと言葉で理解してたことが納得として頭の中に落ちてきた。

 

浮かび上がるのは雷電の....母の記憶だ....

 

「どうしたのですか?」

ーーいや、寝れなくて....

「仕方ないですね....ほら、こっちに来なさい....」

ーー....膝?

 

不慣れながらも膝を叩いてこっちに手招きする母の姿

 

「神の目、ですか。」

ーーうん、なんか、気付いたら持ってた....

「....良かった、ですね....」

ーーそうなの?

「ええ、良かったです。」

 

ぎこちなく笑いながら俺を祝福しながら抱きしめてくれる母の姿....

 

いつかしてくれなくなった、その行動の数々。

 

ああ、

 

嗚呼....

 

 

嗚呼....俺は....恨んでなんか、いなかったんだ....

 

全ては全部子供のわがままで、帰らなかったのも子供なりの意地で....維持をはり続けていたら今更否定するのも怖くなって引っ込みつかなくなって....

 

 

「あははっ、アハハハハ!!!」

 

 

俺は....

 

 

おれ、は....

 

 

 

母親に、甘えたかっただけだったんだ....

 

 

 

涙を流しながら俺は暫く、笑い続けた。

 

その裏でパイモンがこちらを睨んでいることにも気付かずに。

 

__________________________

 

 

 

「失礼するでござる。」

「ん?おお、万葉。どうしたんだ?」

「実は折り入って相談があって参った次第、少しお時間あるでござるか?」

 

目の前の人物はニヤッと笑い、大きくうなづいた。

 

「良かった....それじゃぁ....」

 






自分の本心に気付いた時にはもう既に遅し。初の『手遅れ』という事象にナギの心はもうボロボロ。この先、どうなるかお見逃し無く


感想、あざます。あと数話、もう暫くお付き合い下さい。

それでは

稲妻編の先、見たい?

  • 見たい!
  • 最近飽きてきたからいい
  • とりあえず空救済まではやれ
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