2月7日。祥子の誕生日まで、あと1週間。
睦の家の地下スタジオで、祥子を除いた4人は合わせの練習をしていた。
一区切りついたところで、休憩を取る。
立希「まぁ、色々不安はあるけど……本番でなんとか形にできるところまでは仕上げた、かな?」
そよ「そうだね。全部が上手くいくかは、結局さきちゃん次第だから不安はどうしても残るけど」
睦「……自分たちでどうにもならないところがこのライブの核になってるだけに、ちょっと歯痒い」
立希「まぁ、ぶっちゃけそうだね」
今回の曲にはいくつも仕掛けを施してある。
その中でも、何も疑わず表面上だけで楽しまれたらその後の展開全てが台無しになるような、ギャンブル性の高い仕掛けが一番心配だった。
幼い頃から音楽に通じてきた非凡な音楽家の祥子なら、裏側の根っこまで辿り着いてくれる。
みんなでそう信じて曲を完成させてきたけど、結局やってみるまで分からないことだった。
そよ「上手く……行くかな? ちゃんと全部受け取ってくれるかな……?」
不安に塗れたそよの呟きに立希も睦も何も返せず、重苦しい雰囲気になりかけたところで。
最後の1人が、はっきりと声を上げる。
燈「大丈夫。祥ちゃんに絶対届く。私たちと祥ちゃんなら、必ずみんなで辿り着けるよ」
普段誰よりも気弱で自己主張の控えめな燈に、ここまで力強く断言されて。
他の3人も、ネガティブな思考から脱却した。
立希「そうだね。思えばあいつのために1ヶ月近くかけて準備してきたんだし。成功させないと、苦労が水の泡になって嫌だし」
そよ「また憎まれ口叩くんだから……。って思ったけど、作曲、というか[[rb:編 > ・]][[rb:曲 > ・]]大変だったろうし、しょうがないかな?」
睦「……私も体力作り頑張った。ついでに立希の手伝いも」
立希「ついででも大いに助かりましたよ、睦さん」
実際アイディア面において睦はかなり立希を支えていたため、ついで扱いに対する嫌味も含めながら本心を口にする立希だった。
立希「ていうか睦は登山への準備の方が肝だったもんね」
燈「山登りしたあと演奏しなきゃだもん、体力必要だよね。私も、睦ちゃんとトレーニンングしたかったな……」
睦「……燈は作詞で忙しかったでしょ。いつもよりちょっと難航みたいだけど」
そよ「珍しくたきちゃんがともりちゃんを焦らすくらいだったもんねー」
燈「そうだった、立希ちゃんごめん。ギリギリになっちゃって」
立希「いやいや全然! ちゃんと間に合ってたし、今回の歌詞だって良かったし! てかそよと睦は要らんこと蒸し返すな!」
睦「……何故私達に当たるのか。そういえばそよ、機材を山頂に持ち込む件ってどうなったの?」
立希「あぁ、私も気になってたけどそよが何とかするって言うから放置してたんだった」
燈「1人じゃ、絶対無理だよね? どうしたの?」
そよ「実はみんなでさきちゃんの誕生日について話し合う前から、使用人さん達に言われてたの。『お嬢様の誕生日祝いについて、出来ることがあれば何でもしますので是非手伝わせてください』って」
立希「使用人達って、しょっちゅう祥子に隠れながら近くで見守ってるあの人たちか」
この使用人達は、弦巻家の娘を陰ながらサポートする黒服的存在だと思ってもらえれば。
睦「……ってことは、祥の使用人たちが車で運んでくれるの?」
そよ「うん。前日のリハーサルと、当日お世話になるつもりだよー」
燈「そっか。私たち以外の人たちも、協力してくれてるんだ。なら余計、失敗できないね」
睦「……私達なら絶対大丈夫、なんでしょ?」
燈「そ、そうだった……。でもやっぱりちょっと、緊張するね」
そよ「それはそれでライブっぽくていいんじゃない?」
立希「確かに。緊張感あった方が、良いライブになるよ」
睦「……あと1週間後、だね」
燈「うん。1週間後、私たちの全部を込めて伝えられるように。練習再開しよう」
3人「おぉー!」
気合十分で更に磨き上げようとぶつかり合う4人。
ただ最上の恩返しになることだけを目指して、ラストスパートに入った。