CRYCHIC交響曲   作:りょーへい

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待降節 祥子バースデー準備
adven2,3 最良のライブで最上の恩返しをするために


 

 

 advent2 最上の恩返しのために

 

 1月18日。

 

 祥子に内緒で集まった4人。

 彼女の誕生日について話し合っていたのだ。

 その案も出尽くしたところで、微妙な顔をしたそよが一旦話を整理しにかかった。

 

そよ「……えっと、ともりちゃんの意見も入れてまとめると。高尾山を登って、そのままさきちゃんにサプライズでライブ演奏をプレゼントする。……ってことかな?」

 

立希「燈。やっぱり屋外の、それも他の登山客がいる中でライブなんて……路上ライブより無理だよ。流石に許可してもらえない」

 

燈「そっか……。でも、祥ちゃんの誕生祝いに登山するのと、曲をプレゼントするのはみんな賛成、だよね?」

 

睦「…‥そうだけど。山頂でライブするなんて、できたとしても準備が凄く大変だよ? 機材も運ばなきゃだし……」

 

そよ「そこはいいよ。人手は当てがあるから。ネックなのはどう考えても許可が下りないこと」

 

燈「祥ちゃん、いつも言ってた。苦労して乗り越えた先に見る景色が凄く心を打つ、って。だから登山も、私たちと一緒に何かすることも、ライブも大好きで。きっとこれが、一番祥ちゃんに届くやり方だと思う」

 

3人「……」

 

燈「私も絶対できる、とは思ってない。無理だったら大人しくスタジオ借りる。でも、できることをやりつくした上で、諦めたい。祥ちゃんへ恩返しする機会に、悔いを残したくない」

 

立希「……燈にそこまで言われるとな。私だって、初めて自分で作る曲を披露する以上、できるだけ良い形でやりたいし」

 

そよ「それじゃあ、コレに関してはまずはダメ元でも許可をもらいに行くところからだね」

 

睦「……私は登山した直後でもギター弾けるだけの体力残せるよう、トレーニングしとく」

 

立希「それがいいよ。あと、曲作りも手伝ってよ?」

 

睦「……なら立希はトレーニング手伝って」

 

立希「体力づくりって、何か手伝うことあるもんか……?」

 

燈「みんな……ありがとう。私は歌詞作り始めるよ」

 

そよ「それじゃ、私は他の細かいところ全部管理するから。やれることやって、あのおてんばお嬢様にとびっきりのお返しをお見舞いしよう!」

 

3人「おぉー!」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 advent3 ライブ許可のお願い

 

 1月25日 

 高尾山管理事務所を訪ねる、祥子以外の4人。

 そこの管理人であるおじさんへ、そよが代表して話を伝えた。

 

管理おじ「……山頂の広場でライブ演奏させて欲しい? しかもアンプを使った、ロック方面でそれなりに音出るレベルで?」

 

立希「無理を言ってることは承知してるつもりです。ですが、1曲だけ許してもらえませんか? 2分程度に収まる短い演奏です」

 

管理おじ「時間の問題じゃないんだよなぁ……」

 

そよ「そうですよね。他の登山されてるお客さん、特に耳や心臓の弱いお年寄りの方もいらっしゃるでしょう。そういった騒音問題に抵触してることも分かっています。それでも、何とかその問題を解決する方法はありませんか? 私たちにできることなら、何でもさせて頂きますから!」

 

管理おじ「そうは言ってもなぁ……」

 

 渋い顔のおじさんに聞こえないくらいの声で、そよと立希に睦が囁く。

 

睦(……やっぱり。私か……最悪祥の家のことチラつかせないと、この感じは無理じゃ……)

 

立希(それは絶対ダメ。最悪お前の家に迷惑かかったら、そのまんまお前の傷になる)

 

そよ(大丈夫だから。むつみちゃんの身を削るような真似しなくても、何度だって交渉してみせるから、気に病まないで?)

 

睦(……ごめん)

 

 力になれず引き下がる睦に、断っておきながら活路を見出せずやきもきする立希とそよ。

 そこで、睦と一緒に後ろに控えていた燈がおじさんの前に出る。

 

燈「……友達の、大切な人の、誕生日なんです」

 

管理おじ「うん?」

 

燈「その人のおかげで、私たち4人は救われました。返したい恩があるんです。どうしても伝えたい気持ちがあって……1番伝えられる方法が、ここの山頂でライブすることなんです」

 

管理おじ「……」

 

燈「難しい問題なら、私たちが何とかしてみます。どうか、大切な友達に歌を届けるために、協力してもらえませんか? お願いします……」

 

 頭を深々と下げる燈を、管理人のおじさんが頭をかきながら見つめる。

 

管理おじ「……こういうのを認めるとね。ウチもウチも、って後が絶たないの。そして、いずれ問題が起きる。それが1番困るのよ、管理する側としてはね。大した儲けにもならないのにリスクばっかり増えるなんて、とても容認できないよ」

 

そよ「……無理を言って、すいませんでした」

 

 これ以上は逆効果な雰囲気を悟り、そよが深追いして悪化する前に引き下がる。

 やりきれない思いがありながらも、そよの判断に黙って合わせる3人。

 そんな4人は、次の一言で早とちりだったと気づく。

 

管理おじ「だからね。こっちにメリットがあって、今後リスクが発生しないイベント事にしないとね」

 

そよ「えっ?」

 

管理おじ「ライブなんだろう? そっちが勝手にやるんじゃなくて、公認のイベント事にしてしまえば、ある程度制御しやすいだろう」

 

立希「い、いいんですか? 自分たちから言っといて難ですが、こんなこと許されないんじゃ……」

 

管理おじ「君たちがそれを分かった上で、真摯に頼んできたのは伝わっていたからね。その誠実さに絆されちゃったや。歳をとるとダメだね」

 

睦「……ありがとうごさいます。でもこちらは、何をすれば……」

 

管理おじ「とりあえず、騒音に対する対策も含めてこっちで細かいところは考えとくから。そっちの代表者の連絡先教えてくれる? 都度擦り合わせよう。それと……」

 

そよ「それと?」

 

 代表者として連絡先を交換しつつ、そよが先を尋ねる。

 

管理おじ「週一でこっちの清掃ボランティアに参加してもらうよ。山の管理に協力してくれてる団体にのみ、管理組合公認で場所を貸している、って名目にするからね」

 

燈「分かり、ました。ボランティア、何でもやります!」

 

そよ「お願いを聞いてください、本当にありがとうごさいます!」

 

管理おじ「ははっ、そんな畏まらなくていいから。それより、ボランティアと当日の働きは期待してるよ? 問題を起こさずに登山客を元気にするようなライブにしてくれれば、こっちとしては大満足だからね」

 

睦「……任せてください」

 

立希「友人だけじゃなく、聞いてくれた人みんなに届くライブにしてみせます」

 

 おじさんと4人は笑顔を交わし合う。

 最大の難関はクリアした。

 後は、それぞれがやれることを突っ走るだけだった。

 

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