CRYCHIC交響曲   作:りょーへい

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2番 雑貨店巡り 〜CRYCHICなアクセを求めて〜

 

 

 小学生の背丈くらい低い扉をくぐって店の中に入る。私は不思議な国に迷い込む少女になったような気分で、ファンタジックな様相の店内に浸った。

 

そよ「水曜日のアリス。お店の見た目も商品のお菓子や雑貨までみんな可愛いって人気の雑貨店だよ〜」

祥子「なんてオシャレで可愛らしいお店ですの!? こんな雑貨店もあるんですのね!」

立希「確かに、そよとか祥子が好きそうな店」

そよ「実際気になってたんだー♪」

睦「……商品見てると、店名通り本当にアリスモチーフ」

燈「トランプとか、時計とかのアクセサリーが、いっぱい……」

 

 みんなで雑貨を手に取りながらおしゃべりする。

 怪訝な顔しながらもたきちゃんまで雑貨を物色してる光景に、私は新鮮味を覚えてつい口に出した。

 

そよ「さきちゃんが街巡りしようなんて言わなかったら、みんなでこうして雑貨を見る機会もなかっただろうね」

立希「なんで私見ながら言ってんの」

睦「……こういうのに1番興味無さそうだから」

立希「睦はあるの?」

睦「…………無いこともないこともナイことも……」

立希「興味無いんでしょ。そよや祥子みたいなタイプに見えないし」

睦「……お揃いは嬉しい、とは思ったもん」

燈「わ、私も一緒だよ? 睦ちゃん」

立希「ちょ、燈! 今は雑貨の話をしてただけ……」

祥子「まぁ立希以外はみんなお揃いが嬉しいという気持ちで繋がってる、ということですわね」

そよ「そういうことだね♪」

立希「ちょっと! そこ2人は分かってて私をハブろうとしてるでしょ!」

睦「……ハブられたくなかったら、立希も素直にならないと」

立希「……い、いや別に……」

燈「立希ちゃん? やっぱりお揃い嫌だった……」

立希「〜〜〜ッ! 嫌じゃない! お揃い悪くない! そういうの嫌だったら、今日だってわざわざ祥子に付き合ってないし!」

燈「なら、よかった……」

睦「……立希ってこんな風にいじらないと、ずっと素直に言わなそうだよね」

そよ「ほんとほんとー。面倒くさくてこっちが疲れるよー」

祥子「その格好つけ、もう少し何とかなりませんの? 貴女もう高校生でしてよ?」

立希「お、お前らこそ揶揄っといてその言い草?」

燈「素直な、立希ちゃん。……全然ツッコミしてくれなさそう……」

立希「いや燈。私も好きでツッコミしてるわけじゃないんだけど。ていうかそういう話じゃないよね?」

 

 たきちゃんの正論を私たち3人は聞き流す。ともりちゃんの言ってたことを想像してみたから。

 そうして顔を見合わせ、しかと頷き合う。3人とも考えを改めたのだと、言葉なく通じ合った。

 

祥子「考えてみると素直な立希は立希とは言えませんわね。弄りがいもなさそうですし」

睦「……ごめん立希。私達が間違ってた」

そよ「やっぱりそのままのたきちゃんが1番だよね!」

立希「人をおちょくるのもの大概にしろこの似非お嬢様共!」

 

 たきちゃん怒りのツッコミを笑って流しながら、私たちはアクセサリー探しに戻った。

 

 店内を一周して、1つの答えに辿り着いてしまう。

 

燈「私たちらしいアクセサリー、見つからないね」

睦「……まぁ、不思議の国のアリスモチーフだから。トランプとか時計とかカップ系のアクセじゃCRYCHICらしくない」

そよ「うーん、良さげな紅茶は見つけたのになぁ」

立希「ってちゃっかり自分の買い物もしてるし」

そよ「てへっ♪ でもどうしよっか? 何か1番近そうなので妥協する?」

祥子「せっかくお揃いにするんですから、適当に決めずに拘りましょう?」

そよ「そうだね。この店は諦めようか」

 

