重いそよ過去編と、次の重い話の間に、どうしても気分転換したかったので。
みんなで鍋パするだけの話です。雰囲気で読んでください。
前奏 寒い日は鍋を囲いましょう?
12月のいつか。バンド練習終わり、例のごとく祥子の提案からそれは始まった。
祥子「聞いた話なのですが、世の中には鍋パーティーなる風習が存在するらしいですわね」
立希「また藪から棒だな。やりたいの? やりたいんでしょ祥子お嬢ちゃまは」
祥子「やりたいですわ!」
立希「コイツ、揶揄も無視するくらい食いついてきやがる」
睦「……寒くなってきたし、賛成」
燈「う、うん。みんなで鍋囲むの、楽しそうだもんね」
祥子「燈の言う通りですの! でも立希は乗り気じゃなさそうなので、4人で楽しむとしましょう。では立希だけ、ごきげんよう」
立希「誰も嫌なんて言ってないでしょ。てか私も混ぜろ」
そよ「じゃあ私の家でしようか? 今日お母さん帰ってくるか分かんないし、遠慮しなくていいからね~」
睦「……そよのお母さん、相変わらず忙しそう」
そよ「どうだろ? むつみちゃんのお母さんほどじゃないかもしれないけど……」
燈「じゃあ、そよちゃんさえよければ、そのまま泊まってもいい?」
そよ「えっいいの?」
祥子「名案ですわね! それならそよも寂しくないでしょうし!」
そよ「別に寂しかったわけじゃないけど……まぁ嬉しいかな?」
立希「んじゃ具材買ってそよん家行くか」
祥子「それじゃあ、レッツラゴーですわ♪」
立希「ホント、こういうときテンション上げすぎてキャラバグるんだからこのお嬢ちゃま……」
スーパーにて
立希「祥子。お前何鍋がしたかったの?」
祥子「そうですわね……いつも最高級のお肉ですき焼きをしてましたので、みんなとも……!」
立希「却下。燈は何鍋がいい?」
祥子「どうしてですの!?」
そよ「さきちゃん基準だと私たちのお財布が厳しいからね……仕方ないね」
燈「私は……豆乳鍋が好きかな?」
睦「……燈は牛乳好きだから納得かも。ちなみに私はキムチ鍋がいい」
そよ「キムチ鍋も温まっていいね~。私はトマト鍋って気分かも♪」
祥子「そよはミネストローネが好きですかららしいですわね。立希は?」
立希「私は……湯豆腐がいいかな」
睦「……地味。でも豆腐ならキムチ鍋でも合う」
立希「それでもいいけど、あっさりした湯豆腐もいいんだよ」
そよ「でもみんなバラけちゃったね」
祥子「じゃんけんで決めましょう! 勝った人の鍋でいいですわね?」
燈「うん。それじゃ、じゃんけん……」
ポンッ
睦「……勝利のブイ」
そよ「ふふっ、好きな夕食にはしゃぐ子どもみたいで可愛い♪」
睦「……人前で撫でるのは恥ずかしいからやめて」
立希「人前じゃなきゃいいのか?」
祥子「それじゃあ具材を買いましょう! やはり一番高いお肉がいいでしょうか……」
立希「祥子は勝手に選ばないように。そよ、見張ってて」
そよ「は~い♪」
祥子「きぃ~~~! 人を世間知らずの箱入りお嬢様扱いして~~~!」
燈「さ、祥ちゃん! スーパーで地団駄踏んでると余計それっぽいよ! そういうところだよ?」
睦「……燈が追い打ちしてる。珍しい」
そよ「お肉はむつみちゃんの好みに合わせて鶏肉がいいかな?」
睦「……私の好みをちゃんと把握してくれてる。流石ママ。略してさすママ」
そよ「……って思ったけど、むつみちゃんはもっと太るべきだからできるだけ脂っこい豚肉選ぼっかな~♪」
睦「……優しいそよお姉さん。鶏肉食べよ?」
そよ「よろしい」
立希「んじゃ他に豆腐は入れるとして。みんな、入れてほしくないもの言っとくべきじゃない? 私はしらたきとしいたけ」
燈「私は……いくらとかたらことか、生卵も苦手だけど……」
そよ「その中じゃしいたけ以外は普通に入れるものじゃないね。私もホルモン入ってなければいいし」
睦「……嫌いなもの入ってても無視する」
祥子「睦らしいですがあまり褒められた振る舞いじゃありませんことよ? ちなみに私は特にありませんわ」
立希「んじゃあとは適当に定番もの買うか」
少女買い物中……
そよ「うん! 色んな具材買ったし、楽しみだね♪」
燈「そうだね。そよちゃん家が待ち遠しいな……」
立希「それじゃあ早速向かおうか」
睦「……祥。闇鍋って知ってる?」
祥子「……やみなべ? なんですのその興味を強くそそる名前の鍋は!?」
そよ、立希(あっ、余計なことを一番吹き込んじゃいけない人に……)
睦「……それぞれ他人には不明な材料を持ち寄り、暗闇の中で調理して食べる鍋料理のこと。おいしさよりも楽しさを追及するイベント」
祥子「そ、その……材料は何でもよろしいのでしょうか……」モジモジ
睦「……基本、何でもいい。というか怒らせないギリギリのラインを探るのが醍醐味、らしい」
立希「まぁでも今回はキムチ鍋って決まったしな、なぁそよ?」
そよ「そうだねたきちゃん。具材も買っちゃったし、また今度に……」
祥子「やりましょう、闇鍋! 1人一品でもいいからやりましょ! ね、ね、ね!」ズイッ!
