祥子「ふぅ、ふぅ……。さて、ウォーミングアップも済んだところで」
立希「いつか覚えとけよ……」
そよ「怖~いたきちゃんは置いといて……スイカ割り始めよっか! 順番はどうする~?」
苦笑い気味で、スイカをセットするそよ。
立希「苦手そうな人からやるのがいいんじゃない? とりあえず……(チラッ)」
祥子「……まぁ、そうですわね(チラッ)」
睦「……ちらり」
そよ「ともりちゃん。先鋒、いってみよっか?」
燈「い、いきなり……!? 私、やったことない……」
立希「初めてで、酔いやすい。だから……5回ぐらい?」
そよ「うん、私もその辺が妥当だと思う」
睦「……ダメでも海のすぐ近く。流せばいい」
祥子「睦、不吉な冗談はよしなさい? ということで、燈に目隠ししまして……」
シュルシュル。白い布で燈の目を隠す祥子。
燈「さ、祥ちゃん!? 何も、見えないよ……!?」
そよ「いくらなんでも見えてたら遊びにならないよ? ちゃんと方向教えてあげるから」
燈「そ、そっか……。えっと、ここからスイカの方に行けばいいの?」
そよ「その前に。バット持たせるよ~」
燈「あ、ありがと」
睦「……そしたら、回る」
燈「うん……うん? ま、回る、って?」
立希「バットを砂浜に立てて、一番上のところにおでこつけて、バットを中心に回る。5周ね」
祥子「何周回ったか教えてさしあげますから、ゆっくり回ることに集中して大丈夫ですわよ?」
燈「わ、わかった……(なんで回るんだろ?)」
たどたどしく回り始める燈。
1周ごとにカウントする祥子たち。
燈は足がもつれそうになりながらも、なんとか5周した。
立希「お疲れ燈。よくがんばった!」
祥子「ここからが本番でしてよ!?」
そよ「たきちゃんの気持ちもよくわかるけどね。転ばないか心配しちゃった~」
睦「……まずそう」
祥子「睦?」
睦「……燈、バットにオデコつけたまま動かない」
3人「……!(バッと一斉に燈を注視する)」
微動だにしない燈。
が、突然体を起こしバットを片手に仁王立ちした。
目隠しのおかげか珍しく勇ましく見える佇まいに、思わず4人は固唾を呑む。
燈「……………………グラグラする……」(パタリ)
立希「ともりぃいいいいい!」ダダダッ……
祥子「あらあら」
そよ「やっぱり……」
睦「……(スタスタ)」
静かに倒れる燈。
絶叫して駆け寄る立希。
やっぱダメだったか、と顔を覆う祥子とそよ。
そして睦はバケツを準備し始めた。
~~吐きはしなかったものの完全にダウンした燈を横に寝かす。バケツはすぐ傍に置いといた~~
祥子「燈の犠牲を無駄にしないためにも、仇は必ず討ちましょう!」
そよ「そうだね。ともりちゃん……儚い人を、亡くしたね……うぅ……」
睦「……(目を瞑って手を合わせる)」
立希「亡くしてないし黙祷もやめろ! てか仇がいるならスイカじゃなくてやらせた私たちになるでしょ!」
祥子「怒涛のツッコミですわね。そのポジションはバンドに一人は必要不可欠と聞きますが……」
そよ「ホント、たきちゃんがCRYCHICにいてくれてよかったな〜♪」
立希「……ハァ~(クソデカ溜息)もういい。次は私がいく」
祥子「あら、乗り気ですのね」
立希「あそこまで頑張った燈に、私が割ったスイカで報いる」
そよ「誰が割っても味は変わらないと思うけど~」
立希「茶々入れないで。睦。回るの普通に10回でいいよね?」
睦「……(コクン)」
祥子「どうして睦に聞きますの? スイカ用意したの私ですわよ?」
立希「あんたとそよに聞いたら絶対ふざけるでしょ」
そよ「テヘ☆」
祥子「そんなに信頼してくださってたなんて……」
立希「あんたらのペースには乗らない! 待ってて、燈!」
自分で目隠しし、勢いよく回る立希。
立希(しまった。勢いよく回り過ぎて感覚が怪しい。でも落ち着け。たぶんスイカの方を向けてるはず。だいたいの距離も覚えてる。一歩ずつ、確実に、踏み出す!)
ザッ、ザッ、ザッ…ゆっくり進む立希。と
祥子「もっと左ですわー!」
そよ「ウソはかわいそうだよさきちゃ~ん。右に30度修正~」
立希(フン、スイカ割りお約束の嘘に誰が騙されるか。てか言ってること食い違ってるし、今のままであってるって教えてるようなもんでしょ。イケる!)