 ということで、再度私たちは背の低い出入口をくぐって外の現実へと戻ってきた。

 

立希(あっぶな。ここ割高だから心臓と財布に悪かったんだよなー……)

立希「ほっ」

そよ「たきちゃん? なんで安心したような声出たのかな?」

立希「い、イヤなんでも。店の中狭くて人密集してたから、広い空間に出て落ち着いただけ」

燈「立希ちゃんも、そうだったんだ。私と、同じだね」

立希「ま、まぁね」

そよ「よかったー。何か現金なこと考えるように見えたから」

祥子「現金なこと? 値段のことでしょうか? あの程度そんなに高くはないと思いますが……」

立希「ぐっ……とにかく、そんなせせこましいこと考えてないから」

立希(庶民の財布からしたら普通に割高なんだよ、金持ちお嬢め……。そよもなんで考えてること分かったんだよ、怖いな……)

睦「……ちなみに立希は結構表情に出やすいから、分かりやすいほう」

立希「お前に比べたらみんなそうなんだよ」

 

 無表情を揶揄したいのか恨めしい顔でほっぺをツンツンするたきちゃん。それに対抗してかほっぺを膨らますむつみちゃん。

 2人の様子が面白微笑ましいので写真に撮りながら、私たちは次の雑貨店へと向かった。

 

 お次は淡いピンクの外装してるだけあって、可愛い雑貨も豊富に置いてある、女子高生御用達の店だった。水曜日のアリスと比べると、値段もそこそこ手頃で女子高生に優しいところも愛される由縁。

 店内をみんなで見て回ってると、ともりちゃんが私たちに声をかける。

 

燈「みんな、見て。これ、どうかな?」

そよ「ともりちゃん良いの見つけてくれたね! CRYCHICっぽいネックレス!」

祥子「雫のネックレスですか。色も3種類あって悪くはないですわね」

睦「……お値段300円。良心的」

立希「おっいいじゃん。そういうのでいいんだよ、それにしよう——」

そよ、祥子、睦「うーん……」

立希「なんでだよ」

 

 渋る私たちに不満そうなたきちゃんは本気で分からないみたいだった。考えてもみてほしいんだけどなぁ。

 

そよ「ライブでつけるようなお揃いのアクセだよ? 300円ので気分乗る?」

睦「……普段使いするにしてもチャチ過ぎる。そもそも学園的に普段使いできないけど」

祥子「もう少し特別感が欲しいですわ。ここぞというときに揃えるのにふさわしい質というものが……」

立希「アクセ1つに拘り過ぎじゃない? まだ探すの?」

燈「でも、楽しいよ? 私たちだけの、宝物探してるみたい」

 

 実はともりちゃんの言うことは私も思っていた。簡単に見つからないからこそ、見つけた時の喜びもひとしおそうで、なんだかわくわくしてるのだ。

 

立希「まぁ燈がそう言うなら……」

祥子「まったく、燈の言うことならなんでもイエスマンなんですから……」

そよ「まぁまぁ、ともりちゃんが良いこと言ってくれたから流してあげよう」

 

 気分の良い私は寛大な心で流してあげる。

 結局そこでも決められなかったので、店を出て次に向かった。

 

 また別の雑貨店にて。特徴についてはよくあるアンティーク風な小規模雑貨店。

 

燈「ねぇそよちゃん、CRYCHICのC、あったよ?」

そよ「ホント? あ、イヤリングだ」

祥子「イヤリングですか。少々華美に思わなくもないですが、私達も今や高校生。ライブの時ぐらい大胆になっても、いいかもしれませんわね」

立希「いやりんぐぅー? なんかチャラくない?」

睦「……Afterglow、さん。ライブでつけてた」

立希「……ならいいかー」

祥子「今日の立希はクルクル翻しますわね〜。貴女そんなヒラメみたいに薄っぺらいバンドマンでしたっけ?」

立希「うるさいうるさい! 祥子が言った通り高校生になったんだから見た目も気にするだけだよ、バンドマンとして!」

 