燈「さ、祥ちゃん……お目目すっごいキラキラさせてるよ……?」
立希「はぁ~~~。こうなったらテコでも譲らなさそうだし。……1品だけだから」
そよ「……むつみちゃんのせいだよ?」
睦「……反省はしているが、後悔はしていない」ドヤァ
そよ「反省も後悔も素直にしなさ~い!」
睦「……私のほっぺつねらないで。イタイ」
こうして、そよが荷物番をしながら4人は闇鍋用の具材をバラバラに買いに行った。
ちなみにそよは家の冷蔵庫から適当に選ぶ、とのことだった。
そよの家、キムチ鍋をほとんど食べきるCRYCHIC。
祥子「ふふっ、食材はいつもより質が低いですが、みんなと囲む鍋はそれだけで楽しくておいしいですわね!」
燈「うん。あったかいね、祥ちゃん」
立希「ナチュラルに庶民の食生活ディスってたけど、燈が幸せそうだからOKとするか」
そよ「むつみちゃん希望のキムチ鍋だったけど、おいしかった?」
睦「……満足。腹8分目で実にいい感じ。いつかのバーベキューとは大違い」
祥子「あれは私のせいではありませんわよ?」
立希「睦は根に持ちしいだよなー」
そよ「うんうん。あれだって今となってはいい思い出でしょ?」
睦(冗談じゃない。あんな目にもう1度でも耐えられないよ……)
燈「でも睦ちゃん。まだ闇鍋用の具材残ってるよ?」
睦「……あ」
立希「こいつ……自分から言い出しといて忘れてやがった」
睦「……宴もたけなわですし、今日はこの辺りで……」
そよ「私の家でお残しは許しませ~ん♪」
睦(……面白そうと思ってあのときは言ったけど。恨むよその時の私……)
祥子「さて! 本日のメインイベントに移りましょうか! みんな、具材を隠しながら用意してくださいまし!」
そよ「一応聞いておくけど、スーパーで話してたみんなの嫌いなものは入ってないよね?」
そこだけは問題ないらしいことを確認し合う5人。
立希「とは言え、あんまり安心できないのが不思議だな」
そよ(……そういうたきちゃんも嫌な予感するんだけど……)
燈「えっと、確か電気消して見えないようにするんだっけ?」
睦「……らしい。いざやろうとすると、結構怖い」
立希「一応ツッコムけど、お前が言い出したんだからな?」
そよ「まぁここまで来たら見えててもアレだし、最後まで闇鍋しよっか。電気消すね~」
パチッ。真っ暗になった部屋で、5人はグツグツ音を立てる鍋に緊張を走らせる。
祥子「で、では私から……。なんだかドキドキしますわね」ボチャチャッ……
立希「なんか音が不穏なんだけど……」ポチャッ
そよ「どんな音でも不穏に聞こえるものでしょ?」ポチャポチャポチャ……
燈「えへへ、すっごいドキドキするね、睦ちゃん……」ポチャチャチャチャ……
睦「……そういう燈はなんかいっぱい入れてるね」トプントプントプン……
祥子「え~っと……しばらく煮るんですの?」
立希「悩ましいところだけど……とりあえず、煮る」
そよ「どちらかと言えば、火が通ってないより通ってる方が丸いもんね」
睦「……その分煮詰まって大変なことになってる可能性も上がるけど」
燈「「む、睦ちゃん! 怖いこと言わないでよ……」
煮込むのを待つこと10分間。
5人は沈黙を嫌い、ぎこちない会話で緊張を誤魔化した。