ザッ、ザッ、ザッ…
2名の惑わしを完全無視してまっすぐ歩く立希
立希(……感覚的にはそろそろなはず……)
睦「……そこ」
立希(この大人しい声は睦か! ならあんのボケお嬢様共より信用できる!)
立希「燈のかたきぃいいい! はあぁああああ!」
祥子、そよ「おぉ!」
バットを上段まで振りかぶり、気勢をつけて思いっきり振り下ろす立希。
ザンッ!!
「……………………」
砂を叩く乾いた音に立希はしばらく固まり、3人も無言で見守る。
立希が目隠しを外すと、バットの先端はちょうどスイカの一歩分手前で止まっていた。
無論スイカは無傷で鎮座されている。
立希「……む~つ~み~!」
睦「……早々に割っちゃったら、つまんない(ブイサイン)」
祥子「私たちは睦を信用させるためのブラフ(ブイサイン)」
そよ「たきちゃんなら鼻っから信じないって思ったからね~。むつみちゃんが絶妙のタイミングでフェイクかけてくれたよ~。ブイッ♪」
立希「……もう誰も信用できない。誰も私を愛さないっ!」ダッ……
祥子「ゴメンなさ~い! からかい過ぎた、謝るから待ってください~!」ダダダッ…
そよ(なんか、実はそんなに傷ついてないように見えるけど…一応追っとこ)「待ってたきちゃ~ん!ホントごめんって~!」ダダダッ…
睦は棒立ち。1人になる。
と、ドリンクを1本とって燈の元へ歩きだした。
睦「……燈。大丈夫?」
燈「む、むつみちゃん……さっきよりは……マシ、かも」
睦「喉乾いてたら、飲んで。気持ち悪かったら、無理しないで」
燈「あ、ありがと……(一口飲む)」
睦「……得意」
燈「え?」
睦「……スイカ割り。昔やったことあったとき、結構得意だった。私が割って用意しておくから、楽しみにしてて」
燈「そ、そうなんだ。た、たのしみにしてる、ね。エヘヘ……」
睦「……」
燈(睦ちゃん……気のせいかもしれないけど、口元笑ってくれてる? 睦ちゃんの微笑み、初めて見たな……なんだか、ホッとする……)
燈は再び目を閉じ楽にした。
一方その頃。立希に謝りに謝り倒すそよと祥子。
なんとか一緒に燈たちの元へ戻り始めた。
立希「ったく、あんたらときたら……」
祥子「調子に乗り過ぎましたわ……ごめんなさい、立希……」
そよ「うん、ごめんね、たきちゃん。でも、その……」
立希「……スイカ割りってさ、あーゆー遊びだった。分かってたはずだったのに……」
祥子、そよ「?」
立希「まだ小さい頃、家族と、姉貴とやって以来だった。……懐かしいな。あの頃はまだ……」
祥子「……立希」
そよ「……お姉さんの話、嫌なんじゃ?」
立希「色々あったよ。あの人の妹ってことに、嫌な思いもしたけど。……まぁ、それだけじゃなかったし」
そよ「すごいお姉さんを持つと色眼鏡で見られて大変だよね」
祥子「でも、嫌いというだけでは無さそうですわね」
立希「そりゃ、生まれてからずっと一緒にいる姉妹なわけだし。……いつかまた話すよ。……祥子、そよ」
祥子「えぇ、待ってますわ。立希」
そよ「私のこと、ここに来てから初めてまともに呼んでくれたね~」
立希「うっさい」
そよ「本心で嬉しいんだよ。たきちゃんと仲良くなりたくて、ふざけすぎちゃったぐらいだから……」
祥子「ならいいですわね!」
祥子が2人の手を取って走り出した。
立希「ちょ、ちょっと!」
そよ「さきちゃん!?」
祥子「私だって仲良くなれて嬉しいんですもの! もう睦と燈のとこまで目と鼻の先ですし、付き合ってくださいまし!」
そよ「フフッ、CRYCHIC一番のお転婆お嬢様に、付き合ってあげよ、たきちゃん!」
立希「……しょーがないから付き合ってやるよ!」
祥子「おーい! むーつーみー! とーもーりー!」
それから回復し出した燈が見守る中、スイカ割りを再開した。
祥子、そよの順で挑戦するが、周りの騙し合いで失敗に導かれる。
最後の睦は妨害される中、適格にバットを振り下ろし、綺麗にスイカを真っ二つに割る。(祥子、そよ、立希は意外な結果に驚いてた)
割れたスイカを切り分けて、睦が燈に切ったスイカを渡す。
宣言通りの結果に、お互い笑って、それを見て祥子、そよ、立希も笑い合う。
5人で並んで海を見ながらスイカを食べた後、5人は片付けをして別荘に戻るのだった。