CRYCHIC交響曲   作:りょーへい

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2番 第2の試練 ~パズルと宝探し~

 

 

 〇第2の試練、その1 タングラム

 

 さっきまでクロスワードを解いてたところまで戻り、神官からもらったプリントを読む。

 第2の試練は2つあって、それぞれクリアして貰うシールを繋ぎ合わせることで、最終的な答えが分かるらしい。

 2つの試練の内、1つはパズルゲームだった。

 まず一緒にもらったシールでピラミッドパズルを完成させ、それをヒントして『パズルの間』にてゲームをクリアする、らしいのだけど……。

 ここでむつみちゃんが姑息な提案をする。

 

睦「……要はパズルの間でゲームをクリアすればいい。ならまずはこのまま挑戦してみよう」

立希「確かに、上手くいったら1手間省けるかもしれないか。やってみてからでも遅くなさそう」

そよ「でも間違ったらペナルティって書いてあるよ?」

祥子「なるほど、安易にそういう手段を取らせないためのペナルティでしょうか」

燈「そよちゃん、どんな罰なの?」

そよ「今取り出すから待ってね」

 

 私は手提げ袋に入っていた説明書を開く。ちゃんとは読んでなかったので、みんなと改めて読んでみた。

 最初のペナルティは白い目で見られる、2回目はキツ目に叱られる、3回目に至ってはなんと殴られる、と書いてあった。

 ……明らかにライン超えなペナルティに、苦笑いしてしまう。

 

そよ「……フリ、だよね? この時代で滅多なことしないよね?」

睦「……むしろどれくらいそのペナルティに忠実か、見て見たい」

立希「意地悪い愉しみ方してあげるなって」

 

 怖気づくどころか興味本位で受けようとするむつみちゃんの勢いもあって、私たちはとりあえずパズルの間へ赴く。

 カーテンで仕切られたそのスペースには、壁にモニターがかけられていて、その前にいくつもの石が乗った台がある。

 

男性神官「では代表者1人は台の前に立つのだ」

祥子「そうですわね……ここは燈にやってもらいましょう」

燈「えっ、私?」

祥子「見たところ石を使ったパズルですわ。石と言えば貴女でしょう?」

立希「安直な発想だけど、いいんじゃない? とりあえず試しで来たんだし」

睦「……石好きな燈が一番乗り気になれそう」

そよ「ともりちゃん。手掛かりなしで来ちゃったから、失敗して当たり前だよ。だから気楽にやってみて♪」

燈「う、うん……」

 

 みんなから言われておずおずと台の前に立つともりちゃん。

 そして三角、正方形、長方形、ひし形、しかもそれぞれサイズが違ったりと様々な石の集まりをじー--っと見つめ始めた。

 台の縁にしがみついて覗き込む彼女は微動だにしない。異様な雰囲気に神官さんも恐る恐る声をかける。

 

男性神官「よ、よいか? 今からモニターに映る図の通りパズルを完成させるのじゃ。制限時間は10秒じゃぞ? ……聞いておるか?」

燈「……」

祥子「燈? ……燈っ!」

 

 さきちゃんが体を揺さぶって、ともりちゃんはようやくハッと顔をあげた。……始まる前から、何が彼女をそこまで集中させたんだろう。

 

立希「学校が向かいだから噂聞くんだけどさ……。羽丘の1年に、不思議ちゃんって呼ばれる子がいるんだって」

そよ「そ、そっか。ともりちゃんのことじゃないと、いいね……」

睦「……燈の人柄なら、滅多なことにもならないから大丈夫。……たぶん」

 

 そんなコソコソ話をよそに、神官さんの合図でパズルゲームは始まった。

 ひし形と台形が端っこで繋がっている図が映る。周りにいる私たちも台を覗き込むのだけど……

 

そよ「台形の石が、ない?」

立希「ちょっと、不正でしょ! 燈に何ふざけた問題やらせてんの!」

睦「……落ち着いて、この燈バカ」

祥子「えぇ、おそらく台形は複数の石で作るのでしょう」

男性神官「そこの無礼者が混じった4人よ。ヒントはそこまでじゃ、以後口を慎み給え」

 

 神官さんにジトッと睨まれ、すごすご台から離れる私たち。たきちゃんは普段からキツい目つきをさらに尖らせて神官さんを睨みつけていた。

 

立希「似非神官め、偉そうに……」

そよ「そりゃ似非でしょ、演技なんだから」

祥子「しかし事前知識無しでは、流石に10秒なんて短過ぎますわね」

 

 今回で言うなら図形を把握し、台形の石を探すけど見当たらなくて、どう作るか考えてる間に10秒が過ぎ去ってしまう。たぶんヒントのパズルを完成させてると事前に図形を把握できるから、それでやっと間に合うようになるんだろう。

