CRYCHIC交響曲   作:りょーへい

3 / 143
3番 スイカ割りの思い出

 

 

祥子「ふぅ、ふぅ……。さて、ウォーミングアップも済んだところで」

 

立希「いつか覚えとけよ……」

 

そよ「怖~いたきちゃんは置いといて……スイカ割り始めよっか! 順番はどうする~?」

 

 苦笑い気味で、スイカをセットするそよ。

 

立希「苦手そうな人からやるのがいいんじゃない? とりあえず……(チラッ)」

 

祥子「……まぁ、そうですわね(チラッ)」

 

睦「……ちらり」

 

そよ「ともりちゃん。先鋒、いってみよっか?」

 

燈「い、いきなり……!? 私、やったことない……」

 

立希「初めてで、酔いやすい。だから……5回ぐらい?」

 

そよ「うん、私もその辺が妥当だと思う」

 

睦「……ダメでも海のすぐ近く。流せばいい」

 

祥子「睦、不吉な冗談はよしなさい? ということで、燈に目隠ししまして……」

 

 シュルシュル。白い布で燈の目を隠す祥子。

 

燈「さ、祥ちゃん!? 何も、見えないよ……!?」

 

そよ「いくらなんでも見えてたら遊びにならないよ? ちゃんと方向教えてあげるから」

 

燈「そ、そっか……。えっと、ここからスイカの方に行けばいいの?」

 

そよ「その前に。バット持たせるよ~」

 

燈「あ、ありがと」

 

睦「……そしたら、回る」

 

燈「うん……うん? ま、回る、って?」

 

立希「バットを砂浜に立てて、一番上のところにおでこつけて、バットを中心に回る。5周ね」

 

祥子「何周回ったか教えてさしあげますから、ゆっくり回ることに集中して大丈夫ですわよ?」

 

燈「わ、わかった……(なんで回るんだろ?)」

 

 たどたどしく回り始める燈。

 1周ごとにカウントする祥子たち。

 燈は足がもつれそうになりながらも、なんとか5周した。

 

立希「お疲れ燈。よくがんばった!」

 

祥子「ここからが本番でしてよ!?」

 

そよ「たきちゃんの気持ちもよくわかるけどね。転ばないか心配しちゃった~」

 

睦「……まずそう」

 

祥子「睦?」

 

睦「……燈、バットにオデコつけたまま動かない」

 

3人「……!(バッと一斉に燈を注視する)」

 

 微動だにしない燈。

 が、突然体を起こしバットを片手に仁王立ちした。

 目隠しのおかげか珍しく勇ましく見える佇まいに、思わず4人は固唾を呑む。

 

燈「……………………グラグラする……」(パタリ)

 

立希「ともりぃいいいいい!」ダダダッ……

 

祥子「あらあら」

 

そよ「やっぱり……」

 

睦「……(スタスタ)」

 

 静かに倒れる燈。

 絶叫して駆け寄る立希。

 やっぱダメだったか、と顔を覆う祥子とそよ。

 そして睦はバケツを準備し始めた。

 

 

 

~~吐きはしなかったものの完全にダウンした燈を横に寝かす。バケツはすぐ傍に置いといた~~

 

祥子「燈の犠牲を無駄にしないためにも、仇は必ず討ちましょう!」

 

そよ「そうだね。ともりちゃん……儚い人を、亡くしたね……うぅ……」

 

睦「……(目を瞑って手を合わせる)」

 

立希「亡くしてないし黙祷もやめろ! てか仇がいるならスイカじゃなくてやらせた私たちになるでしょ!」

 

祥子「怒涛のツッコミですわね。そのポジションはバンドに一人は必要不可欠と聞きますが……」

 

そよ「ホント、たきちゃんがCRYCHICにいてくれてよかったな〜♪」

 

立希「……ハァ~(クソデカ溜息)もういい。次は私がいく」

 

祥子「あら、乗り気ですのね」

 

立希「あそこまで頑張った燈に、私が割ったスイカで報いる」

 

そよ「誰が割っても味は変わらないと思うけど~」

 

立希「茶々入れないで。睦。回るの普通に10回でいいよね?」

 

睦「……(コクン)」

 

祥子「どうして睦に聞きますの? スイカ用意したの私ですわよ?」

 

立希「あんたとそよに聞いたら絶対ふざけるでしょ」

 

そよ「テヘ☆」

 

祥子「そんなに信頼してくださってたなんて……」

 

立希「あんたらのペースには乗らない! 待ってて、燈!」

 

 自分で目隠しし、勢いよく回る立希。

 

立希(しまった。勢いよく回り過ぎて感覚が怪しい。でも落ち着け。たぶんスイカの方を向けてるはず。だいたいの距離も覚えてる。一歩ずつ、確実に、踏み出す!)

 

 ザッ、ザッ、ザッ…ゆっくり進む立希。と

 

祥子「もっと左ですわー!」

 

そよ「ウソはかわいそうだよさきちゃ~ん。右に30度修正~」

 

立希(フン、スイカ割りお約束の嘘に誰が騙されるか。てか言ってること食い違ってるし、今のままであってるって教えてるようなもんでしょ。イケる!)

