CRYCHIC交響曲   作:りょーへい

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※前書き※
立希の誕生日を間違えて覚えてたため、誕生日のうちにやっつけで書いたので、後に細かいところを修正するつもりです。大まかな流れは変えません。
他4人はちゃんと誕生日にお祝いできてたので、逃せなかったのです。もっとちゃんと詰めて書きたかった……。


誕生日祝い② 立希バースデー
1番 あの子が大好きなものと言えば


 

 

 8月9日

 

 夏休みも折り返しに差し掛かる頃。学生の身に余り過ぎる大騒動に巻き込まれながらも、大きなライブイベントをこなした私たち。その翌日、何故か5人とも頭痛をひっさげながらも反省会という名目でライブハウスRingのカフェに集まった私たちは、その建前をさっさと済ませて本題に入った。

 

睦「……立希。誕生日おめでとう」

立希「え? ……あぁ、そういえばそうだった」

祥子「その反応は完全に忘れてましたわね」

そよ「そもそも気にもしてなさそうだね~」

立希「そこ、うっさい。そういえば、祥子が珍しくライブの反省会なんて言い出したと思ったら。まさかそれのため?」

燈「うん。立希ちゃんのお祝い、したかったから……」

立希「そ、そっか……」

 

 澄まし顔から眉をひそめて、かと思えば慌てて取り繕うように和らげる、本日の主役な表情。短い時間でコロコロ変わる様に、天真爛漫なさきちゃんと負けず劣らず表情豊かなんじゃないかと思う。

 それはともかく。捻くれてるしクールぶってる割にチョロい彼女を誘導するのは、多少ふざけ過ぎても簡単そう。安心して一番張り切ってる子に任せておこう。

 

睦「……と、いうことで。今からお祝いに出かけます」

立希「いやいらないんだけど」

睦「……バンドメンバーからのお祝いも拒否するんだ。私達CRYCHICって、そんな冷え切った仲でバンドとして成長していけるのかな」

立希「分かった、分かったから。でもどこ行くの?」

そよ「行先は決めてあるから、たきちゃんはついてくるだけでいーよー♪」

立希「なんか怖いんだけど」

祥子「誕生日祝いなんですから、サプライズだと思って付き合ってくださいまし?」

 

 と言われても、納得するどころか疑いの目を向けて来るたきちゃん。まったく、まるで私たちのことを揶揄ってばかりだから信用できない、とでも言いたげだね。……全く否定できないや。

 まぁ、この子がいる限りたきちゃんは従わざる得ないんだけど。

 

燈「立希ちゃん。立希ちゃんのために考えたお祝いだから……」

立希「行く、行くよ! ちょっと警戒しただけだって、気にしないでいいから!」

そよ「最初からともりちゃんに全部任せれば、上手く運びそうだったね」

祥子「それでは張り切ってる可愛い可愛い誰かさんがやりきれなくて拗ねそうですから」

睦「……よく分からないこと言ってないで、行こう」

立希「いやだから! せめてどこ行くのかくらい教えてくれてもいいでしょ!」

 

 可愛い可愛い誰かさんが席を立ってカフェを出ていく。続く私たち3人の後を、不安と戸惑いを威勢で誤魔化すたきちゃんがついてきた。

 むつみちゃんがスマホで時間を確認する。ちなみにこれは反省会を始めたときからしょっちゅうだった。それもそのはず、今日は時間をきちんと守らなければ最後まで成功しない誕生日祝いだったから。

 お祝いされる側も大事だけど。一番お祝いしたい側も大事にしたい。せめて無事に成功するようフォローに徹しようかな。

 

 

 

 冷房の効いた電車から降りて、ギラッギラに照りつくてくる太陽に焼かれながらテクテク歩くこと5分。私たちは目的地に到着した。

 