 先月末のライブで出逢った、Afterglowという先輩バンドのファンになったたきちゃん。

 大好きなともりちゃん絡みで元々隙があった彼女だけど、どうやらそれはさらに大きくなったらしい。

 より残念なキャラになりつつあった。

 

 

 

 なかなか良い物を見つけられず、空も少しオレンジがかってきた時間。

 今日は最後にさきちゃんがどうしても行きたいと行ってたところが1つある。

 その時間も考えるともう諦めようかと思ったところで、さきちゃんが見つけた雑貨店があった。

 

祥子「あら? ここにもアクセサリー店がありますわ」

そよ「……これ……」

 

 店の前に立てかけてあった看板に、商品が載ってる。

 私はその内の1つに目が惹きつけられて、離れなかった。

 そんな私の目線を追って、むつみちゃんが隣に並んでくる。

 

【挿絵表示】

 

睦「……ココロドロップ?」

燈「名前も見た目も、CRYCHICっぽいね」

立希「値段は……まぁ、ちゃんとしたアクセっぽいしそれくらいするか」

そよ「確かに高いけど、いいでしょ? ね、これにしない?」

祥子「えぇ! 心の雫を表したようなデザインが気に入りましたわ! お店に入って購入しましょう!」

そよ「うん!」

 

 けど。意気揚々とお店に入った私を待っていたのは残念なお知らせだった。

 

店員「すいません、今それ売り切れです……」

そよ「あ~……そーなんですねー……」

店員「今からオーダーしてもらっても5つだと3週間くらいはかかりますね」

祥子「……そうですか(3週間後というと、その辺りは……)」

睦「……(ふむ……)」

立希「……無いもんはしょうがないでしょ、そよ。せっかく入ったんだから他も見よう」

そよ「そう……だね」

燈「そよちゃん……」

そよ「ごめんごめん、確かにあれがよかったけど、引きずり過ぎだよね。他探そう?」

燈「……うん」

 

 気遣し気に見つめてくるともりちゃんに笑顔で大丈夫と伝える。

 けどその後はどうしてもココロドロップが頭に引っかかって、気乗りしなかったのか良いのは見つけられなかった。

 後ろ髪を引かれる思いで店を出る。結局、みんなとのお揃いアクセサリーを見つけることは叶わなかった。

 

そよ「うーん、せっかくみんなで渋谷回ったのに、もったいなかったなぁ」

睦「……また探せばいい」

立希「そうだよ。どうせこれからも長いことバンドするんだから、今じゃなくったっていいでしょ」

祥子「そうですわ。今度街巡りするときのお楽しみにしましょう?」

燈「ふふっ、祥ちゃんのそういう前向きな考え、好きだな……」

立希「む……と思ったけど。流石にポジティブシンキングで祥子には勝てないな。勝てたら人として大事なもの失いそう」

祥子「どういう意味ですの!」

そよ「2人共、じゃれてないで行くよ? さきちゃんはアレやりたいって言ってたでしょ?」

 

 ちょうど渋谷を1周した私たちは集合場所だったところにいた。そこは渋谷の代名詞ともいえる109ビルの目の前だった。

 

祥子「そうでしたわ! せっかく渋谷に来たんですから、それっぽいことしないと収まりがつきませんわね!」

睦「……あぁ、学園で話してたアレのことか」

立希「睦。あれって?」

燈「?」

祥子「あそこに入れば分かりますわ! さぁ行きましょう!」

 

 長いこと歩き回ったのに元気いっぱいなさきちゃんを先頭に、私たちは109のビルへ入って行った。

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