CRYCHIC交響曲   作:りょーへい

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5番 ダーツ/ロデオ/パターゴルフ/ローラースケート

 

休憩タイム② ダーツ

 

立希「そよ、ここは文句なしにあれだよね?」

睦「……満場一致でアレに決まってる」

そよ「もちろんです。さぁ、さきお嬢様。休憩タイムのお時間ですのでまた選んでください?」

祥子「そ、そういえばそんなシステムありましたわね……では、ターツにしましょう!」

燈「だーつ? ……あっ、チョコのお菓子の?」

睦「……それはDARS」

そよ「男女が2人で遊びに出かけるやつだよね」

睦「……それはDate(デイツ)

立希「アメリカで有名なパソコンメーカーでそんなのがあったな」

睦「……それはDELL。あと立希、それは元から離れすぎ」

祥子「大喜利はもう結構ですわ。みんなでダーツをしに行きましょう!」

 

 ということで体を動かさないダーツをみんなで遊んでみた。

 ルールについてはみんな知らなかったから、真ん中を狙ったり恰好良いフォームで投げてみたり。

 緩く適当にその場のノリで、実に女子高生らしく楽しめたと思う。

 体も休めてそろそろ飽きた頃、ダーツを片付けて私たちはまた次へと移動した。

 

⑤ ロデオ

 

祥子「あ、あれは! ……なんですの!?」

そよ「知ってると見せかけて知らないんだね。ロデオマシーンだよ。牛みたいに暴れ回るマシンに振り落とされないようしがみつく遊びだね」

睦「……暴れ牛対暴れ馬、か」

立希「なかなか相応しい勝負じゃん。祥子、行って来たら?」

祥子「誰が暴れ馬ですか! むしろ華麗なる騎手として暴れ牛を乗りこなしてみせますわ!」

そよ「そうやってロデオマシーン相手に勝ち切ろうとする発想がもうじゃじゃ馬なんだけどなぁ」

 

 私がそう呟いた頃にはさきちゃんはドドドドドッとマシンに突進していったので、まぁ聞こえてないんだろうな。

 さて、どうせむつみちゃんが動画に撮ってくれるだろうから私は写真でも撮っておこう。牛(機械)対 馬(お嬢様)という珍しい勝負の様子を。

 

燈「祥ちゃん、がんばってー」

祥子「あぁ……失礼コンビの後に受ける燈の無垢な応援は心に沁みますわね……」

立希「ほらもうスタートしてるから。油断してると牛に負けるよサキコホース」

祥子「競走馬みたいな名前つけないでくださる!?」

そよ「それにしてもダサい名前だけど」

睦「……仕方ない。頂きという意味のキャップをつけて、サキコキャップで」

祥子「ふむ……可愛さに欠ける名前ですが、頂点を表すのは悪くありませんわね」

燈「ねぇ祥ちゃん……。牛さんが前傾したまま凄い勢いで回転してるのに……どうして平気で話してられるの?」

祥子「楽しいですわよ~!」

立希「答えになってないんだよ規格外お嬢」

睦「……普通なら両手でしがみつくので精一杯な挙動されてるのに、どうして片手でブンブン手を振る余裕があるのか」

そよ「どうやらこの勝負はサキコキャップの勝ちみたいだね。……少なくとも女子高生してないや」

 

 激しく振り回したつもりのバレー。バブルサッカーで押し倒し合い。かなりの集中力を要したはずのビリヤードマスワリ。パカパカ打ってたバッティングに大白熱だったテニス。

 これだけ動いてきて、彼女はまだロデオマシーンに勝つ力さえ残ってる。幼少時から森で過ごしてきた野生児と言われなければ納得できない体力してるのに、これが大財閥のご令嬢? お淑やかの象徴たるお嬢様?

 さきちゃんの出自を疑いつつ、私は1つ思い至ったことがあった。

 

そよ「もしかしてだけど……これが本来の、彼女のベストテンションなの……?」

 

 今までだって登山に連れまわされたり色々引っ張りまわされていたけど、それすら手加減してくれたらしいことに気付いて戦慄する。

 怖いもしもを思い描いてしまったから。さきちゃんは楽しいことや興味を持ったら向こう見ずに一直線なところがある。

 もしもそうなったとき、このテンションでセーブすることすら忘れてしまったら。

 例えば月ノ森でそうなったら、もはや彼女を誰も止めれないだろう。豊川家の娘として普段はお淑やかな仮面被ってるところがまた性が悪かった。

 さきちゃんが暴走を起こさないよう警戒できるのが私とむつみちゃんという、たった2人しかいないから。

 

