CRYCHIC交響曲   作:りょーへい

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高校生編開始 【4月イベント】
桜を見ながらこれまでを振り返りましょう?


 

 

 そよside

 

 4月6日。今日は月ノ森高等部の入学式だった。

 今は式からHRまで全部終わった放課後。お昼前に学校から解放された私はクラスメイトになったむつみちゃんとまったりしていた。

 

睦「……高校生になりましたなー、長崎さん家のそよさんや」

 

そよ「高校生になったねー、若葉さん家のむつみちゃん♪」

 

睦「……まぁ、あんまり新鮮味ないけど」

 

そよ「だと思った。中等部からの私ですらないもん。幼稚舎からずっと月ノ森のむつみちゃんたちはなおさらだよね」

 

睦「……それよりそよと同じクラスだったことの方が嬉しい」

 

そよ「うん! 私も嬉しいし、そう言ってくれるむつみちゃんだい——」

 

睦「……教室での暇つぶし相手に向こう1年困らない。いつでも好きなときにボケれる」

 

そよ「大好きなんだけど……たきちゃんほどツッコミ頑張れないから。そこのところくれぐれもよろしくね、若葉さん?」

 

睦「……相変わらずの優しい口調とは裏腹に長崎さんとの心の距離が開いた気が……」

 

 初めて出会った頃の口数最低限な大人しさが嘘みたいにお茶目になった友達の嘆きアピールを、話題と共に笑顔で流す。

 

そよ「ところで、むつみちゃんは午後のバンド練習までどうする?」

 

睦「……実は迷っていた。家帰るのも微妙な時間」

 

そよ「だよね~。かといって楽器背負って街ぶらつくには長いかな~って……」

 

 2人で悩み合ってると、スマホが震えた。

 確認すると、CRYCHICのグループトークに新着メッセージが届いたみたい。

 

祥子『みんなで桜を見に行きましょう! 今から!』

 

 まるで計ったかのようなタイミングもあって、私とむつみちゃんは苦笑いを向け合う。

 

睦「……我が幼馴染にして我らがリーダーの突拍子もない提案は、高校生になっても相変わらずらしい」

そよ「さきちゃんといると、退屈も時間潰しの心配もしなさそうだね~」

 

 こんな憎まれ口を叩いておきながらさほど異議のなかった私たちは、さっそく月ノ森組3人目と合流しに教室を後にした。

 

 

 

 一方。高校が向かい同士の燈と立希は花ヶ咲高校の校門前で待ち合わせていた。

 

燈「立希ちゃん、お待たせ」

 

立希「ううん。こっちこそ、来させてごめん」

 

燈(立希ちゃんは、お姉さんと同じ高校を嫌って花ヶ咲に行ったんだ。なら、あんまり羽丘に近寄りたくないよね……)

 

燈「ううん。これからも、私たちの待ち合わせ場所はここにしよう?」

 

立希(絶対気遣ってくれてるよな……。心底助かるけど、同じくらい情けな……)

 

立希「……ありがと。それにしたって、祥子のいきなり宣言は相変わらずだよね。高校生になってからも振り回されそう」

 

燈「ふふっ。でも立希ちゃん、そんな祥ちゃんのこと、嫌いじゃないんでしょ?」

 

立希「き、嫌いじゃ、ないけど……。疲れるし、びっくりするし、ツッコミどころ多いのがほとんどだし。年相応に落ち着いてほしいって」

 

燈「落ち着いちゃったら……祥ちゃんらしい勢いも、失くしそう……」

 

立希「……しょーがないから、これからもあいつに付き合ってあげるよ」

 

燈「うん。これからも一緒に振り回されようね、立希ちゃん」

 

 

 月ノ森と同じく入学式だった花ヶ咲、羽丘との中間地点で集合するCRYCHIC。

 あっさり5人揃ったということはつまり、ともりちゃんとたきちゃんも私たちと同じように時間を持て余していたのだ。

 

祥子「それもあって、この名案は受け入れてもらえると思ったんですの!」

 

 満足げなさきちゃんが得意顔で宣った。

 しかしこで必ず文句を突きつけるのが、素直じゃないたきちゃん。

 

