CRYCHIC交響曲   作:りょーへい

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※前書き※
これは、渋谷を回ったときの記録。
本筋であるアクセ探しに入るまでの渋谷散策の記録である。


裏1番 タピオカティー/ガチャガチャ店に入るまで

〇タピオカティー ~ウェルカムドリンクにお噂のものを~

 

祥子「そよ! あの、女子たちが並んでる店で派手に主張されてるタピオカティーとは、なんですの!?」

そよ「見たことない? テレビでもよく取り上げられてた流行の飲み物だよ?」

立希「っていっても、それも結構前の話でしょ? もう下火のはずなのに、まだ列できるくらい人気なんだね」

睦「……知ってはいたけど、飲んだことない。せっかくだし、飲もう」

燈「う、うん。……だいじょうぶかな……」

4人(何が?)

 

 冗談とかではなく、真剣に不安がってそうなともりちゃんの雰囲気に。

 私たちはツッコミできずに列に並んだ。

 

 やがて注文し、それぞれ頼んだものを手にして5人席につく。

 私はリーダーから写真係を言いつけられていたのもあるから、5人でタピオカティーをすすってる写真をインカメで撮った。

 たきちゃん以外、ちゃんと目線くれた。

 

祥子「これが、噂のタピオカティー……!」

睦「……噂は、かねがね」

そよ「いつかのさきちゃんみたいなこと言うね、むつみちゃん」

立希「私もあんまり飲まないんだけど、これなんで人気なの?」

そよ「飲みやすいしお腹にも溜まるし、何より可愛いから、かな」

 

 実際はやっぱりメディアの影響が大きかったはずだけど。

 そういう操作になびきづらい妖精コンビは、店内で正直な感想を堂々と零す。

 

燈「……モチモチしてる……食べづらい……」

睦「……顎疲れてくるね、燈」

燈「う、うん。そういえば、タピオカってそもそもなんなんだろう……」

睦「……チュー……ゴクン。待って、今ググる……」

立希「飲むかググるかどっちかにしなよ」

 

 と言われてるのにスマホでググりながらストローをすすろうとするむつみちゃん。

 危なっかしいのか、隣のたきちゃんがコップを支えてあげていて、微笑ましい。

 というかむつみちゃんがシンプルに行儀悪い。

 

睦「……キャッサバっていう作物の根から製造したデンプンだって」

燈「よかった……黒い卵にも見えたから、何かの生き物食べてるのかと心配しちゃった……」

 

 この発言で、入店前彼女が何を警戒してたのか分かった。おぞましい想像力に戦く私。

 よかったね、という気遣いよりも素直な本音が口を突いていた。

 

そよ「なんてこと想像させるのともりちゃん……。そんなグロい食べ物が女子高生の間で流行るわけないでしょ?」

燈「そう、かな?」

そよ「そうなの!」

立希「そよが燈相手に力説するのも珍しいな」

祥子「この中じゃ誰よりも女子高生に近いですからね」

 

 そりゃこのメンツの中じゃあね。

 飲み終わった頃、私は席を立ちながらさきちゃんに訊く。

 

そよ「ところでさきちゃん。女子高生らしい流行の飲み物の感想は?」

祥子「うーん……あまりミルクティーの味は良くありませんでしたわね」

立希「まぁ明らかにそこで勝負してないからね」

祥子「でもみんなと流行ってるものを一緒に飲んだ思い出で、大満足ですわ!」

睦「……良い話風に言ってるけど。タピオカについては一切触れなかったね」

祥子「モチモチ甘かったですわ!」

燈「うん。みんな、こういうのが好きなんだね」

 

 そうじゃないよ、と言おうとした私は賑わってる店内を見て口をつぐむ。これは流行物のはずなのに、未だに親しまれてるから。

 それが過ぎたはずの流行を未だに擦ってるだけのか、それともともりちゃんの言う通りでみんな飲んでるのか。

 少なくとも私は純粋な紅茶の方が好きだから。こんな糖分の塊みたいなのを飲みたがる人たちの考えは分からなかった。

 

〇ガチャガチャ

 

 センター街と呼ばれるエリアを歩いてるとき、とあるビルから掌大のカプセルを持って出てくる女子たちが出てくるのを見かけた。

 楽しそうにキャッキャしながら歩いて行く子たちをさきちゃんが不思議そうに見つめる。

 

祥子「あれは何を持ってたんですの、そよ?」

そよ「とりあえず私に聞けばいいと思ってるでしょ、さきちゃん……。このビルはガチャガチャ専門店があるから、たぶんそれだね」

祥子「がちゃがちゃ……? 騒々しそうな名前ですわね?」

立希「やっぱり知らないか……」

睦「……祥。——ガチャガチャとは、コインを入れてレバーを回すと、カプセルに入った玩具や雑貨が出てくる小型自動販売機を指す」

祥子「ふーん……? そのようなもの、何が楽しいのでしょうか……」

 

 スマホを読み上げるむつみちゃんに、不思議そうな顔のまま呟くさきちゃん。

 ごもっともな疑問である。人はなぜ小さいカプセルに収まるような小物如きに躍起になれるのだろうか。

 そんなことを考えてたから、というのもあったかもしれない。

 

そよ「物は試しに、やってみようか?」

立希「マジ? そよってこういうの好きだったの? 意外」

 

 私はさりげなくたきちゃんを引き寄せ、小声で別の目的を話す。

 

そよ「ここで時間潰すのもアリだと思ったの。確かこういうとこって座れる場所もあったはずだし」

立希「……確かに。目的地があるわけじゃないし、無駄に歩き回るよりかは休憩できて良さそう」

そよ「でしょ?」

睦「……その考えは私好みだし、1度やってみたかった私にはナイスアイディア」

 

 ヒソヒソ話し合う私たちに、さきちゃんが「何話してますの?」と寄って来る。

 本気で楽したいむつみちゃんが、見事なくらい違和感のない出まかせをスラスラ吐く。

 

睦「……財閥の娘をガチャガチャなんてある意味危険な趣味に関わらせていいか、心配してたの。ハマる人はマズいレベルで散財するらしいから」

祥子「睦、貴女自分の幼馴染をなんだと思ってますの? よく分かりませんが、お金にだらしのない私ではありませんわよ」

 

 予めことわっておくけど、その言葉通り彼女がガチャガチャ狂いに堕ちることはなかった。

 

そよ「そう言うなら安心かな。それじゃ、ガチャガチャを回しに行こー♪」

立希「あぁ、見てるだけでも面白そうだしね」

 

 たきちゃんは心にもないことほざいてるだろうなって、私は確信していた。

 

睦「……ほら、祥も燈も行こう」

祥子「えぇ、行きましょう! カプセルに入った玩具や雑貨が出てくる小型自動販売機へ!」

燈「ガチャガチャだよ、祥ちゃん」

 

 さきちゃんともりちゃんの前で、しめしめと笑い合う私たち3人。

 けど私は夢にも思わなかった。

 こんなしょうもない自販機専門店で、みんなから私への哀しい印象を暴くことになってしまうなんて。

 

 

 

 

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