立希「上野動物園?」

睦「……来た事あるでしょ?」

立希「そりゃ、まぁ」

そよ「でも、最近は来なくなったんでしょ?」

立希「それも、まぁ……って、なんで当ててくんの?」

燈「パンダのシャンシャンが、いなくなっちゃったから、だよね?」

立希「そ……そうだけど。燈まで当ててこなくても……」

祥子「立希がパンダ好きなのは周知の事実なんですから、いちいち照れなくてもいいじゃありませんか」

立希「そこじゃなくて、何でもお見通しみたいに当ててくるのがむずがゆいの!」

 

 それは確かにそうかもしれない。だとしても反省もしないし後悔もしないけど。

 チケットを買いながら入場ゲートを過ぎる。相変わらず何が目的なのか分からなくてついにムスっとしてきたたきちゃんを、私とさきちゃんで「もうちょっとだから」と宥める。

 やがて、1つの大き目な獣舎が見えてくる。それも一際お客さんが集まっていた。その理由を、たきちゃんはすぐに察する。

 

立希「え……あそこにいるの、パンダじゃん! まさか……!」

睦「……そのまさか。只今、期間限定で上野動物園にシャンシャンが帰ってきております」

立希「マジか!!!」

そよ、祥子「声デッカ(いですわ)……」

燈「ふふっ。こんなに立希ちゃんが大きな声で喜ぶの、珍しいね」

 

 ちなみに私たち3人の会話は彼女に聞こえてない。私たちを置き去りにしてパンダの元へダッシュし、人だかりを掻きわけて金網に張り付いたから。

 ひとしきり肉眼で久しぶりだろう生シャンシャンを愛でたたきちゃんは、思い出したようにスマホを取り出し、ベストアングルを探してか鉄柵の周りを駆け回る。当然、他のお客さんには「何だこいつ……」みたいな目で見られるのだけど。彼女がいつもクールで大人ぶったキャラしてると言っても、信じてはもらえないだろうな。

 そこまでキャラ壊れた彼女を眺めたり撮ったりするのも面白いけど、今日の目的は誕生日のたきちゃんを喜ばせること。それをちゃんと分かっていた子が、パンダの撮影に夢中だったたきちゃんをガシッと捕まえる。ここは暑い中待たなくていいように、ビタで計画を練っていたからその分余裕がないのだ。

 

立希「何睦? 今忙しいんだけど?」

睦「……見てればイタイほど分かるけど。ちょっとこっち来て」

立希「ちょっ、まだ撮り終わってないって!」

そよ「私が撮ってるから、ついていってあげてー!」

 

 私がそう言って少しは納得したのか、渋々といった顔で引っ張られていくたきちゃん。そんな落胆しなくてもいいのに。ただ写真撮影するより良いイベントが待ってるんだから。

 私はシャンシャンを何枚か撮ったあと、さきちゃんともりちゃんと一緒にたきちゃんたちの元へ近づく。彼女たちは獣舎の出入り口傍に立っていた。だから、彼女たちの目の前に中から出てきた飼育スタッフが現れたのだけど。そこで飼育スタッフが、用意してたスピーカーのスイッチを入れた。

 

飼育スタッフ『只今より、シャンシャンへの餌やり体験を開催しまーす! ご希望の方は、私の前に並んでくださーい!』

周りの客A「えっ、そんなイベント聞いてない!」

客B「動物園のSNSアカウントにも告知なかった! すっごいラッキー!」

立希「は? シャンシャンへの餌やり? は? そんなの許されんの?」

 

 大好きなパンダに会えただけでなく餌やりで触れ合えるという、パンダ好きにはたまらない展開に嬉し過ぎてキレ気味なたきちゃん。

 かと思ったのだけど。怒っていたのは嬉しさの裏返しだけでなく、どうやら本気で心配してた所以らしい。

 

睦「……流石パンダ好き。例の感染症騒ぎでパンダへの接触が厳禁になったの、ちゃんと知ってたんだ」

立希「当たり前でしょ。常識だから」

そよ(そうかな?)

