時間に追われながらあげたので、ゴールデンウィーク編は後々ちょこちょこ修正すると思います。
大筋は変えません。
1番 みんなで渋谷を巡りましょう?
そよside
女子高生定番の遊びと言えば?
人それぞれ好みがあるとはいえ、1番らしいのは街巡りじゃないだろうか。
服やアクセサリーを買ったり、冷やかしたり、試着したのを自撮りしてSNSにあげたり。
クレープやドリンクを片手に自撮りしてあげたり。
カフェで映える写真にキャッキャしたり。
……あ、プリクラなんて最も女の子らしい撮り方もあるか。
などと写真撮ってばかりだけど、女の子どうしの遊びなんてそれが本質なんだと思う。
買い物やお茶が目的ではなく、友達と楽しい思い出を作る。それが、
祥子「と言うようなことを、クラスメイトから聞いておりますわ!」
立希「平凡な遊びによくも興奮顔で夢見れるね。そういうとこだけ世間離れしたお嬢様らしいよ」
睦「……でも実際、私達には縁のない遊びだった」
燈「お嬢様じゃない私も、縁がなかったけど……」
そよ「思えばバンド活動とか関係なく街を回るなんて初めてだよねー」
と、いうことで、5月4日。
今日のCRYCHICは渋谷に集合していた。渋谷なのは東京の街巡りとして代表格だから、と力説される。それも聞いてきた話だろうに、よくそこまで感情込めれるなぁと感心してしまった。
ゴールデンウィークはさきちゃんから連日遊ぼうと言われていたのだ。そして、「何をして遊ぶかは自分が決めるから楽しみにしてくださいまし!」とも述べられた。それはそれはハイテンションな声で。
つまりこの3日間、そんな彼女に疲れ果てるまで引っ張り回されるのが私たちの運命となっている。その初日は女子高生らしく渋谷を1日巡ること。……明日以降のことを考えると、少しでも楽に終えたいものだった。
とは言っても。大財閥のご令嬢たる彼女が庶民らしいことに興味を持つのはなんとなく分かる。彼女の立場的に、純粋に遊べる友達は作りづらいかもしれないから。その気持ちは尊重してあげたい。
それでも私からしたらたかが街巡り。まるでテーマパークに来たように目をランランと輝かせるさきちゃんについていきづらかった。
祥子「とにかく、ただ純粋に遊ぶ目的でみんなと街を回りたかったんですわ! SNS担当のそよにはいつも以上に写真をお願いしますわね!」
そよ「それはいいけど。そんなに女子高生らしい遊びしたかったの?」
祥子「はいっ!」
キラッキラに眩しい笑顔がいかに楽しみかを物語っている。今の彼女を茶化そうとしても全く効かなそうだ。
まぁ私としても、学校の子と付き合いでやってきた街巡りをみんなとするのは楽しそうだから、文句はなかった。
澄まし顔のたきちゃんもガラじゃないとはいえ、文句らしい文句も言わないところを見ると嫌ではないんだろう。
むつみちゃんは疲れるのは嫌そうだったけど、さきちゃんと同じく経験の無いことだからその好奇心の方が強いらしく、無表情なのにどことなくウキウキしてそうだった。
心配してたのが、人混みが苦手なともりちゃんだけど……。
そよ「ともりちゃん。結構人多いところに来てるのに、いつもと様子変わらなさそうだね」
燈「う、うん。実は渋谷を回るって聞いた日から、修行してた……」
立希「しゅ、修行?」
燈「こういう、人の多いところに1人で来て……耐性つけた。前よりかは、大丈夫……」
睦「……祥の我儘に付き合うために、なんて健気……」
祥子「えぇ、えぇ! 私、燈の努力に感銘を受けましたわー!」
さきちゃんにヒシッと抱きつかれて「えへへ……」とはにかむともりちゃん。本当に健気可愛い子だな。
たきちゃんはその2人をベリッと剥がしながら不機嫌そうにさきちゃんを睨んだ。
立希「祥子。燈がせっかくここまでしてくれたんだから、しょうもない1日だったら許さない」
そよ「たきちゃんはともりちゃんの側近か何かなの?」
立希「うっさいそよ! で、言い出しっぺとしてちゃんとプラン考えてきたよね?」
祥子「プラン? 私、渋谷にどんなものがあるかも知らないからのに計画なんて建てれるわけないじゃありませんか」
立希「こ、こいつ……当然のようにノープラン主張してきたんだけど……」
睦「……まぁ、祥の言い分も1理だけある。そんな人に振り回されるより詳しそうな人を頼った方がいい」
むつみちゃんに目線を向けられ、その意図を察する。
こう言う時のセオリーを示して欲しいんだろう。
そよ「えっと……。渋谷まで来たんだから、やっぱり服を見て回ったり、が定番じゃない?」
祥子「服を見て回る? あぁ、仕立ててもらうのではなく既製品を、ですわね! 私もこの1年で庶民の常識を学びましたから、流石についていけますわ!」
ドヤ顔のところ申し訳ないけど、言ってることのスケールが私たち庶民と違いすぎてこっちがついていけません。
いつもより勢いを失いつつも口を挟もうとするたきちゃんは、本当に流石だと思う。
立希「ごめん、まるでいつも仕立ててもらってるみたいに聞こえたんだけど、マジで? お前の服って全部店で売ってないものなの?」
