飛火夏夢視という、CRYCHIC2次小説があります。途中までとてもいいのに、最後だけ死ぬほど気に入らないこの作品を参考にしました。こういうパクりが許されるのか分からないけど。
1番 みんなで秋桜を見に行きましょう
芝生広場にレジャーシートを広げた私の膝には、小さな頭が色素の薄い長髪を敷いて横たわっている。去年からお母さん以外にも膝枕することが増えちゃったな。女子高生として複雑な心境になりながら、お人形みたいに可愛らしい顔のほっぺを優しくつつく。
「歩くだけでも辛いほど眠いなんて、やっぱり徹夜は良くないよ? 健康にも美容にも悪いし」
「……調べものが、つい捗った」
「調べものって、どうせアングラなネットサイトに熱中してたんでしょ」
鋭い切れ目をさらに細めてジト目にした不愛想な女の子が、呆れ顔で見守りつつ切り捨てる。膝の上の子は無言無表情で抗議の視線をジーっと送っていたけど、眠気に敵わなかったのかすぐその目を閉じた。どうせ図星だろうから放っておこう。
「私もそよに膝枕してもらったことがありますが……凄く寝心地良いんですのよね。……気持ちよさそうですわ……」
寝顔をマジマジ見つめる明朗な女の子は、二つ結びした水色の髪をソワソワと揺らして落ち着かない様子だった。そんな不審ぶりを、横からクリクリしたお目目が覗き込む。我らCRYCHICが誇る(?)不思議ちゃんだった。
「もしかして、祥ちゃんも、寝たい?」
「い、いえっ! そよの膝は睦で埋まってますし……確かに私も、昨晩は夜更かししてしまったから少し眠気が残ってますが……」
「じゃあ、ともりちゃんのお膝を借りたら? まだハイキングも始めたばっかりだし、スッキリしといた方がいーよー?」
「燈に膝枕させるくらいなら睦の頭ずらしてそよ枕使わすから」
「そこは立希が膝枕してくださるんじゃないのですね……」
「ていうかそよ枕って命名しないで。同い年に膝枕するの、定着させたくないんだから」
子ども連れで賑わう自然公園の広場に、5つ(内1つはもう寝息だけど)の声が飛び交う。みんなと出逢ってから、もう少しで1年と半年。それだけの時間で、こんなやり取りも当たり前になっていた。それでもこの温かい幸せをいつまでも当たり前と思えず、いちいち嬉々として浸ってしまう。
ご機嫌になった勢いで、私はさきちゃんも甘やかしてあげることにした。
そよ「どうせむつみちゃんの不眠を解消するために休んだんだし、さきちゃんも私の膝で寝ていいよ? ほら、今スペース作ったから」
祥子「そ、そうですか? ではお言葉に甘えて……」
燈「祥ちゃん。そよちゃんの膝枕、気持ちいい?」
そよ「ともりちゃん? なんか恥ずかしいから聞かないでくれる? どっちにしてもあんまり喜べないし……」
祥子「う~ん……zzz」
立希「秒で寝てるし。相変わらず寝付きが良すぎるでしょ」
睦「……ムニャムニャ。程よくムチムチなお肉が柔らかく沈み込んで、頭にフィットしてる……毎晩この枕が良い……zzz」
立希「しかもお前が寝言で答えるんかい」
そよ「他人の太ももムチムチって言わないで。太ってるみたいでしょ」
不本意かつ馬鹿みたいなやり取りのあと、結局たきちゃんとともりちゃんも横になって寝てしまった。2人とも夜型と言うし、いつでも寝れるくらいには遅くまで起きてるんだろう。……それにしても、ともりちゃんだけじゃなくてたきちゃんまで私の膝使うとは思わなかった。まぁ、それだけ打ち解けた証拠って前向きに捉えようかな。今更とは思うけど。
すー、すーと静かな寝息が規則的に4声重なる。まるで四和音の子守歌みたいに聞こえてきて、私まで眠くなってきた。自然公園らしい緑豊かな風景を眺めてると、眠気が増す一方たった。私も膝枕したまま目を閉じようかな。頭が4つも乗って流石にしびれてきた脚の感覚も、気にならなくなるだろうしね。
暦的には秋真っ只中で少し肌寒いけれど、すんなり微睡に落ちれた。日射しの強い太陽の下いくらか歩いたから、体はポカポカと温まってたから。まぁ、お昼寝のためにハイキングしてたわけじゃないんだけど。そういえば、今日は何しに来たんだっけ?
