お次は開幕早々皆さんから気を遣われながらも自己紹介する熊井さん。もう終わったことだというのに、なぜか応援したくなってしまう。
〇名前の由来は?
——弥子の弥というのは、月日を重ねるという意味がある。そういうところを大事に生きて欲しい、という願いが由来——
そよ「素敵な由来だね~!」
立希「もしかして、3月生まれ?」
くま「ううん、6月……」
祥子「安直ですわね」
睦「……どうせ私は安直に付けられましたよ」
祥子「ち、違いますわ! 睦は……きっと他にも理由があるはずです!」
睦「……別に聞きたいとも思わないけど」
愛莉「だよねー」
結「聞いてもしゃーないし」
閏「なんか気にしてなかった私までフクザツなってきたわ……」
祥子「どんどん根暗に飛び火していきます!」
燈「せっかく素敵な由来の話してたのに……」
玲音「お互い不思議なグループだよね」
せっかく今までで一番心温まるいい話だったのに、どうしてこうなるんだろう。
もう軽々しく名前の由来を尋ねるのはやめようと思った瞬間だった。
〇好きな動物は?
——うさぎ。熊は普通——
そよ「そ、そっか~」
アカペラ部の皆さんが愛着込めて呼ぶものだから、本人も気に入ってるのかとばかり思ってた。
でもやっぱり私だけじゃないらしく、たきちゃんが遠慮がちに言う。
立希「すっごいなんとなくなんだけどさ。熊井さんにクマって似合うと思っちゃうんだよね」
くま「そ、そうかな……」
そよ「うんうん。名字に熊がついててあだ名もそこからってだけじゃなくて……」
燈「なんとなく、熊のイメージと似てる、かな……」
くま「熊のイメージ……暗くて深い森の奥で、ひっそり暮らしてそう、ってこと?」
彼女の致命的にショックを受けた悲しい顔に、私たち一同非常に焦り散らかす。
祥子「ちちちち違いますわよねみんな!?」
燈(首を縦にブンブン振る)
立希「ととと当然も当然っ!」
そよ「あああああ当たり前田のクラッカーだよっ!」
結「古っ」
閏「しかも一番言わなさそうなそよっちが言ってるのウケるww」
やかましい。草生やさないで。
睦「……熊井さんは、小さいテディーベアが似合いそうなイメージがある」
立希「そ、そうそう! たまには的を得たこと言うじゃん睦!」
そよ「げ、言語化しづらいところをよく言ってくれた!」
祥子「流石私の幼馴染ですわ!」
燈(必死に首を縦に振る)
くま「ありがとう。あと、高松さんも、気にしないで……」
嬉歌「変なこと言わないように口閉ざしてるみたいだよ?」
燈「え、えっと……ご、ごめんなさい……」
くま「大丈夫。高松さんに悪意がないのは、分かるから……」
愛莉「一番無縁そうだもんねー」
玲音「まぁ、引っ張ってもしょうがないから次いこうか」
〇休みの日は何してる?
——読書や映画——
祥子「ちなみに私も読書が趣味なんですの」
くま「えっ、そうなの?」
くま以外のアカペラ部「いがーい!」
祥子「みなさんでハモるほど!?」
小牧さんが学年9位なことくらいの衝撃らしい。さもありなん。
立希「祥子の振る舞い見てたら、そんなインドア趣味してると思われないんでしょ」
愛莉「山とか登ってるかと思ったー」
そよ「はい、しかも私たちを巻き込もうとして……」
玲音「インもアウトも趣味があるのはいいことだよ」
祥子「ほらみんな、近衛先輩のお言葉を聞きまして!?」
睦「……私達を巻き込むことまで肯定はしてない」
燈「祥ちゃん、もう少ししたら……」
そよ(ともりちゃん、メッ!)
祥子「?」
睦「……もう少ししたら暖かくなるから、そのとき行ったら?」
立希「1人でな」
祥子「一人ぼっちは寂しいですわ~!」
結「無理やり遊びに付き合わされる集団にいなくてよかった」
閏「おむすびはそれくらい強引に連れまわさなきゃ馴染まないと思うけどなー」
嬉歌「それでも山登りはちょっと……」
くま「無理、だね……」
〇特技は?
——手先が器用で細かい作業が得意なので、料理や編み物を嗜みにしている——
。嗜み……。お嬢様ズよりお嬢様なこと言ってるなー。
閏「あー、そういえば毎食栄養考えてる、って言ってたねー」
くま「うん。小さい弟や妹がいるから。健康に育つよう、考えてあげたくて」
嬉歌「優しいお姉ちゃんだ……くまちゃんすごい」
くま「そ、そんなことないよ、うたちゃん。それくらいしかやることなくて……」
祥子「もしかして編み物も、下の子たちのためにでしょうか?」
くま「あと、お母さんも、かな。お母さんには、ついこの前まですごく心配かけてたから」
閏「くまちゃんはホント、家族思いだねー。なかなかいないわ」
結「まぁクマらしいけどね」
愛莉「くまちゃんみたいなお姉さん欲しかったなー」
玲音「そしたら私も一緒に、くまちゃんの妹になりたい」
くま「先輩たちは年上じゃないですか……」
燈「お姉ちゃん……私たちでいう、そよちゃんかな?」
そよ「えー? なんか改めて言われると照れる……」
祥子「そよはお母様でしてよ?」
立希「おかんだな」
睦「……ママだね」
燈「はっ、そうだった」
そよ「そうだった、じゃないよ! 同い年にお母さん扱いされたくないっていっつも言ってるのにー!」
結「いっつも何の話してたか分からなくなるほど脱線してるんだけど」
玲音「それだけ話が膨らむのも楽しくていいじゃない」
嬉歌「膨らんでる……?」
〇友達と何して遊ぶ?
