CRYCHIC交響曲   作:りょーへい

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※前書き※

ガルパにもあるトコナッツパークに来てる設定ですが、リアルのナガシマにあるアトラクションも混ぜてます。


【7月イベント】CRYCHICなトコナッツパーク
1番 みんなでレジャープールを楽しみましょう? 


 

 ※ ※ ※

 

 夏の遊び場といえば。真っ先に挙がるのが海やプールだと思う。

 うだるほど暑い季節で冷たい水遊びは合理的だし、いつもは着ないような水着で華やかだし、まさに女子高生らしいイベントだと納得はできる。

 でも私は海もプールも好きじゃなかった。肌をさらすことに抵抗があるから。紫外線問題は対策が容易だからまだいい。発育が進んでるせいで、どうしても他人の視線が気になってストレスだった。

 しかし、我らがCRYCHICのリーダーは『今年は絶対プールで遊びたいですわ!』と宣ってきかない。いくら遠慮しなくなった私とはいえ、本気で遊びたがる彼女には勝てない。私と同じく乗り気じゃないたきちゃん共々、溜息つきながら折れるしかなかった。

 

 とはいっても。周囲からの視線さえ気にならなければ、大きな問題はなかった。私だって本音は、みんなと気兼ねなくプールを楽しみたい。

 

『……なら、水着でカバーすればいい』

 

 と助言するむつみちゃんの言う通りなので、CRYCHICのみんなで水着を買いにいったとき、私はこだわった。なるべく露出を控えるのは大前提、さりとて可愛くないのは気分が削がれて嫌。水着なんて薄布ごときに、間違いなく人生で一番悩んだ瞬間だった。

 その甲斐あって、気に入った水着を揃えることができた。今年は自分で水着を選んだともりちゃんと一緒に、当日が楽しみだねと、屈託なく笑い合うのだった。

 

 ふと思う。もしCRYCHICに入ってなければ、私は友人から誘われても適当に逃げるような人間だった。なのに人の多いプールを楽しみにしてるなんて、なんだか別人みたい。

 ここにいると、どんどん変わっていく。誰にも外面を外せなかった私から、海やプールに行かなかった私から。

 これからは、どんな変化が待っているのだろうか。私はそんな未来が楽しみでもあり……怖くもあった。

 

 ※ ※ ※

 

 夏休みに入った7月下旬。雲1つない青空でギラつく太陽が容赦ない日射しを放っている。いつもなら肌を焼くような暑さに参っていたけど、今日に限って言えば絶好の日和だった。なぜなら、見渡す限り水色な大型レジャープールに来ていたから。

 私たちCRYCHICは更衣室で着替えと日焼け止め対策を済ませ、入場前にシャワーをさっとくぐった先のプールサイドに立っていた。

 少し濡れただけで、いつもより涼しく感じる。水場の近くだからというのもあるけど、水着という開放的な服装だから、というのも大きい気がした。

 なんて考える私は、紅いハイビスカス柄のビキニなんて大胆な水着を付けている。南国風の鮮やかな花柄が、華やかで大人っぽいなと気に入っていたのだ。当然、それだけだと肌の露出具合が私からしたら裸同然。そこで薄いベージュのシアーボレロと、ビキニと同じ柄のロングパレオで覆っている。上半身は二の腕から胸元、下半身は腰から下全体を隠せていて、下着みたいな水着をつけてるのに服を着てるような安心感があった。

 かくしてお気に入りの水着を着られつつ、人の目も気にせずいられる私は心身共に解放的で、自然と笑みが浮かんでいた。

 まぁ、浮かれてるのは私だけじゃないんだって、直ぐに実感することになる。それこそ真夏の太陽にも負けない程顔を輝かせる我らがリーダーは、周りを見渡しつつはしゃぐように声をあげる。

 

「これがレジャープール……! プールもアトラクションも、楽しそうなものがたくさんありますわ……! さぁ早く! なんでもいいので早く、どれか遊びに行きましょー!」

 

 後半は目を><にするほどテンションアゲアゲなさきちゃんは、空色なワンピースタイプの水着だった。肩から胸元までヒラヒラしてる大きめのフリルが上品で、せっかく彼女の高貴さに合ってるのに。

 今にも走り出しそうに足踏みするはしゃぎっぷりでだいぶ台無しになっていた。色んな意味で残念だけど、楽しみを隠さず溢れさせてこそさきちゃんだから、仕方ないかな。

 

「祥子。見ての通り人も多いんだから、はしゃぎ過ぎて恥かくようなことしないでよ。一緒にいる私たちまで巻き添えくらうんだから」

 

 いつも通りやれやれ顔で小言をぶつけながら、珍しく髪を後ろで束ねているたきちゃんは、スポーティーなセパレートタイプの水着だった。白地に黒の縁取りが映えるタンクトップ型のトップスと、黒地にサイドで白いラインを入れたショートパンツ。

