海で遊んだ5人は別荘に戻って、夕飯までバンド練習に励む。
そのバンド練習終わり。午後6時、別荘のリビングにて
祥子「づ、づかれましたわ……眠気がすごいですわ……」
立希「海ではしゃぎすぎたからでしょ。そんなに長い時間練習したわけでもないのに」
そよ「それだけ楽しかったってことだし、いいことだと思うよ~? 私も楽しかったな~♪」
祥子「そよ~、枕になってくださいまし~…。そして立希のチクチク小言から守ってくださいまし~」
言いながらそよに倒れこむように抱き着く祥子。
そよは受け止めつつソファまで連れていき、膝枕する。
そよ「よーしよし。さきちゃんお疲れ様~。海で遊ぶのも練習も、よくがんばりました~♪」
祥子「ふふ、ふ……このままねてしまいそうですわ~……zzz」
立希「子どもか。しかもホントに寝るし。てか随分手馴れてる風に見えたけど、そよって下の兄弟とかいるの?」
そよ「ううん、1人っ子。……仕事で疲れたお母さんによくやってあげてて……」
祥子の頭を撫でながら、立希から顔を逸らして独り言のように呟くそよ。
立希「……あんたって聞き手に回ること多いけど、思い返すとあんまり自分のこと話すことなかったね」
そよ「…………」
立希「私も人のこと言えないし、言いにくいなら無理しなくていいけど。自分より他人のことばっか世話してるの、そよらしいって思うし」
そよ「……じゃあ私も、いつか……言いたくなったら言うね。たきちゃん」
立希「別にそこは私じゃなくてもいいでしょ」
そよ「たきちゃんには遠慮なくぶっちゃけやすいから」
立希「あんたと祥子はもっと遠慮して」
そよ「善処しま~す♪」
立希「ったく……。あれ? 燈……と睦は?」
そよ「あ、そういえば。まだスタジオかな?」
そのとき、立希は何の予兆もなく肩をトントンされる。
何者かが音もなく背後に忍び寄ってることに、立希は全身を緊張させる。
睦「……私、むつみさん。今あなたの後ろにいるの」
立希「ギャアアー!!」
そよ「た、たきちゃん、びっくりしすぎじゃ……」
祥子「たぁきぃ……こんなよふけにー、さわがしいですわよぉ~……zzz」
立希「何だ睦かよ……てかビビらせんな! 祥子はガチ寝してるし!」
睦「……もしかして、意外と怖がり?」
そよ「へ~! ホラーとか苦手なんだーたきちゃん~♪(ニヤニヤ)」
立希「(スン)違うから。睦の気配が無さ過ぎて驚いただけだから。で睦、燈知らない?」
睦「……(スッ)」
スタジオの方を指さす睦。
よく分からないなりにスタジオに向かう立希は、壁を背にして寝ている燈を見つける。
立希「あ~、燈も寝ちゃったか」
睦「……どうする?」
立希「ソファまで運ぶか。寝かせてあげたいけど、このままじゃ流石によくないし」
睦「……手伝う」
立希「んじゃ2人で運ぶか。睦は足持って」
睦「……(コクン)」
少女運搬中……
そよ「ともりちゃんも寝ちゃってたんだ」
立希「そう、スタジオから運んできた。……よいっしょっと。毛布をかけて……」
立希たちは空いてるソファに燈を寝かせ、毛布を掛ける。
立希「ひとまずよし。睦、ありがと」
睦「……別に」
立希(コイツはコイツで、いっつも口数少なめで無表情だよな……。もうちょい表情変えてもいいのに。表情筋がめちゃくちゃ固い、とか?)