そよ「さきちゃんのこういうところを、学園のみんなにも知ってもらった方が……」

睦「……なんか真剣な顔してブツブツ言ってるとこと悪いけど。そよ、もしかしてテニスなミュージカル嗜んでる?」

そよ「いきなり何わけ分からないこと言ってるの?」

睦「……だよね」

立希「絶対しょうもないことだろうけどさ。とりあえずシュンとすんなって」

 

 ひとしきりロデオを楽しみ尽くしたのか、さきちゃんはいつの間にか私たちのところに戻ってきていた。

 

祥子「さぁ、みんなもやってみたらどうです?」

立希「あんなのお前ぐらいしかやりたがらないから」

燈「あら? 燈に全力で勧めたらやるって言ってくださいましたわよ? 今頃はマシンに乗ってるころかしら……」

 

 たぶんさっき上がりに上がったハイテンションのままともりちゃんに詰め寄ったんだろう。勢いに負けておずおず頷くともりちゃんが目に浮かぶ。

 ……って、ともりちゃんにロデオマシーンさせたの!? 去年の夏、フェリーに乗って酔うくらい三半規管が弱いのに!?

 

そよ「ちょっとさきちゃんのバカ! なんでよりにもよって、ともりちゃんにやらせるのっ!」

睦「……祥。本当にハイテンションで頭抜けてるみたい。燈の三半規管の弱さ、知ってるでしょ」

祥子「……あっ」

 

 慌てて止めようと駆けつけたときには時既に遅し。

 ぐわんぐわん揺れて旋回するロデオに振り回されて吹き飛んだともりちゃんは、しばらく目を回して立てませんでした。

 「私としたことが~!」と喚きながらさきちゃんはともりちゃんをおんぶして、休憩できるスペースに直行するのだった。

 

休憩③ パターゴルフ

 

そよ「さて。盛り上がり過ぎたお嬢様がともりちゃんをダウンさせたので、休憩時間です」

燈「う、ううん。私の考えが足りなかっただけだから、祥ちゃんは悪くないよ……」

睦「まぁ……周りに流されないようになりたい燈からしたら、そう思うか」

立希「だとしてもどうせ祥子の勢いがとんでもなかったんでしょ。落ち着かせる意味でも、休憩タイムは妥当」

祥子「そうですわね。少し考えれば燈には厳しいと分かりましたのに……ごめんなさい、燈」

 

 シュンとしてすっかりしおらしくなったさきちゃん。こうなれば制御が効かなくなるほど盛り上がることもないだろう。ということで、そろそろ元気づけてあげよう。

 ……なんだかんだ、元気ないさきちゃんは落ち着かないので放っておけないのだ。まだまだ甘いな、私も。

 

そよ「ほらさきちゃん、あんまり謝るとともりちゃんも気にしちゃうからそこまででね。それで、何する?」

祥子「そうですわね……なら、燈に合いそうなこれにしましょう!」

 

 ということで、さきちゃんチョイスのパターゴルフをすることに。

 なかなかいいチョイスと、私は感心した。

 

立希「パターゴルフか。小学生の頃子ども会でやった以来だな」

そよ「同じく~♪」

燈「私も。懐かしいね」

祥子「そもそも子ども会、というのは?」

立希「なるほど。祥子の家クラスになると、関わりすらないか」

睦「……子ども会とは、年齢の異なる子どもたちが一緒になって活動をする交流の場であり、地域における様々な住民活動と密接に関わり、健全な子どもの育成を図る組織」

 

 そういえば。今日初めてググったかもしれないね、このググリ厨ちゃん。

 

そよ「要は子どもを遊ばせる会だね。にしてもみんなやったってことは、子ども会の定番なんだろうね、パターゴルフって」

祥子「それは知りませんが、燈がやったことあるなら好都合でしたわ! パットだけの簡単なスポーツをのんびり楽しみましょう?」

燈「うん。ありがとう、祥ちゃん」

立希「いや燈が礼言わなくて……まぁ、いっか」

睦「……ここで茶々入れると、しつこいKYみたいだもんね」

立希「わざわざ言わなくていいんだよ」

 

 ということで。パターゴルフの短いコースをのんびり楽しむ私たち。

 コツンコツンと地味にボールを転がすのはどうも今まで遊んで来たのと比べると退屈だったけど。

 

燈「思ったとおりにボールを転がせれると……楽しい」

 

 どうやらともりちゃんには合ってるらしかった。さきちゃんの期待通りに彼女が楽しんでくれたら、何でもいっか。

 

祥子「えーい、細かく繋ぐのもまどろっこしいですわ! ビリヤードみたいにジャンプさせてホールインワン狙いますの!」

立希「どこ行くか分かんないからやめろバカ!」

 