 白黒というシンプルな色合いといい、ボーイッシュな水着といい、スッキリしたポニーテール姿といい。それらがこれ以上なく調和してキマってるのに、本人は自分らしい水着で楽な髪型にしただけなのが、飾らないたきちゃんらしかった。

 

「……祥。その楽しそうなものはどれも人気だから、結構な待ち時間があるらしい。この炎天下でただ待ってるだけなんてやってられないから、計画的に回ろう」

 

 無表情な顔をげんなりさせ、だからこそ涼むために真剣な声色のむつみちゃんは、白地に渋めな花柄をあしらったワンピース型の水着。ご丁寧に、麦わら帽子までつけてきてくれた。

 というのも、この水着は最近買ったものじゃない。去年夏合宿で彼女が着てたもの。しかもこれ、私が選んであげたものだった。理由を聞くと、『これ以上に気に入った水着がなかったから』。そこまで気に入ってくれたことに、私は感激した。

 1年ぶりに見ても、白のワンピースと麦わら帽子という清楚さ溢れる組み合わせと、ドレスのように上品な二段のフレアスカートという愛らしさは、お人形みたいに綺麗なむつみちゃんによく似合っている。黙っていれば、避暑地にお忍びで来た高貴な家のお嬢様にしか見えない。黙ってればね。

 

「みんな水着で、塩素っぽい匂いもして。いつもの遊び以上に、別世界、かも」

 

 控えめな声色でキョロキョロ見回し、明るい表情になったともりちゃんは、紺地に小花柄が散りばめられたセパレートワンピースのような水着。シフォンの袖がついた短めのトップスと、軽やかに広がるスカート風のボトム。

 紺というシックな色が彼女に合っているし、ガーリッシュなスタイルがいつもと違った印象を持たせて新鮮だった。

 一言でいうと……

 

立希「やっぱり燈、その水着マジ可愛い!」

燈「う、うん。私も、この水着可愛くて、気に入ってる——」

立希「違うって、その水着を着てる燈が1番可愛いんだよ!」

燈「えぇ!? わ、私は可愛くないよ、立希ちゃん!」

睦「……プールに来た途端口説いたりして。いつからそんなチャラいナンパ男みたいになったの、立希」

立希「口説いてない。純然たる事実を伝えただけでしょ」

そよ「でしょって真顔で力説するたきちゃんも浮かれてるね~。それはともかく、実際可愛いよ、ともりちゃん。水着も、ともりちゃん自身も♪」

燈「そ、そうかな? えへへ……」

 

 和やかに微笑み合う私たちは、水族館以降どことなく距離が縮まっている気がした。そんな私たちを余所に、しょぼくれる惨めな子が1人。

 

立希「どうしてそよのときはあっさり聞き入れるの、燈……」

睦「……立希のガチ過ぎる愛は、燈には重い」

立希「お、重い……」

燈「え、えっと……た、立希ちゃんも、ありがと。だから、元気出し——」

祥子「立希の燈愛が重いなんて今に始まったことじゃないんですから、どうでもいいですわ! そんなことより!」

立希「オイコラ祥子!」

 

 ガルル……! と威嚇顔のたきちゃんをガン無視して、さきちゃんは大きなスライダーだの、人が流れているプールだのアレコレ指差す。

 

祥子「みんな、どこから回ります!? いつまでもお喋りしててはもったいないですわ、行きたいところ回れるように計画建てましょ!」

睦「……祥の言う通りかな。諸々」

そよ「そうだね。諸々さきちゃんの言う通りだし、パンフレット見ながら相談しよっか」

立希「何私の重大なショックを、諸々なんて雑に片付けて流そうとしてんの!」

睦「……流す? なるほど、立希は流れるプールがご所望らしい。でも確かに、水慣れにはちょうど良さそう」

立希「なんでそこだけ切り取ってんの。しかも確かに悪くなさそうなのが癪だし」

そよ「じゃあ、人気なところの優先パスを取ったら流れるプール、が最初の流れだね」

立希「優先パスわざわざ取りに行くって、なんかガチ勢っぽいけど……。まぁ待ち時間なくなるならいいか」

祥子「流れるプール……一体どのようなスピードやスリルが待ってるのでしょうか……!」

立希「祥子お前、流れるプールをウォータースライダーと混同してない!? そんなスピードでグルグル回されたらどんな惨事になると思ってんの!」

燈「プールが、洗濯機みたいになっちゃう、かな?」

立希「燈まで乗ってこないでよ! 人間洗濯機なんてグロい想像しちゃったじゃん!」

睦「……立希。いつもよりツッコミに熱が入ってるね。これも夏の、いやプールの魔力、かな?」

立希「春夏秋冬再三再四、ほとんどの原因がお前のふざけたボケだよ!」

 

 いつも通り大好きなたきちゃんを弄り倒すむつみちゃんはともかく。ツッコミ頑張るたきちゃんといい、珍しくボケに乗っかるともりちゃんといい、みんないつもより陽気なノリになってるみたい。

 こんな風に騒ぎつつ、大まかな予定を立てた私たちは、優先パスを取った後6か所のアトラクションを楽しむのだった。

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