祥子「どうでしょう。いつも贔屓にしてる職人さんから頂くのですが、その辺りについては考えたこともありませんでしたわ」
ついにたきちゃんの開いた口が塞がらなくなった。
私は苦しい愛想笑いで精一杯。いつも一緒にいる友達のことを天井人か何かみたいに思えてきた。
そこで同じ貴族サイドのむつみちゃんが私たちの反応でその異次元さを悟る。
睦「……やっぱりかなり規格外なんだ」
立希「当たり前でしょ。って、やっぱり睦も?」
睦「……うん。でも祥みたいにお抱えの職人というよりは、親にあやかろうとする人たちが手土産で持ってくるような服ばっかりだったから、愛着はあんまりない」
いつも以上に色の無い顔をしてる本人のためにも、私は自然な笑顔と口調で濁りかけた雰囲気を払拭しにかかる。
そよ「まぁそれでもむつみちゃんに可愛く似合ってるんだから、ただで貰えてラッキー、ぐらいに思えばいいんじゃない?」
燈「うん。お人形さんみたいな睦ちゃんの可愛さに、合ってると、思う」
睦「……燈も似たような可愛さでしょ」
照れ隠しなのかともりちゃんのほっべを軽くつまむむつみちゃん。その頬も緩んでいるからひとまず安心した。
確実に彼女の心境とかを計算してなかった無垢なともりちゃんは、おたおた慌てたように訴える。
燈「わ、私は睦ちゃんみたいに可愛くないよっ」
立希「いや燈は可愛いから。自信持って大丈夫だよ」
睦「……私は?」
わざわざ顔をズイッと寄せたむつみちゃんは、しかし無情にも無遠慮な片手に押し戻される。
立希「で、いつも家で服仕立ててもらう祥子が庶民の服見る必要あるの? 買うつもりないなら冷やかしの意味合いが他とダンチなんだけど」
祥子「まぁ確かに今はいいでしょうか。それより普段触らないような面白いものが売ってるお店に行きたいですわ!」
睦「……」
構って欲しがりなむつみちゃんは結局完全スルーをかまされたまま、たきちゃんをジトォーと睨む。
私はちょっと可哀そうに思って宥めることにする。
心配そうな顔をしたともりちゃんも私と同じかな。
そよ「な、ならさきちゃんの興味を引く店をぶらつこうか。むつみちゃんはちゃんと可愛いから機嫌直してね」
燈「た、立希ちゃんは恥ずかしがり屋の照れ屋さんだから、許してあげて?」
睦「……それでもいつか、立希に可愛いって言わせてみせる」
燈「睦ちゃん、いつになく目が、メラメラしてる……!」
そよ「変なところで女の子な闘志燃やすねー」
さきちゃんと、肝心のたきちゃんは既に歩き出していたのでこの会話は聞こえてなさそう。そんな彼女の背中を未だに睨みながら妙な宣言をするむつみちゃんだった。
むつみちゃんは相当たきちゃんのこと好きだな、と思った。いや知ってたけど。
ダイジェストにすると。
タピオカという流行りのものを飲んでみたけど、軟弱なともりちゃんとむつみちゃんは慣れないタピオカのモチモチ具合に苦言混じりで悪戦苦闘だったし。
休憩&時間潰しの目的で誘導したガチャガチャ専門店では、4人とも私の好みだけあやふやなんじゃ、という疑惑が巻き起こったし。
そこで溜まった鬱憤をさきちゃんに返そうと、トルコアイスパフォーマンスの餌食にさせたり。
猫カフェで1人だけ猫に寄り付かれないたきちゃんを憐れんだり。……餌を持ったら誰よりも大人気だったけど。
色々あったのだけど。長くなるのでここでは割愛する。
3週間と数日くらい後になって分かったことだけど。後々関わってくる大事な話は、猫カフェから退店した昼過ぎからだった。
元々私は、さきちゃんの気が済めば何でも良いかと思ってた。
けど、なんだかんだ楽しくなってノってきた私は、1つの希望を提案する。
そよ「ねぇ。せっかくみんなで渋谷に来てるんだし、雑貨店回らない? お揃いのアクセサリー買おうよ」
ずっと欲しいと思ってた。それ1つあるだけでみんなとの絆が形になった宝物のように思えるし、ライブのときにつけたらもっと気分上がりそうだから。
それになんとなくだけど、今日という機会を逃すのはもったいない気がしたのだ。その直感は間違ってなかったけど、理由に思い至るのは後の話だった。
立希「出た。お揃いとか、そよがいかにも好きで言い出しそう」
祥子「いいじゃありませんか、むしろナイスアイディアですわ、そよ! どうせならライブで身につけるCRYCHICらしいアクセサリーがいいですわよね!」
そよ「流石さきちゃん、分かってるー♪」
祥子「いぇーい、ですわ♪」
こういうとき気の合うさきちゃんとハイタッチを交わす。さきちゃんもこうして快諾してくれると思ってたから提案した私だった。
睦「……雑貨店、片っ端から回るの?」
そよ「あっ、まず私が気になってたお店から行かせてよ。結構良い感じに可愛いお店って人気なんだよ?」
燈「そっか。それじゃあそよちゃん、連れてってくれる?」
そよ「りょーかい♪」
こうして、私たちの渋谷巡りはお揃いのアクセサリー探しへと目的が変わったのだった。