立希「だからって急過ぎでしょ。祥子は定期的に脈絡なくイベント事を起こさないと退屈で死ぬ呪いにでもかかってるの?」

 

祥子「いくらなんでも辛辣過ぎますわ!」

 

燈(遠慮なく振り回して、遠慮なく文句言って。2人の関係、なんかいいな……)

 

燈「でも、私は花見、楽しみだよ?」

 

祥子「あぁ……立希の心無い言葉のあとに、燈の無垢な優しさが沁みますわ……」

 

燈「桜の形した石とか、落ちてないかな……」

 

祥子「って、まさかの花より石ですの!?」

 

睦「……花見で石拾う発想に至る人、初めて見た」

 

そよ「ともりちゃんは前からそういう発想の子でしょ?」

 

祥子「でもでも、花見でしてよ!? 日本が世界に誇る、美しい桜を楽しむ春の風物詩なんですから、それ相応の楽しみ方というのをですね……」

 

立希「何1人で講釈垂れてんのー、置いてくよー祥子ー!」

 

祥子「誰も私の話を聞いてませんわ! リーダーにして発案者を放置しないでくださるー!?」

 

 1人で立ち止まって1人で語り出したさきちゃんが慌てて追いついてくる一幕もありつつ。

 私たちはスタジオを予約しているライブハウス『RiNG』の近くにある公園を目指していた。さきちゃん曰く、そこが今桜の満開時期らしいとスタッフから聞いたんだとか。

 その行きがけに見かけた屋台で花見らしくおやつを買いつつ、目的地に到着する。

 

5人「おぉ~!」

 

 満開に咲いた桜の木で取り囲まれている公園に着いた私たちは、思わず感嘆の声を上げて見惚れる。

 360度どこを見渡しても綺麗な薄桃色が華やぐ景色は、流石に圧巻だった。

 風に吹かれてヒラヒラと舞い落ちる花びらもまた、趣き深く感じる。

 

そよ「綺麗に咲き誇ってるね!」

 

祥子「えぇ! どこにでもある平凡な公園にしてはなかなか壮観に咲いてますわ!」

 

睦「……うん。身近なところにこれだけのものが見れる、というのがまた良い」

 

立希「これでも普通に凄いのに、ブルジョワな感想……。こんなの見慣れてるってわけ?」

 

祥子「昔から家の行事に連れられて、自然と」

 

睦「……似たようなもの」

 

そよ「まぁ大財閥と有名芸能人の家じゃ、そうだよね……」

 

祥子「って、燈はずっと静かですわね。お気に召しませんでしたか?」

 

燈「ううん……。白っぽい桜が、風で散るところ見てたら……去年初めて祥ちゃんに会ったときのこと、思い出してた」

 

祥子「燈〜! 分かりますわ〜! まさにそういう思い出話をしたかったんですのよ〜!」

 

 懐かしむように微笑むともりちゃんに、さきちゃんが抱きつく。

 すかさずたきちゃんが眉間に皺を寄せて、引き剥がしにかかった。

 

立希「ほら祥子、花見に来たんでしょ? こんなのところで突っ立ってないで、公園の真ん中あたりにあるベンチにでも座りに行くよ」

 

睦「……高校生になっても、立希の燈好きは相変わらず」

 

立希「うっさい。そんなんじゃないから」

 

そよ「まぁ落ち着いたところに移動するのは賛成かな?」

 

祥子「そうと決まれば、さっそく腰を落ち着けに行きましょう!」

 

立希「お前は腰と一緒にテンションも落ち着かせなって」

 

燈「祥ちゃん、走らなくてもベンチは空いてるから、大丈夫……」

 

 こうして、私たちは公園中央辺りに置かれたベンチで花見を始めたのだった。

 

祥子「この白い桜と入れ替わるようにハクウンボクが咲き乱れた5月頃、私達は羽沢珈琲店で結成しましたわね」

 

睦「……ハクウンボクの件は私達3人に関係ないけど、確かに懐かしい。祥以外はみんな初対面で、今思い出すと面白いくらいぎこちなかった」

 

燈「お、面白いかな……? でも、そよちゃんが私の歌の練習のためってカラオケに連れてってくれてから、変わったよね」

 