——友達(ウタちゃん)とは、カフェや図書館で勉強して過ごしてる——
立希「……真面目か」
そよ「真面目系なコンビでしょ」
ツッコミ返しながら引っかかる。今のたきちゃんは、いつもよりなんか反応鈍くて弱かったな。
睦「……今の立希は、あまりにテンプレな真面目具合にツッコマないと失礼かと思ったけど、相手がツッコミ慣れしてないから手加減してボソっと突っ込みになった、と思われる」
立希「そこまで分析されるとキモいし怖いんだけど」
玲音「ちなみにみんなは遊びに行ったりしないの?」
立希「行くどころか。毎月のように付き合わされてますよ」
愛莉「付き合わされてる?」
そよ「私たちのリーダーが毎月遊ぼうってしつこくて。誰も勢いに逆らえないんです」
愛莉「あ~」
祥子「あの、それで私が注目されるのもなんだかいたたまれないのですが……というかいい加減そよくらいは素直に喜んでくれてもいいでしょう!」
そよ「まぁまぁ。これも私たちのお約束だから♪」
祥子「納得いかないお約束ですわ……」
燈「今年度やったのは、花見に渋谷散策、脱出ゲーム、スポッチャ、水族館にプールに花火大会に……」
くま「す、すごい。1年足らずでそんなにたくさん遊んだんだ……」
閏「うらやましー! ウチには超絶ノリ悪いヤツおるからな~」
結「あん? アカペラ部なんだから、練習してナンボでしょ」
睦「……誰かさんもずっとそれ言ってるからなぁ。なんだかんだ付き合いつつ」
立希「ぐぅ……コイツ見てると、もうノリ悪いこと言えない……!」
結「喧嘩売ってんの!?」
たきちゃんが素直になる、良いご縁に恵まれたらしい。そのきっかけになったのは、豊川家に出入りする胡乱な占い師。恐るべし。
〇生まれ変わったら何になりたい?
——宮崎さん。お喋りが上手で、いるだけで場が明るくなるから——
睦「……はい、CRYCHIC組」
燈「私、ペンギン!」
立希「燈反応はやっ!」
祥子「私は……私以外なら、グランドピアノとかでもアリですわね」
そよ「自分除いたら生物には候補見当たらないんだ……。私は……本来の主旨に沿うなら、さきちゃんかな?」
祥子「私?」
そよ「まぁそれくらい輝いて見えるってことだよ。令嬢として色々苦労はありそうだし、本気で憧れてるわけじゃないけど」
睦「……私は、普通の家の子。全てが平均だったら尚望ましい」
立希「……さいですか。私は一人っ子なら別にこだわりないな。強いていうなら、親がうるさくないところ」
嬉歌「なんだか、どういう家に生まれたいかになってた気がする……」
閏「おむすびは生まれ変わってもおむすびな気がする」
結「へぇ、珍しく同意見」
閏「それかおむすび」
結「私の転生先極端過ぎでしょ、なんで私かおにぎりなのよ」
同音同名だったのによく一瞬で意図を察してツッコミ返せるな。流石たきちゃんミラー、と思わざる得ない。
〇アカペラの好きなところは?
——嫌いな自分の声が役に立って、自分を受け入れられそうな予感がするから——
睦「……立派だね」
立希「うん。それに、熊井さんのインタビューはほっこりするものばかりでいいね」
愛莉「なーんか私達のインタビューが揶揄されてるみたいだなー」
立希「い、いえ別に……」
閏「実際ウータンはちょいちょい根暗ネタぶっこむし、アイリ先輩は……」
愛莉「なにかなー、ウルルちゃん?」
閏「……なんでもないっす!」
結「チキった」
閏「んじゃおむずび言え!」
結「私は言いたいことない」
閏「絶対ウソー! おむすびこそビビってるー!」
結「ビ、ビビってないし!」
愛莉「私そんなに怖いかな……」
玲音「愛莉に怖いところなんてあるわけないじゃない。2人が変に気遣ってるだけだよ」
嬉歌「レイレイ先輩が言っても無条件肯定にしかならないですよ……」
そよ「ダメだね、この11人じゃどんなにいい話でも台無しになる」
くま「私は、そっちの方が恥ずかしくないから、いい」
祥子「熊井さんが奥ゆかしい方というのは、大変よく分かるインタビューでしたわ」
燈「次のインタビューと比べると、正反対そうだね」
ともりちゃんの想像はもっともそうだった。タブレッドは次の動画に移っていて、そこに金髪のデコ出し少女が映っていたから。