 でもそれは終ぞ推測の域を出なかった。なぜなら、石が関わると異常な集中力を発揮する不思議少女によって、不要に終わったから。

 

睦「……仕方ない、大人しくヒントのパズル埋めてから再チャレンジ……」

神官B「10秒経ったのでそこまでじゃ! どれどれ……お、お主! 完成させとるではないか!」

燈以外「えっ!?」

 

 不可能と思われていたクリアに、私たちは一斉にともりちゃんの元に集まる。

 

そよ「ホントだ! モニターの図の通りにできてる! 凄いよともりちゃん!」

立希「ふ、ふん! 燈は凄いんだよ。舐めないでもらえる?」

祥子「フフン、ウチの燈は天才ですわ!」

睦「……ふふふん。流石、石の天才にヒントなんて必要ない」

 

 それは一体どんな才能なんだとかそもそも石の天才ってなんだろうとか野暮なツッコミが喉まで上がってきたけど、飲み込んだ。

 

燈「合ってたなら、良かった。でも可愛くない石ばっかりで、残念……」

男性神官(石の天才? 石に可愛い? ……何言ってるんだコイツら……)

神官B「そ、そうか……。それにしてもお主、頼りなさそうな見た目して、存外やるではないか。クリアした証に石板を授けるぞい。次の試練も頑張るのじゃぞ?」

燈「は、はい。えへへ……」

 

 最後まで困惑した顔の神官さんから石板と言う名のシールをもらい、プリントに張り付けた。もう片方の試練をクリアすれば完成して、また次の試練に挑めるようになる。

 ……2つしかやってないのに、なんだか気が遠くなってきた。

 

睦「……試練って、いくつあるんだろう」

そよ「それすごく思ったけど、たぶんやりきるまで分かんないんだろうね」

祥子「そんなことは気にしなくていいじゃありませんか! 手掛かりを省略した分、私達は大幅にリードしたはずですわ! この勢いで優勝しますわよ!」

立希「祥子は底抜けに元気だよね。余計疲れてくるよ……」

燈「えへへ……私も、活躍できた……。次も、頑張ろう」

 

 クリアした達成感で1人頬を緩ませてるともりちゃんに和みながら、私たちはパズルの間を出た。

 

 

〇第2の試練、その2 なぞなぞを手掛かりに宝探し

 

 オープニングイベントでも言ってたけど、このホールには宝が展示されていて、全てに番号がふってある。でも全ての種類に偽物という罠が用意されているのだとか。

 どれが本物か見破るヒントが、プリントにあるなぞなぞ。これを解いて本物の宝の番号を全てを神官に伝えると、クリアとなる。

 

そよ「……だって」

睦「……流石に今回は真面目にやらないと無理そう」

立希「むしろさっきのが上手くいきすぎただけでしょ」

祥子「それにみんなで悩みながらクリアしたいですわ!」

燈「ふふっ、祥ちゃんらしいね」

睦「……じゃ、私は座ってなぞなぞ解く係に専念するから、みんなは宝探しを……」

祥子「そんなつれないこと言ってないで、ほら行きますわよ睦!」

立希「部屋の中歩き回るくらい大して疲れないでしょ、大人しくついてきなって」

睦「……せっかく省エネ宣言したのに……」

 

 口をへの字に曲げたブチブチむつみちゃんを引き連れ、なぞなぞを解きつつ展示物を巡り始めた私たち。

 なぞなぞの答えは、『2つのうち表面がツルツルな方』や、『音がより響く方』、など触らせる前提のものだった。そして、実際に触ってみるまで違いが分からないくらい精工な見た目に、私たちは感心しながら宝を手に取って調べた。

 例えば、2つの花のうち甘い匂いがする方が正解のもの。

 

そよ「ねぇねぇ、この花本当にバニラみたいな香りするよ~♪」

祥子「本当ですの!? ……本当でしたわ、何だか無性にアイスが食べたくなってきます!」

燈「そ、そうなんだ……。もしかして、味も甘い、のかな……」

睦「……燈、食べて確かめてみて」

立希「お前が燈を罠に嵌めてどうすんの?」

 

 こんな感じで、見た目が丸っきり一緒なのにはっきり違いがある宝探しゲームを楽しんだ。匂いや音など五感を刺激されることにより、宝探ししてるリアルな実感が湧く。参加者を楽しませれるよう、なかなか考えられてるゲームだった。

 