立希は睦の両頬をほぐしたり引っ張ったり挟んだりする。
当然だがちゃんと柔らかかった。
睦「はひふるの(何するの)」
立希「いや、表情変わんないからさ、顔がカチコチに固まってるのかと思って」
睦「……(目を細め、抗議の視線を向ける)」
そよ「海でも笑ってたでしょ? カラオケのときだってー」
立希「あ、そーだった。……だって普段から無表情過ぎて怖いんだよ」
睦「……(目を丸くする)」
立希「な、なにその反応……もしかして驚いてる?」
そよ「そりゃ驚くよー。怖いって、たきちゃんが言う?」
立希「あたしはそんなに怖くないでしょ。……怖くないよね、睦?(ジロッ)」
睦「……燈に聞いてみる?」
立希「ごめんあたしが悪かったからやめて。……燈に怖いなんて言われたら……」
睦(睨んだり慌てたりしょげたり、普段仏頂面してる割に表情豊かだな。だから立希がいるとみんなと楽しい雰囲気が作れるんだろうな。私と違って……)
睦「……無表情、怖い……」
立希「あ、いや……よく考えたらちょっとヒドかった。ホントごめん」
睦「……」
そよ「むつみちゃんはそのままでいいと思うよ~?」
睦「……(黙ったままそよの方を向く)」
そよ「さきちゃんとは幼馴染の友達でしょ?ともりちゃんとも、たきちゃんとも、仲良くなってきてる。私も、もっとむつみちゃんと仲良くなりたいと思ってる」
睦「……」
そよ「いつも一緒にいる仲間がそう思ってるなら、そのままでいいんだよ。だって……自分の振る舞いくらい、自分の好きにしたいじゃない」
立希「……?」
睦「……(コクン)」
そよ「うん! さーて、ヒドイこと言ったたきちゃんにはバツを受けてもらおっかな~」
立希「……何させる気?」
実際バツの悪い立希は警戒しながらも抵抗はしない。
そよ「大したことじゃないよ。夕飯の準備をしてもらうだけ。そろそろお腹減ったでしょ?」
立希「そーいえば夕飯、どーすんだっけ? 私料理はそこまで自信ないけど」
そよ「さきちゃんに、今日の分は冷蔵庫に用意してもらってるって聞いたんだ~。だからあとはせいぜい温めたりお皿に分ける程度だと思うよ~?」
立希「そーゆーことなら、まぁ。ちゃっちゃとやるか」
立希(5人分か……1人で準備するにはちょっとメンドイけど、しょうがないか)
立希は潔くキッチンに向かう。と、そよと睦も付いてきてた。
立希「なに?」
そよ「本当にたきちゃん1人に押し付けたりしないよ。手伝おうって、私は思ってたんだけど……むつみちゃんも?」
睦「……(コクン)」
立希「……私一人で十分だったけど? まぁ好きにすれば」
睦「……立希は普段から素直じゃなくて、めんどくさい」
立希「は、はぁ~!?」
睦「……お返し」
そう言いながら立希に向ける睦の顔は、控えめだがニヤリと、確かに悪戯っぽい表情をしていた。
立希「こいつ……」
そよ「はーいそこまで~。3人で仲良く準備しましょうね~♪」
祥子と燈をできるだけ寝かせあげれるよう、のんびり準備し出す3人。
そこから30分後の午後7時。夕飯の用意が整い、祥子と燈を起こしてみんなで食べ始めたのだった。
余談
祥子「寝起きでしたので、食べやすいものばかりで助かりますわ」
そよ「サラダにカレー、シチューにピザにスープ。冷蔵庫にはうどんに塩ラーメンや焼きそばまであったよ」
睦「……海で遊び疲れた体に優しい」
立希「これ用意させたってことは……祥子、アンタ本当に遊び目的だけで合宿なんて企画したんじゃないの?」
祥子「失礼ですわね立希、私は料理まで指定してません。練習を頑張りつくした私達を想定して、使用人さん達が用意してくださったに違いませんわ」
燈「……でもラーメンとか焼きそばなんて、海の家みたい、だね。なんて……」
そよ「まぁ……バンド練習より、海で遊んだ体のこと考えたようなメニューかもね」
祥子「……本当に、料理については何も指示しておりませんでしたのよ……水着だって外で練習するのに使うだけって、それらしいことを言ったのに……(シュン)」
立希(ってことは用意した人たちは、こうなるって分かってたって用意してたのか)ヒソヒソ
そよ(なんだか微笑ましいさきちゃんだね)ヒソヒソ
睦(……祥は昔から分かりやすいところがある)ヒソヒソ
祥子「そこ3人はなにを内緒話してますの!? 私が寝ている間に仲良くなるなんてズルイですわよー!」
立希「寝起きのくせに元気なやつ……」
その後もワイワイ騒ぎながらご飯を食べ、みんなで後片付けしたらお風呂に順に入る。
寝巻に着替えた5人は寝室に移動して、その日はもう就寝しようとしていた