立希「うん。それからバンド練習も形になって、バンド名も決めて、初ライブの審査にも通って、ちゃんと成功して……。最初はアレだったけど、なんだかんだ順調なスタートだったな」

 

そよ「そうだね。あのときカラオケ提案できてよかったな〜。すごく楽しかったから!」

 

祥子「えぇ、初めてのドリンクバーに初めてのカラオケ……楽しいこと尽くしでしたわ!」

 

睦「……一番面白かったのは祥のテンションだけど」

 

立希「ずっとハイ過ぎてバグってるのかと思ってた」

 

祥子「そう言う立希はヒトカラ派とか言ってノリ最悪でしたわ!」

 

立希「い、いや私はまだキャラ通りだったでしょ。それよりいっつも無口無表情だった睦が一番最初に歌い出した方が衝撃だったって。しかもフリ付きだよ?」

 

そよ「それにあのとき初めてむつみちゃんが笑った顔も見た! 凄く新鮮だったなー♪」

 

睦「……なんか恥ずかしい」

 

燈「ふふっ。私、あんなに楽しいの初めてで……。その気持ちで初めて歌詞書いたのが、春日影だった」

 

祥子「えぇ。私達の初めての曲。それを初めてのライブで披露しましたわよね!」

 

立希「今でも鮮明に思い出せる……燈の最高の歌がライブハウスに響き渡ってて……あのとき初めて燈の凄さを知ったな……」

 

そよ「もう、演奏も最高だったでしょ? でもあの感動は今でもはっきり覚えてるのは確かかな」

 

燈「わ、私はやっぱり……夢中でほとんど覚えてない……」

 

祥子「あの初ライブを覚えてないなんて、もったいないですわね。でもいいですわ。あのときみたいな最高のライブを続けるという誓いは守られてるのですから!」

 

睦「……そうだね」

 

 私たちの春日影まで振り返ったところで、むつみちゃんの無表情が少しだけ曇る。初ライブの話になると、どうしても当時の悩みを思い出しちゃうからだろうな。

 

立希「睦。初ライブで自分だけ何にも思わなかったの、まだ気にしてたの?」

 

そよ「そうだよむつみちゃん。あのときはバンド楽しいって思えなかったとしても、今はもう違うんでしょ?」

 

睦「……そうだね。初ライブを成功させた春が過ぎた後、夏休みに行った合宿のおかげで、私は変わっていった」

 

祥子「私の別荘がある島に泊りがけで遊びに行ったときですわね!」

 

燈「さ、祥ちゃん。一応バンドの合宿って建前にしたかったんじゃ……」

 

立希「いいんだよ、燈。本当は祥子が遊びたくて連れてったってみんな分かってるんだから」

 

祥子「ふーんだ……。最初から遊ぶって分かってたみたいに自分の水着持ってきてたそよも共犯ですー」

 

 話の話題は、私たちの運命が交わった春から、仲を深めてより強い繋がりになった夏のバカンスへと移った。

 

そよ「打ち合わせしてたわけじゃないのに共犯は勝手過ぎじゃ……。でもあのときはたくさん遊んだよね。水遊びに、ヒトデを弄って、スイカ割りもして……」

 

燈「うん。2日目にはバーベキューに、星も見て、盛りだくさんなバカンス、だった……」

 

睦「……スイカ割り、楽しかった」

 

燈「わ、私は目隠しして回っただけで、目回して倒れちゃったけど……」

 

そよ「あはは、そーだったねー! たきちゃんが絶叫しながら駆け寄ってて……ホント面白い! ともりちゃんってホントに三半規管弱いよねー」

 

立希「燈は繊細なんだよ。他人のスイカ割りを連携して妨害するような性根のねじ曲がった連中と違って」

 

祥子「立希の番に、スイカの1歩分手前のところで失敗させたのは傑作でしたわね! 今でも笑えますわ~!」

 

立希「この性悪お嬢! ……とも思うけど。あれのおかげで私も堅すぎるところが(ほぐ)れてちょっとは馴染んだし、あんま言わないでおく」

 

そよ「練習練習って真面目過ぎるたきちゃんが馴染みやすいように結構気遣ったなー♪」

 

立希「はいはい手間かけさせて悪かったよ!」

 

睦「……でも本当に楽しかった。……1日目までは」

 

