CRYCHIC交響曲   作:りょーへい

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対4話とは、アニメアベムジカの4話に対するカウンターSSで書いたので、そういう意味です。
後の話で実はギター好きな睦すら創られた人格の1つでしかない、みたいなこと言われた気がしますが、それは本作において完全に無視し主人格としてます。


原作から睦がキャラ改変した訳
対4話 どちら様ですの!?


 

 

 放課後、スタジオに集まりバンド練習をしているCRYCHIC。

 今はその休憩時間中、立希は睦から送られてきた動画に、スマホへのめり込む勢いで食いついていたが……。

 突如、

 

「ヒィイイイ!?」

 

 奇声をあげながらスマホを真上に飛び上がらせていた。

 祥子、燈、そよが驚いてる中、睦だけ俯きながら肩を震わせていた。

 

そよ「ど、どうしたのたきちゃん?」

 

立希「どうもこうもない! 睦! お前の送ってきたパンダの癒し動画、途中でパンダがゾンビ化したんだけど!? しかも笑いながら人襲い始めたし!」

 

睦「……(低めの声で)おかわりだろうか? ではもう一度ご覧頂きましょう……」

 

立希「誰がこんな詐欺ホラー動画おかわりするか! やっぱり確信犯だったな!」

 

睦「……お分かり頂けただろうか……」ニヤリ

 

立希「ヤローぶっころしてやる!」ドタドタ

 

睦「……ふふっ。立希も順調にネットミームに染まってきてるみたいで、何より」スタコラ

 

祥子「それですわ」

 

睦「……?」

 

 睦によるいつもの立希いじりを、いつもと違う形で祥子が遮る。

 立希に捕まり、ほっぺをつねられている睦は祥子の方へ向いた。

 

祥子「そのネットミームとやら、CRYCHICに入る前までは全然口にしてなかったじゃないですか。そんな悪戯っ子でもなかったし、ボケ好きでもなかったし。ずっと聞きたかったのですけど、一体どうしてそうなったんですの?」

 

そよ「そういえば、中学の時の夏合宿でもさきちゃん驚いてたね~」

 

燈「元々、私たちが最初会った頃くらいの静かで大人しい子だった、ってことかな」

 

立希「まぁ別にいいんじゃない? 言いたいことあるのに黙って溜め込むよりかは、よっぽど精神衛生上良いでしょ。ただ今回のは許さない」

 

睦「(立希の最後のは完全スルーしとこ)……それとも、祥は今の私が嫌なの?」

 

祥子「本当に嫌なら貴女といつも一緒に楽しくしてないでしょう」

 

睦、祥子「ふふふふふっ♪」

 

立希「お嬢様風オードリーしなくていいから。でも、なんか変わったきっかけとかあるの? 10年近く一緒にいた幼馴染が知らなかった一面が急に出たのは、確かに気になる」

 

 立希から訊ねられて、睦は胸に手を当てながら神妙な顔をした。

 

睦「……ついに、話すときが来たらしい」

 

そよ「すっごいもったいぶってきたね~」

 

燈「う、うん。もしかしてすごい話だったり、するのかな?」

 

睦「……大したことない。私の中に、もう1人の私がいる、ってだけ」

 

祥子「な~んだ。そんなことでしたのね」

 

立希「変にもったいぶるから身構えたけど損した。そんな、もう1人睦がいるくらい……」

 

 …………………………。

 

4人「……どゆこと?」

 

睦「……だから。私の心の中に、私とは別の子がいるの。その子と小さい頃からお話してきた」

 

立希「…………あー、また冗談、みたいな?」

 

睦「……信じられない話してるのは分かってるけど、これは本当」

 

そよ「えっと~……。いつからそんな妄想を考えるようになったのかな~?」

 

睦「……露骨にイタイ子扱いやめて、そよ。中二病とかそういうのでもない」

 

燈「えっと……その子は名前、あるの?」

 

睦「……むーちゃんって呼んで、って言われたからむーちゃんって呼んでる」

 