立希「そういえば、猿のパペット人形にもボイスがついてるくらい手間かかってたっけ?」

そよ「このイベント、小道具に対する熱の入り用が凄いなぁ」

睦「……展示物に触らせるスタイルも何気にチャレンジャーな気がする。展示物って、運営側からしたら最悪な客を想定して触らせづらい思う」

祥子「そう言われてみると……あぁ、だから『乱暴に扱ったら呪い殺す』というルールがあるのではなくて?」

燈「そっか。そしたら悪いこと、できないね」

そよ、立希「そういう問題かなぁ……」

 

 いや絶対違うと思うけど。

 それより今は運営の心配より目の前の謎解き、と思い直して宝探しを続行する。

 中にはなぞなぞの答え的に一目で本物かどうか分かるものもあった。それが、より多くの虫がたかる果実だ。

 

祥子「カブトムシがあんなに寄っていたということは、あの果実の方がきっと甘かったんでしょうね!」

立希「祥子は本当にカブトムシ好きだね」

そよ「今さらだけど、豊川家の令嬢なのによくそんなわんぱくな趣味持てたね」

祥子「し、仕方ないじゃありませんか。生まれついての性分ですもの」

睦「……まぁ、大財閥のご令嬢としてのギャップとしては申し分ない」

立希「それ誰得だよ」

燈「えっ、祥ちゃんのそういうところ、親しみやすくて好き、だったんだけど……」

祥子「ともり~! 私の心の友よ~!」

立希「何ガキ大将みたいなこと言ってベタベタしてんの!」

 

 泣き顔でともりちゃんに抱きつくさきちゃんをベリッと剥がすたきちゃん。

 ともりちゃんの言う事は分かる。日本じゃ大貴族みたいな家の子なのに私たちとそう変わらないように思わせるさきちゃんの庶民的好みは私も好き。

 だけど……。

 

そよ「でも心配になってくるよね。家の行事でもカブトムシが好きって公言してたりしてそうで」

立希「分かる。テンション上がったら子どもみたいにはしゃいだりしてそう」

祥子「長いこと豊川家で育ってそんなことするわけないでしょう! 私をなんだと思ってるんですの!」

立希「お嬢様の皮をかぶったじゃじゃ馬娘」

そよ「ご令嬢のフリしたお転婆娘」

睦「……まぁ、間違ってはない」

 

 3人から容赦なくこき下ろされて肩をプルプル震わせる残念お嬢様。

 この際、カブトムシ趣味とか活発なところはまだいいと思う。

 それよりお嬢様以前に女子高生としていかがなところは他にもあるのだ。

 例えば……。

 

 

祥子「ムキ―! この際だから言っておきますが、豊川家絡みじゃいつもお淑やかにしてますの! 月ノ森でだってそうなのは睦やそよはご存じでしょう!? 立希は覚えておきなさい!」

 

 こうやって、子どもみたいに地団駄踏みながらキーキー騒ぐところとか。

 

そよ「確かにそうだけど……私たちだけのときもお淑やかにしたって、バチは当たらないと思うな~」

 

 友人として、何より一緒にいるイツメンとして恥ずかしい思いしないためにも。

 私は、もう少しだけでも大人しくなって欲しい、という願いを込めて皮肉った。

 

 

 

 

 

 やがて本物の宝の番号を全て判明させた私たちは、第一の試練で訪れた神官コーナーでそれを伝える。無事正解ということで、ここでも石板シールをもらった。

 2枚のシールを組み合わせると、1つの迷路になっていた。指示された通りなぞってみると、途中で通った文字が合言葉になった。これをまた神官コーナーで伝える。

 

睦「……『本物の宝』」

女性神官「お見事、第2の試練クリアしたぞい! その証として、たった今お主たちはこのピラミッドにおける『本物の宝』と認められた。誇りに思いながら、最後の試練に挑むと良いぞ!」

睦「……はぁ」

 

 という妙にクサイことを言われながら、むつみちゃんは最後の試練のプリントをもらった。ともかく試練の説明を落ち着いたところで読もうと、私たちはホール中央で腰掛ける。

 と、その時。

 

燈「みんな、待って!」

祥子「い、いきなり大声出して、どうしましたの!?」

 

 ともりちゃんの珍しく気勢のある声に、みんな何事かと振り向く。

 

燈「これ……落ちてた。これも、宝?」

 

 ともりちゃんは見覚えのない財布を手にして、汚れなき(まなこ)で訊ねてくる。

 顔を見合わせる私たちは言葉なく確信した。これは私たちの内誰の者でもない、つまり……

 

祥子「宝は宝でも参加者の宝ですわ! それは正真正銘本物の財布でしてよ!」

そよ「まさか宝探し中に誰かの宝を拾っちゃうなんてね〜」

睦「……神官さんに渡しに行こう。心ある私達に見つかって、よかった」

立希「自分で言うなし」

 

 プチハプニングに見舞われはしたものの、いよいよ最後の試練に挑む私たちだった。

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