涼やかな風が火照った顔を吹き抜けて気持ちいい。冷やされた頭が、こうなった経緯を、夢という形で再生させた。
☆ ☆ ☆
10月24日
ライブハウス『Ring』でバンド練習した後、2階のカフェでお茶してるときのことだった。
祥子「みんなで遊びに行きましょう!」
例の如く、我らがリーダーからのお誘いである。なんだかんだ月に1回はイベント事を起こしていたので、そろそろ来るだろうとは思っていたけど。どうも見込みはまだ甘かったらしいことを、彼女が抱えているプリントの束を見て思い知った。
オロオロと目を彷徨わせるともりちゃんはそっとしたまま、私たち3人はさきちゃんから目を逸らして話を進める。アイコンタクトすら必要とせず、避けるべき展開はちゃんと共有していた。
そよ「今月はどこがいいかな~。先月みたいにお茶するだけとか、良かったよね~」
立希「そういうのでもいいけど。映画とかでも良くない?」
睦「……立希が映画なんて女子高生っぽい提案するのも驚きだけど。どこにもいかずに家に集まって遊ぶのも、アリ」
そよ、立希「確かにー。わざわざ外出なくてもいいよねー」
アッハッハ、と和む私たちの談笑を遮るように、テーブルにバンッとプリントが叩きつけられた。『さりげなく遊び先を決定してしまおう』作戦、失敗である。
祥子「秋といえばスポーツ! スポーツといえば山登り! 久々に山へ挑みましょう!?」
そよ「その連想はさきちゃんだけだね」
立希「てか山登りってスポーツ?」
睦「……どうにしろ、遊びの範疇からとんでもなく外れてる」
3人「絶対却下」
祥子「絶対はやめてくださいまし~! これでも登りやすい気候まで誘うタイミングを待ってましたのに~! 候補も色々とピックアップしてきましたのに~!」
立希「えーい、キーボードのくせにテーブルをドラミングすんな! 静まれ!」
終いにはテーブルバンバンし始めた熱血アウトドアなお嬢様を落ち着かせるため、溜息つきながらプリントを眺めてみる。……全部県外で片道2時間はかかる、標高も1000m越えの山ばかりだった。行くだけで疲れるし、無事に帰ってこれる気もしないよ。
そよ「さきちゃん。改めて言うけどね、私たちみんなインドア派なの。遊びに行くのはいいけど、ここまでハードなのはついていけないよ」
祥子「う……」
立希「あのそよがここまではっきり言うんから、相当嫌って分かるでしょ。私だって無理」
祥子「うぅ……」
睦「……幼馴染なこと後悔しそうなくらい嫌」
祥子「うぅ~……ともり~!」
立希「させるかぁ!」
困ったらともりちゃんに泣きつき抱きつこうとするさきちゃんを、たきちゃんが羽谷締めで止める。いつか阻止してやろうと思っていたんだろう、彼女は勝ち誇ったように口角上げながらともりちゃんに声をかける。
立希「燈、情けかけなくていいから。片道2時間かけて高尾山以上の山登りなんて、したくないでしょ?」
燈「う、うん。だから……代わり、じゃないんだけど……」
この流れを予期して用意してたのか、はたまた
そよ「……なるほど~。コスモスを見に行きたいんだ」
燈「うん。ここの自然公園は凄く広いから、ハイキングコースもあるし、祥ちゃんもまだ楽しめるかな、って」
祥子「ともり~! 体を動かしたいこの私も気遣ったイベントを考えてくださってたなんて~!」
立希「あっ、ちょコラ! 意地でも燈にひっつく気だし!」
睦「……そういう自分は意地でも阻止したいくせに。でも、確かに大きい公園」
そよ「かなり有名な都市公園だからね。行ったことないけど」
ワチャワチャ暴れる2人と挟まれてマゴマゴしてるともりちゃんは放置して、むつみちゃんと一緒にともりちゃんが持ってきたパンフレットを見る。自然公園だから派手なアトラクションがあるわけじゃないけど、休日はイベントも開催してるみたいだし、ハイキングもコースを工夫すれば退屈しなさそう。多少歩くくらいなら別にいいかな。ただ1人アクティブ派なさきちゃんにも配慮したせっかくの案を、否定するのも忍びないし。
燈「コスモス畑、今が丁度見頃で綺麗、なんだって」
そよ「公園がこれだけ広かったら、コスモスもきっとたくさん咲いてるね」
睦「……10月に
祥子「4月に花見する私達ですもの! 10月に秋桜を見るのもお決まりにすべきですわね!」
立希「いつから花見がお決まりになったの。まぁ、自然公園行きは反対しないけど」
今月はコスモスハイキングですか! 楽しみですわ~♪ コスモスハイキングて。言っとくけど、コースは長くさせないから。あ、お弁当作って持ってくー? ……それじゃあハイキングというより、ピクニック。ピクニック……えへへ、それも、楽しそうだね。
いざ行くと決まれば、その話で盛り上がる私たち。明るい笑顔からやれやれな苦笑、無邪気な微笑みや楽しみなウキウキ顔。笑みいっぱいなこの雰囲気が、私はずっと大好きだった。
☆ ☆ ☆