 

 ザッ、ザッ、ザッ…

 2名の惑わしを完全無視してまっすぐ歩く立希

 

立希(……感覚的にはそろそろなはず……)

 

睦「……そこ」

 

立希(この大人しい声は睦か! ならあんのボケお嬢様共より信用できる!)

 

立希「燈のかたきぃいいい! はあぁああああ!」

 

祥子、そよ「おぉ!」

 

 バットを上段まで振りかぶり、気勢をつけて思いっきり振り下ろす立希。

 

 ザンッ!!

 

「……………………」

 

 砂を叩く乾いた音に立希はしばらく固まり、3人も無言で見守る。

 立希が目隠しを外すと、バットの先端はちょうどスイカの一歩分手前で止まっていた。

 無論スイカは無傷で鎮座されている。

 

立希「……む~つ~み~!」

 

睦「……早々に割っちゃったら、つまんない(ブイサイン)」

 

祥子「私たちは睦を信用させるためのブラフ(ブイサイン)」

 

そよ「たきちゃんなら鼻っから信じないって思ったからね~。むつみちゃんが絶妙のタイミングでフェイクかけてくれたよ~。ブイッ♪」

 

立希「……もう誰も信用できない。誰も私を愛さないっ!」ダッ……

 

祥子「ゴメンなさ~い! からかい過ぎた、謝るから待ってください~!」ダダダッ…

 

そよ(なんか、実はそんなに傷ついてないように見えるけど…一応追っとこ)「待ってたきちゃ~ん!ホントごめんって~!」ダダダッ…

 

 睦は棒立ち。1人になる。

 と、ドリンクを1本とって燈の元へ歩きだした。

 

睦「……燈。大丈夫?」

 

燈「む、むつみちゃん……さっきよりは……マシ、かも」

 

睦「喉乾いてたら、飲んで。気持ち悪かったら、無理しないで」

 

燈「あ、ありがと……(一口飲む)」

 

睦「……得意」

 

燈「え?」

 

睦「……スイカ割り。昔やったことあったとき、結構得意だった。私が割って用意しておくから、楽しみにしてて」

 

燈「そ、そうなんだ。た、たのしみにしてる、ね。エヘヘ……」

 

睦「……」

 

燈(睦ちゃん……気のせいかもしれないけど、口元笑ってくれてる? 睦ちゃんの微笑み、初めて見たな……なんだか、ホッとする……)

 

 燈は再び目を閉じ楽にした。

 

 

 

 一方その頃。立希に謝りに謝り倒すそよと祥子。

 なんとか一緒に燈たちの元へ戻り始めた。

 

 

立希「ったく、あんたらときたら……」

 

祥子「調子に乗り過ぎましたわ……ごめんなさい、立希……」

 

そよ「うん、ごめんね、たきちゃん。でも、その……」

 

立希「……スイカ割りってさ、あーゆー遊びだった。分かってたはずだったのに……」

 

祥子、そよ「?」

 

立希「まだ小さい頃、家族と、姉貴とやって以来だった。……懐かしいな。あの頃はまだ……」

 

祥子「……立希」

 

そよ「……お姉さんの話、嫌なんじゃ?」

 

立希「色々あったよ。あの人の妹ってことに、嫌な思いもしたけど。……まぁ、それだけじゃなかったし」

 

そよ「すごいお姉さんを持つと色眼鏡で見られて大変だよね」

 

祥子「でも、嫌いというだけでは無さそうですわね」

 

立希「そりゃ、生まれてからずっと一緒にいる姉妹なわけだし。……いつかまた話すよ。……祥子、そよ」

 

祥子「えぇ、待ってますわ。立希」

 

そよ「私のこと、ここに来てから初めてまともに呼んでくれたね~」

 

立希「うっさい」

 

そよ「本心で嬉しいんだよ。たきちゃんと仲良くなりたくて、ふざけすぎちゃったぐらいだから……」

 

祥子「ならいいですわね!」

 

 祥子が2人の手を取って走り出した。

 

立希「ちょ、ちょっと!」

 

そよ「さきちゃん!?」

 

祥子「私だって仲良くなれて嬉しいんですもの! もう睦と燈のとこまで目と鼻の先ですし、付き合ってくださいまし!」

 

そよ「フフッ、CRYCHIC一番のお転婆お嬢様に、付き合ってあげよ、たきちゃん!」

 

立希「……しょーがないから付き合ってやるよ!」

 

祥子「おーい! むーつーみー! とーもーりー!」

 

 それから回復し出した燈が見守る中、スイカ割りを再開した。

 祥子、そよの順で挑戦するが、周りの騙し合いで失敗に導かれる。

 最後の睦は妨害される中、適格にバットを振り下ろし、綺麗にスイカを真っ二つに割る。(祥子、そよ、立希は意外な結果に驚いてた)

 

 割れたスイカを切り分けて、睦が燈に切ったスイカを渡す。

 宣言通りの結果に、お互い笑って、それを見て祥子、そよ、立希も笑い合う。

 

 5人で並んで海を見ながらスイカを食べた後、5人は片付けをして別荘に戻るのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。