 地味さに耐えきれず暴れ出したお嬢様に危機感を抱く。ともりちゃんが満足したら、さっさと次に参りますか。パターゴルフで粗相起こして、スタッフさんに怒られるなんて珍事を起こす前に。

 

⑥ ローラースケート

 

 どうしてか分からなかったけど。いつもこのローラースケートは人が集まっていた。

 そんな人気の遊びに私たちも参加することに。

 今はスケート靴をはいてるところだった。

 

睦「……せーまーりーくるー、なーぞーをーとけー」

立希「何それ?」

睦「……私が生まれる前に放送してたアニメのOP。その主人公はローラースケートでダッシュするのです」

祥子「それで今それを口ずさんだんですのね。というか古すぎません?」

燈「ローラースケートをはいて謎を解くアニメなの?」 

睦「……燈。ごめん、謝るから流して」

 

 なんでそんな昔のアニメなんて知ってるのかとか、どうしてアニメのことを解説せずに流してもらおうとしたのか、とか。

 ツッコミどころは多々あるけど、流した方がいい気がしたのでそっとしておく。

 

そよ「それじゃ、みんなはけたみたいだし早速行こうか」

 

 みんなと一緒に私はリンクに入った。後ろ足で蹴った勢いを、前足のローラーに乗せて滑っていく。その繰り返しで加速していった。

 一度スピードに乗ってしまえば、足を動かさなくとも慣性で進んでいく感じが気持ちいい。

 もっと速いスピードを出せば、それこそ風になったような気分だろうな。そこまで調子に乗らないけど。

 

そよ「うん、楽しい!」

祥子「えぇ、気持ちいいですわ!」

睦「……人気なのも頷ける。機会があるなら、一度はやっておきたい」

 

 月ノ森組でスピードを揃え、リンクを回った。筋力よりも器用さが大事なので、むつみちゃんも普通についてこれるのだ。

 まぁ、さきちゃんが本気になったら誰もついていけなさそうだけど。あ、たきちゃんは無気になって食らいつくか。

 

そよ「って、あれっ? たきちゃんと、それにともりちゃんは?」

祥子「そういえばどこでしょう?」

睦「……いた」

 

 むつみちゃんが指さす方向に2人を見つける。

 私たちがリンクに入って来た入口付近で、たきちゃんがともりちゃんの手を引いていた。

 ともりちゃんの姿勢は見るからに危なっかしい。たぶんローラーを怖がって体に過剰な力が入ってるんだろう。

 そんな明らかに滑れないともりちゃんを、たきちゃんがリードしてあげてるらしい。お姫様を守る騎士みたいで、これ以上なくたきちゃんだった。

 と、思ったのは私だけじゃないらしい。

 

睦「……ヘイ立希。燈専用のナイトごっこができて、役得だね」

立希「ナイトごっこって何。初めてで不慣れな燈からしたらローラースケートは怖くて当たり前でしょ。助けるのが当たり前」

睦「……そんなこと言って、燈以外だったらスルーしてた」

立希「んなことないし」

 

 そこまでのセリフを引き出した瞬間、むつみちゃんがニヤリと笑う。

 

睦「……私達のこともちゃんと助けてくれるってことだよね? それじゃ見捨てないでちゃんと引っ張ってね」

燈「わっ、睦ちゃんが肩に掴まってきた!」

立希「何してんのっ、後ろ向きで2人分引っ張るの地味に大変なんだけど!」

そよ「そっか。確かに後ろ向きは怖いよね。気を付けてね?」

祥子「危なければ伝えますが、自分でもチラチラ進行方向を確認するのですよ?」

立希「お前らも繋がるなよ! 5人も繋がってたらカーブするときの遠心力めっちゃヤバくなるじゃん!」

そよ、祥子、睦「ふぁいと~!」

立希「それは昨日も聞いたよ!」

燈「ごめんね立希ちゃん。私も引っ張ってあげれたら、よかったのに……」

 

 ともりちゃんの心からの謝りに、ぷんすこ怒っていた顔はキリッとした真顔に一瞬で様変わる。

 

立希「いや。燈を引っ張るために頑張るよ。後ろ3人は重りだと思って我慢する」

祥子「女の子を重り扱いとは何事ですの!」

そよ「デリカシーない子は嫌われるよ?」

睦「……やーい、ノンデリ立希ー」

立希「事あるごとに嫌がらせしてくるお前らに言われたくない!」

 

 こうして、私たちはたきちゃん牽引によるCRYCHICトレインスケートを楽しんだのだった。

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