祥子「燈は順応が早すぎますわ! 今の話が本当なら、10年近く連れ添った幼馴染が実は2重人格染みてるということなんですわよ!? そんなこと、はいそうですかっていくわけないでしょう!」

 

睦「……まぁそうだろうと思って、自分から話すつもりなかったんだけど。話の流れ的にいいかな、って。実際、むーちゃんのおかげでみんなと楽しく話せるようになったところもある」

 

燈「そうなの?」

 

3人(ここは一番順応してる燈(ちゃん)に相槌役を任せよう……)

 

睦「……みんなと仲良くしたいけどどうすれば分からなかった私に、こうしたら? って助言してくれたのが、むーちゃんだから」

 

燈「そ、そうなんだ……。あ、もしかしてその助言っていうのが、睦ちゃんがよくやる悪戯っぽいこと、なのかな?」

 

睦「……そういうこと。むーちゃんは私と違って、明るくて奔放で考え無しな自由っ娘だから。初めてその助言に従ったのが中学の夏合宿だったな」

 

祥子「た、確かに。私の違和感の始まりと一致しますわね……」

 

そよ「しょっちゅうボケるようになったのも、その、むーちゃん? の趣味なの?」

 

睦「……たーくん……父親がツッコミなのは知ってると思うけど。要は身近な人とは違うキャラが好きだったんだと思う。楽しいこと大好きみたいだし」

 

立希「ならネットミームは? ボケも大概だけど、そこが一番俗物的でお嬢様らしさからかけ離れてるんだけど」

 

睦「……私もだけど、むーちゃんはそれ以上にテレビが嫌い。だから元々情報源としてネットには浸かっていた。口にするようになったのは、むーちゃんの希望」

 

祥子「そんなにむーちゃんは睦におかしな発言をさせたがったのですね……」

 

燈「そもそも、いつ頃からむーちゃんと一緒にいたの?」

 

睦「……いつだろう。物心ついて、テレビに出るようになった頃くらいにはいたと思う。それからよく私とおしゃべりしてた。親のことだったり、ギターのことだったり。色々」

 

燈「うーん……友達、というか……双子の姉妹、みたいな感じかな?」

 

睦「……それより、もう1人の私って感覚が近いかも。だからって、某カードゲームの主人公みたいに私と入れ替わるわけじゃないし。むーちゃんは私を『相棒!』なんて呼ばないけど」

 

立希「人格が入れ替わるわけじゃないって言いたいのは分かったから。いらんネタ挟まなくていいんだよ」

 

そよ「う、う~ん……。むつみちゃんがむーちゃんを嫌に思ってるわけじゃないなら……健全な精神状態じゃないかもしれないけど、問題ない、のかな……?」

 

 そよの半分心配するような問いに、睦は真剣に答えた。

 

睦「……不自然で気持ち悪いのは分かるけど、できればみんなにはむーちゃんを否定しないで欲しい。もう1人の私で、小さい頃から私を見てくれていた、友達みたいなもの、だから……」

 

祥子「睦にそんなこと言われたら……否定するわけないじゃないですか」

 

睦「……ありがと」

 

燈「でもそっか。じゃあ出会った頃の睦ちゃんらしくない悪戯は、全部むーちゃんの仕業、だったんだね」

 

立希(そ、そっか。じゃあさっきのも、ていうか悪戯全般、睦じゃなくてムーに怒んなきゃなだな。後で睦には優しく……)

 

睦「……でも最近は私もむーちゃんがどんな助言するか分かって来たし、助言されなくても自分から好きに揶揄ってるかな」

 

立希「じゃあやっぱりお前に怒んなきゃじゃん! 気遣って損した!」

 

睦「……でも今の私があるのはむーちゃんのせいだし……」

 

立希「都合の悪いときだけムーのせいにすんな!」

 

そよ「それよりたきちゃんの『ムー』呼びが気になるよ……」

 

立希「私がちゃん付けは変でしょ。ムーにする」

 

睦「……ポケモンみたいに呼ばれても……」

 