そよ「むつみちゃん、まだ2日目のバーベキューのこと根に持ってるのー?」

 

睦「……食事に死ぬような思いしたのは人生で初めてだった」

 

立希「もう1年前の話なのに大げさな……」

 

祥子「でも、あの経験が私に熱い血を目覚めさせてくれましたわ。おかげで後に素晴らしい趣味に出会えましたし!」

 

睦「……そういう意味でも、あのバーベキューは後に続く苦行の元凶として恨めしく思ってる」

 

そよ、立希「そ、それは……一理ある……」

 

燈「わ、私はその後に見た星が凄く思い出に残ってるよ?」

 

祥子「夜に丘の上まで行って、ウッドデッキから見上げた星空ですわね! あの景色だけは是非ともみんなと共有したかったんですの!」

 

そよ「あの光景は都会じゃまず見れないもんね。空一面を星の光で埋めるほど綺麗な夜空は、確かにみんなで見れて良かったな~♪」

 

立希「そう言えば、そこでだっけ。睦が抱えてた悩み打ち明けてくれたの」

 

睦「……あのときまで、私はバンド楽しいって思えなかった。でもあそこでみんなが優しく受け入れてくれたから、変わりたいって思えた。だからあの夏のバカンスは、凄く大切な思い出」

 

祥子「まぁバンド楽しめるようになっただけなら素敵なお話ですけど。でもあのバカンスを通して、ずっと一緒だった私ですら知らないキャラになっていったのは……」

 

立希「物静かで大人しかった睦が、あれ以来すぐ人をおちょくったりネットミーム使ったりするボケたがりに……どうしてそうなったんだか」

 

睦「……変わっていったのは私だけじゃない。次の季節じゃ、そよが変わった」

 

そよ「うっ……無理やりにでもその話に繋げてくれたね。むつみちゃんの意地悪……」

 

燈「秋に紅葉を見に高尾山を登ったときの話だね」

 

祥子「えぇ! なんだか面倒くさいことで面倒くさく悩んだそよを元気づけるために!」

 

 重ねた思い出の数だけ結束を強めた夏。そこからバンド活動を続けてる内に空を回る太陽は低くなっていき、暗くなるのがすっかり早くなった物悲しい晩秋の頃。

 私は学校で偽善的な私の面を陰口されて、自分を見失っていた。

 個人的には洒落にならないほど根深い問題だから面倒くさいと2回も言わないで欲しかったけど、周りからしたら本当にそうだろうから強く言えない。

 ただし。さきちゃんはまるで純粋に私のことを想って登山を提案したみたいに言うけど、決してそうじゃない。

 ということはCRYCHICのツッコミ担当がすかさず指摘してくれた。

 

立希「まぁそよのためって建前を使って、本当はただ登山したかった祥子に巻き込まれただけだったけどね」

 

睦「……立希が傍で支えてくれなかったら……私は生きて帰れなかったかもしれない……」

 

燈「一歩足滑らせたら大変なことになりそうなくらい険しい山道だったもんね」

 

立希「そんだけ苦労したのに結局お目当ての紅葉は微妙だし」

 

祥子「それだけは痛恨の思いですわ~!」

 

そよ「あ、あはは……。でもなんだかんだ悩んでたこともみんなのおかげで解決できたから、私的には良い思い出、かな?」

 

立希「自分で折りたたみ傘持ってくるよう言っときながら忘れるそよは見てられなかったし」

 

 偽善について悩み、山登りで疲れた私は1人で抱え込む気力もなくなって、結局親の離婚から偽善を張るようになった私のことを全部みんなに打ち明けたんだった。

 そしてみんなが私を偽善じゃない、間違ってないって肯定してくれたから。私は偽善と本当の優しさの違いを見つけることができた。

 

燈「うん。あれからそよちゃん、なんだか変わったもんね」

 

睦「……それまでなんでもかんでも優しく甘やかしてくれてた甘々ママが、妙なところで厳しいおかんになった」

 

そよ「せめてCRYCHICのみんなには偽善で接するのをやめただけだよー♪ あと今年こそそのお母さん扱いやめさせてみせるから」

 

立希「あれからもお姉さんキャラ続けてる時点で無理だと思うけど。ていうかそれもだいぶメッキ剥がれてきてるし」

 