燈(し、知らなかった……)

祥子(立希クラスのパンダ愛好家にとっては常識なのでしょう。そっとしておきましょう)

 

 機嫌を損ねないようコソコソ話す私たち3人を他所に、むつみちゃんは説明した。

 

睦「……この餌やりは直接手で渡すんじゃなくて、長い棒を使って距離保ったまま餌を渡すの。ホラ、飼育員さん持ってるでしょ」

立希「な、なるほど……。それなら、まぁ……」

睦「……ご納得頂けましたら、早速どうぞ」

立希「へ……もう!? いやいや、いきなり過ぎて心の準備できてないからっ!」

 

 そう言ってむつみちゃんは手を飼育スタッフに向けてたきちゃんを促す。事前にあの子が計画した通り、餌やり体験の先頭にたきちゃんが並んでる形になっていたのだ。泡食ってアタフタ取り乱すたきちゃんは大変貴重なので、私は逃さず写真に残す。……あ、ともりちゃんがスマホで動画撮ってる。絶対むつみちゃんに頼まれてたんだろうな。

 

飼育スタッフ『どうぞー。この長い棒に人参がくくりつけてありますから、鉄柵の外からパンダに向けて差し出してくださーい」

立希「マジか……。二度と会えないと思ってたシャンシャンに会って、しかも餌やり? え、夢?」

睦「……夢じゃないって教えてあげる」

立希「イテテッ、やめろ睦! 古典的に頬引っ張んなくていいんだよ!」

 

 2人がじゃれてる間に、エサに釣られてかシャンシャンも近づいてくる。ノッソノッソ4足で歩き、たきちゃんが差し出した人参の前でお尻を下ろした。

 

立希「おぉ……超激レアな瞬間! そよ、ちゃんと写真撮ってよ!」

そよ「撮ってる撮ってる、超撮ってるよー」

立希「もっと真剣に撮って! 100年に1度の奇跡だと思って!」

そよ「そんな大げさな……」

 

 と苦笑いな私だったけど。日中の関係次第では今後2度とパンダは来ないかもしれないと思うと、一笑に付せなかった。

 パンダ如きで世界情勢に悩まされかけていると、たきちゃんがさらに興奮した声をあげる。

 

立希「シャ、シャンシャンが! 私の人参を食べてるッ! 両手で掴みながら、めっちゃシャクシャクしてる!」

祥子「立希の人参と言える要素はどこでしょうか……。それはともかく、どんな感じですか?」

立希「どんな感じって……ずーっと口を大きく動かしてバクバク食べてんの! 頬袋が膨らむところも、食べながらジーっとこっち見てんのも、全部可愛い! リアルシャンンシャンモグモグ、最高に可愛い!」

祥子「リアルシャンシャンモグモグ……こんなにファンシーな横文字が、あの立希から飛び出すとは……」

 

 さりげなく動画係を引き継いでいたさきちゃんが、たきちゃんの新鮮な様子に目を真ん丸する。そこまで驚かれてるとも知らず、たきちゃんはご満悦な様子でむつみちゃんに笑いかけた。

 

立希「どう睦? こんなに近くでパンダ見たら、私がパンダ好きになるのも分かるでしょ」

睦「……確かに。こんなに可愛かったら、夢中になる人がいてもおかしくないね」

 

 そう言う割に、慈しむように微笑むむつみちゃんの視線は、パンダより別の方へ注がれてるように見えるのだけど。

 大変喜んでおられるたきちゃんは、そこまで気づいてないらしい。

 

立希「でしょ!? まぁ睦がどうしてもって言うなら、睦にも餌やりさせてあげてもいいけど?」

睦「……立希がどの立場で許可してるのか謎だけど。この後もまだ行くとこあるから、遠慮しとく」

立希「ってこれがお祝いじゃないの? というかまだあんの!?」

 

 そのタイミングで人参は全部食べられたので、餌やりは終了。長い棒を返したたきちゃんは、またしてもむつみちゃんに引っ張られていく。

 そんな様子を見ながら、私とさきちゃんは困ったように笑い合う。やれやれ。今日はたきちゃんのためにみんなでお祝いする日だけど。どうしてもフォロー役として付き合ってあげてる感が強くて、微笑ましくなる私たちだったのだ。

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