立希「やかましい。とにかくこれからもムーを盾にしようったって効かないから」

 

睦「……むー。口を滑らせなければ……」

 

祥子「むしろ滑らせてもらって助かりましたわ。事あるごとにむーちゃんのせいにされたらたまったものではありませんし」

 

そよ「それはそうかも♪」

 

燈「そういえば、今むーちゃんは何か言ってるの? お話できたらいいな」

 

 燈から尋ねられて、一瞬だけ固まる睦。

 しかし何事もないかのように答えた。

 

睦「……むーちゃんは、私が話してるときは基本静かにしてるから……」

 

燈「そ、そっか……。むーちゃんとのおしゃべりは難しそうだね……」

 

祥子「燈は相変わらず不思議な発想をしますわね~。相手の中にいる人格とおしゃべりしようとするなんて……」

 

睦「……でもむーちゃんと仲良くしようとしてくれて、嬉しかった。ありがとう、燈」

 

燈「ううん。だって、もう1人の睦ちゃんなんでしょ? 当たり前だよ」

 

 にこやかに、何の気兼ねなく答える燈に、眩しいような、気が引けるような。

 複雑な感情を胸の中で錯綜させながら、睦は小さく笑い返した。

 

祥子「私としても、なぜ私の知らない睦の一面が生まれたのか謎が解けてすっきりしましたわ。幼馴染が1人増えたと思って、むーちゃんのことも気に掛けていきましょう」

 

そよ「さきちゃんも中々切り替えが良いよね。高校生になって急に『幼馴染もう1人いたんだ』、って受け入れるのもあんまりないよ? たぶん」

 

立希「ムーのことはまた良い機会で睦に話してもらうとして。そろそろ練習しよう」

 

 立希はそう言いつつ、ドラムセットに向かって行った。

 睦もそれに倣いつつ、軽口を叩く。

 

睦「……ちなみにむーちゃんはギター弾けない」

 

立希「設定なのかホントの話なのか絶妙に分からん小話やめろ。気になって集中できないでしょ」

 

 こうしてむーちゃん……睦の中にいる別人格の話は再開した練習によって流されていった。

 だが睦の中ではつっかえていたことがあった。

 

 

 

 面倒なのでむーちゃんで統一するが。

 むーちゃんは元々、親やマスコミ関連で精神的ストレスが重なり、追い詰められた際の無自覚な自己防衛として現れた人格だった。

 でもCRYCHICに入り、むーちゃんの助言により仲良くなって、今や安息できる居場所を手に入れた睦にとって。

 精神が安定してる以上、むーちゃんを昔ほど必要としていなかった。

 むーちゃんの助言なしにみんなと楽しく絡めるようになるにつれ。

 自分の中で、次第にむーちゃんの存在が薄くなってる感覚が、睦を惑わせていた。

 半身のように思っていた存在が、いつかは消えてしまう予感に、睦は悲しく思った。

 

 ……あるいは。

 CRYCHICを失うような、トラウマレベルのショックを受ければ。

 話はまた変わってくるのだろうが。

 

 そんなあり得ない例え話は置いといて。

 2重人格じゃなくなり、普通に近づくのは良いことなのかもしれない。

 でもCRYCHICのみんなと馴染めるようになったのは、悪戯のような幼稚な案でも助言してくれたむーちゃんのおかげだと思ってるから。

 

(……消えなくていいからね。いたかったら、ずっと私の中にいていいんだからね、むーちゃん。せっかくみんなからも認めてもらえたんだから……)

 

 いつものように語りかけても。

 最近のいつも通り、向こうから反応が返ってくる気配はなかった。




※後書き※

もともとネットミームを嗜むボケ好きのからかい好き睦は原作改変が酷いなとは常々思ってましたが。
まさかここにきて公式から救いの手が伸びて来るとは思わなんだ。

『そうだ、もう1人の睦が原因ってことにすればいいんだ!』

2次創作の問題を万事解決しそうな協力なカードを手に入れた気分。
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