そよ「ちゃんと優しいお姉さんはまだ保ってるでしょう?」

 

 たきちゃんの言ってることは自覚あった。私もこの1年でだいぶ遠慮しなくなっていたのだ。まぁ、それだけみんなに心を開いた証拠ということだよね。

 

祥子「しかしそこまで振り返っても、結構みんな変わりましたわね。夏には真面目過ぎる立希が少しは丸くなって、睦もキャラと一緒にバンドへの姿勢も変わって」

 

燈「秋にはそよちゃんが自分で納得のいく優しさを見出して。変わってないのは、私だけだった……」

 

そよ、立希、睦「いや、リーダーが一番変わってない……」

 

祥子「シャラープ! そこはどーでもいいんですの! 大事なのは冬にも登山した話ですわ!」

 

立希「あぁ、燈が自分だけ変わってないって気にしたのを大げさに取り立てて、『深刻な悩みになる前に解決すべきですわ!』とか言いながら香川に連れ込んだやつか」

 

 心の傷が時雨によって洗い流された秋から更に冷え込み、その年の終わりを象徴する冬の年末。

 ともりちゃんが自分のことで迷う兆しを見せたのをいいことに、またしてもその苦行は行われることになった。

 ……移動時間も苦行さも格段にパワーアップした、年末スペシャルバージョンである。

 

睦「……香川県の天空の鳥居とかいう、何故か山の頂上に建てられたお社に、これまた何故か初日の出を見ながらお参りするために夜明け前の早朝から山登りした、人生で一番苦行だった、あの……」

 

そよ「私的にあれは秋の登山を楽しめなかったことへのリベンジだったからまだ良かったけど……もう一度は嫌かな?」

 

祥子「うぅ……みんなつれませんわ……。せっかくお父様に媚びを売ってプライベートジェットまで用意して快適な移動の旅にしましたのに……」

 

燈「あ、あれは確かに凄すぎてよく分からなかったけど……。あの登山中にみんなが話してくれたことがきっかけで、答えが出せた。流されてばっかりな自分から変わるために、1歩踏み出せた。いつかなりたい自分を見つけたときに努力できる人間になろうって思えた。だから、ありがとう、祥ちゃん」

 

 ともりちゃんの優しい優しい気遣いが胸に沁みたようにジーンとした顔になるさきちゃん。

 

祥子「やはり燈……燈は全てを解決してくれますわ……」

 

立希「お前はその優しさに付け入り過ぎなんだよ!」

 

睦「……春夏秋冬振り返っても、祥が何かしら巻き込んだ年だった……」

 

そよ「たぶんそれは今年もだと思うよ?」

 

祥子「えぇ! 今年は去年以上にたくさん思い出を作りたいですわ!」

 

立希「巻き込むことに微塵もためらい無いし……。もう半分以上諦めたからいいけど」

 

燈「ふふっ。どんな1年になるんだろうね」

 

 ともりちゃんの言葉がきっかけで、話題はこれまでからこれからのことに変わった。

 

祥子「そうですわね……。まず来月のゴールデンウィークは遊び尽くしましょう!」

 

立希「お前は事あるごとに遊び尽くしてるでしょ」

 

祥子「そうじゃなくて! 連休中ずっとどこかに遊びに行きましょう、と言ってるんですの!」

 

そよ「えっ、連休全部? 流石に疲れちゃうからせめて1日か2日くらいは休みにしない?」

 

睦「……同じく」

 

燈「私も、ついていける自信、ないかな……祥ちゃんに」

 

祥子「うぅ……己の有り余るエネルギーを今ほど虚しいと思ったことはありませんわ……。というか、みんなはどこか行きたいところはありませんの?」

 

燈「それじゃ……私は水族館に、行きたい」

 

そよ「へぇ、それはいいかも」

 

立希「うん、悪くないね」

 

睦「……6月辺りに行こうか、燈」

 

祥子「私のときと違ってすんなり受け入れられますわ!?」

 

立希「お前のと違って普通だし落ち着いたイベント事だからだよ! みんなの性に合ってるの!」

 

祥子「じゃあじゃあ! プールはどうです? なんかテーマパークみたいなプールがあると耳にしたことがあるんですが……本当にそんなものが!?」

 

そよ「レジャープールのことかな? 人の多いところで水着になるのはな~」

 

立希「そよって美容に気遣ってる割にそういうところ消極的だよね。まぁ私も好き好んで行きたくないけど」

 

燈「わ、私も人の多いところは……」

 

睦「……どうしても水遊びしたいなら、去年みたいに祥の別荘でいいんじゃ……」

 

祥子「今年は違う風に夏を楽しみたいんですの! 純粋に楽しそうなプールに行きたいんですのー!」

 

4人「ホント、遊ぶの好きだね……」

 

祥子「みんなと一緒だからですわー!」

 

睦「……確かに、昔はここまで遊び回ることも前までなかった」

 

そよ「ま、まぁ良いプールがあってタイミングが合えばね……」

 

立希「そうそう。ヒマ過ぎて死にそうなくらいだったらね。まぁそんな暇あったらバンドの練習入れるけど」

 

祥子「ぜ~ったいプールへ遊びに行けるようスケジュール調整しますわ! 今年は絶対プールですの~!」

 

そよ(これはもうプールに行くことになるんだろうな……気持ちの準備しとこ)

 

 座りながら地団駄踏んで手足を暴れさせるさきちゃんを苦笑いで流しながら、私は密かに覚悟する。

 けど、やりたいことか。私は何かあったかな。みんなと一緒なら大抵のこと(登山みたいな苦行以外)は良さそうだけど……。

 と、そこでふと思い出す。

 

そよ「あっ。私はみんなで打ち上げ花火見たいかな」

 

燈「花火大会ってこと?」

 

立希「マジ? アクティブじゃないとはいえ、あれ人多くて結構疲れるイベントなのに、そよが行きたがるなんてな」

 

睦「……分かる。そういう雑多なところ嫌いかと思ってた」

 

そよ「ちょっとね。苦労してでも、みんなで花火みたいなって去年思ったの、思い出したの」

 

燈「そよちゃんが行きたいって珍しく言うなら、行きたいな」

 

祥子「私もみんなで花火みたいですわ! 夏まではイベント満載ですわね!」

 

睦「……なら秋は月見にしよう」

 

立希「お、どうせイベント事入れられそうだから先に楽そうなのを入れようって魂胆、いいね。ナイス睦」

 

祥子「なんて消極的な提案ですか……。でもまぁ月見も風流ですからいいですわ。立希も、行きたいところがあったら遠慮なく言うんですのよ?」

 

立希「お前ほど無遠慮になることは絶対ないけど。まぁ考えとくよ」

 

 たきちゃんが疲れた顔でさきちゃんにヒラヒラ手を振ってあしらう。そのぞんざいな扱いに頬を膨らませたさきちゃんが文句言うのを横目にスマホで時間を確認した。

 桜を見ながら今までとこれからのことを話していたら、結構いい時間が経ってたらしい。区切りもいいし、花見はここまでかな?

 

そよ「ねぇさきちゃん。そろそろスタジオ予約した時間に近づいてきたよ? そろそろ行こっか」

 

祥子「あら、おしゃべりしてたらあっという間にそんな時間になったんですのね」

 

燈「でもこうやってみんなとの1年を振り返ったり、これからのこと話すの、いいな。思い出を共有してる感じがして」

 

立希「燈がそういうなら、また来年もしようか」

 

睦「……どうせするなら、今度は花見らしくお弁当用意したい」

 

祥子「いいですわね! 来年はみんなで重箱用意して花見しましょう!」

 

そよ「気が早いな~」

 

立希「そんな先のことより、今月末のライブでしょ」

 

睦「……うん。今日行くRiNGで初めて出演するライブだよね」

 

燈「ライブ成功させて、気持ちよくゴールデンウィーク迎えよう、祥ちゃん」

 

祥子「えぇ! それじゃ今日の練習も張り切って頑張りましょう!」

 

そよ「うん!」

 

 満開の桜に満ちた公園を後にする私たち。

 今年は毎月のように遊ぶみたいだけど、あくまで共に音楽を奏でるバンドグループ(運命共同体)。その本懐を遂げれるように、私たちは今日も練習に励むのだった。

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